「葬祭業」の職業能力評価基準を解説|葬儀業界で求められる職務遂行能力とは?

職業能力評価基準

「葬儀」は、喪主様、ご遺族様のお気持ちやさまざまな事情を抱えている可能性を考えると、非常に繊細なものです。
さらに明確な答えがない場面も多く、難しい業務となるため、人材育成に悩みを抱えている葬儀社様は多いのではないでしょうか。

また法律的な問題やご遺体の取り扱いなど必須となるスキルや知識も多く、育成する側にとっては、早く確実に育って欲しいというのが本音かもしれません。
こうした課題の解消に向けて、厚生労働省は葬儀業務の遂行に必要な能力をまとめた「葬祭業の職業能力評価基準」を策定しました。

そこで本記事では「葬祭業の職業能力評価基準」の内容について紹介するとともに、活用方法について解説いたします
人材育成に課題を持つ葬儀社様のヒントになる可能性がありますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

職業能力評価基準の概要

能力評価

「職業能力評価基準」は、2002年に厚生労働省が策定した、業務を遂行するために必要な職務能力を評価をするための基準です。
必要な技術・技能、知識について、業種別、職種・職務別に整理・体系化されており、担当者から組織・部門における責任者まで4つのレベルが設定されています。

「葬祭業」の職業能力評価基準は、2016年(平成28年)に策定されています。
厚生労働省が所管する中央職業能力開発協会全日本葬祭業協同組合連合会が連携し、包括的職業能力評価制度整備委員会を設置、基準の検討が行われました。

職業能力評価基準
出典:厚生労働省 職業能力評価基準の構成

厚生労働省が策定した職業能力評価基準は、上記のような仕組みになっています。
・職種=仕事の内容や性質が類似している職務をまとめた項目。
・職務=おおよそ1人の従業員が担当する仕事の範囲。
・能力ユニット=効果的・効率的に仕事を行うために必要とされる能力。複数の「能力細目」で構成されている。
・職務遂行のための基準= 「能力細目」の仕事を遂行できるかという判断基準。行動例、技能、技術などが示されている。

各従業員が担当する職務を行うために必要な能力を「能力ユニット」とし、能力ユニットを作業単位で細分化したものが「能力細目」となっています。
さらに能力ユニットには、職種やレベルに関係なく必要とされる「共通能力ユニット」と職務によって内容が異なる「選択能力ユニット」の2つが設定されています。
「職務遂行のための基準」では、能力細目を遂行できるかという判断基準となる具体的な行動例や、技能・技術を提示しています。

職業能力評価シートの使用方法

職業能力評価基準をもとに、各葬儀社様が人材教育や実務に落とし込んで活用するためのツールとして作成されたのが「職業能力評価シート」です。
職業能力評価シートは、厚生労働省のホームページからダウンロードが可能で、それぞれの葬儀社様の実情や方針に合わせてカスタマイズして使用することもできます。

職業能力評価基準
出典:厚生労働省 葬祭業の職業能力評価シート

職業能力評価シートは、「職業能力評価基準」に記載された詳細な内容を簡略化したチェック形式の評価シートで、「職業能力評価シート」本体と、サブツールとなる「必要とされる知識」「基準一覧」「OJTコミュニケーションシート」で構成されています。

評価シートを活用することにより、「能力レベルはどの程度なのか」「次のレベルに上がるには何が不足してるのか」など、それぞれの従業員にとって必要なことを具体的に把握することできます。

まずは、それぞれの「評価の基準」に基づいて、本人が職業能力評価シートに「自己評価」を記入します。その後、「上司評価」を行うとともにコメントを記入します。
自己評価と上司評価が異なる場合は、評価の理由を明示することが大切です。

  • 評価の基準

〇=一人でできている。(下位者に教えることができるレベルを含む)
△=ほぼ一人でできている。(一部、上位者・周囲の助けが必要なレベル)
✕=できていない。(常に上位者・周囲の助けが必要なレベル)

