相続税の基本のきVol.11 単身者の相続はどうなる?一般公開

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単身者の相続問題は、葬儀業界に携わる方々が知っておくべき重要な課題の一つです。近年、単身世帯が増加する中、「単身者が亡くなった場合、誰が相続人になるのか」「相続人がいない場合はどうなるのか」といった基本的な知識を正確に把握しておくことが重要になっています。

実際に、高齢者の単身世帯は近年急増しています。総務省の統計によれば、2024年10月1日時点で65歳以上人口は全体の29.3%、うち75歳以上人口は16.8%と、いずれも過去最高を記録しています。

なお、単身者といっても、過去の婚姻歴や親族関係によって相続の状況は大きく異なります。また、別居中の配偶者や内縁関係のパートナーなど、一見してわかりにくい相続関係も存在します。

この記事では、単身者の相続に関する基本的な知識から、誰が相続人になるのか、相続人がいない場合の対応まで、葬儀業界の皆様がご遺族様からの質問に適切に対応するために必要な情報を解説します。ご遺族様の不安を和らげる手助けとなる知識として、ぜひお役立てください。

単身者とは、厚生労働省の定義によれば「独立して住居を維持し、または独立して生計を営む者」を指します。つまり、他の人と住居や生計を共にせず、一人で生活している方のことです。法律上の配偶者がいても、別居している場合は単身者に含まれます。
この記事では、この定義を前提に解説を行います。

葬儀社なら知っておきたい相続税の基本解説

Vol.1_相続税ってどんな財産にかかるの?
Vol.2_相続税の相談は誰にすればよい?
Vol.3_相続税は誰が対象になるのか?
Vol.4_相続を放棄すれば相続税は支払わなくて良い?
Vol.5_相続税額をざっくり把握する方法は?
Vol.6_相続税を安くする方法はある?
Vol.7_遺産はどのように分割する?
Vol.8_相続税が払えない場合はどうする?
Vol.9_相続すると相続税以外の税金もかかる?
Vol.10_生活保護を受給していても相続できる?
・Vol.11_単身者の相続はどうなる?(本記事)
Vol.12_相続でよくあるトラブルとその対策は?
Vol.13_配偶者(夫・妻)が相続すると相続税がかからない?
Vol.14_相続が始まると銀行口座が凍結される?
Vol.15_相続手続きに必要な書類は?
Vol.16_相続と贈与の違いは?
Vol.17_相続税の税務調査とは?
Vol.18_相続税と葬儀費用・祭祀財産との関係は?
Vol.19_遺産は寄付できる?寄付先はどこ?
Vol.20_デジタル遺産の相続や管理は?

目次

単身者の相続の基本

シニアの男性

相続とは?単身者の場合の特徴は?

相続とは、故人様の財産や権利、そして義務が、法律で定められた法定相続人(ご遺族様)に引き継がれることをいいます。

単身者の相続では、一般的な家族構成と異なり、誰が相続人なのかが分かりにくく、手続きの開始が遅れることも考えられます。

単身者といっても、様々なケースがあります。離婚や死別で配偶者がいない場合、一度も結婚したことがない場合、あるいは配偶者と別居中の場合など、状況によって相続の流れは大きく変わるでしょう。

例えば、別居中の配偶者は、法律上離婚していなければ相続権を持ちます。また、法律婚ではない事実婚のパートナーは、通常の相続権を持ちませんが、特別な手続きによって財産を受け取れることもあります。

また、単身者で相続人がまったくいない「相続人不存在」のケースも珍しくありません。この場合、最終的には国庫に財産が帰属することもあります。

数字で見る単身者や孤独死・孤立死の現状

日本の高齢化は世界に類を見ないスピードで進行しています。総務省の統計によれば、2023年時点での65歳以上の高齢者人口は約3623万人に達し、総人口に占める割合(高齢化率)は29.1%と過去最高を記録しています。

高齢者人口の割合の推移
引用:総務省|統計からみた我が国の高齢者

高齢者世帯の構成にも大きな変化が見られます。1975年には高齢者のいる世帯の約半数が三世代同居世帯でしたが、2023年にはその割合が大幅に減少し、代わりに単身世帯や夫婦のみの世帯が増加しています。

