葬儀・葬祭を取り扱う事業者と聞くと、いわゆる「葬儀屋さん」をイメージするかもしれませんが、実はさまざまな業種の事業者が関わっています。
主な事業者を挙げるだけでも、以下の8種類が存在します。
近年の葬儀業界は、葬儀の施行を取り扱う事業者だけで構成されているわけではありません。
上記のうち「葬儀ポータル」や「葬儀アフィリエイト」は、実際に葬儀を執り行うことはありませんが、集客の面で葬儀業界に大きな影響を与えています。
こういった事情から、葬儀業界全体の構造も複雑化しているため、以前に比べ分かりづらくなっています。
そこで葬研では、葬儀事業者を構成する事業者8種類について、それぞれ詳しく解説することにいたしました。
本記事では『電鉄系葬儀社』を取り上げて、種類や成功事例・撤退事例について紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
電鉄系葬儀社とは?
『電鉄系葬儀社』は、全国の私鉄沿線上に子会社あるいは専門葬儀社と業務提携して葬祭サービスを提供する企業を指します。
鉄道会社など「人」が集まりやすいインフラや物販事業を提供している企業が、葬儀事業に参入している点が特徴です。
電鉄系葬儀社が登場したのは平成以降。
1995年に阪急電鉄株式会社が株式会社阪急メディアックスを設立したことがきっかけとなりました。
鉄道会社が運営する葬儀事業は、今や葬儀業界の重要な一翼を担う存在となっています。
電鉄系葬儀社の種類
2023年7月時点で確認できる電鉄系葬儀社は、以下の4社です。
- 京王フェアウェルサポート株式会社様「京王メモリアル」(京王電鉄株式会社)
- 株式会社京急メモリアル様「京急メモリアル」(京浜急行電鉄)
- 南海電鉄グリーフサポート株式会社様「ティア」(南海電鉄株式会社x株式会社ティア)
- 株式会社阪急メディアックス様「エテルノ」(阪急電鉄株式会社)
各社は他の電鉄系サービスと葬儀事業を連動したり、独自の戦略で専門葬儀社と連携したりするなど、独自のサービスを提供しています。
以下に詳しくご紹介いたします。
京王フェアウェルサポート株式会社「京王メモリアル」(京王電鉄株式会社)
京王メモリアル様は、東京と神奈川エリアに展開する京王電鉄グループの葬儀事業社です。
事前相談から葬儀後までのトータルサポートを提供しているほか、厚生労働省認定のディレクターが多数在籍。
直営の3会館のほか、公営斎場や寺院会館、集会所、自宅などでの葬儀も対応しているようです。
京王メモリアルには会員制度や、積立制度がありません。(2023年7月時点)
それと連動しているからか、互助会解約の手続きもサポートしているようです。
サービス名 | 京王メモリアル |
会社名 | 京王フェアウェルサポート株式会社 |
住所 | 東京都多摩市関戸1丁目9番地1 |
資本金 | 5,000万円(京王電鉄100%出資) |
株主 | 京王電鉄株式会社 |
事業内容 | 葬儀会館の運営、葬儀の施行、事前相談・アフターサポート |
公式ホームページ | https://www.keio-memorial.co.jp/ |
株式会社京急メモリアル様「京急メモリアル」(京浜急行電鉄)
京急メモリアル様は横浜市金沢区・港南区・横須賀市に展開する、京急グループの100%子会社です。
京急電鉄の駅近に直営3斎場があることからお客様へ利便性を高めており、地域に密着した信頼性のあるサービスを提供しています。
また、葬祭ディレクターが業務にあたるなど品質の高い葬祭事業を展開していることから、第三者機関の格付け認定機関からも高い評価を得ています。
サービス名 | 京急メモリアル |