「必要な知識」では、自己評価を行います。〇✕で評価し、自身が不足している知識を確認することで学びにつなげます。

葬祭業に求められる職業能力評価基準

葬祭業では、お客様(喪主様・ご遺族様)が必要とする情報をタイムリーに提供するほか、価値観を尊重し、権利を損なわないよう配慮してサポートしながら、それぞれの方に最適な葬祭サービスを提供することが大切です。
そのためには法令や社内ルールを厳守するのはもちろんのこと、円滑な職務遂行に不可欠な知識やスキルの獲得も求められるため、葬儀に携わる全従業員の資質向上が必須といえるでしょう。

葬祭業の職業能力評価基準の3職種4職務

共通能力
選択能力
出典:厚生労働省 『「葬祭業」の職業能力評価基準が完成しました』別紙1

厚生労働省により、葬祭業の職業能力評価基準の策定が行われたのは、以下の「施行業務」「企画・営業」「生花」の3職種4職務です。

  • 施行業務:ご遺族様と打ち合わせを行い、葬儀の段取り準備を整える。会場の設営や式典の運営のほか、葬儀のアフターケア、苦情の対応などを行う。
  • 企画・営業: 顧客ニーズや地域動向を把握し、新しいサービスの企画・立案や、個 人・企業・病院・団体等に対する営業活動を行う。
    ※職務 は、「企画」、「営業」
  • 生花: 祭壇や装飾で使用する生花の仕入れや保管、企画・デザイン、製作、設営・撤収などを行う。

葬祭業に求められるレベル区分の目安と職務遂行の基準

ここでは、各職務に求められるレベル区分の目安とともに、共通能力ユニットと施行業務の職務遂行のための基準を紹介します。

職務遂行のための基準・共通能力ユニット

共通能力ユニットは、職位に関わらず、円滑な職務遂行に求められる能力で、レベル別に設定されています。

共通能力ユニット・レベル1

能力ユニット能力細目職務遂行のための基準
コンプライアンス①コンプライアンス個人情報保護や守秘義務などに十分な注意を払い、日頃から就業規則や社内ルールに従って行動している。
②誠実な職務行動顧客や他の従業員との約束は必ず守るなど、誠実な態度で職務を遂行し、最後まで自分の仕事をやり遂げている。
葬祭スタッフとしてのマナーと心構え①基本マナー及び葬祭関連知識の習得葬祭スタッフとしての身だしなみや服装を整えるとともに、葬儀及び葬儀の手順、宗教・宗派・地域による差異等について積極的な姿勢で習得に取り組んでいる。
②適切な接遇・対応電話応対や受付応対において、決められた方針に沿って適切に対応している。
チームワークとコミュニケーション①チームワーク余力がある場合には、周囲の仕事を手伝うなど、他の従業員と協力・連携して仕事に取り組んでいる。
②コミュニケーション他の従業員と積極的にコミュニケーションをとっている。

共通能力ユニット・レベル2

能力ユニット能力細目職務遂行のための基準
コンプライアンス①コンプライアンス個人情報保護や守秘義務などに細心の注意を払い、日頃から就業規則や社内ルールに従って行動するとともに、後輩にも説明や助言を行っている。
②誠実な職務行動職業人としての自覚をもち、職務上のみならず職務外においても会社の社会的信用を損なうことがないよう行動している。
葬祭スタッフとしてのマナーと心構え①基本マナー及び葬祭関連知識の習得葬祭スタッフとしての身だしなみや服装に常に気を配るとともに、葬儀及び葬儀の手順、宗教・宗派・地域による差異等について日常業務を支障なく進めることができる程度の全般的知識を有している。
②適切な接遇・対応電話応対や受付応対において、相手の状況を考え、丁寧・適切な言葉遣いで必要な事項を明確に伝えている。
チームワークとコミュニケーション①チームワーク組織全体のことを意識して行動し、組織をより良くするための改善提案を積極的に行っている。
②コミュニケーション所属部署の従業員だけでなく、他部署のスタッフとも積極的にコミュニケーションをとっている。

