メモワールグループの業績・概要まとめ│冠婚葬祭互助会大手の動向を解説

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新型コロナが発生した2020年以降、葬儀業界は大きな打撃を被っていますが、その中でも冠婚葬祭互助会事業者は大きな影響を受けたといわれています。
しかし、そういった状況下にあっても、互助会大手のメモワールグループは堅調に成長を続けているようです。

そこで今回は、メモワールグループの全体像や歴史、決算公告から見た利益や業績についてまとめます。
貸借対照表をもとに資産や負債、純資産などから財政状況を分析することで、その会社の経営状態の把握が可能です。

葬儀社様にとって参考になる部分もあるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

メモワールグループの概要

メモワールグループ 概要
出典:メモワールグループ

メモワールグループは、創業地である神奈川県をはじめ、東京都、静岡県、山梨県を中心に互助会事業を含め冠婚葬祭事業を運営しています。
「相互扶助」の精神のもと、お宮参りや七五三、成人式、金婚式や長寿祝いに至るまで記念のセレモニーを提案。
人生の節目に、衣装レンタルや写真撮影など多彩なサービスで消費者の要望に応えています。

また、CSR(企業の社会的責任)活動として地元プロスポーツ支援活動や芸能・文化支援活動「遺品供養祭・人形供養祭」環境保全活動などをおこなっています。

そのほか以下の事業も展開しています。

  • シルバー(介護)事業 生・損保険代理業
  • リフォーム事業
  • 健康食品販売業
  • 物流事業
  • 旅客運送事業
  • 仏壇・仏具販売業

出典:メモワールグループ 会社概要

【名称】メモワールグループ 株式会社メモワール
【設立】1973年(昭和48年)4月2日
【代表取締役】渡邊 正典
【所在地】〒232-0025 神奈川県横浜市南区高砂町2-24
【資本金】4億2,800万円
【公式HP】https://www.memoire-group.jp/

メモワールグループの構成

メモワールグループは、おもに次の11社で構成されています。

出典:メモワールグループ 会社概要

メモワールグループの沿革

1970年(昭和45年)12月
横浜市南区にて創業
1973年(昭和48年)4月
資本金2,000万円にて横浜市冠婚葬祭互助会
(現 株式会社メモワール 昭和60年改称)会社設立
1974昭和49年)2月
南区二葉町3-28に本社ビル建設、「横浜葬祭センター」と共に営業開始
1982年(昭和57年)6月
資本金5,000万円にて株式会社横浜ウェディング玉姫殿(現 Socia21(ソシア21)) 会社設立 結婚式場ウェディング玉姫殿を開設し営業開始
1987年(昭和62年) 5月
葬祭の全国ネットワーク展開の為全国優良葬儀社110社と共に
Japan Ceremony Service Network JACSEN 【ジャクセングループ】を結成
資本金1,000万円にて株式会社横浜ハウネス会社設立
1987年(昭和62年)6月
資本金2,000万円にて株式会社セレモジャパン会社設立
1987年(昭和62年)10月
株式会社セレモジャパンが株式会社 互助センター友の会より川崎事業部の営業譲渡を受託
1988(昭和63年)12月
資本金6,000万円にてシニア21株式会社(現 横浜典礼 株式会社 平成7年改称)会社設立
1989年(平成1年)2月
「川崎葬祭センター」をセレモジャパン傘下に移管し関係を強化
1993年(平成5年)10月
資本金1,000万円にてYMSコーポレーション株式会社会社設立
1995年(平成7年)7月
資本金1,000万円にて横浜FAN倶楽部21株式会社(現JMM少額短期保険 株式会社)会社設立
1999年(平成11年)9月
資本金3,000万円にて株式会社アルス会社設立
2001年(平成13年)5月
資本金1,000万円にて株式会社ヨコハマリメイク会社設立
2006年(平成18年)4月
株式会社 駿河冠婚葬祭互助会の営業譲渡を受託
2010年(平成22年)9月
「株式会社 駿河冠婚葬祭互助会」を「株式会社 東日本セレモニー」に社名変

出典:メモワールグループ 沿革

メモワールグループの葬祭式場

メモワールグループの葬祭式場は、神奈川県に18か所、山梨県に4か所、静岡県に8か所あります。
年間約7,000件の葬儀をおこなっています。

メモワールグループ 葬祭式場数

葬儀社の決算公告とは

決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。

ただし、大会社については貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。
次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は負債額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせています。

なぜ葬儀社は決算公告を行うのか?

