株式会社 天光社 |葬儀社の業績・利益をまとめて分析

葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社 天光社の現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
決算公告は上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社 天光社の概要

株式会社 天光社は、福岡県、大阪府、兵庫県、岐阜県、関東地方を営業エリアとする、葬祭事業者です。
1993年、福岡県柳川市に「三橋式場」をオープンしたのが始まりで、2009年以降、岐阜県、関西、関東などの地域に葬儀式場を次々とオープンさせます。

葬祭業は地域特性による慣習の差が大きいとの認識から、葬儀施設やサービスのない地域を調査し、全国へ式場展開することになりました。
近年は消費者心理の変化から、家族葬など葬儀の小規模化が求められるようになり、家族葬専用ホール「千の風ホール」が完成しました。

2024年8月現在「天光社」「家族葬 千の風」「自由な家族葬 糸」の各ブランドで全国55式場を展開しています。

また2022年には、岐阜市に本社を置く「株式会社 野々村葬儀社」の株を取得し、完全子会社としました。
これにより対象エリアの拡大と、消費者の利便性を高めるとしています。

【名称】株式会社 天光社
【代表取締役】江村 哲也
【創業】1955年6月
【所在地】福岡市南区大橋1丁目20-19 朝日ビル大橋5階
【公式サイト】https://1000kaze.co.jp/
【事業内容】葬祭業(全国での直営ホールでの葬祭事業)
            

出典:株式会社 天光社 会社概要

葬儀社の決算公告とは

決算公告は、その会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。
以下に、決算公告についての簡単な概要を記載しました。

株式会社は、定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告と言います。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという、重要な側面も持ち合わせております。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

葬儀社の大手あるいは長年 葬儀・葬祭事業を営む会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスとなっております。
互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみおこなえる事業です。

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより

会員から掛金として支払われた前受金は、割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を、次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局に供託する
  • 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ

上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき、互助会事業の経営指導や立入検査等をおこなっています。

なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は、以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

天光社の貸借対照表

決算期第2期第3期第4期第5期第6期
会計年度2019年5月期2020年5月期2021年5月期2022年3月期2023年5月期
利益剰余金34億7千8百万円35億5千6百万円36億7千6百万円37億4千1百万円39億2千7百万円


流動資産10億0千8百万円12億2千8百万円12億6千7百万円12億4千7百万円17億5千2百万円
固定資産83億3千3百万円80億0千2百万円76億5千2百万円72億2千3百万円71億8千1百万円
有形固定資産15億9千3百万円16億9千3百万円17億0千0百万円16億3千5百万円15億3千1百万円
無形固定資産64億9千7百万円60億6千3百万円57億0千1百万円53億3千6百万円49億8千1百万円
投資その他の資産2億4千2百万円2億4千6百万円2億5千1百万円2億5千2百万円6億6千9百万円
繰延資産
資産合計93億4千1百万円92億3千0百万円89億1千9百万円84億7千0百万円89億3千3百万円


流動負債7億0千1百万円8億7千9百万円9億1千9百万円38億1千8百万円10億2千0百万円
役員賞与引当金
賞与引当金3千3百万円3千7百万円4千5百万円4千1百万円5千4百万円
その他
固定負債49億6千2百万円45億9千6百万円41億2千4百万円7億1千1百万円37億8千6百万円
退職給付引当金8百万円7百万円7百万円8百万円7百万円
雑収入復活引当金
役員退職慰労引当金
その他
負債の部計56億6千3百万円54億7千4百万円50億4千4百万円45億2千9百万円48億0千6百万円



株主資本36億7千9百万円37億5千6百万円38億7千6百万円39億4千1百万円41億2千7百万円
資本金1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円
 資本余剰金1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円
資本準備金
その他資本余剰金
 利益剰余金34億7千8百万円35億5千6百万円36億7千6百万円37億4千1百万円39億2千7百万円
利益準備金
特別償却準備金
その他利益剰余金34億7千8百万円35億5千6百万円36億7千6百万円37億4千1百万円39億2千7百万円
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
(うち当期純利益)8千9百万円7千7百万円1億2千0百万円6千6百万円1億8千6百万円
新株予約権
自己資本
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
純資産の部計36億7千8百万円37億5千6百万円38億7千6百万円39億4千1百万円41億2千7百万円
負債・純資産合計93億4千2百万円92億3千0百万円89億1千9百万円84億7千0百万円89億3千3百万円