共通能力ユニット・レベル3

能力ユニット能力細目職務遂行のための基準
コンプライアンス①コンプライアンス組織内でのコンプライアンスの徹底に向けて、部下や後輩の意識づけや指導を適切に行っている。
②誠実な職務行動葬祭に携わる人間として、常日頃から高い倫理観と使命感をもって誠実に行動し、周囲に模範を示している。
葬祭スタッフとしてのマナーと心構え①基本マナー及び葬祭関連知識の習得葬祭スタッフとしての心構えを熟知し、日々、率先垂範するとともに、部下や後輩の身だしなみや服装を厳しくチェックし、組織全体のレベルアップを図っている。
②適切な接遇・対応宗教・宗派別の葬儀・告別式の作法を詳細まで習得し、例外的なケースを含めて適切に対応するとともに、ご遺族等や参列者に対して助言を行っている。
チームワークとコミュニケーション①チームワーク所属部署の活動をリードして部下の士気を鼓舞し、一致団結して取り組む機運を醸成している。
②コミュニケーション社内だけでなく、取引先など社外の関係者とも積極的にコミュニケーションをとり、人的ネットワークを構築している。
組織マネジメント①仕事の管理担当業務の進捗状況を常時把握し、指示・命令・助言を行いながら的確に管理し、成果を適正に評価している。
②人の管理部下に対して会社の方針を正しく伝え、理解を促すとともに、部下の成長や問題解決を支援している。

共通能力ユニット・レベル4

能力ユニット能力細目職務遂行のための基準
コンプライアンス①コンプライアンス組織内でのコンプライアンスの徹底に向けて、部下や後輩の意識づけや指導を適切に行っている。
②誠実な職務行動葬祭に携わる人間として、常日頃から高い倫理観と使命感をもって誠実に行動し、周囲に模範を示している。
葬祭スタッフとしてのマナーと心構え①基本マナー及び葬祭関連知識の習得葬祭スタッフとしての心構えを熟知し、日々、率先垂範するとともに、部下や後輩の身だしなみや服装を厳しくチェックし、組織全体のレベルアップを図っている。
②適切な接遇・対応宗教・宗派別の葬儀・告別式の作法を詳細まで習得し、例外的なケースを含めて適切に対応するとともに、ご遺族等や参列者に対して助言を行っている。
チームワークとコミュニケーション①チームワーク所属部署の活動をリードして部下の士気を鼓舞し、一致団結して取り組む機運を醸成している。
②コミュニケーション社内だけでなく、取引先など社外の関係者とも積極的にコミュニケーションをとり、人的ネットワークを構築している。
組織マネジメント①仕事の管理自社の強み・弱みを分析し、競合との差別化を図るための仕掛けづくりを行うとともに、担当業務全体を掌握し、的確に指示・命令・助言を行いながら全体を統括管理している。
②人の管理経営者とともに人材育成に関する基本方針を打ち出すとともに、部下の個性に応じて適切な形で動機付けを行い、組織全体の士気を鼓舞している。

施行業務の職業能力評価基準

「施行業務」は、実質的な式典運営を行う葬儀を営む上で欠かせない職務です。
お客様(喪主様・ご遺族様)と打ち合わせを行い、葬儀の段取り準備を整える、会場の設営や式典の運営など、実質的な葬儀の運営を行うほか、葬儀のアフターケア、苦情の対応などを行います。

施行業務のレベル区分の目安は以下のとおりです。

レベル区分の目安呼称イメージ資格検定制度との関連
レベル1葬儀についての基本的な知識と技能を有し、上司の指示・助言を踏まえて日常業務を遂行できる能力水準・スタッフ
・担当者など
レベル2個人葬における相談、会場設営、式典運営等の葬祭サービスの一般的な知識と技能を有し、担当業務を独力で遂行できる能力水準・係長
・主任など
葬祭ディレクター技能審査2級程度に相当
レベル3全ての葬儀における相談、会場設営、式典運営等の葬祭サービスの詳細な知識と技能を有し、個人葬のみならず社葬、団体葬等についても業務を統括できる能力水準・葬祭ディレクター
・課長
・責任者など
葬祭ディレクター技能審査1級程度に相当
レベル4あらゆる葬儀について体系的かつ網羅的な知識と技能を有し、リーダーシップを発揮して業務全体を統括することで、高い顧客満足度を実現できる能力水準・部長
・統括責任者など

