株式会社よりそう(よりそうお葬式)の業績・利益まとめ|決算資料からみた現状を解説

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「よりそうお葬式」を運営する株式会社よりそうは、これまで複数のVC(ベンチャーキャピタル)から多くの資金を調達してきました。
当然ながら早期の株式上場を目指しているものと思われますが、現在の経営状況が気になるところです。

そこで本記事では、決算期に公開される貸借対照表を参考に、「よりそう」の業績や現時点での財務状況などについて解説します。
記事後半では、葬儀ポータルサイトを取り巻く状況についても紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社よりそうの概要

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現在では葬儀周辺領域に特化して事業を展開している「よりそう」ですが、2009年3月の会社設立当初は、さまざまなサービスに関するレビューサイト「みんれび」を運営していました。
しかし会社設立の3か月後にあたる2009年6月には、ポータルサイト「葬儀レビ」を立ち上げて葬儀業界に参入しています。

よりそうの事業概要

「よりそう」では、これまで多くのサービスをリリースしてきましたが、2023年6月時点では以下の6事業に集約されているようです。

かつてはサービスごとに「海洋散骨Umie」「格安のお仏壇」などの名称で提供されていましたが、上記リストをご覧いただくと分かるように、現在では全て「よりそう」ブランドに統一されています。
また「よりそう」では、一般認知度の向上を目的に、2022年12月よりTVCMの放映を開始しました。

よりそうの資金調達

「よりそう」が2022年1月までに実施した資金調達の推移をまとめたのが下図となります。

よりそうの資金調達ラウンド

VC(ベンチャーキャピタル)が出資する主な目的は、投資先企業が株式上場を果たした際の株式売却益ですので、当然ながら「よりそう」に対しても出資に見合うリターンが求められます。

ベンチャーキャピタル(Venture Capital、VC)
将来的な成長が期待できる未上場企業に対して、大きな上場益などのハイリターンを目的に出資する投資会社

「よりそう」のこれまでの業績を考えると、上場審査の基準に収益性が含まれる「プライム市場」や「スタンダード市場」は、現実的な選択とは言えないでしょう。
しかし、ベンチャー企業向けの「グロース市場」であれば、上場審査時点での収益性は重視されないため、高い成長性を示すことができれば審査を通過する可能性もあります。

とはいえ、成長性の高さをアピールするためには、商品やサービス・ビジネスモデルの優位性などが判断基準になるため、今期・来期の業績が重要となるでしょう。

なお「よりそう」の第三者割当による資金調達の詳細については、以下記事で解説していますので、ぜひ参照ください。

葬儀社の決算公告とは

決算公告はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類で、株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があります。
以下に、決算公告についての簡単な概要を記載しました。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。

よりそうの貸借対照表 

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貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば安定企業ですが、反対に自己資本比率が10%を下回っている場合は財務改善が必要といわれています。

自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

貸借対照表TOP

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、適切な割合は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
また流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は、最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。

よりそうの自己資本比率は42.36%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
6億5千1百万円÷15億3千7百万円×100=42.36
「よりそう」の2023年2月期における自己資本比率は、42.36%(前年同期比19.90%低下)となっています。

「よりそう」では、将来的に返済が必要な「借入」ではなく、第三者割当を中心に資金調達を実施しているため、自己資金比率は安全圏を保っているようです。

よりそうの資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

資産負債

上図の赤い円で示された箇所を確認することで、その会社がもつ資産額と、借入金などの負債額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。

・流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

・固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
  ・無形固定資産:ソフトウェアなど

繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を、一括して費用として計上せずに資産として計上し、期間内(数年など)に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など

よりそうの資産合計の推移は以下のようになっています。

資産合計-min

よりそうの2023年2月期における資産合計は15億3千7百万円(前年同期比47.95%減少)となっています。

前述したように「よりそう」では2022年1月に35億円の資金を調達したことから、前年同期には30億円近い資産を保有していました。
しかし当決算期では、資産合計が減少する結果となったようです。

「よりそう」では、資金調達の目的の一つに「マスプロモーションへの投資」を掲げており、実際にTVCMの放映も開始しています。

貸借対照表を確認すると、減少している資産は「現金及び預金」が中心ですので、認知度向上のための投資を予定通り実施した結果なのかもしれません。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。

流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります。
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

よりそうの負債合計の推移は以下のようになっています。

負債合計-min

よりそうの2023年2月期における負債合計は8億8千6百万円(前年同期比16.02%減少)となっています。
とはいえ、財務安定性指標の一つである流動比率(流動資産÷流動負債×100)は、2023年2月期の時点で222.60%(安全ラインは100%以上)となっており、短期的な支払い能力については問題ないようです。

よりそうの純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたもので、貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。

純資産 貸借対照表

上手の赤い丸で示した箇所を確認することで、その会社の純資産を確認できます。
よりそう純資産合計・当期純利益・利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

