信仰心の希薄化が取り沙汰される現在の日本ですが、国内で営まれる葬儀の8割前後が仏式で執り行われているようです。
しかし菩提寺を持たない家庭も増えていることから、葬儀を依頼できる僧侶がいないという方も多く、自分の家の宗派を把握していないケースも少なくありません。
一般の方が、仏教を含む宗教に対して親しみを覚えない要因の1つとして、自身の家が代々信仰してきた宗教に関する知識の不足もあるのではないでしょうか。
近年では核家族化などの影響から、親世代と子供・孫世代が離れて暮らしているケースも多く、信仰に関する経験や知識が継承されにくくなっているようです。
葬儀業界では葬儀施行単価の下落が深刻な状況となっていますが、宗教儀式に対する関心の低下も葬儀の簡素化が進む原因の1つと考えられます。
葬儀のもつ意義を一般の方に理解してもらうためにも、仏教離れの流れに歯止めをかける必要があるでしょう。
日本には古くから受け継がれてきた在来仏教が13宗56派あり、各宗派を信仰する方が仏教徒の多くを占めているようです。
本記事では、在来仏教宗派のうち臨済宗 佛通寺派について、わかりやすく紹介します。
葬儀社様の業務に活かせる部分もあるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
臨済宗 佛通寺派の概要
「臨済宗 佛通寺派（りんざいしゅう ぶっつうじは）」は、一般には禅宗と称されている臨済宗15派のうちの一派です。
広島県三原市の「佛通寺（ぶっつうじ）」を大本山として、広島県と岡山県の一部に寺院が集中しています。
臨済宗 佛通寺派の起源は、大本山である佛通寺の建立に始まったといわれています。
臨済宗の系譜の中では、栄西が汲んでいた「黄龍派（おうりゅうは）」ではなく、もう一派である「楊岐派（ようぎは）」の流れを汲む宗派です。
大本山の佛通寺は、1397年、室町時代の武将で沼田（ぬた）小早川氏の当主であった「小早川春平（こばやかわ はるひら）」によって建立されたと伝えられます。
開山には、当時名を知られていた臨済宗の僧「愚中周及（ぐしゅう しゅうきゅう）」を招いています。
大本山の佛通寺が小早川家一族からの帰依を受けたことによって、寺勢は非常に栄えることになったといわれています。
最盛期には西日本に約3000寺の末寺を数えたと伝えられますが、その後は時代が進むとともにその面影を失っていくことになったようです。
明治の時代には、宗教政策によって「臨済宗 天龍寺派」に属していましたが、1905年（明治38年）に天龍寺派からの独立を果たし、「臨済宗 佛通寺派」として立つことになって現在に至ります。
臨済宗 佛通寺派のご本尊様
ご本尊とは、信仰の対象として寺院や仏壇などで祀られる、仏・菩薩像のことをいいます。
寺院創立の由来や、信仰によってご本尊が異なるうえ、各宗派や寺院によってそれぞれ一定のご本尊があるといわれています。
大本山 佛通寺仏殿本尊「釈迦三尊」
佛通寺仏殿には本尊として釈迦三尊像が祀られています。中尊には「釈迦如来（しゃかにょらい）」が座し、左右両脇には「文殊菩薩（もんじゅぼさつ）」と「普賢菩薩（ふげんぼさつ）」を祀っています。
「釈迦如来」は、別名「釈迦牟尼仏（しゃかむにぶつ）」とも呼ばれている仏様で、一般には「お釈迦様」と親しまれ、仏教の開祖としても広く知られている存在です。
「文殊菩薩」は、智慧をつかさどる菩薩として広く信仰されている存在です。獅子に騎乗した姿で描かれることが多く、また右手に剣を、左手に経典を持つ造形が一般的に多いとされています。
この本尊では釈迦如来の左脇に侍しています。
「普賢菩薩」は、理性をつかさどる菩薩として信仰されている存在です。
描かれる姿として一般的とされるのは、白象の上に結跏趺坐をして合掌する姿といわれています。
この本尊では釈迦如来の右脇に侍しています。
大本山 佛通寺大方丈本尊「十一面観世音菩薩」
佛通寺大方丈のご本尊には「十一面観世音菩薩（じゅういちめんかんぜおんぼさつ）」が祀られています。
