愛グループの業績・概要まとめ│冠婚葬祭互助会大手の動向を解説

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新型コロナが発生した2020年以降、葬儀業界は大きな打撃を被っていますが、その中でも冠婚葬祭互助会事業者は大きな影響を受けたといわれています。
しかし、そういった状況下にあっても、日本有数の互助会大手の愛グループは堅調に成長を続けているようです。

そこで今回は、愛グループの全体像や歴史、決算公告から見た利益や業績についてまとめます。
貸借対照表をもとに資産や負債、純資産などから財政状況を分析することで、その会社のおおまかな経営状態が把握可能です。
葬儀社様にとって参考になる部分もあるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

愛グループの概要

愛グループ 概要
出典:愛グループ 株式会社日本セレモニー

愛グループは創業から50年の歴史があり、冠婚葬祭業界を代表する企業です。
全国に結婚式場と葬祭会館を運営しており、2023年7月には名古屋にラグジュアリーホテルも開業しました。
これからも更なる成長をめざす、大手セレモニー企業です。

【名称】愛グループ 株式会社 日本セレモニー
【代表】神田 忠
【本社所在地】〒750-1114 山口県下関市王喜本町6-4-50
【従業員数】4,034名(パート含む)2023年1月現在
【前受金残高】約1391億円(2023年1月現在)
【会員数】未施工口数 約89万口(2023年1月現在)
【売上高】約721億円(2023年1月現在)
【公式HP】https://www.aigroup.co.jp/

主におこなっている事業は以下の通りです。

  • ブライダル事業(FIVESTAR WEDDING)
  • フューネラル事業(典礼会館)
  • ライフパートナー事業(冠婚葬祭互助会事業)
  • ホテル事業
  • 流通システム事業(トレーダー愛)
  • レストラン事業(クラブヴィアージュなど)
  • 介護事業(住宅型有料老人ホーム)
  • 仏壇・墓石事業(合掌堂)

愛グループの構成

愛グループは典礼会館を代表とする葬祭会館のほかに、結婚式場や宿泊施設、レストラン、介護施設の運営をおこなっています。
また、仏壇や墓石事業もおこなっており、幅広い事業を展開しています。

冠婚葬祭事業

関連事業

愛グループの沿革

昭和47年(1972年)6月 下関市冠婚葬祭互助会設立
          7月  山口県冠婚葬祭互助会に改称
昭和49年(1974年)10月(株)山口県冠婚葬祭互助会設立
昭和54年(1979年)1月 (株)山口県冠婚葬祭互助会を(株)日本セレモニーに改称
昭和60年(1985年)9月  平安閣を「ウエディングパレス愛」に改称
平成4年(1992年) 6月  グループの名称を「日本セレモニー」から「愛グループ」に変更
         11月  セレモニー通商を「トレーダー愛」に改称
平成10年(1998年)1月 (株)防長互助センターをM&A
平成12年(2000年)8月 (株)日本セレモニーと(株)セレモニー愛合併
         11月  中国セレモニーグループをM&A
平成14年(2002年)7月 (株)敬裕社をM&A
平成19年(2007年)5月 (株)サンファミリー本社(盛岡)開設
         12月  イタリアンレストラン VIA LATTEAをM&A
平成22年(2010年)12月(株)日本セレモニーがベルモニー(株)より会員引受け 珍田グループをM&A
平成23年(2011年)5月  へいあん秋田をM&A
平成24年(2012年)1月 (株)報恩をM&A
平成27年(2015年)4月 (株)エムジョイキューをM&A
           9月 (株)弓張の丘ホテルをM&A
平成29年(2017年)10月 (株)西九州新生活センターをM&A
平成30年(2018年)11月 せいぜんグループをM&A
          12月 (株)メイプルシティをM&A

出典:愛グループ「沿革」

愛グループの葬祭会館

愛グループの葬祭会館は、本社がある山口県をはじめとする中国地方、九州、近畿、東北地方など全国16府県にあります。

愛グループ 全国の葬祭会館

葬儀社の決算公告とは

決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。

ただし、大会社については貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。
次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は負債額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせています。

