在来仏教13宗56派とは？｜御本尊様やお題目など真宗山元派の特徴について解説

2023年6月6日

信仰心の希薄化が取り沙汰される現在の日本ですが、国内で営まれる葬儀の8割前後が仏式で執り行われているようです。
しかし菩提寺を持たない家庭も増えていることから、葬儀を依頼できる僧侶がいないという方も多く、自分の家の宗派を把握していないケースも少なくありません。

一般の方が、仏教を含む宗教に対して親しみを覚えない要因の1つとして、自身の家が代々信仰してきた宗教に関する知識の不足もあるのではないでしょうか。
近年では核家族化などの影響から、親世代と子供・孫世代が離れて暮らしているケースも多く、信仰に関する経験や知識が継承されにくくなっているようです。

葬儀業界では葬儀施行単価の下落が深刻な状況となっていますが、宗教儀式に対する関心の低下も葬儀の簡素化が進む原因の1つと考えられます。
葬儀のもつ意義を一般の方に理解してもらうためにも、仏教離れの流れに歯止めをかける必要があるでしょう。

日本には古くから受け継がれてきた在来仏教が13宗56派あり、各宗派を信仰する方が仏教徒の多くを占めているようです。
本記事では、在来仏教宗派のうち真宗山元派について、わかりやすく紹介します。
葬儀社様の業務に活かせる部分もあるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

真宗山元派の概要

真宗山元派（しんしゅうやまもとは）は、浄土真宗に属しており、現在では10の宗派に分流している「真宗十派（しんしゅうじっぱ）」と称される内の一派です。
浄土真宗としては派が分かれた状況ですが、宗派の原点はあくまでも宗祖親鸞聖人であるとされています。
山元派のおこりは、法難によって越後に流罪された親鸞聖人が、当時は越前国の山元とよばれていた地で教化したことがきっかけとされているようです。

親鸞自身は赦免されて関東そして京都へ移っていきましたが、のちに親鸞の嫡男である善鸞（ぜんらん）が越前国に派遣されて、親鸞の代わりとして務めたとされます。
その後は善鸞も関東へうつってしまい、その後継を残された嫡男の浄如（じょうにょ）が務めたといわれます。
浄如は若く上京して親鸞から教えを受けたとされており、親鸞が入寂した際には分骨を山元の地へ捧持（ほうじ＝捧げ持つこと）して、帰住したと伝えられます。

室町時代から江戸時代にかけては、宗旨替えなどによる内紛や、焼き討ちにあうなど、寺院としての勢力が衰退していく事件が起こっていたようです。
明治時代に入ると、明治政府の宗教政策によって浄土真宗本願寺派と合流しています。しかしその後、明治11年には「真宗山元派」として独立を果たすことになりました。

真宗山元派のご本尊様

真宗山元派の本山である、證誠寺に祀られている本尊は「阿弥陀如来」です。
「阿弥陀如来」は、仏教で伝えられる仏様のなかでも代表的な仏様といえます。
別名で阿弥陀仏とも呼ばれており、生きとし生けるすべてを救おうと考え、修行の末仏になったと伝えられています。

阿弥陀如来は「極楽浄土（ごくらくじょうど）」をつくった存在とも伝えられており、現在でも極楽浄土の地で弟子たちに教えを説いているとされています。

真宗山元派の開祖

宗祖親鸞聖人

親鸞聖人は「浄土真宗」の宗祖として非常に名を知られている僧侶です。
真宗山元派は、親鸞聖人が越前国で教化したことが宗派のはじまりとされており、山元派の開祖とされています。

親鸞は9歳のときに天台宗の青蓮院において得度されたと伝えられています。
出家した後は比叡山に登って修行に入っていたようです。

29歳のときに比叡山を下りた親鸞は、六角堂（ろっかくどう＝天台宗系の単立寺院である頂法寺の別称）に100日の間、籠って祈願したと伝えられています。
祈願の95日目に、親鸞の夢に聖徳太子が霊験を示されたと言い伝えられており、この後に親鸞は浄土宗開祖である法然上人のもとを訪ねたとされます。
法然に帰依した後は、専修念仏の教えを学びました。

その後は「承元の法難（建永の法難ともいう）」という事件に遭い、親鸞は越後国（えちごのくに＝今の新潟県）に流罪とされてしまいます。
40歳のころに流罪から赦免されたようですが、赦免後すぐには京都へ戻ることが叶わなかったようです。
その後、親鸞は関東へ居を移し、常陸国稲田（ひたちのくにいなだ＝今の茨城県笠間市）を中心に関東各地の教化に務めたとされます。

晩年には京都へ戻ることが叶い、門弟への指導のほか、著述活動に勤しんだと伝えられています。
88歳のころまで筆をとり続け、数々の書を撰述していたようです。
1262年11月28日に行年90歳で親鸞が入滅したと伝えられています。
現在、真宗の各寺院で執り行われている「報恩講（ほうおんこう）」と呼ばれる行事は、親鸞上人の法要です。