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は、純資産の部です。
総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。

例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。
自己資本比率が10%を下回っている場合は、経営状態は良いとは言えません。
自己資本比率が低い場合は、借入金などの負債が多いので、資金繰りが厳しいと予測ができます。

一方で、自己資本比率が高い場合は、返済義務を有しない資金を大量に抱えているので、倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は、中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。

例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は、最低でも20%程度はあると安心です。

逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は、最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともある

天光社の自己資本比率は46.20%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
天光社の2023年5月期の自己資本比率を求める式は、下記のようになります。

41億2千7百万円 ÷ 89億3千3百万円=46.20 %
 
上記の式から同社の自己資本比率は、46.20%(前年比0.33%減)となりました。

天光社の資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つで構成されています。

流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや、1年を超えて現金もしくは費用となる資産で、有形固定資産や無形固定資産がある
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
  ・無形固定資産:ソフトウェアなど

繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や、社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに、資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなる
例) 創立費、開業費、開発費など

天光社の資産合計の推移は、以下のようになっています。

天光社の2023年5月期の資産合計は、89億3千3百万円(前年同期比5.47%増)となりました。
2019年5月期から、毎年わずかずつ減少していましたが、2023年5月期には増加に転じています。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。

流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となる
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となるので、流動負債以外の負債は固定負債になる
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

天光社の場合は、以下のようになっています。

天光社の2023年5月期の負債合計は、48億0千6百万円(前年同期比6.17%増)となっています。
2019年5月期以降、緩やかな減少傾向にありましたが、資産合計と同様に2023年5月期には増加に転じています。

貸借対照表を確認すると、流動負債が大幅に減少し、固定負債が増加していることから、長期借入への借り換えをおこなった可能性が高いと考えられます。
その結果、財務安定性指標の一つである流動比率(流動資産÷流動負債×100)は、前年同期の32.67%から大幅に改善され、2023年5月期の時点で171.8%(安全ラインは100%以上)と、短期的な支払い能力に不安は感じられません。

天光社の純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの、右側下段に記載があります。

純資産は資産(現金、土地、建物など)から、負債(借金)を差し引いたものです。

この赤い丸の箇所を確認することで、その会社の純資産を確認できます。

天光社の純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

会社の所有する現金や建物などの資産から、負債(借金)を差し引いたものとなります。
純資産の割合が高ければ、財務健全性が高いと考えます。

一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

天光社の2023年5月期の純資産合計は、41億2千7百万円(前年同期比4.72%増)となりました。
過去4年の状況を見てみると、2019年5月期からわずかながら増加し続けており、2023年5月期は前年より2億円近く増加しました。

当期純利益の推移

会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税、そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると、当期純損失となります。
当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか、判断できる指標になります。

天光社の2023年5月期の当期純利益は、1億8千6百万円(前年同期比183.1%増)となっています。

2020年5月期は新型コロナの影響を受けたとみられ、減少しましたが、2021年5月期には回復しました。
2022年5月期には再び減少したものの、2023年5月期は一気に増加し、過去5年間で最高額となっています。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは、簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずに、コツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが、利益剰余金のことを内部留保とも言います。

内部留保は、おそらく聞き馴染みのある単語だと思います。
利益剰余金は、貸借対照表で言うところの、純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。

天光社の場合は、以下のように推移しております。

2023年5月期の天光社の利益剰余金は、39億2千7百万円(前年同期比4.97%増)となりました。
2019年5月期以降、毎年増加し続けており、堅調に積み上げられています。

株式会社 天光社のまとめ

今回は、株式会社 天光社の決算公告を参考に、現状分析をおこないました。

2020年から2021年にかけて、新型コロナの影響を受けて、収益が下がった葬儀社も多いようですが、天光社も同様だったようです。
しかし影響は最小限にとどめられ、コロナ禍前より収益の減少はありましたが、すぐに回復していました。

天光社は2024年になってからも、福岡市、東京都 東村山市、兵庫県 尼崎市に家族葬専用ホールを次々とオープンしています。

2022年に岐阜県に本社を構える「株式会社 野々村葬儀社」を子会社としましたが、今後もM&Aによる積極的な展開をめざしているようで、次期決算にはさらに業績を伸ばしている可能性もあります。
天光社の2024年5月期の決算公告に、注目したいと思います。

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