施行業務・職業能力評価シート【レベル1】

レベル1の施行業務・職業能力評価シートは、スタッフや担当者をイメージした内容となっています。

能力ユニット能力細目職務遂行のための基準
遺体処置・湯灌、納棺①清拭・湯灌遺体処置の内容や基本的な手順を理解し、上司の指示や公衆衛生上のルールを守って清拭作業の補助を適切に行っている。
②納棺納棺の内容や基本的な手順を理解し、上司の指示に沿って納棺作業の補助を適切に行っている。
会場設営①事前準備ご遺族等や設営場所の関係者との事前連絡や駐車場等に関する届出許可などの事務手続きを適切に行っている。
②会場設営上司を補佐しながら、設営、幕張、飾りつけ等の作業補助を適切に行っている。
③撤去と清掃上司の指示に従い、きびきびとした動作で撤去作業の補助を行い、整理・整頓・清掃を行って現状復帰している。
式典運営①誘導・案内荷物預かりや焼香の案内など、定型的な誘導・案内をきびきびと適切に行っている。
②突発時対応突発的な事態が発生した場合には、速やかに上司に報告・連絡・相談し、指示に沿って行動している。
葬具管理①葬具の理解祭壇や葬具の掃除・手入れ方法について、基本事項を習得している。
②葬具の掃除・手入れ決められた手順に従い、倉庫の清掃や祭壇の埃取り、葬具の掃除を適切に行っている。

施行業務・職業能力評価シート【レベル2】

レベル2の施行業務・職業能力評価シートは、係長や主任などをイメージした内容となっています。

能力ユニット能力細目職務遂行のための基準
事前相談①相談準備過去の相談記録等の履歴を事前に確認したうえで相談に臨んでいる。
②事前相談の実施お客様のニーズに沿って、宗派に応じた葬儀の流れやお見積りの概要、事前の準備事項等について、親切で温かみがある態度で説明している。
③フローアップお客様の希望を確認したうえで、相談後の情報提供や各種ご案内等のフォローアップを適切に行っている。
葬祭企画①受付け対応受付け応対において、相手の動揺や不安に配慮し、安心感を与えるような受け答えを行い、必要事項を確実に聞き取り、復唱して記録している。
②打合せご遺族等の故人に対する想いや故人の葬儀に対する想いなどをしっかりと聴きとっている。
③葬祭企画ご遺族等のニーズ(形式、式場、日程、告知、接待方法・数量、設営、予算など)の確認を行い、葬儀の基本方針をまとめている。
見積り、受注①提案書、見積書の作成予算を確認したうえで、認識の不一致が発生しないよう、ご遺族等の意向を一つ一つ確認しながら提案書の作成を行い、無理のない見積りを作成している。
②請書の作成と受注ご遺族等が希望する場合であっても口頭で済ませることなく、責任をもって見積書、請書を作成している。