十一面観世音菩薩は、「六観音（ろっかんのん）」のうちの1体であり、頭部に十一の小面を持つ菩薩として描かれています。
この十一面観世音菩薩は、「六道（ろくどう）」のうち「阿修羅道（しゅらどう）」から衆生を救済する存在といわれています。
六観音とは、六道から衆生を救う6体の観世音菩薩のことをいいます。
六道とは、仏教においてすべての衆生が生前のおこない、生きざまによって輪廻転生する世界といわれる、6つの迷いの世界のことをいいます。
6つの世界と観世音菩薩の関係性は下記のとおりです。
- 天道（てんどう）＝如意輪観世音菩薩（にょいりんかんぜおんぼさつ）
- 人間道（にんげんどう）＝准胝観世音菩薩（じゅんでいかんぜおんぼさつ）
- 修羅道（しゅらどう）＝十一面観世音菩薩（じゅういちめんかんぜおんぼさつ）
- 畜生道（ちくしょうどう）＝馬頭観世音菩薩（ばとうかんぜおんぼさつ）
- 餓鬼道（がきどう）＝千手観世音菩薩（せんじゅかんぜおんぼさつ）
- 地獄道（じごくどう）＝聖観世音菩薩（しょうかんぜおんぼさつ）
葬儀祭壇の様式によっては、「六灯（ろくちょう）」と呼ばれる、この六道にちなんだ灯籠が飾られることがあります。
臨済宗 佛通寺派の開祖
愚中周及（ぐちゅう しゅうきゅう）
愚中周及は室町時代に活躍した臨済宗の僧侶です。美濃国（みののくに＝現在の岐阜県）に生を受けて、13歳で「夢窓疎石（むそう そせき＝天龍寺派・相国寺派開祖）」に師事したとされます。
また、その後に夢窓疎石の弟子である「春屋妙葩（しゅんおく みょうは＝相国寺派2世）」に師事していたようです。
19歳の時に中国へ渡り、「月江正印（げっこう しょういん）」や「即休契了（そくきゅう かいりょう）」など中国の高僧のもとへ参禅したと伝えられます。
中国での修行はおよそ10年に及び、即休契了の法を受け継いでいます。
帰国後は、天龍寺や南禅寺に住していたこともあったようですが、京を離れて各地を行脚したといわれています。
その中で、天寧寺（てんねいじ＝妙心寺派寺院）の開山として招かれるなどしており、自らの法嗣を伝えていたようです。
また、1397年には安芸国沼田荘（ああきのくにぬたのしょう＝現在の広島県三原市）の当主であった小早川春平に請われて、佛通寺の開山になっています。
佛通寺開山ののちに、後小松天皇（ごこまつてんのう＝第100代天皇）から紫依の着用を許されるなど、僧侶としてその高名が知られていたといわれます。
入寂後は、弟子たちが愚中周及の法を広めて愚中派と称されるようになり、日本臨済宗の一派として見られるようになりました。
これが現在の「臨済宗 佛通寺派」につながっていきます。
臨済宗 佛通寺派で主に使用される経典
臨済宗 佛通寺派では、宗派として特定の経典を定めていないようです。
臨済宗の修行では、悟りが師匠から弟子へ伝達されるといわれています。
具体的には、「公案」と呼ばれる師匠が提示する問題を、弟子が解くことで悟りに至るといわれ、綿々と引き継がれているようです。他宗でみられる、諸仏の導きを得るために経典を読み、お題目を唱えるという教えとは異なります。
とはいえ、経典を読むこと自体は、古来より慣習や拠りどころとしておこなわれてきているようです。臨済宗の儀式において読まれる経典は、「般若心経」や「観音経」などがあげられます。
臨済宗 佛通寺派の代表的な寺院
臨済宗 相国寺派の寺院は、大本山である佛通寺のほか、広島県を中心に51寺が存在するようです。
参照：宗教年鑑（令和2年版）
大本山 佛通寺
「佛通寺」は、広島県三原市高坂町の山中に座す、臨済宗 佛通寺派の大本山寺院です。西日本では唯一の参禅道場を持つ大本山であるといわれています。
寺院の創建は、室町時代の武将である小早川春平によると伝えられています。
開山には夢窓疎石の弟子である愚中周及が迎えられています。しかし、佛通寺開山は愚中周及が中国に渡った際に学んでいた師の即休契了を勧請開山（かんじょうかいさん）としています。
勧請開山とは、寺院を開山した僧侶が自らではなく師を開山として、本来はその寺院の開山ではない僧を開山と敬うことをいいます。
