イオンライフ株式会社〜イオンのお葬式〜┃大手葬儀ポータルの業績・利益をまとめて分析

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葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、

葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。
今回はイオンライフ株式会社の現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。

決算公告は上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

イオンライフ株式会社の概要

イオンライフ株式会社は、流通最大手のイオン株式会社のグループ企業で、2009年に前身のイオンリテール株式会社の事業部で、終活サービス事業を開始しました。
その後、葬儀ポータルサイト「イオンのお葬式」を中核とし、永代供養イオンライフの終活イオンのペット葬などのライフエンディング事業を展開しています。

2024年3月には、千葉県大綱白里市と「終活提携に関する協定」を締結しました。
本協定では「終活についての相談会」「終活についての講演会の開催」「市職員等への終活知識研修」の3分野において連携を図っています。

【名称】株式会社 イオンライフ 株式会社
【設立】2014年9月1日
【代表取締役】中村 敏之
【所在地】千葉県千葉市美浜区中瀬1丁目5番地1
【公式サイト】https://company.aeonlife.jp/
【事業内容】・イオンのお葬式
      ・永代供養
      ・イオンライフの終活
      ・イオンのペット葬

出典:イオンライフ 株式会社 会社概要

葬儀社の決算公告とは

決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより
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会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局に供託する
  • 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ

上記のいずれかの方法を選択する必要があります。

また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

イオンライフ株式会社の貸借対照表 

決算期39期42期43期44期45期
会計年度2018年2月期2021年2月期2022年2月期2023年2月期2024年2月期
利益剰余金-4千0百万円-2億6千6百万円-4億0千3百万円-4億5千6百万円-4億6千4百万円



流動資産1億2千3百万円9千2百万円1億1千1百万円1億1千5百万円1億0千3百万円
固定資産1億9千3百万円6千7百万円2千6百万円1千6百万円1千3百万円
有形固定資産6百万円2百万円
無形固定資産4千9百万円1千9百万円
投資その他の資産1千2百万円5百万円
繰延資産
資産合計3億1千6百万円1億5千9百万円1億3千7百万円1億3千1百万円1億1千6百万円



流動負債1億0千4百万円3億0千1百万円4億2千6百万円4億7千7百万円4億7千2百万円
役員賞与引当金
賞与引当金2百万円7百万円7百万円1千2百万円7百万円
その他1億0千2百万円
固定負債1億4千4百万円1千7百万円8百万円3百万円2百万円
退職給付引当金
雑収入復活引当金
役員退職慰労引当金
その他
負債の部計2億4千9百万円3億1千8百万円4億3千4百万円4億8千0百万円4億7千3百万円




株主資本6千7百万円-1億5千9百万円-2億9千6百万円-3億4千9百万円-3億5千7百万円
資本金6千5百万円6千5百万円6千5百万円6千5百万円6千5百万円
 資本余剰金4千2百万円4千2百万円4千2百万円4千2百万円4千2百万円
資本準備金2千0百万円2千0百万円2千0百万円
その他資本余剰金2千2百万円2千2百万円2千2百万円
 利益剰余金-4千0百万円-2億6千6百万円-4億0千3百万円-4億5千6百万円-4億6千4百万円
利益準備金
特別償却準備金
その他利益剰余金-4千0百万円-2億6千6百万円-4億0千3百万円-4億5千6百万円-4億6千4百万円
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
(うち当期純損失)-2千4百万円-1億1千9百万円-1億3千7百万円-5千3百万円-8百万円
新株予約権
自己資本
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
純資産の部計6千7百万円-1億5千9百万円-2億9千6百万円-3億4千9百万円-3億5千7百万円
負債・純資産合計3億1千6百万円1億5千9百万円1億3千7百万円1億3千1百万円1億1千6百万円

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。自己資本比率が10%を下回っている場合は経営状態は良いとは言えません。

自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適とされる自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。

逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。

イオンライフ株式会社の自己資本比率

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産」で求めることができます。
しかしイオンライフ株式会社では、2024年2月期の純資産がマイナスとなっていますので、現時点では債務超過の状態です。