真宗山元派で主に使用される経典

真宗では経典として「浄土三部経（じょうどさんぶきょう）」を用いています。
「浄土三部経」とは、三つの経典「無量寿経（むりょうじゅきょう）」「観無量寿経（かんむりょうじゅきょう）」「阿弥陀経（あみだきょう）」を総じて示しています。

この三つの経典の中では、「阿弥陀経」が一番聞き覚えのある経典ではないでしょうか。

真宗山元派の代表的な寺院

真宗山元派の寺院は、本山である證誠寺（しょうじょうじ）のほか、全国に20寺が存在するようです。

参照：宗教年鑑（令和2年版）

本山證誠寺

證誠寺（しょうじょうじ）は福井県鯖江市にある山元派の本山寺院で、正式名称を「山元山護念院證誠寺」といいます。
寺院建立については、室町時代に8世住持の道性（どうしょう）が現在地に移して、現在に至ると伝えられます。

江戸時代に入ると、證誠寺が聖護院（しょうごいん＝本山修験宗総本山）の末寺となったことで天台宗に属しています。聖護院は当時、天台宗門跡寺院でした。

明治時代には宗教政策で本願寺派に属しています。
しかしその後には「真宗山元派」として独立を果たすことになり、證誠寺は「真宗山元派」の本山となるのです。

20世法主の善超が、藤原上流公家の菊亭家に猶子として縁を結んでいたことから、菊亭家の家紋である「三つ紅葉（みつもみじ）」が寺紋として使用されることになりました。

真宗山元派の高名な僧侶

中興祖藤原善超（東溟上人）

善超は20世法主として證誠寺住持に迎えられていた人物です。
菊亭家（きくていけ）という公家・華族の家に猶子として迎えられていたとされ、22歳のころに證誠寺の第20世として入山したと伝えられます。

善超が入山したころの證誠寺は、火災などによって荒廃していたようです。
その證誠寺の再興に力を尽くしたことで、善超は山元派における「中興の祖」といわれるようになったと伝えられます。

猶子として公家の家に迎えられていたことから、幼少のころには和歌などを学んでいたようで、後年は歌集を残すなど、歌人としても著名であったようです。

真宗山元派の特徴

真宗山元派のお題目

真宗のお題目は「南無阿弥陀仏（なむあみだぶつ）」です。
これは「阿弥陀様に帰依します」ということを表しているといわれます。

真宗では「南無阿弥陀仏」と声にして唱えることで、極楽往生を遂げられるという教えが伝えられており、阿弥陀様を信じることが大切と説かれています。

真宗山元派における年間行事

真宗山元派で執り行われる行事は下記のとおりです。

1月1～3日：修正会
3月19～21日：春季彼岸会
8月上旬：墓参会・永代経会
8月11日：お寄会
9月22～24日：秋季彼岸会
11月21～28日：御正忌報恩講

出典：真宗教団連合ホームページ

真宗山元派の寺紋

三つ紅葉（みつもみじ）

證誠寺の寺紋である三つ紅葉は、菊亭家の家紋です。
20世法主として證誠寺に入られた善超が、菊亭家の猶子であったことからその家紋を寺紋に使用するようになったといわれています。

真宗山元派の葬儀について

真宗の教義である専修念仏は、「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えれば阿弥陀如来の力で極楽浄土へ行けるというものです。
そのため浄土真宗における葬儀とは、阿弥陀如来に感謝をし、浄土での故人の幸せを願う儀式と捉えられているようです。

しかしながら残された人にとっては、やはり故人との別れの悲しみは大きく、その心に空いた穴は簡単に埋まるものではありません。
葬儀は、悲しみを受け入れ、悲しみを乗り越えるために必要な儀式である、といわれる所以はここにあるのでしょう。

真宗山元派の葬儀を執り行うにあたって

葬儀を執り行うに際して、まずは菩提寺に連絡をして、葬儀の日取りを決めなければなりません。
また現代では、同時に葬儀社へ連絡をして葬儀施行を依頼することも必要とされています。

枕経

菩提寺に連絡をすると、僧侶がはじめのお経（枕経＝まくらきょう）をあげに来られます。故人様の枕元であげるお経なので、枕経といいます。
真宗ではこの枕経を「枕勤め」「臨終勤行」ともいいます。

枕経が終わったら、僧侶から葬儀の日取りの打ち合わせと、阿弥陀如来の弟子となられる故人様へ法名を授けるために、お人柄の聞き取りがおこなわれます。
枕経には、葬儀を依頼する葬儀社も立ち会うことが多いので、葬儀社にも枕経の日時を連絡するとよいでしょう。
地域の風習や菩提寺の都合などで、枕経と通夜をあわせておこなうこともあるようです。