特に注目すべきは単身高齢者の増加です。2023年時点での高齢者世帯1,656万世帯のうち、約3割が単身世帯と推定されています。

65歳以上がいる世帯数の構成割合(世帯構成別)

孤独死・孤立死の発生状況を年齢別に見ると、高齢者層に集中していることが明らかです。警察庁の統計では、年間7万6千人を超える孤独死・孤立死のうち、65歳以上の高齢者が約6割を占めています。

年齢別 孤立死・孤独死

このように孤独死・孤立死は若年層や中年層に比べて高齢者層で圧倒的に多く、特に75歳以上の後期高齢者で顕著です。

誰がどのような手続きをするのか

悩むスーツの男性

基本的な流れとしては、単身者の方が亡くなると、病院からご遺族様や身元保証人に連絡が入ります。自宅での孤独死の場合は、警察からご遺族様や連帯保証人に連絡が行くことになります。

相続手続きの主体となるのは、原則としてご遺族様です。特に単身者の場合、ご遺族様は子どもや親、兄弟姉妹など、別居している家族が担うことになります。

もし相続人がいない場合や、相続人全員が相続放棄をした場合は、利害関係人(債権者や特別縁故者)または検察官の申立てによって「相続財産清算人」が選任されます。この相続財産清算人が、故人様の財産管理や債務の支払いなどを行います。

遺品の整理については、経済的価値のある遺品は相続財産となるため、ご遺族様以外の方が勝手に処分することはできません。相続人がいない場合は、相続財産清算人が対応することになります。

単身者の場合、誰が遺産を相続する?

相続

単身者が亡くなった場合の相続について、多くの方が「誰が遺産を相続するのだろう」と疑問を持たれます。ひとくちに単身者といっても、過去の婚姻歴や親族関係によって、相続人は大きく変わります。

基本的には配偶者は常に法定相続人になります。そのほかの親族については、第1順位から第3順位まで優先度が決まっていて、より優先度の高い親族がいる場合には、それより低い順位の親族は法定相続人にはなりません。

相続順位法定相続人
常に法定相続人配偶者
第1順位子ども(亡くなっている場合は孫)
第2順位父母、祖父母(直系尊属)
第3順位兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥・姪)

ここでは、法定相続人の相続の順位に沿って、単身者の遺産を誰が相続するのかについて詳しく解説します。

別居中でも法律上の夫婦なら相続権がある

談笑するシニアの夫婦

別居中であっても、法律上離婚していない配偶者には相続権があります。たとえ長年別居していて、お互いに連絡を取っていなかったとしても、法的に婚姻関係が続いている限り、相続人となります。

相続における配偶者かどうかの判断は、法的な婚姻関係があるかどうか(法律婚の状態にあるかどうか)で決まるのです。

相続において配偶者は特別な立場にあり、民法では、子どもが「第一順位」、親が「第二順位」、兄弟姉妹が「第三順位」という順位が定められていますが、配偶者はこの順位とは別に、必ず相続人になります。例えば、故人様に配偶者と子どもがいる場合、相続人になるのは配偶者と子どもで、親は相続人にはなりません。

子どもがいる場合は子どもが相続する

車いすの男性

単身者といっても、過去に結婚歴があり子どもがいるケースや、婚姻関係のない間に生まれた子どもがいるケースもあります。そのような場合、故人様の遺産を相続するのは、まず子どもです。

相続の順位としては、子どもが「第1順位」です。これは民法で定められているルールで、故人様に子どもがいる場合、他の親族(両親や兄弟姉妹など)よりも優先して相続権を持ちます。たとえ子どもと故人様が長年別居していて疎遠な関係であっても、法律上は変わらず相続権があります。

また、婚姻関係にない間に生まれた子ども(非嫡出子)であっても、認知されていれば婚姻関係の中で生まれた子ども(嫡出子)と同じ割合で相続することができます。以前は非嫡出子の相続分は嫡出子の半分とされていましたが、現在では差はありません。

さらに、故人様の子どもが既に亡くなっている場合でも、その子ども(故人様から見た孫)が代わりに相続権を持ちます。これを「代襲相続」と言います。代襲相続は何世代でも続きますので、子どもだけでなく孫、ひ孫と続いていくこともあります。

