死別によって近親者を失ったご遺族様の悲しみや痛みに寄り添い、回復までサポートすることを、グリーフケアと呼びます。
グリーフケアは、自殺や依存症防止に繋がる取り組みでもあり、高齢化や核家族化が進む近年においては、ますます注目される支援のひとつです。
日本国内においても、グリーフケアに関連する協会や団体はいくつか存在しており、それぞれ人材養成や学術研究などを行っています。
- 一般社団法人日本グリーフケア協会
- 一般社団法人京都グリーフケア協会
- 一般社団法人日本グリーフケアギフト協会
- 一般社団法人 日本グリーフ専門士協会
- 認定NPO法人 グリーフケア・サポートプラザ
- NPO法人全国自死遺族総合支援センター
- 自死・自殺に向き合う僧侶の会
本記事では、自死遺族のための相談ダイヤルや、遺族の集いを通して支援活動を行っているNPO法人 全国自死遺族総合支援センターについて解説します。
NPO法人 全国自死遺族総合支援センターの概要
NPO法人全国自死遺族総合支援センターは、自殺で大切な人を亡くした人々を支援するために設立された特定非営利活動法人です。
電話相談やメール相談を通じて、遺族が安心して心情を吐露できる場を提供し、悲しみと向き合う手助けを行っています。
また、様々な専門職やボランティアと連携しながら、包括的な支援体制の構築にも努めているようです。
【団体名称】NPO法人全国自死遺族総合支援センター
【設立】2008年1月14日
【所在地】千代田区富士見2-3-1信幸ビル302
【代表者】理事長 杉本 脩子
【公式HP】https://izoku-center.or.jp/
グリーフケアとは?
グリーフケアとは、愛する人やペットを亡くしたときの悲しみや苦しみを和らげ、心のケアをサポートする行為です。人が大切なものを失ったとき、心に深い悲しみ(グリーフ)が生まれます。
グリーフケアは、その悲しみを感じる人が少しでも心を軽くし、日常生活に戻れるようにサポートするための方法です。
全国自死遺族総合支援センターの沿革・歴史
2008年1月 | 全国自死遺族総合支援センターが任意団体として設立され、自死遺族支援の拡充を目的とした活動を開始 |
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2009年1月 | 特定非営利活動法人としての認証を受け、正式に法人化 |
2009年 | 自死遺族のための相談ダイヤルを設置し、定期的に遺族の集いを開催するなど、具体的な支援活動を展開 |
2010年 | 自死遺族支援のための研修やワークショップ、講演会を実施し、支援体制を強化 |
2011年 | ・支援の対象を自死遺族以外にも広げる ・東日本大震災被災地での遺族のつどい開催 |
2015年 | 全国都道府県・自死遺族支援事業実施現況調査の実施 |
2020年 | COVID-19の影響に対応した遺族支援に関する意見交換会を開催し、時代に即した支援活動を展開 |
その他にも、遺族・遺児等のつどい立上げ支援、各地の自殺対策会議への参加、いのち支える自殺対策推進センターへの連携・協力などを行い精力的に活動しています。
全国自死遺族総合支援センター賛助会員制度
全国自死遺族総合支援センターでは、正会員、賛助会員に入会が可能となっています。
正会員
・自死遺族支援に関わっている、または関わろうとしている個人や団体
入会金 5,000円 年会費 10,000円賛助会員
出典:全国自死遺族総合支援センター『入会』
・本会の事業に賛助してくださる個人や団体
入会金 0円 年会費 1口5,000円(1口以上)
全国自死遺族総合支援センターの事業・取り組み
全国自死遺族総合支援センターの取り組みを紹介します。
電話相談
自死で身近な人を亡くした方々のために、電話相談を行っています。専門の訓練を受けた相談員が、遺族の方々の苦しみや悲しみに寄り添い、電話相談を受けています。日常生活での困りごとについては、専門機関と連携しながら、対処方法を一緒に考えます。
メール相談
身近で大切な人を自死で失った方を対象としたオンラインサポートです。利用者が自身の気持ちや思いを専用の書式に記入し、送信することができるようになっています。
24時間いつでもメッセージを送ることができ、受け取った内容にはおよそ10日程でスタッフが返信してくれます。