純資産は会社の所有する現金や建物などの資産から負債(借金)を差し引いたもので、純資産の割合が高ければ財務健全性が高い状態と考えられます。
一方、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、上場企業において2期連続で債務超過の状態が続いた場合、上場の廃止基準に抵触することもあります。

純資産合計-min

よりそうの2023年2月期における純資産合計は、6億5千1百万円(前年同期比65.68%減少)となっています。
2022年1月の資金調達により、2022年2月期の純資産合計は2021年にくらべて大幅に増加しましたが、当期では再び減少に転じる結果となりました。

とはいえ、新型コロナが5類相当に引き下げられたことで、葬儀業界も回復基調にありますので、次の決算期には増加に転じる可能性もあります。

当期純利益の推移

会社が1年間で得た全収益から、法人税や住民税そして費用を差し引いたものが「当期純利益」で、企業の収益性を測る指標となります。
この当期純利益がマイナスとなると「当期純損失」となります。

当期純利益-min
*2023年2月期は決算資料に「当期純利益」の記載がないため概算となります。

「よりそう」では、2023年2月期で12億4千6百万円当期純損失が発生しているとみられます。
前年同期に比べ損失金額は圧縮されているものの、大幅な改善とはならなかったようです。

とはいえ、新型コロナが5類相当に引き下げられたことで、葬儀業界も回復基調にありますので、次の決算期には黒字に転じている可能性もあります。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが、利益剰余金のことを内部留保と呼ぶこともあります。
利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

利益剰余金を多く確保しておくことで、金融危機など不測の事態にも対応できる可能性が高まるため、企業経営において非常に重要です。
「よりそう」の場合は以下のように推移しております。

利益剰余金-min

よりそうの2023年2月期における利益剰余金は-52億7千万円と、前年同期に比べ当期純損失分マイナスとなりました。
とはいえ、業績が改善されれば利益剰余金のマイナスも減少しますので、来期以降に期待したいところです。

同業他社の動向

「よりそう」の中核事業である葬儀ポータルサイト運営事業者は数多く存在しますが、収益化に成功しているのはごく一部といわれています。
その中でも大手といわれる事業者は、すでに事業の多角化に取り組んでいるようです。

「いい葬儀」の鎌倉新書

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葬儀ポータルサイト「いい葬儀」を運営する鎌倉新書は、お墓や仏壇などの供養に関連するサービスだけでなく、ライフエンディング領域全体に事業範囲を拡大しています。
相続分野にも力を入れているとみえ、不動産や保険を取り扱っているほか、弁護士や税理士・行政書士といった士業との連携も強化しているようです。

また自治体支援のための専門部署を立ち上げ、終活関連の連携協定を次々と締結しており、その実績は300自治体を超えています。

「小さなお葬式」のユニクエスト

小さなお葬式-min

葬儀ポータルサイト「小さなお葬式」を運営するユニクエストは、実際の葬儀場運営に乗り出しているほか、フランチャイズ事業も展開しています。
また、2023年3月には保険関連サービス事業を展開する「ライフィ」との業務提携を発表したほか、都内で6か所の民営火葬場を運営する東京博善と、僧侶派遣サービスで連携するなど、多種多様な業種の企業との連携を図っているようです。

特に東京博善については、かつてユニクエストの取締役を務めていた和田 翔雄氏が副社長に就任するなど、良好な関係にあるように思われます。

「やさしいお葬式」のLDT

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葬儀ポータルサイト「やさしいお葬式」を運営するLDTは、DMMファイナンシャルサービスから「DMMのお葬式」の事業譲渡を受けるなど、葬儀ポータルサイト運営事業を強化しつつ、エイジテック(Agetech)領域にも進出しています。

エイジテック(Agetech):高齢者が抱える様々な課題を解決するためのテクノロジー

今後はエイジテック関連事業を強化する方針のようで、商号も2023年3月21日より「ライフエンディングテクノロジーズ株式会社」から「LDT(ライフデザインテクノロジーズ)株式会社」に変更しました。

まとめ

今回は葬儀ポータルサイト「よりそうお葬式」を運営する「よりそう」の現状について、決算資料などをもとに解説しました。VC(ベンチャーキャピタル)からの経営支援には、返済義務のない出資を受けられるメリットがある反面、VC側の方針に従わざるを得ないというデメリットもあります。
「よりそう」においても、VC側から社外取締役というかたちで役員を迎え入れ、早期の株式上場を目指しているものと思われます。

とはいえ、VCでは資金だけでなく、豊富な経営ノウハウや人脈なども支援先企業に提供されます。
「よりそう」の業績は、これまでのところ順調とはいえない状況ですが、VCの関わり方次第では早期に改善される可能性もあるでしょう。
またVC側も、当然ながら出資した資金の早期回収に向けて動いているはずですので、今後も「よりそう」の動向を注視していきたいと思います。

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