韓国の高齢化率(65歳以上の人口割合)は現在約19%で、日本(約29%)を下回っています。しかしその進行スピードは世界最速水準であり、年間死亡者数は2040年に向けて2023年比で約47%増加すると予測されています。葬儀件数という「量」の観点だけで見れば、韓国は今後急速に拡大する市場です。
ただし、件数が増えれば市場が拡大するとは限りません。韓国では高齢者の相対的貧困率が約40%に達しており、年金の平均受給額は月額約2.7万円(25万ウォン)にとどまります。その一方で、平均的な葬儀費用は約165万円(1,500万ウォン)です。この数字の乖離が、韓国の葬儀市場に大きな構造的矛盾をもたらしています。
日本が20年かけて経験してきた「家族葬・直葬へのシフト(単価下落)」は、韓国では経済的な圧力がより強い分、より短期間かつ急激なかたちで現れる可能性があります。
この記事では、人口動態・経済・社会保障・業界構造という4つの切り口から韓国の葬儀市場を定量的に整理します。あわせて、日本の葬儀事業者が自社の戦略を考えるうえで参考になる視点を提供することを目的としています。
目次
- 韓国の死亡者数は、これからどう変化するのか
- 韓国の死亡者数|実績データと将来予測
- 日韓の死亡場所比較|韓国で「病院死」が主流になった背景
- 韓国の自殺問題|葬儀業への実務的な影響
- 韓国の社会保障の実態|年金月2.7万円で165万円の葬儀は賄えるか
- 日韓の年金制度比較|制度整備に約35年の開きがある
- 韓国の高齢者貧困率40%超|日本の約2倍が示す実態
- 韓国で社会問題化する「払えない葬儀費用」
- 「3日葬」と病院依存|業界再編が進んでいない韓国葬儀市場の現在地
- 韓国の標準葬儀形式|3日葬(サミルチャン)とは
- 韓国の葬儀費用|平均約165万円に物価高がさらに追い打ち
- 韓国葬儀業界を牽引する互助会と病院|上場企業が少ない市場構造
- 日韓の主要指標を一覧で比較する|人口・経済・葬儀実態
- 日本の経験を踏まえて考える|韓国市場に迫る3つの構造転換
- 韓国の転換(1)単価崩壊の「崖(クリフ)」シナリオ
- 韓国の転換(2)病院依存モデルの限界と専門葬儀社の参入
- 韓国の転換(3)ITプラットフォームの台頭と業界再編
- 韓国市場の分析から日本の葬儀事業者が得られる視点
- 韓国の現在は日本の何年前か|時間軸で読む市場変化
- 日韓共通の課題|互助会モデルの持続可能性
- 日本の葬儀業者が今問うべき軸|「単価」か「件数」か
- まとめ|「件数成長」と「単価下落リスク」を同時に抱える韓国葬儀市場
韓国の死亡者数は、これからどう変化するのか

韓国の死亡者数|実績データと将来予測
韓国の年間死亡者数は、新型コロナウイルスの影響が大きかった2022年に約37万2,800人と過去最多を記録しました。翌2023年は約35万2,511人とやや減少しましたが、2024年には前年比約1.7%増の約35万8,569人と再び増加に転じています。