子どもがいなければ親や祖父母が相続する

シニアの女性

故人様に子どもがいない場合、次に相続権を持つのは「直系尊属」と呼ばれる方々です。これは具体的には、故人様のご両親や祖父母にあたります。相続の順位では「第2順位」となります。

まず、故人様のご両親が健在であれば、ご両親がご遺族様として相続することになります。両親が共に健在の場合は、それぞれが2分の1ずつの割合で相続します。

もし父親か母親のどちらかが既に亡くなっている場合は、生存している方が一人で相続権を持ちます。例えば、父親が亡くなっていて母親が生きている場合、母親が一人で相続します。父方の祖母が健在でも、祖母には相続権はありません。

注意すべき点として、両親が離婚していた場合でも、親子関係は継続しているため、父親も母親も相続人となります。そのため、長年連絡を取っていない親でも、法律上は相続権を持っていることになります。

故人様のご両親が二人とも既に亡くなっている場合は、次に祖父母が相続人となります。ただし、単身者の方が高齢の場合、祖父母も既に亡くなっていることが多いでしょう。実際には、祖父母が相続人になるケースはそれほど多くありません。

親や祖父母もいなければ兄弟姉妹が相続する

電話をするシニアの女性

故人様に子どもがなく、両親や祖父母など直系尊属の方々も既に亡くなっている場合、次に相続権を持つのは兄弟姉妹です。相続の順位では「第3順位」となります。

高齢の単身者の方が亡くなった場合は、既に両親も亡くなっていることが多いため、兄弟姉妹がご遺族様として相続するケースがよく見られます。兄弟姉妹が複数いる場合は、均等に分けて相続します。

また、兄弟姉妹の中に既に亡くなっている方がいる場合、その方の子ども(故人様からみた甥や姪)が代わりに相続することがあります。これを「代襲相続」と言いますが、兄弟姉妹の場合は代襲相続が認められるのは1代限りです。つまり、甥や姪までは代襲相続が可能ですが、その先の世代(甥や姪の子ども)には相続権は移りません。

なお、相続において「いとこ」は法定相続人にはならないことにも注意が必要です。故人様の両親も兄弟姉妹も既にいない場合、いとこがいても法定相続人不存在となります。

相続する人が誰もいない場合はどうなる?

電話をするスーツの男性

単身者の中には、法定相続人が誰もいない「相続人不存在」の状態になることもあります。子どもがおらず、両親や兄弟姉妹も既に亡くなっているようなケースです。

では、このような場合、故人様の遺産はどうなるのでしょうか。ここでは、相続人がいない場合の財産の行方について説明します。

相続する人がいない場合は「相続財産清算人」が仕事をする

相談するビジネスマン

相続する人が誰もいないケース、つまり「相続人不存在」の状態になることがあります。

まず押さえておきたいのは、相続人がいない場合でも、周囲の人が勝手に故人様の財産を処分することはできないということです。法律上、適切な手続きを経て遺産を処理する必要があります。

この場合、「相続財産清算人」という人が選任され、遺産の清算を行います。相続財産清算人は、利害関係者や検察官が家庭裁判所に申し立てて選任されます。利害関係者とは、故人様に対して債権を持っている人(お金を貸していた人や住居を貸していた大家さんなど)や、遺言により財産を受け取る人(特定受遺者)、故人様と特別な関係があった人(特別縁故者)などを指します。

相続財産清算人が選任されると、官報という国の機関紙で公告されます。これにより、もし存在を知らなかった相続人がいれば名乗り出る機会が与えられます。一定期間を過ぎても相続人が現れない場合は、債権者への支払いや特定受遺者への財産の引き渡しが行われます。

なお、相続財産清算人は以前は「相続財産管理人」と呼ばれていましたが、民法の改正により2023年4月1日から名称が変更されました。まだ「相続財産管理人」という言葉を使う人もいますが、制度としては同じものです。

故人様と親しかった人が財産をもらえることがある

手を差し出す女性

相続人がいない場合でも、故人様と生前に親しい関係にあった方が遺産を受け取れる可能性があります。こうした方々は「特別縁故者」と呼ばれ、法定相続人ではなくても、一定の条件を満たせば財産を受けることができます。

