葬祭業の人材不足は長年、深刻な問題となっています。業界では問題解決としてさまざまな取り組みを行っていますが、ひとつの糸口として人材確保や育成、キャリアアップに貢献しているのが、葬祭関連の学科を備えた専門学校です。
この記事では葬祭業における人材問題や取り組みを踏まえ、専門知識を学び資格取得できる専門学校6校を紹介します。
葬祭業における就業状況
高齢化社会の進展や生活スタイルの変遷によって、葬祭業の就業状況は刻々と変動しています。他の業種に比べ離職率が高く人材不足は深刻ですが、近年は若年層が葬祭業に関心を寄せるケースも。
人材確保の取り組みとして、専門学校が担う役割について考察いたします。
就業人口や就職希望者の変化
近年の少子高齢化に伴い、高齢者の人口が増加。年間死亡者数も2040年まで増え続けると予想されており、葬儀の需要は確実に増えています。
円滑な葬儀サービスを行うため、葬祭業界では常に安定した人材の確保を求めているのが現状です。
しかし、旧来からの偏見等による就業希望者不足に加え、長時間労働や精神的・体力的負担の大きさから離職率も多く、慢性的な人材不足に悩んでいます。
一方で最近は、経済的安定や社会貢献という考えにより、若年層から葬祭業が関心を持たれる傾向にあります。専門学校で葬儀に関する知識や経験を身につけてから、葬祭業への就職をのぞむ方も徐々に増えつつあるようです。
人材確保に対する取り組みと専門学校の役割
業界内において人材確保の取り組みは多々ありますが、そのひとつとして重要視されているのが専門学校との連携です。
専門学校では、葬儀に関する専門的な知識を身につけることができるカリキュラムに加え、学校によっては葬祭関連企業へのインターン制度等を取り入れ、実践的な学びの場を提供しています。
また2年制の葬儀関連学科では、葬祭ディレクター2級の取得サポートを行っています。
新卒以外でも、業界内でのキャリアアップ、他業種からの転職やセカンドキャリアの観点から、専門資格の取得は注目されています。葬儀スタイルの変化により、特にエンバーマーや納棺師の需要は今後ますます増えると考えられます。
人材育成という面はもちろん、葬祭業への就職支援も含め、専門学校の役割は今後ますます大きくなっていくでしょう。
専門学校で取得できる葬儀の専門資格
葬祭関連業務に必要な専門知識や実務スキルを身につけることのできる専門学校ですが、大きなメリットとしては専門分野の資格を取得できることにあります。
各専門学校の紹介の前に、どんな資格を取得することができるか解説いたします。
葬祭ディレクター
厚生省が認定する国家資格(厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査)で、葬儀に関する知識や技能を証明しているのが葬祭ディレクターです。
葬儀の企画運営から儀式の運行まで、葬祭ディレクターの業務は多岐に渡り、葬儀社において重要なポジションを担っています。
また、在籍スタッフが葬祭ディレクター資格を有していることは、葬儀社の信頼性向上にも繋がりますので、葬祭ディレクターの需要は非常に高いといえるでしょう。
葬祭ディレクターには1級と2級の種別があり、1級の受験資格は実務経験5年以上、もしくは2級の資格取得から2年以上の葬祭実務経験が必須となっています。
2級の受験資格は葬祭実務経験が2年以上となりますが、協会認定の葬祭教育機関(専門学校)の所定カリキュラムを修了、または修了見込みがある場合は、就学期間を葬祭実務経験に加算することができます。
エンバーマー資格(IFSA認定資格)
ご遺体を長期保存するために修復・防腐・防疫処置を施すことを「エンバーミング(遺体衛生保全)」、エンバーミングを実施する人をエンバーマー(遺体衛生保全士)と呼んでいます。
エンバーマーとして国内のエンバーミング施設で就業するためには、IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)が認定するエンバーマー資格(IFSA認定資格)が必要になります。
エンバーマー認定の受験資格を得るためには、IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)が認定する養成校にて修業することが条件となっていますが、現在のところ国内の養成校は日本ヒューマンセレモニー専門学校のエンバーミング学科のみとなっています。
納棺師
ご遺体を棺に納めるための一連の儀式を行うのが納棺師です。故人様が安らかに旅立つことができるよう、お体を浄め、お着替えやメイクを整えるなど、葬祭業のなかでも専門的な知識や高い技術力が必要な職種となっています。
葬儀スタイルの多様化により、近年では葬儀社や納棺業者だけでなく、介護事業者や医療機関でも納棺師の求人が増加傾向にあることから、納棺師の活躍の場は、以前よりも広がっているといえるでしょう。
国家資格などはありませんが、専門学校では座学に加え、実践的に学ぶことが可能です。また各学校の認定資格を取得することで、求職やスキルアップが有利になるでしょう。
葬儀のお仕事が学べる専門学校の紹介
それでは実際に葬祭関連の専門資格を取得できる専門学校6校を紹介します。取得できる資格とともに修業年数や応募資格等も参考にしてみてください。