搬送①遺体の引き取りご遺族等に対して適切な挨拶とマナーでご遺体をお迎えに来たことを伝え、搬送先や宗旨、安置場所等の必要事項を確認している。
②遺体の搬送公衆衛生の意識をもち、手袋、マスク、白衣等を着用し、体液や血液に直接触れることがないよう注意しながら適切に搬送を行っている。
③遺体の安置習慣や宗教・宗派を確認したうえで、ご遺族等の指示に従い、ご遺体を家の中に運び込んで安置を行っている。
遺体処置・湯灌、納棺①清拭・湯灌、納棺清拭・湯灌のための準備を迅速かつ確実に行い、家族に処置内容を説明したうえで、適切に処置を行っている。
②納棺ご遺族等や故人に親しい人に手伝ってもらいながら、納棺を適切に行っている。
会場設営①事前準備会場を直接下見したり見取り図を確認したりするとともに、認識の相違が生じることがないよう、ご遺族等や設営場所の関係者と事前に十分なコミュニケーションをとって必要事項を確認している。
②会場設営事前に決めた計画に沿って、案内標識、門標の設置、会葬者用のテント、机、椅子等の搬入及び設営作業を適切に行い、設営終了後はすみやかに喪主に報告している。
③撤去と清掃きびきびとした動作で整理・整頓・清掃を行って原状復帰し、終了時にはご遺族等や設営場所の関係者へ丁寧に挨拶を行っている。
式典運営①誘導・案内決められた方針に従って適切に案内を行い、会場で迷っている会葬者を見かけた場合には、自分から進んで声をかけ、適切に誘導している。
②司会進行進行表に沿って開式予告、開式、読経、弔辞、焼香などのアナウンスを適切に行っている。
③突発時対応天候の変化、会葬者の増減、具合の悪い人の発生などあらかじめ想定される事態については、決められた方針に沿って適切に対処し、想定外の事態については上司に報告・連絡・相談したうえで、指示に沿って迅速に対処している。
アフターケア①請求・集金葬儀終了後、費用の計算と請求書の発行を速やかに行ってご遺族等に説明し、その了解をきちんと得ている。
②アフターサービス仏壇・仏具、墓地・墓石等についての質問に快く応じ、必要な場合には専門業者の紹介等を行っている。
③クレーム対応クレームを受けた場合には、その内容を丁寧に聴き、速やかに上司に報告・連絡・相談している。
施行業務管理①業務調整・外注先の選定斎場や会場の稼働状態や社内の葬儀施行の対応状況を理解し、社内の関係部署と調整している。
②業務管理・外注先の管理外注先の担当者とコミュニケーションをとり、進捗の管理を行うとともに、外注品の不具合や遅延等の問題が発生した場合には、上司の指示を踏まえて迅速に対応している。
葬具管理①葬具の維持管理祭壇や葬具の掃除や手入れを迅速かつ確実に行っている。
②在庫管理上司の指示を踏まえ、在庫表の記入や棚卸しを適切に行っている。

