株式会社 くらしの友~総合斎場~┃冠婚葬祭互助会の業績・利益をまとめて分析

くらしの友利益業績徹底分析

葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社 くらしの友の現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社 くらしの友の概要

「株式会社 くらしの友」は、1967年4月に「東京新生活互助会」として東京都大田区西蒲田の地に設立され、1977年に現社名に変更されました。
イメージキャラクターに女優の市毛良枝さんを起用し、TVCMも放映しています。

また初代 代表取締役社長 伴和夫氏は、1973年に設立された「一般社団法人 全日本冠婚葬祭互助協会」の理事となっています。

「株式会社 くらしの友」の中核事業は、冠婚葬祭互助会事業および婚礼・葬祭サービス事業ですが、その他にも仏壇・仏具販売事業や霊園・墓地紹介事業、ホテル運営などのリゾート事業など幅広く事業を展開しています。

さらに文化事業として「特定非営利活動法人 日本童謡の会」の発起人となり、美しい日本文化の継承にも力を注いでいるようです。

「株式会社 くらしの友」のグループ企業は以下の通りです。

また葬祭事業における「株式会社 くらしの友」の直営施設は以下の30ヵ所です。

  • 東京都
    • 蒲田総合斎場
    • 雪ヶ谷総合式場
    • 羽田総合斎場
    • 桜新町式場
    • アダージョ世田谷代田
    • 堀切総合斎場
    • 八王子総合斎場
    • 南大沢総合式場
    • 八王子北野セレモニーホーム
    • 立川総合斎場
    • 国領総合斎場
    • 調布総合斎場
    • 町田総合斎場
    • 鶴川総合斎場
  • 神奈川県
    • 新横浜総合斎場
    • 鶴見総合斎場
    • 反町式場
    • みなと総合斎場
    • 蒔田総合斎場
    • 西谷総合斎場
    • 東戸塚総合斎場
    • 港南台総合斎場
    • いずみ総合斎場
    • 津田山総合斎場
    • 鷺沼総合斎場
    • 淵野辺総合斎場
    • 相武台総合斎場
    • 藤沢橋総合斎場
  • 埼玉県
    • 新狭山総合式場
  • 栃木県
    • くらしの友総合斎場

さらに団体向けに葬儀支援サービスを提供しているグループ企業「株式会社 全国儀式サービス」では、全国500社以上の葬儀社(斎場2700ヵ所以上)と提携しています。

葬儀社の決算公告とは

決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。

ただし、大会社については貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。
次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は負債額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより
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会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局に供託する
  • 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ

上記のいずれかの方法を選択する必要があります。

また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

くらしの友の貸借対照表 

くらしの友_貸借対照表

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10%を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。

自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適とされる自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。

逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。

くらしの友の自己資本比率は9.47%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
52億6千6百万円÷556億1千1百万円×100=9.47

くらしの友の2023年3月期における自己資本比率は、9.47%(前年同期比0.48%増)となっています。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。

くらしの友の場合は以下のように推移しております。

くらしの友_利益剰余金

くらしの友の2023年3月期における利益剰余金は、52億5千3百万円(前年同期比4.06%増)となっています。
くらしの友の利益剰余金は、2018年3月期から19億1千5百万円増加しており、安定した経営状況がうかがわれます。

株式会社 くらしの友の損益計算書

損益計算書とは、企業が1年間の経営状況を把握するために作成される資料で、P/L(profit and loss statement)とも呼ばれます。
企業に入ってくるお金(収益)と、出ていくお金(経費)をまとめたもので、最終的な利益が確認できる資料です。

損益計算書

くらしの友_損益計算書

くらしの友の損益計算書を確認すると、過去5年間にわたって特別損失が発生しているのに気づかれることでしょう。
特別損失に当たるものとしては、保有している株式の売却損や固定資産売却損、突発的な災害による損失などがありますが、残念ながら内容までは確認できません。

売上金額の推移

くらしの友_売上高

くらしの友における2023年6月期の売上高は、122億9千6百万円(前年同期比11.85%増)となっています。
2020年3月期までにくらべて、2021年3月期・2022年3月期のくらしの友における売上高は大幅に減少していますが、この期間は新型コロナによる日本経済への影響が最も大きかった時期と重なります。

このことから、新型コロナが葬儀業界に与えた影響の大きさが、お分かりいただけるかと思います。

営業利益の推移

営業利益とは、主な営業活動で得られた「売上総利益」から「販売費および一般管理費」を差し引いたもので、1年間の本業における利益を表す数字です。
葬儀業界でいえば、葬儀施行や葬儀付帯業務などによる利益が、営業利益にあたります。

くらしの友_営業利益

くらしの友の2023年3月期における営業利益は、8億7千0百万円(前年同期比1029.87%増)となっており、コロナ以前の2019年度の営業利益を上回っています。

経常利益の推移

経常利益は、企業が1年間で得たすべての利益を表す数字で、「営業利益」+「営業外収益」-「営業外費用」で算出されます。
ここでいう「営業外収益」とは、主な業務以外の収益(金融商品・株・為替などの取引で発生した利益)を指します。

くらしの友_経常利益

くらしの友の2023年3月期における経常利益は、13億1千3百万円(前年同期比60.51%増)となっており、こちらも営業利益同様にコロナ以前の数字を上回っています。

株式会社 くらしの友のまとめ

今回は株式会社 くらしの友の決算公告を参考に、現状分析を行いました。

2021年から2022年にかけては、新型コロナの影響で利益の落ち込みが目立ちましたが、2023年では大きく回復しています。
新型コロナの影響は葬儀業界にも及び、収益状態が大幅に悪化した葬儀社も多い中、くらしの友では一度も赤字に陥ることなく、黒字を維持しており、大手冠婚葬祭互助会の底力を感じました。

2023年5月には新型コロナも5類相当に移行し、葬儀業界の売上高も回復基調にあるようです。今後のくらしの友の決算公告にも引き続き注目していきたいと思います。

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