特別縁故者として認められるのは、主に以下のような方々です。

  • 故人様の療養看護に尽くした方
  • 故人様と同じ生計で暮らしていた方(内縁の妻や夫など)
  • 上記に準じて特別な縁故があった方

例えば、入院中の身の回りの世話をしたり、自宅での介護を長期間行ったりした方、あるいは内縁関係にあった方や事実上の養子・養親などが該当します。特別縁故者が遺産分与を受けるためには、相続人不存在が確定してから3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てを行う必要があります。

ただし、注意点もあります。特別縁故者への財産分与は、まず故人様の債権者への支払いや、遺言で指定された遺贈の履行が済んだ後に、残った財産から行われます。つまり、故人様に多額の借金があった場合、特別縁故者に分与される財産はわずかになるか、まったくないこともあります。

葬儀業界で働く方々にとって知っておきたいのは、特別縁故者が故人様の葬儀を執り行うケースも少なくないということです。法定相続人がおらず、長年同居していた内縁のパートナーや、生前お世話になった方が葬儀を依頼するような場合は、その方が特別縁故者として遺産分与の申立てができる可能性があることをお伝えすると良いでしょう。

最終的に財産は国庫に帰属する

建物

相続人がおらず、特別縁故者への財産分与も終わった後、まだ故人様の財産が残っている場合はどうなるのでしょうか。最終的には、その財産は国庫に帰属します。つまり、国のものになるのです。

これは、相続財産清算人によって行われる一連の清算手続きの最終段階となります。まず債権者への支払いが行われ、次に遺言で指定された特定受遺者への財産の引き渡し、そして特別縁故者への受け渡しが行われます。それでもなお財産が残っている場合に、初めて国庫に帰属する手続きが進められるのです。

相続人不存在の状態から国庫帰属までは、かなりの時間と手続きを要します。特に特別縁故者への財産分与の申立てがあった場合は、その審理に時間がかかることもあります。最終的に国庫に帰属するまでには、通常1年以上の期間を要するでしょう。

単身者の相続にまつわるトラブルと対策例

深刻化する空き家問題の現状

空き家

この空き家急増の背景には、少子高齢化と単身世帯の増加があります。

特に高齢の単身者が施設に入所したり亡くなったりした後、その住宅が空き家となるケースが急増しています。

単身者の場合、故人様が亡くなられた後、住み慣れた家をどうするかの意思決定をする人がその場にいないため、空き家化しやすい傾向があるのです。また、故人様と離れて暮らしていたご遺族様にとって、「物置として必要」という理由で空き家を維持するケースが最多となっています。これは単に物置として使っている場合だけではなく、故人様の思い出の品を整理できないことも背景にあるようです。

固定資産税等の負担が続く一方で、解体費用が売却額を大きく上回り、維持管理の手間とコストだけがかかる状況から、このような不動産は「資産」ではなく「負債」となるため、「負動産」と呼ばれています。

具体例
88歳の単身男性の事例では、妻を亡くした後、子供もいないため市街地のマンションに引っ越し、元の家が空き家となりました。この男性は「この年ですから、お金がどうのこうのという気はありません。住んでいただける方がいるのなら、ただでもいい」と語り、0円での譲渡を希望しています。
参考:ABCテレビニュース(Youtube動画)

具体例
97歳の女性が一人で暮らしていた住宅では、3年前から施設に入所したため空き家となっています。別の場所に住む70代の息子は「思い入れのある家を取り壊すのは重い決断が必要です。解体費もありますし、なんか壊すっていうのは勇気がいるというか寂しいなって思うので」と話し、処分に迷っているのが現状です。
参考:MBS NEWS(Youtube動画)

具体例
男性が10年前に亡くなった父親から相続した家では、住み手がおらず空き家状態が続いていました。「放置してたら屋根に蔦が生えてきて、ひどいことになってるよっていう苦情をいただきまして、毎年その蔦の処理をやってるんです」と語り、管理の負担から0円での譲渡を検討しています。
参考:TBS NEWS DIG Powered by JNN

相続放棄の急増と知っておくべき注意点

相続放棄

空き家問題の深刻化とともに、近年「相続放棄」が過去最多となっています。

単身者の空き家が「負動産」となり、維持費や固定資産税だけが発生して売却も困難なため、相続を放棄したいと考えるご遺族様が急増しているのです。

相続放棄を検討する際の重要な注意点として、まず「期限」があります。相続放棄は「相続することを知ってから3ヶ月以内」に手続きを完了しなければなりません。期限を過ぎると原則として相続放棄はできなくなります。