施行業務・職業能力評価シート【レベル3】

レベル3の施行業務・職業能力評価シートは、葬祭ディレクター資格を保有した課長や責任者をイメージした内容となっています。

能力ユニット能力細目職務遂行のための基準
事前相談①相談準備個人葬だけでなく社葬・団体葬等を含めて幅広いトレンドを理解し、相続・遺言・贈与などの周辺知識についても習得している。
②事前相談の実施相談を通じてお客様の中核的な関心を読み取り、親切で温かみがある態度で的を射た情報提供を行っている。
③フォローアップ相談内容を的確に記録・管理し、関係者の間で共有化するとともに、これを踏まえて自社のサービス内容の改善に向けた提案を行っている。
葬祭企画①受付け対応状況に即して適切な表現、言葉遣い、発声で受付け応対し、相手が心配していることを汲み取り、それに懇切丁寧に回答し、不安を解消している。
②打合せご遺族等の精神的な衝撃を和らげることができるようカウンセリング的な立場で応対し、信頼感や安心感を醸成している。
③葬祭企画個人葬のみならず、社葬・団体葬についても、状況に即して的確に葬儀の基本方針をまとめ、マニュアルとして落とし込んでいる。
見積り、受注①提案書、見積書の作成通常の葬儀だけでなく社葬・団体葬等の大規模な葬儀についても、喪主・施主の意向を一つ一つ確認しながら提案書や見積書の作成を行っている。
②請書の作成と受注社葬・団体葬や特殊・例外的な葬儀についても、喪主・施主とコミュニケーションをとりながら受注業務を適切に行っている。
搬送①遺体の引き取りご遺族等が極度の混乱状態にある状況においても、相手を落ち着かせ、必要な事項を丁寧に説明して理解してもらっている。
②遺体の搬送ご遺族等の心情に配慮し、宗旨や慣習に即して細心の配慮をもってご遺体の取扱いを行うとともに、搬送後の手洗い、消毒等を部下・後輩に徹底するなど、公衆衛生上の配慮を的確に行っている。
③遺体の安置ご遺体等の腐敗が進行しないように周辺の環境を慎重に整え、習慣や宗教・宗派、家族の意向に合わせて安置方法の判断を的確に行っている。
遺体処置・湯灌、納棺①清拭・湯灌、納棺宗派や地域による習慣の違いを深く理解し、特殊・例外的な対応が求められるケースについても、死亡判定直後の処置、内容物の排出や全身の清拭、綿詰め、着替え、化粧等の遺体処置を適切に取り進めている。
②納棺ご遺体の状況や季節、天候、日程等を考慮したうえで、納棺のタイミングを判断するとともに、「家族の想い」を汲み取り、状況に即して柔軟に対応しながら納棺を行っている。
会場設営①事前準備社葬・団体葬についても、喪主と十分な打ち合わせを行い、会場の確保や動線の設定など事前準備を的確に行うとともに、スタッフや外注先の確保・選定を的確に進めている。
②会場設営社葬・団体葬の場合を含め、設営の進行管理を行い、部下や後輩に的確な指示・命令を行って監督するとともに、トラブルが発生した場合には速やかに謝罪を行うなど、適切に対応している。
③撤去と清掃撤去作業の進行管理を行い、現状修復が完全に出来ているかチェックしたうえで、ご遺族等や設営場所の関係者へ終了の挨拶とお礼を行っている。
式典運営①誘導・案内社葬・団体葬など大規模な葬儀の場合を含め、自ら的確に誘導・案内を行うとともに、部下や後輩に必要な指示を出している。
②司会進行個人葬のみならず社葬・団体葬を含めた様々な葬儀において、進行表に沿って開式予告、開式、読経、弔辞、焼香などのアナウンスを適切に行い、スムーズに司会進行している。
③突発時対応突発時の対応マニュアルを部下や後輩に周知徹底し、想定していない事態が発生した場合には、部下を落ち着かせ、冷静に対処方針を判断している。
アフターケア①請求・集金大規模な葬儀の場合を含め、請求書をご遺族等に説明し、ご遺族等から疑義があった場合にも誠実・正確に回答し、その了解を得ている。
②アフターサービスご遺族等が求める情報をタイムリーに提供し、自社の利益ではなく、常にご遺族等の立場に立ってアフターサービスを提供している。
③クレーム対応クレームを受けた場合には、速やかに事実関係を確認し、関係者と連携して原因究明を行うとともに、再発防止策を立案している。
施行業務管理①業務調整・外注先の選定社内外の関係者と業務調整を行うとともに、外注先に提示する見積り依頼書等の引き合い書類を作成している。
②業務管理・外注先の管理重要な外注先の担当者との間に強固な信頼関係を構築し、進捗の管理を行うとともに、外注品の不具合や遅延等の問題が発生した場合には、対応方針を的確に判断している。
葬具管理①葬儀の維持管理葬具の使用状況や消耗度合いを確認し、廃棄に関する判断を適切に行っている。
②在庫管理葬具の流行や顧客ニーズ、価格動向等を勘案し、葬具の購入に関する判断を的確に行っている。