また、寺号の「佛通寺」は、愚中周及が中国で師事した即休契了の号である「仏通大師」からとったといわれています。
佛通寺は、小早川家一族からの帰依を受けたことが非常に大きく、その寺勢が隆昌することになりました。このことにより、末寺が最盛期には3000寺ほどを数えるに至ったといわれます。
しかしながら、応仁の乱のあとには寺勢が衰え、一時は盛り返すこともあったといわれますが、最盛期の面影を失っていくことになったようです。
そうして明治の時代に入ると、宗教政策の影響で「臨済宗 天龍寺派」に属することになりました。
佛通寺が「臨済宗 佛通寺派」の大本山として立つことになったのは、明治38年に「天龍寺派」からの独立を果たして「佛通寺派」を称したことによります。
臨済宗 佛通寺派の特徴
臨済宗 佛通寺派のお題目
臨済宗で唱えられているお題目は「南無釈迦牟尼仏（なむしゃかむにぶつ）」という言葉です。
この「南無釈迦牟尼仏」とは、「釈迦如来に帰依します」という意味になります。砕けた表現をすると、「お釈迦様を信じます」または「お釈迦様についていきます」ということになるでしょう。
臨済宗 佛通寺派における年間行事
臨済宗 佛通寺派の主な行事は以下のものがあります。
- 修正会（1月1日）や彼岸会（3月・9月）、お盆法要（8月）や除夜会（12月31日）などの仏教として一般的な行事の他、特に重要な行事は下記のとおりです。
- 春季開山忌（佛通禅師忌）
- 4月15・16日に行われる開山愚中周及の師、佛通禅師（即休契了）の忌日の法要
- 秋季開山忌（大通禅師忌）
- 9月24・25日に行われる開山愚中周及の忌日の法要
臨済宗 佛通寺派の葬儀について
臨済宗は15派から成りますが、臨済宗の葬儀は故人が悟りにいたって仏弟子となるべく導くことが目的といわれています。
臨済宗各派において、公に定められた葬送儀則はないとされており、慣例によって儀則がつくられているようです。
基本的には、江戸時代に著されたとされる「小叢林略清規（しょうそうりんりゃくしんぎ）」に基づいて執り行われることが多いようです。
この「小叢林略清規」は臨済宗妙心寺派の学僧であった「無著道忠（むじゃく どうちゅう）」の手によるものと伝えられます。
内容は、集団規則でありすべての修行僧の生活規範や、宗派の儀礼や作法などにわたって記されている著作といわれています。
臨済宗の悟り（座禅）
「座禅」が重要視されている臨済宗では、自力で悟りを開いていくことを目指しています。その修行では「看話禅（かんなぜん）」と呼ばれる座禅をおこない、師との対話によって進められる独自の教えとなっています。
臨済宗の葬儀では、故人が仏弟子となって修行をおこなうことで、自らの仏性に目覚めるための儀式という意味を持つといわれています。
臨済宗の持つ葬儀の意味や意義とは別に、故人との永久の別れは、残された人たちにとっておとずれた悲しみが大きく、その心に空いた穴は簡単に埋まるものではありません。
そのため、残された人たちが悲しみを受け入れ、その悲しみを乗り越えるために必要な儀式として「葬儀」の存在は大きな意味を持つことでしょう。
臨済宗 佛通寺派の葬儀を執り行うにあたって
葬儀を執り行うに際して、まずは菩提寺に連絡をして、葬儀の日取りを決めなければなりません。また現代では、同時に葬儀社へ連絡をして葬儀施行を依頼することも必要とされています。
菩提寺に連絡をすると、僧侶が「枕経（まくらきょう）」をあげるために故人様のもとを訪れます。
枕経
枕経とは、故人様の枕元であげるお経のことをいいます。枕経を執り行う際には、故人様の枕元に「枕飾り（まくらかざり）」と呼ばれる小さな祭壇を設け、僧侶に読経していただきます。
現代では、枕経が終わったら、僧侶から葬儀の日取りの打ち合わせと、故人様の戒名もしくは法名を授けるためにお人柄の聞き取りがおこなわれます。
枕経には、葬儀を依頼する葬儀社も立ち会うことが多いので、事前に葬儀社にも枕経の日時を連絡するとよいでしょう。
また、地域の風習や菩提寺の都合などで、枕経と通夜をあわせておこなうこともあるようです。