愛グループの決算公告からみる利益や業績

ここからは、愛グループの貸借対照表について詳しく分析します。
各項目を確認することで、愛グループのおおまかな財政状況が把握可能です。

愛グループの貸借対照表

愛グループ 貸借対象表

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10%を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。

自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

貸借対照表 図解①

自己資本比率は、中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適とされる自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。

逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。

愛グループの自己資本比率は30.4%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
768億8千8百万円25220億1千1百万円×100=30.48%

愛グループの2023年1月期における自己資本比率は、30.48%(前年同期比1.85%増)となっています。

愛グループの資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

貸借対照表 図解②


この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。

流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある
例)有形固定資産:建物、土地、車など
  無形固定資産:ソフトウェアなど

繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年などに分けて償却するものとなる
例) 創立費、開業費、開発費など

愛グループの資産合計の推移は以下のようになっています。

愛グループ 資産合計

愛グループの2023年1月期における資産合計は、2522億1千1百万円(前年同期比は2.83%増)となっています。
過去6年間にわたって、ほぼ横ばいの状態で推移していますが、2023年1月期には若干の増加がみられました。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。

流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となる
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となるので、流動負債以外の負債は固定負債になる
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

愛グループの負債合計の推移は以下のようになっています。

愛グループ 負債合計

愛グループの2023年1月期における負債合計は、1753億6千0百万円(前年同期0.167%増)となっています。

愛グループの貸借対照表を確認すると、資産合計はほぼ横ばいの状態で推移していますが、負債合計は年を追うごとに減少しています
2023年のみ少し増加しました。
これは愛グループの資産において、他人資本である負債の占める割合が下がっていることを示しており、財務の健全性が向上しているようです。

また2018年1月期には22.78%だった流動比率(流動資産÷流動負債×100)も、2023年1月期の時点では276.26%(安全ラインは100%以上)となっており、短期的な支払に不安は感じられません。

愛グループの純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。

純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。

貸借対照表 図解③

この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。
愛グループの純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

愛グループ 純資産

愛グループの純資産合計は6期連続の増加となっており、2023年1月期では768億8千8百万円(前年同期比9.47%増)となっています。

負債合計と純資産合計から割り出される負債比率(負債合計÷純資産合計×100)は228.0%です。
この水準であれば、比較的経営が安定しているとされており、無理なく返済ができる状況です。

当期純利益の推移

会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。

当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。

愛グループの当期純利益の推移は以下の通りです。

愛グループ 当期純利益

愛グループにおける2023年1月期の当期純利益は69億4千9百万円(前年同期比57.9%増)となっています。

愛グループの当期純利益は、新型コロナウイルスの影響で2020年から2022年にかけて減少しましたが、2023年には利益が大幅に増加しています。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。

利益剰余金は、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため企業が生き残るための重要な資金源となります。

愛グループの利益剰余金の推移は以下の通りです。

愛グループ 利益剰余金

愛グループの2023年1月期における利益剰余金は、753億6千8百万円(前年同期比9.68%増)となっています。
愛グループの利益剰余金は、過去6年間において順調に増加を続けており、財務上健全な状況といえそうです。

前受金残高と売上高の推移

創立以来、順調に売上高を伸ばしていましたが2020年(令和2年)3月より新型コロナウイルス感染症が拡大し、緊急事態宣言が発令されました。
そのため売上高が下降しましたが、少しずつ回復しています。
令和6年から9年の予測数値を見ても、上昇する見込みです。

愛グループ
出典:愛グループ 株式会社日本セレモニー

愛グループのまとめ

愛グループ 株式会社日本セレモニーの決算公告を参考に、現状分析をおこないました。
貸借対照表を分析した限りでは、愛グループの経営状況に特に不安な点は見当たりませんでした。

2020年から2022年にかけて、日本経済は新型コロナの影響で大きく落ち込み、愛グループも影響を受けましたが、その後は順調に回復しているようです。
愛グループでは毎年のように出店を継続しており、今後も新規出店による事業拡大が予想されます。

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