会社名 | 株式会社 京急メモリアル |
住所 | 神奈川県横浜市金沢区谷津町384 |
資本金 | 3,300万円 |
株主 | 京急サービス |
事業内容 | ・ご葬儀(通夜・葬儀・告別式) ・ご法事(四十九日・一周忌・三回忌等) ・生花のご手配 ・供養品・返礼品のご手配 ・お料理(精進落とし)のご手配 ・タクシー・ハイヤー・バスのご手配 ・火葬場・霊柩車などのご手配 ・仏壇・仏具の販売 ・寺院・霊園・墓石・墓地のご紹介 ・海洋葬(散骨) |
公式ホームページ | https://www.keikyu-memorial.com/ |
南海電鉄グリーフサポート株式会社様「ティア」(南海電鉄株式会社x株式会社ティア)
南海グリーフサポート様は大阪府〜和歌山県間をつなぐ南海電気鉄道株式会社が100%出資するグループ会社で、南海沿線の地域に密着した葬祭事業を展開しています。
母体である南海電鉄様や業務提携先であるティア様と連携し、ご遺族や参列者の方への負担軽減を目指し、葬儀の前から後までトータルサポートをするなど、地域に根ざした信頼性のある葬儀会館であり続けることを大切にしているようです。
なお、株式会社ティア様については以下の記事もご覧ください。
サービス名(業務提携先) | 株式会社ティア(本社:名古屋市) |
会社名 | 南海グリーフサポート株式会社 |
住所 | 大阪市住之江区西住之江1-1-41 南海住ノ江ビル2階 |
資本金 | 35百万円 |
株主 | 南海電気鉄道株式会社 100% |
事業内容 | 葬祭事業 |
公式ホームページ | https://www.tear-nankai.jp/ |
株式会社阪急メディアックス様「エテルノ」(阪急電鉄株式会社)
阪急メディアックス株式会社様は大阪・神戸・京都を結ぶ鉄道事業を展開する阪急電鉄株式会社様100%出資の子会社で、グループ唯一の葬祭事業会社です。
鉄道系葬儀社の先駆けとして『エテルノ』という葬祭サービスを展開しています。
関西経済の中心地を結ぶ阪急電鉄株式会社様と連携し、沿線に葬祭ホールを5か所持しており、電鉄系葬儀社の中でも最も影響力を持つ企業といってもよいでしょう。
サービス名 | エテルノ |
会社名 | 株式会社阪急メディアックス |
住所 | 兵庫県西宮市高畑町2番27号 |
資本金 | 1,000万円 |
株主 | 阪急電鉄(株)(100%) |
事業内容 | ・営業部 施行運営担当 -葬儀(家族葬、一般葬、社葬等)の企画及び施行 -エテルノ西宮での法要(一周忌、三回忌等)の企画及び施行 -葬儀の事前相談などの対応 -アフターサービス全般 ・営業部 事業開発担当 -各種セミナー、見学会、カルチャー教室の実施 -広告宣伝や販売促進の企画及び運営 -エテルノ倶楽部の運営 ・総務部 -総務、人事、経理、経営計画、システムなどの間接業務 |
公式ホームページ | https://www.eterno.jp/ |
電鉄系葬儀社の成功例・撤退事例
電鉄系企業は地元での知名度が高く信頼を得やすいため、葬儀業界への新規参入も比較的容易と考えられます。
一方で、葬祭事業から撤退を余儀なくされた電鉄系葬儀社も存在します。
ここでは、電鉄系葬儀社の成功例と撤退事例の両方をご紹介いたします。
【成功事例1.】直営葬祭会館の営業拡大~株式会社阪急メディアックス様「エテルノ」~
株式会社阪急メディアックス様が展開する葬祭サービス『エテルノ』は、1995年に鉄道業界初の葬祭業に参入して以降、順調に成長しています。
特に注目したいのが直営ホールの運営拡大です。
阪急グループの信頼性を背景に、これまで以下の会館や相談サロンを営業してきています。
- 1997(平成9)年 「エテルノ西宮」オープン