施行業務・職業能力評価シート【レベル4】

レベル4の施行業務・職業能力評価シートは、部長や統括責任者など管理職をイメージした内容となっています。

能力ユニット能力細目職務遂行のための基準
事前相談①相談準備個葬儀に対する社会風潮や最新のトレンド等についての体系的な知識を有し、相続・遺言・贈与などの周辺知識についても一通り習得している。
②事前相談の実施常にお客様の立場に立って懇切丁寧な相談対応を行い、お客様の葬儀に関する不安を解消し、高い顧客満足を実現している。
③フォローアップ相談に来られたお客様と継続的なつながりを維持するための仕掛けを立案し、実行している。
葬祭企画①受付け対応大規模な個人葬や社葬・団体葬に関する問い合わせに対しても、必要な事項を確認し、段取り等について丁寧に説明を行っている。
②打合せご遺族等の想いを汲み取りながら、適切に打ち合わせを進め、過去に前例がないような社葬・団体葬の場合においても、どのようにすればそれが実現できるかを考え、提案している。
③葬祭企画大規模な個人葬や社葬・団体葬についても、状況に即して的確に葬儀の基本方針をまとめ、しっかりとしたマニュアルを作成している。
見積り、受注①提案書、見積書の作成通常の葬儀だけでなく社葬・団体葬等の大規模な葬儀についても、喪主・施主の意向を一つ一つ確認しながら提案書や見積書の作成を行っている。
②請書の作成と受注社葬・団体葬や特殊・例外的な葬儀についても、喪主・施主とコミュニケーションをとりながら受注業務を適切に行っている。
搬送①遺体の引き取りご遺族等が極度の混乱状態にある状況においても、相手を落ち着かせ、必要な事項を丁寧に説明して理解してもらっている。
②遺体の搬送ご遺族等の心情に配慮し、宗旨や慣習に即して細心の配慮をもってご遺体の取扱いを行うとともに、搬送後の手洗い、消毒等を部下・後輩に徹底するなど、公衆衛生上の配慮を的確に行っている。
③遺体の安置ご遺体の腐敗が進行しないように周辺の環境を慎重に整え、習慣や宗教・宗派、家族の意向に合わせて安置方法の判断を的確に行っている。
遺体処置・湯灌、納棺①清拭・湯灌、納棺宗派や地域による習慣の違いを深く理解し、特殊・例外的な対応が求められるケースについても、死亡判定直後の処置、内容物の排出や全身の清拭、綿詰め、着替え、化粧等の遺体処置を適切に取り進めている。
②納棺ご遺体の状況や季節、天候、日程等を考慮したうえで、納棺のタイミングを判断するとともに、「家族の想い」を汲み取り、状況に即して柔軟に対応しながら納棺を行っている。
会場設営①事前準備宗教・宗派、地域による設営の違いを熟知し、特殊な対応が必要な社葬・団体葬についても、外注先等と効果的に連携し、設営プランをまとめている。
②会場設営特殊・例外的な葬儀を含め、会場設営の総責任者として陣頭指揮をとり、設営状況を最終的にチェックし、施主に報告している。
③撤去と清掃特殊・例外的な設営を行った葬儀を含め、撤去作業全体の指揮をとり、正確・迅速に作業を進めるとともに、ご遺族等や設営場所の関係者へ会社を代表して終了の挨拶とお礼を行っている。
式典運営①誘導・案内総責任者として、大規模な個人葬や社葬・団体葬において、誘導・案内の場を的確に取り仕切り、混乱が発生することがないようにしている。
②司会進行VIPが多数参列するケースなどあらゆる葬儀において、関係者全体にきめ細やかな配慮を行いながら、ご遺族等や参列者の印象に残るような心のこもった司会進行を行っている。
③突発時対応関係部署と連携して突発時の対応マニュアルを作成し、部下や後輩に周知徹底するとともに、全く想定していない事態に直面しても、冷静に対応策を判断し、その場で最善の策を見つけ出している。
アフターケア①請求・集金請求段階で苦情が発生しないよう、見積りからの変更・追加の際には必ずご遺族側責任者のサインを得るなど、トラブルの未然防止策を部下に徹底している。
②アフターサービスご遺族等から信頼され、高い顧客満足や他社との差別化を実現するようなアフターサービスの仕組みづくりを行っている。
③クレーム対応部下や後輩が対応しきれない難しいクレームを引き取り、解決を図るとともに、クレームを表面的に捉えるのではなく、再発防止の観点から本質的な問題点を追及し、サービスの改善を図っている。
施行業務管理①業務調整・外注先の選定外注に関する方針や外注計画を策定し、外注先と中長期まで見据えた戦略的な連携関係を構築するとともに、仕出し料理、返礼品、供花・花環など、葬祭施行に関する重要な外注先を的確に選定している。
②業務管理・外注先の管理大規模な葬儀の場合など、外注先の数や外注金額が大きい場合についても、適切に外注管理を行い、外注品について重大な不具合や遅延等の問題が発生した場合には、状況に即して対応方針を迅速に判断し、問題を解決している。
葬具管理①葬具の維持管理葬具の使用状況や消耗度合いを確認し、廃棄に関する判断を適切に行っている。
②在庫管理葬具の流行や顧客ニーズ、価格動向等を勘案し、葬具の購入に関する判断を的確に行っている。

企画・営業業務の職業能力評価基準

企画・営業は、お客様(喪主様・ご遺族様)のニーズや地域の動向を把握し、新しいサービスの企画・立案したり、個 人・企業・病院・団体などに対して営業活動を行うのが職務です。