また、一度相続放棄の手続きをした後は「撤回できない」という点にも注意が必要です。放棄した後に価値のある遺産が見つかっても相続することができません。そのため相続では、財産の全容をしっかり調査してから決断することが重要なのです。

なお、意外なことに相続放棄をしても「管理義務」が残るケースがあります。空き家が倒壊して隣家に被害を与えた場合の責任などが問われることがあるのです。特に「現に占有している」(たまに掃除に行くなど)場合は、その人に管理義務が生じます。

単身者の空き家対策|早めの意思確認と無償譲渡

家を渡す

単身者の空き家問題を考えると、単身者とそのご遺族様にとって、どのような対応策があるのでしょうか。専門家が口を揃えて強調するのは「生前の準備と早めの意思確認」の重要性です。

まず、単身者の方が生きているうちに、不動産や借金などの財産を整理しておくことが最も重要です。また、思い出の品の整理も少しずつ進めておくと、相続後のご遺族様の負担が大きく軽減されます。

そして新たな選択肢として注目されているのが、「みんなの0円物件」のような無償譲渡のマッチングサービスです。このサービスは、空き家を0円で譲りたい人と欲しい人をつなぐもので、これまでに1000件近くのマッチングに成功しているようです。「0円」とはいえ、登記費用や各種税金などの経費は発生しますが、解体費用と比べれば大幅に少ない出費で済む場合が多いでしょう。

単身者の葬儀はどうなる?

単身者が亡くなった場合、葬儀に関する問題も重要です。ここでは、誰が喪主を務めるのか、費用はどうなるのか、遺骨はどうなるのかといった疑問にお答えします。

葬儀を行う喪主は誰になるのか

案内するスーツの女性

独身の方が亡くなったとき、誰が喪主を務めるかについて法的な決まりはありません。生前に「喪主をお願いします」と約束していた方がいれば、その方が務めることになります。一般的には親や兄弟姉妹、親戚が喪主となりますが、場合によっては親しかった友人や知人が葬儀を執り行うこともあります。

身寄りがない場合は、入所していた介護施設の関係者や、「成年後見制度」を利用していた場合は、例外的なケースとして成年後見人が喪主を務めることもあります。通常、成年後見人の本来の業務は被後見人の生前の財産管理や契約行為の代理であり、故人様(被後見人)が亡くなると原則として後見業務は終了します。

しかし、身寄りがなく親族や関係者が葬儀を行えない場合、家庭裁判所に相談のうえ、成年後見人が喪主として最低限の葬儀(主に火葬のみの直葬)を執り行うことがあるのです。

故人様の遺骨の行方

骨壺

親族が喪主となり遺骨を引き取った場合は、一般的に家族の墓地や生前に故人様が準備していた墓地に納骨されます。しかし、遺骨の引き取り手がいない場合は、自治体が一定期間(約5年)管理します。その間に引き取り手が現れなければ、最終的に無縁仏として無縁塚に納骨されることになります。

無縁塚は複数の故人様をまとめて納骨する場所であるため、一度納められると個人を特定して遺骨を取り出すことはできなくなります。このような状況を避けるためにも、生前に葬儀や埋葬についての希望を周囲に伝えておくことが大切です。

関連記事
葬儀業界における高齢者単身世帯問題まとめ|直葬の需要増加要因を解説

まとめ

相続の順番は法律で明確に定められており、第1順位の子ども、第2順位の親・祖父母、第3順位の兄弟姉妹という流れで相続権が移っていきます。また、別居中であっても法律上の配偶者は相続権を持ち続けるという点も重要なポイントです。

相続人がまったくいない場合には、相続財産清算人による清算手続きが行われ、特別縁故者への財産分与の可能性を経て、最終的には国庫に帰属することになります。

葬儀業界のスタッフとして、増加する単身世帯の現状に合わせた相続知識を持つことが今後ますます重要になるでしょう。こういった知識を持ち合わせることで、多様化する家族形態や生活スタイルに対応した、より細やかな葬儀サービスの提供につながります。

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