イオンライフ株式会社の資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。

・流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

・固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
  ・無形固定資産:ソフトウェアなど

繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など

イオンライフ株式会社の資産合計の推移は以下のようになっています。

イオンライフ株式会社の2024年2月期の資産合計は、1億1千6百万円(前年同期比11.45%減)となっています。
2019年・2020年の決算公告資料が確認できないため詳細な推移は不明ですが、2018年時点で3億円以上あった資産が、2024年2月期には1億8千5百万円減少しました。

新型コロナの発生により、日本経済は大きな打撃を被りましたが葬儀業界も同様で、イオンライフ株式会社も受けた影響は大きかったようです。
コロナも2023年5月から5類相当に移行し、影響が少なくなっていますので、次期の決算では回復しているかもしれません。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。

流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります。
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

イオンライフ株式会社の負債合計の推移は以下のようになっています。

イオンライフ株式会社の2024年2月期の負債合計は、4億7千3百万円(前年同期比1.46%減)となりました。
2023年2月期より7百万円減少しましたが、流動資産を流動負債が上回っている状況です。

経営状態の健全性を測る指標の一つに「流動比率」があります。流動比率は以下の計算式で算出可能です。

流動資産÷流動負債×100=流動比率

流動比率は100%を超えていれば問題ありませんが、100%を下回っていると短期間で現金化できる資産よりも、支払が必要な負債が多いということです。
入金額よりも出金額が多くなり、資金がなくなってしまう「資金ショート」の可能性が出てきます。
イオンライフ株式会社の流動比率は、2018年2月期では118.27%でしたが、2024年2月期では21.82%となっています。

イオンライフ株式会社は、流通最大手のイオン株式会社グループ企業ですので、資金ショートの可能性は低いと思われますが、早急な改善策が必要な状況といえるでしょう。

イオンライフ株式会社の純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
「純資産」は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。

純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。

この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。

イオンライフ株式会社の純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

会社の所有する現金や建物などの資産から負債(借金)を差し引いたものとなります。
純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

イオンライフの純資産合計は、2021年2月期以降マイナスの債務超過状態が続いています。

新型コロナの影響を受けて債務超過に陥った企業も多く、葬儀業界も同様だったようです。
イオンライフ株式会社では、2019年2月期および2020年2月期の決算状況が不明のため詳細な推移はわかりませんが、新型コロナの影響で一気に債務超過に陥ったのかもしれません。

コロナが5類相当に移行してからは、葬儀業界の業績も回復傾向にあり、イオンライフ株式会社も短期間での債務超過解消の可能性もあります。

当期純利益の推移

会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。

当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。

2024年2月期のイオンライフ株式会社の当期純損失は、-8百万円となっています。
2022年2月期には-1億3千7百万円だった当期純損失は、2023年2月期ではマイナス部分が大幅に圧縮されています。

葬儀業界の収益も回復傾向にあるので、イオンライフの業績も2025年2月期には黒字転換している可能性もありそうです。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。

イオンライフ株式会社の場合は以下のように推移しております。

イオンライフ株式会社の利益剰余金は、2018年2月期の時点でマイナスになっていますが、2021年・2022年でマイナス額が大幅に増加しています。
2019年2月期と2020年2月期の決算公告が確認できないため、詳細な推移は不明ですが新型コロナの影響を受けた、2021年と2022年で急激に増えているようです。

イオンライフ株式会社のまとめ

今回はイオンライフ株式会社の決算公告を参考に、現状分析をおこないました。
2020年以降、日本経済は新型コロナの影響により大きな打撃を受けましたが、今回の分析を通して葬儀業界が受けた影響が大きかったことを感じさせられました。

イオンライフ株式会社の中核事業である葬儀ポータルサイトは、新規参入が続き価格競争も激しくなっています。
事業の見直しも含め、債務超過への対応策を検討しているものと思われます。

イオンライフ株式会社が、業績改善に向けて今後どのような施策をおこなうのか、引き続き注視していきたいと思います。

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