日本ヒューマンセレモニー専門学校
フューネラル学科
- 取得可能な資格 葬祭ディレクター2級
- 修業年限 2年制(昼)
- 応募資格 高卒以上
葬祭ディレクター技能審査協会認定の葬祭教育機関。葬祭ディレクターとしての知識や実務に加え、公衆衛生やグリーフケア、宗教学、フラワーデザイン、マーケティングなど、幅広い知識を学ぶことができるのが特徴です。
エンバーミング学科
- 取得可能な資格:エンバーマー資格(IFSA認定資格)
- 修業年限:2年制(昼)
- 応募資格:高卒以上
IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)の教育認定校。さまざまな形でお亡くなりになった故人様に対し、修復、腐敗防止、ラストメイクなどのエンバーミング技術を総合的に学ぶことができる日本唯一の認定機関です。
【所在地】神奈川県平塚市八重咲町7-30
【TEL】0463-27-2002
【公式サイト】https://humanceremony.ac.jp/
東京ホスピタリティ・アカデミー
葬祭ディレクター学科 葬祭ディレクターコース
- 取得可能な資格:葬祭ディレクター2級
- 修業年限:2年制(昼)
- 応募資格:高卒以上
葬祭ディレクター技能審査協会認定の葬祭教育機関。葬祭ディレクター2級の合格を目指すとともに、サービス介助士、サービス接遇検定、フラワー装飾技能検定3級など就職に有利となる資格にも力を入れています。
【所在地】東京都新宿区市谷田町3-21
【TEL】0120-67-6006
【公式サイト】https://www.tit.ac.jp/department/funeral/
大阪ホスピタリティ・アカデミー
葬祭ディレクター学科 葬祭ディレクターコース
- 取得可能な資格:葬祭ディレクター2級
- 修業年限:2年制(昼)
- 応募資格:高卒以上
葬祭ディレクター技能審査協会認定の葬祭教育機関。葬儀に関する知識や現場での対応力、資格・経験だけでなく、ご遺族に寄り添うコミュニケーション力を育成。「人間力」を高めていくことを教育方針としています。
【所在地】大阪府大阪市北区堂島2-3-11
【TEL】0120-89-2299
【公式サイト】https://www.daikan.ac.jp/gakka/funeraldirector/
国際ホテル・ブライダル専門学校
葬祭ディレクター科
- 取得可能な資格:葬祭ディレクター2級
- 修業年限:2年制(昼)
- 応募資格:高卒または同等以上
葬祭ディレクター技能審査協会認定の葬祭教育機関。葬儀と宗教、歴史や葬儀装飾などの知識から、グリーフケアを考慮した葬儀プランまで幅広いカリキュラムが特徴に。長期間のインターンシップ制度も取り入れています。
葬祭セレモニー科
- 修業年限:1年制(昼・通信制)
- 応募資格:高卒または同等以上
オンラインによる授業で専門的な知識を身につけることが可能。業界第一線で活躍するプロの講師からの少人数制や個別指導の講座もあり、また年数回のスクーリングでは、社会貢献活動に参加することができます。
【所在地】新潟市中央区古町通7番町935 NSGスクエア4F
【TEL】025-227-5600
【公式サイト】https://www.wish-web.com/gakka_similarterm_director_C.html
九州SOGI専門学校
デュアルシステム科 湯灌納棺師コース
- 修業年限:1年制(昼)
- 応募資格:高卒(年齢33歳以下)
教室における座学に加え、企業での実習を重視しながら、湯灌納棺師を育成するカリキュラムが特徴。授業全体の46%(440時間)にも渡る「総合企業実習」では、実際の葬祭場に勤務し〝学びながら働く〟を実現することができます。
【所在地】長崎県長崎市光町10-18
【TEL】095-865-6217
【公式サイト】https://sogi.ac.jp/
おくりびとアカデミー
納棺士コース
- 取得可能な資格:納棺士(一般社団法人日本納棺士技能協会認定)
- 修業年限:6ヶ月(昼・週3日)
納棺師養成に特化した専門機関として、メディアからも注目されるスクール。納棺技術はもちろん葬祭や宗教、関連法規などに関する知識も身に付けられるようになっています。短期講座や特別講座もあり、気軽に体験することが可能です。
【所在地】東京都中央区入船3丁目7-7 ウィンド入船ビル6F
【TEL】03-4530-3964
【公式サイト】https://okuribito-academy.com/
まとめ
葬儀社様において優秀な人材を確保することは、企業への信頼やサービスの充実、顧客満足度の向上に繋がります。人材不足の葬祭業界では、葬祭ディレクターなどの専門資格を有している人材の需要は非常に高いといえるでしょう。
また、すでに葬祭業務に携わる方にとっては、資格を取得することでスキルアップし、待遇面での向上も期待できます。葬祭業に転職したい方にとって資格の取得は、キャリアにおける大きな切り札にもなります。
そのためにも、葬儀のお仕事を学ぶことができる専門学校は私たち葬祭業にとって重要な存在です。人材の確保や育成に貢献する専門学校と連携することが、今後ますます重要になってくるでしょう。