大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。
冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。

互助会のしくみ
出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより

会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局に供託する
  • 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ

上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

メモワールグループの決算公告からみる利益や業績

ここからは、メモワールグループの貸借対照表について詳しく分析します。
各項目を確認することで、メモワールグループのおおまかな財政状況が把握可能です。

メモワールグループの貸借対照表

メモワールグループ 貸借対照表
*貸借対照表はメモワール、セレモジャパン、アルス各株式会社の3社合計

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10%を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。

自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

貸借対照表 図解①

自己資本比率は、中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適とされる自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。

逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともある

メモワールグループの自己資本比率は22.07%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。

89億3千4百万円÷404億8千2百万円×100=22.07%
メモワールグループの2022年における自己資本比率は、22.07%(前年同期比1.03%増)となっています。

メモワールグループの資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

貸借対照表 図解②

この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。

流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
  ・無形固定資産:ソフトウェアなど

繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなる
例) 創立費、開業費、開発費など

メモワールグループの資産合計の推移は以下のようになっています。

メモワールグループ 資産合計

メモワールグループの2022年における資産合計は、404億8千2百万円(前年同期比は1.92%増)となっています。
2021年には新型コロナの影響のためかわずかに減少しましたが、2022年には再び増加に転じています。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。

流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

メモワールグループの負債合計の推移は以下のようになっています。

メモワールグループ 負債合計

メモワールグループの2022年における負債合計は、315億4千8百万円(前年同期0.59%増)となっています。

2018年以降、小幅な増減を繰り返していましたが2022年には若干の増加となりました。
また2018年には38.58%だった流動比率(流動資産÷流動負債×100)も、2022年の時点では354.9%(安全ラインは100%以上)となっており、短期的な支払いに不安は感じられません。

メモワールグループの純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。

純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。
純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。

貸借対照表 図解③

この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。

メモワールグループの純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

メモワールグループ 純資産合計

メモワールグループの純資産合計は5期連続の増加となっており、2022年では89億3千4百万円(前年同期比6.90%増)となっています。

負債合計と純資産合計から割り出される負債比率(負債合計÷純資産合計×100)353.1%です。
メモワールグループの負債比率は年を追うごとに改善されているため、適正とされる300%以下になる日も近そうです。

当期純利益の推移

会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。
当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。

メモワールグループの当期純利益の推移は以下の通りです。

メモワールグループ 当期純利益

メモワールグループにおける2022年の当期純利益5億7千5百万円(前年同期比84.3%増)となっています。

メモワールグループの当期純利益は、新型コロナウイルスの影響を受けたためか2020年から大幅に減少していましたが、2022年には大きく増加に転じています。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。

利益剰余金は、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。

メモワールグループの利益剰余金の推移は以下の通りです。

メモワールグループ 利益剰余金

メモワールグループの2022年における利益剰余金は、87億8千4百万円(前年同期比7.03%増)となっています。

メモワールグループの利益剰余金は、過去5年間において順調に増加を続けており、財務上健全な状況といえそうです。

メモワールグループのまとめ

本記事ではメモワールグループの決算公告を参考に、現状分析をおこないました。
貸借対照表を分析した限りでは、メモワールグループの経営状況に特に不安な点は見当たりませんでした。

2020年から2022年にかけて、日本経済は新型コロナの影響で大きく落ち込み、メモワールグループも影響を受けましたが、その後は順調に回復しているようです。

メモワールグループでは、毎年のように新しい葬祭式場をオープンさせています。
また、CSR(企業の社会的責任)活動や介護事業、仏壇仏具販売業など多くの業務を展開させており、今後も事業拡大が予想されます。

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