通夜
通夜は、一般的に葬儀（告別式）の前日夜に執り行われる儀式です。通夜の儀では、僧侶の読経や法話をいただくことになります。
通夜の席では遺族をはじめ親族、故人の縁者などが集まり、故人に付き添いながら夜通し偲びます。
以前は、会葬者には飲食がふるまわれて、遺族は蠟燭や線香の火を絶やさないようにして故人を見守っていました。
現代では、家族葬という形式で執り行われる葬儀が増加しており、その場合は遺族・近親者のみで通夜が執り行われることも増えてきているようです。
臨済宗の葬儀の概略
葬儀（告別式）は通夜の翌日に執り行われる儀式です。この葬儀（告別式）は、仏教、特に禅宗の観点においては故人を仏弟子にして送り出すための儀式です。
そのことを踏まえても一般的な観点では、浄土へ向かう故人と現世に残された人との別れの儀式であるといえます。
現代の葬儀では、故人と仏様との縁を形作る仏教の観点よりも、故人とその家族や知人との別れの場を設けるという意味が強くなりつつあるようです。
臨済宗の葬儀では、おおまかに下記に示した3つの儀式が執り行われており、禅宗葬儀式の特徴としてあげられることが多いです。
授戒（じゅかい）
「授戒（じゅかい）」とは、僧侶が故人に対して、故人が仏弟子となるための「戒（戒律）」を授ける儀式のことをいいます。
このとき、仏弟子となった故人に授けられる名前が「戒名（かいみょう）」です
葬儀ではこの儀式において、故人に戒名を授けられます。戒名は、現代では亡くなってから葬儀の場で授けられることがほとんどですが、本来は生前に授けられるものでありました。
引導（いんどう）
「引導（いんどう）」とは道案内するという意味を持ち、僧侶が教えを説くことで、故人が悟りを開けるように導く儀式のことをいいます。
「引導を渡す」の語源になっているこの「引導」ですが、物事を終わらせるという意味ではなく、悟りの道へ導くという意味が本来であります。
臨済宗の葬儀では独特の儀式があり、僧侶が柩の前で「喝（かつ）」と大声を放ちます。「喝」は、臨済宗において特に使用されているといわれています。
元は叱咤する声ですが、言語で説くことができない禅の教えを端的に示しているとされ、故人を涅槃へ導くとつたえられます。
念誦（ねんじゅ）
「念誦」とは念仏誦経（ねんぶつじゅきょう）ともいい、僧侶が名号や経典を唱えることです。
この儀式によって、故人が無事あの世へ旅立つことができるように導くといわれています。
臨済宗の葬儀式
ここでは、臨済宗葬儀の式次第の一例を紹介します。地域の風習や菩提寺のやり方などで、すべて例のとおりに進行するわけではありません。
くわしいことは菩提寺の僧侶や、葬儀を依頼した葬儀社に式次第などを確認していただくことをおすすめします。
葬儀では、故人様が仏弟子へと至って悟りの世界へ往生できるように、下記の儀式が執り行われます。
- 剃髪偈（ていはつげ）
- カミソリで故人の髪を剃ります。現代の葬儀では、実際に髪を剃ることはせず、剃る仕草をします。剃髪は、仏弟子となる証しであり、煩悩を断ち切ることを意味しているといわれています。
- この儀式によって、故人が涅槃への一歩を踏み出すことになります。
- 懺悔文（さんげもん）
- 故人がこの世で犯した罪を懺悔するための文章が唱えられます。文章は、三毒（さんどく）と呼ばれる煩悩を取り除き、清らかな心でこれからの行いを正していくという内容です。
- 三毒とは、仏教において「貪（とん＝さまざまな欲）」「瞋（じん＝怒りや憎しみ）」「痴（ち＝愚かさ）」を表す言葉です。
- 三帰戒（さんきかい）
- 故人が仏弟子として、正しいあり方を誓うための文章が唱えられます。ここで、三宝（さんぽう）それぞれに帰依することを誓います。
- 三宝とは、仏教において「仏」「法」「僧」の三つの宝のことを表す言葉です。
- 血脈授与（けちみゃくじゅよ）
- 僧侶から故人へ血脈が授けられます。血脈（けちみゃく）とは、仏教において教えや戒律が師から弟子へ脈々と伝えられてきたことを、人の血液の流れにたとえた言葉です。