- 1999(平成11)年 7月1日「エテルノ池田」オープン
- 2002(平成14)年 5月20日「エテルノ西京極」オープン(2015(H27)年9月末 営業終了)
- 2003(平成15)年 2月11日「エテルノ仁川」オープン
- 2007(平成19)年 6月 1日「エテルノ西宮」増築リニューアル
- 2018(平成30)年 11月 1日「エテルノ終活相談サロン」オープン(2019(R1)年6月末 営業終了)
- 2019(平成31)年 1月29日「エテルノ阪急千里」オープン
- 2022(令和4) 年 8月15日「エテルノ小野原」オープン
- 2023(令和5)年 9月 「エテルノ鳴尾武庫川」オープン予定
一部のサービスや直営会館の営業は終了しているものの、着実に顧客に幅広い葬儀サービスを提供していることがわかります。
また、直営会館には葬祭ディレクター技能審査合格者を配置し、トータルサポートに注力するなどからも、成功の一例といえるでしょう。
【成功事例2.】専門葬儀社との業務提携で営業拡大~南海電鉄グリーフサポート株式会社様~
南海電鉄グリーフサポート株式会社様も同様に、電鉄系葬儀社として成功を納めています。
南海電鉄グリーフサポート株式会社様は愛知県名古屋市に本社を構える株式会社ティアとフランチャイズ契約を結び、大阪府・和歌山県内で16の葬儀会館ティア(FC店)を展開しています。(2023年7月時点)
「ティア会館」の展開により、南海鉄道沿線のお客様からは「遠くの葬儀会館まで足を運ばなくて済む」と好評を得ているようです。
南海電鉄のグループ会社という知名度を活かし、地域に根ざした葬儀会館を運営した結果、地元の顧客に安心・信頼のサービスを提供しているといえるでしょう。
【撤退事例】東武鉄道様「東武セレモニー」
電鉄系葬儀社の中にはかつて東武鉄道の子会社であった「東武セレモニー」の撤退事例もあります。
東武鉄道が発表した「2020年3月期 第2四半期決算補足説明資料」によれば、2019年6月28日に、東武鉄道側が東武セレモニーをグループ指定解除したことが記載されています。
現在は、東武セレモニー様の公式ウェブサイトも削除されたようです。
一部の葬儀会館はそのまま運営が続けられているようですが、葬儀社としての成長が見られなかったのでしょうか。
電鉄系葬儀社の課題
電鉄系葬儀社が直面する課題の1つとして挙げられるのが、葬儀の多様化への対応です。
近年では葬儀の形態が多様化しており、家族葬や直葬などの増加や自宅でのホームパーティー的な葬儀などが広まっています。
そのため、従来の葬儀サービスだけでは顧客のニーズに十分に応えられなくなっているのが現状です。
特に都市部では多様な葬儀形態が浸透しつつあるため、葬祭サービスも時代の変化に対応することが必要です。
したがって、電鉄系葬儀社も、変わりゆく時代に向けた柔軟な葬祭サービスの対応力が求められるでしょう。
まとめ
今回は、葬儀関連事業を展開する事業者の中でも、『電鉄系葬儀社』に焦点を当てて解説いたしました。
電鉄系葬儀社は鉄道会社の子会社という世間からの信頼性を強みに、沿線に住む方々に対して葬祭サービスを提供しています。
直営の葬儀会館を展開したり、専門葬儀社との業務提携したりするなどで、時代にあわせたお客様の利便性や満足度を高めていることがわかりました。
一方で、電鉄系葬儀社も、葬儀の多様化に対応することが今後の課題の1つです。
目まぐるしく変化する葬祭業界の変化に柔軟に対応し、顧客満足度をさらに高めていく取り組みが求められます。
葬研では、今後も葬儀社様向けに幅広く情報を発信してまいりますので、ぜひ参考にしていただければと存じます。