はじめに
先日お伝えいたしました、「イギリス発、遺書作成のデジタル化(Farewlll)」の中では、フェアウィル創業者であるギャレット氏が毎年多くのイギリス国民が葬儀のために借金をしている事態を問題視していることに言及いたしました。
実際、近年において、葬儀ならびに終活にかかる費用はイギリスにおいて社会問題化しています。
[caption id="attachment_9992" align="alignnone" width="920"] Pixabayより(リンク)[/caption]本記事では、このように社会問題化しつつあるイギリスの葬儀関連産業の現状やそれに対する社会および政府の反応をご紹介し、英国においてフェアウィルのような葬儀業界のディスラプターが登場するにいたった背景を解き明かします。
適正な葬儀キャンペーン
高騰する葬儀価格が英国における社会問題として広く認知されるようになった要因の一つはクエーカー・ソーシャル・アクション(QSA)による、適正な葬儀キャンペーン(Fair Funerals Campaign)です。QSAは独立慈善団体で、1867年から貧困問題の改善のためにプロジェクトを運営しています。
[caption id="attachment_9993" align="aligncenter" width="504"] 適正な葬儀キャンペーンロゴマーク[/caption]目的および背景
適正な葬儀キャンペーンの目的は葬儀貧困の解決です。キャンペーンは葬儀貧困を次のように定めています。
葬儀貧困とは個人の支払い能力を葬式費用が上回っている事態を指す。この問題は深刻化していおり、その要因には葬式費用が高騰しているにもかかわらず、政府からの援助が枯渇してしまっていることが背景にある。('What is funeral Poverty?')
QSAがこのような葬儀貧困の解決に乗り出したのには以下のような背景があるようです。
あるプロジェクトにおいて、QSAのメンバーは親族を亡くし、感情的および金銭的な負担にあえいでいる人々を目にしました。
これを契機としてリサーチが行われ、過去5年間の間に「葬儀貧困」が50%増加していることが判明しました。
このため、QSAは高額な葬儀費用に苦しんでいる人々を直接手助けするプロジェクト(Down to Earth)を立ち上げました。
[caption id="attachment_9996" align="alignnone" width="920"] Down to Earthのウェブサイトより(リンク)[/caption]しかし、葬儀貧困の問題は、QSAが直接支援することができる範囲よりもより広範囲にわたる問題であり、それにもかかわらず政府により置き去りにされているとQSAは認識していました。
このため、葬儀貧困の根本を除去すべく、2014年にイギリスで初めての全国規模のキャンペーンが打ち上げられることとなったのです。
キャンペーンの内容
キャンペーンは次の3つの主軸からなっています。
- 葬儀貧困を避けられるように、人々にありうる選択肢を伝える
- 低所得の遺族に対して政府がアクションをとるように促す
- 葬儀業界と協力して、葬儀がより手の届きやすいものにする
これらの活動を行いつつ、キャンペーンは精力的にメディアに働きかけ、これにより議会においても葬儀貧困の問題の解決策について議論がなされるに至りました。
2015年10月には、ガーディアンのキャンペーン特集に選ばれました(参照1)。