身近な人を亡くした子どもとその家族のつどい
親やきょうだいを亡くした子どもたちとその保護者を支援するために、「子どもとその保護者のつどい」を開催しています。
2010年から死別を体験した子どもたちの支援に長年の経験を持つアメリカのダギー・センターから講師を招き、基礎的な研修を重ねてきた知識と経験をもとに行われている活動です。
つどいでは、訓練を受けたボランティアスタッフのサポートのもと、同じような体験をした仲間と交流し、感情を分かち合うことで、子どもとその家族が自己肯定感や自己コントロール感を育み、良好な家族関係を再構築するきっかけになることを目指しているようです。
死別を経験した子どもたちとその保護者が、悲しみを乗り越え、前向きに成長していけるようサポートしています。
身近な人を亡くした若者のつどい
身近な人を亡くした若者のつどいは、2019年から開催され、病気や事故、自死などで大切な人を失った18歳から30代の方々を対象にしています。
普段は話せずに、遠慮してしまう悲しみや寂しさ、怒りや後悔の気持ちを話したり、共有したりできるつどいです。
この場を通じて、かけがえのない人を失ったことで感じる虚しさや不安、繰り返し湧き上がる様々な感情を共有し、自分に合った新たな生き方を見つけるきっかけを提供することを目指しています。
各地の遺族のつどい〜わかちあいの会〜
各地の遺族のつどい〜わかちあいの会〜は、互いを尊重し、ありのままの思いを語り合い、聴き合う場です。つどいでは、地域の状況や主催者の方針に応じて一定のルールが設けられ、参加者が安心して話せる環境を提供するよう心がけています。
立ち上がれないほどの混乱の中にいる人々が、「同じ経験をした人の話を聞きたい」、「自分の気持ちを話したい」、「理解し合える人に出会いたい」といった思いを持って参加しています。
遺族の方々が抱える悲しみや苦しみを分かち合い、互いに支え合うことができるよう支援しているようです。
書籍・DVDの制作
自死遺族が抱える悲しみや苦しみといった心の痛みに寄り添い、支援の必要性に対する理解を深めるための書籍やDVDを制作しています。自死遺族の方だけでなく、支援する方にも役立つ内容となっています。
全国自死遺族総合支援センターの特徴
全国自死遺族総合支援センターは、自死遺族の集いの開催や自死遺族相談ダイヤルの設置、研修やワークショップの実施など、多岐にわたる活動を展開しています。
2011年には自死遺族だけでなく、死因に関わらず支えあっていけるように活動の幅を広げました。
また、毎月1回聖路加国際病院小児医療総合センターで、「大切な人を亡くした子どもとその家族のつどい」の開催を行い、遺児の心のケアやサポートを行っているようです。
認定NPO法人 全国自死遺族総合支援センターの役員一覧
役職名 | 氏名 | プロフィール |
理事長 | 杉本 脩子 | NPO法人 全国自死遺族総合支援センター理事長 |
理事 | 石倉 紘子 | こころのカフェきょうと創設者未遂者・家族を支える会 くいしんぼカフェ代表 |
理事 | 井手 敏郎 | 一般社団法人 日本グリーフ専門士協会 代表理事 |
理事 | 清水 康之 | NPO法人 自殺対策支援センター ライフリンク代表厚生労働大臣指定法人 いのち支える自殺対策推進センター代表理事 |
理事 | 鈴木 康明 | 東京福祉大学心理学部 |
理事 | 松川 明子 | NPO法人 全国自死遺族総合支援センター |
理事 | 村 明子 | NPO法人 国際ビフレンダーズ東京自殺防止センター |
理事 | 山口 和浩 | NPO法人 自死遺族支援ネットワークRe代表 |
監事 | 晴柀 雄太 | 弁護士 |
まとめ
本記事では、全国自死遺族総合支援センターの概要や取り組みなどについて紹介しました。
グリーフケアは、悲しみを抱える人々が安心して暮らせる社会、そして喪失体験に理解を示し、支え合える社会を築くために欠かせません。
全国自死遺族総合支援センターは、電話相談やメール相談、遺族のつどいを通じて、遺族が安心して心情を吐露できる場を提供し、悲しみと向き合う手助けを行っています。
地域に密着する葬儀社・葬儀従事者だからこそ、グリーフケアを深く学んだり、実務を見直したりといった取り組みが必要でしょう。上記のような取り組みに際し、本記事をお役立ていただければ幸いです。