企画・営業のレベル区分は以下のようになっています。

レベル区分の目安呼称イメージ資格検定制度との関連
レベル2葬祭サービスに関する一般的な知識を有し、担当範囲の営業活動を的確に遂行できる能力水準・係長
・主任など
葬祭ディレクター技能審査2級程度に相当
レベル3葬祭サービスに関する詳細な知識を有し、新商品・新サービスの企画立案や営業活動を統括できる能力水準・葬祭ディレクター
・課長
・責任者など
葬祭ディレクター技能審査1級程度に相当
レベル4あらゆる葬儀について体系的かつ網羅的な知識を有し、戦略的
な商品企画や営業戦略の推進をリードできる能力水準
・部長
・統括責任者など
※企画・営業にレベル1はありません。

生花の職業能力評価基準

生花は、葬儀に欠かせない生花を取り扱う職務です。祭壇や装飾で使用する生花の仕入れや保管、企画・デザイン、製作、設営・撤収などを行います。

生花担当者のレベル区分の目安は、以下のようになっています。

レベル区分の目安呼称イメージ資格検定制度との関連
レベル1葬儀についての基本的な知識を有し、上司の指示・助言を踏まえて日常的な生花業務を遂行できる能力水準・スタッフ
・担当者
レベル2葬祭サービスに関する一般的な知識を有し、担当範囲の生花業務を独力で遂行できる能力水準・係長
・主任など
葬祭ディレクター技能審査2級程度に相当
レベル3葬祭サービスに関する詳細な知識を有し、高い専門性に基づき、生花業務を統括できる能力水準・葬祭ディレクター
・課長
・責任者など
葬祭ディレクター技能審査1級程度に相当
レベル4あらゆる葬儀について体系的かつ網羅的な知識を有し、生花において他社との差別化を実現し、高い顧客満足度を実現できる能力水準・部長
・統括責任者など

出典:厚生労働省 葬祭業の職業能力評価シート

葬儀業界における職業能力評価基準の活用

葬儀社

職業能力評価基準を利用することで、人材育成や人事評価など人材面において大きな効果が期待できます。
ここでは、葬儀業界において職業能力評価基準を活用する方法について考えていきましょう。

人材育成・人事評価

職業能力評価基準
出典:厚生労働省 職業能力評価基準について 葬祭業キャリアマップ

職業能力評価基準を利用することで、従業員のスキルや能力を客観的かつ詳細に分析できるようになります。
それぞれの能力や得意・不得意に合わせた指導を行うことで、効率的で効果的な人材育成が可能になるだけでなく、従業員も自分が学ぶ必要がある部分を認識しやすくなるでしょう。

また、人材育成の手順の指標にもなるため、人を育てるという観点からも大きなメリットになります。
人事評価は従業員のモチベーションを大きく左右します。基準がはっきりしない曖昧な人事評価は、従業員の不満を招くかもしれません。
職業能力評価基準を導入することで人事評価の基準が明確になりますので、自分の評価に不満があったとしても、自分に足りないものを具体的に自覚し、努力する方向性が見えてくるため、従業員のモチベーションが向上する可能性も秘めています。

人材採用・人事配置

職業能力評価基準を用いることで葬儀社様が求める人材が明確になるため、人材採用を行う際の基準にもなります。
また、従業員の職務に対する適否を判断する目安にもなるので、より適性がある職務に配置することが可能です。

人材教育のカリキュラム・教材の作成

職業能力評価基準には必要な能力が明示されています。これらをしっかりと押さえることでバランスの取れた人材教育のカリキュラムや教材を作成することが可能です。

職務分析・職務設計

職業能力評価基準と自社における同職務のあり方を比較することで、現在の職務のあり方を見直したり、職務の内容を明確にすることにつながります。
また、自社の目標を実現するためには業務を合理的に設計していくことにも役立ちます。

まとめ

本記事では、厚生労働省が策定した職業能力評価基準について解説しました。

どんな業界でも人材育成は難しいものです。
特に繊細な業務であり、臨機応変な対応やお客様(喪主様・ご遺族様)に向けた配慮を求められる葬儀業界は、課題が多いといえるかもしれません。
職業能力評価基準は、人材育成、人材採用、人事評価など、人事面の課題を解決に導く大きなヒントになりそうです。

本記事が、葬儀社様の採用活動にお役立ていただければ幸いです。

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