- 生前に戒名を授けられていない人は、この場で戒名を授けられます。
- 現代では、生前に戒名を授かる人がほとんどいないため、仏教の葬儀において重要な儀式になっているといえるでしょう。
- 龕前念誦（がんぜんねんじゅ）
- 僧侶が棺の前に立ち、故人が悟りの世界へ往生できることを願う言葉を唱えます。故人の冥福を祈り、「十仏名（じゅうぶつみょう）」を唱えます。
- 龕（がん）とは棺のことです。
- 十仏名とは、諸仏・諸菩薩の名号のことです。
- 鎖龕・起龕回向（さがん・きがんえこう）
- 棺のふたを閉じるための回向文と、棺を起こして送り出すための回向文が唱えられます。
- 回向文に加えて、大悲呪（だいひしゅ）と呼ばれるお経が唱えられます。
- 大悲呪は禅宗でよく読まれているお経で、千手観音の功徳をといているお経といわれています。
- 打ち鳴らし（うちならし）
- 往生呪（おうじょうしゅ）と呼ばれるお経を唱えながら、鳴らしものを打ち鳴らします。
- 往生呪は、唱えることで心が喜びにあふれて一切の罪や煩悩を消すことができると言われているお経です。
- 鳴しものには「引磬（いんきん＝持ち手の付いたリンのこと）」「太鼓」「鐃鉢（にょうはち＝シンバルに似た鳴らしもの）」があります。
- 本来は、野辺の送り（のべのおくり）の道中に鳴らしていたものでした。
- 野辺の送りとは、故人を火葬場や埋葬場所まで葬列を作り見送る風習のことをいいます。現代の葬儀では霊柩車輛で移動することがほとんどです。
- 引導法語（いんどうほうご）
- 故人の生涯などを、僧侶が漢詩で文章にしたものが、この儀式において読み上げられます。
- この儀式では、僧侶が造り物の松明を祭壇もしくは棺に向かって投げます。
- 法語の最後には大きな声で「喝（かつ）」と一喝をあたえます。
- 一般には、この引導法語までが葬儀式となります。この後の儀式は告別式とされています。
- 告別式（こくべつしき）
- 葬儀は本来、親族や近親者が故人を浄土へ送るための儀式でありました。
- 告別式は、故人とゆかりのある人たちが故人との別れをするための儀式であり、葬儀とは区別していました。
- 現代の葬儀では、葬儀と告別式に明確な区別をしていないことが多く、両方を合わせて「葬儀」と呼んでいたり、「葬儀・告別式」と呼んだりしています。
- 荼毘諷経（だびふぎん）
- 観音経（かんのんぎょう）などのお経が唱えられます。
- 観音経は様々なお経の中でも最も尊いお経と言われており、このお経を唱えれば苦難から救われて、多くの幸せが授けられると説かれています。
- 読経の前に弔辞や弔電の読み上げをおこなう場合があります。式次第によっては僧侶が退席してから読み上げをおこなうこともあります。
- 焼香（しょうこう）
- 僧侶が焼香をしたあとで、喪主からはじまり遺族・親族、その後は一般会葬者の順に焼香をしていただきます。
- 荼毘回向（だびえこう）
- 焼香が終わったあとで、故人を荼毘（火葬）に付するための回向文が唱えられます。
- ここでの回向文は、故人との縁者が荼毘に付されていく故人との最後の別れを、心の中で告げるという意味を持っているとされています。
- 出棺（しゅっかん）
- 霊柩車に乗せられた棺が葬儀場から出棺して、火葬場へ向かいます。
おわりに
この記事では、臨済宗 佛通寺派について紹介しました。この佛通寺派は、現在では寺院が一部地域に集中していることもあり、臨済宗の一派として寺勢は大きくありません。
また、他派の多くの寺院と同様に、日本史上では度々の戦乱、近代においては明治の宗教政策によって一時は衰退してしまう不幸もありました。
しかし、最終的には「臨済宗 佛通寺派」として独立を果たすことができており、現在にその法脈をつなぎ続けています。
大本山の佛通寺は西日本において代表的な禅道場として知られているほか、紅葉の名所として一般に名が知られている寺院でもあります。
仏教の面でも観光の面でも見どころがある寺院といえますので、興味を持たれた方は訪れてみてはいかがでしょうか。
