葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。
今回は株式会社レクストワンの現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

株式会社レクストワンの概要
株式会社レクストワンは、岐阜県内に5ヵ所の葬祭ホールを運営する冠葬祭互助会事業者で、アルファクラブグループに属する企業です。
2017年7月3日に社名が「株式会社大垣冠婚葬祭互助会」から「株式会社レクストワン」に変更されており、2017年から2020年の期間に代表取締役も浅野総一郎氏から、アルファクラブ東北 株式会社の代表取締役社長 神田 貢典氏に変わっています。
レクストワンの貸借対照表を確認してみると、49期が2020年5月末日で締められ、50期は2020年6月末日までの1か月間と、非常に特異な状況になっていました。
また47期に7千万円だった資本金も49期の時点で2千万円に減少しており、48期の決算公告も確認できないことから、2017年7月から2020年5月末日の期間に大きな変更が行われたと考えられます。
h2:葬儀社の決算公告とは
決算公告はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。以下に、決算公告についての簡単な概要を記載しました。
株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告と言います。
公告の方法は全部で3つあります。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)
決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。
なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?
葬儀社の大手あるいは長年 葬儀・葬祭事業を営む会社は冠婚葬祭互助会を運営するケースが多いです。
冠婚葬祭互助会とは冠婚葬祭などの行事に備えるために毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスとなっております。互助会の会員になることで葬儀や婚礼で割引などの優遇があります。
冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた事業者となります。
会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。
- 法務局に供託する
- 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
- 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ
上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。
経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧
上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。
レクストワンの貸借対照表

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。自己資本比率が10%を下回っている場合は経営状態は良いとは言えません。
自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。
自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。
のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと
貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、
貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。
レクストワンの自己資本比率
自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
しかしレクストワンの場合は、2021年7月期に発生した当期純損失により純資産がマイナスになっており、2021年7月期の時点では債務超過の状態です。
2020年から2021年にかけて行政によって発出された新型コロナ関連の規制により、葬儀業界も大きな痛手を被りました。
こういった事情から、当該期間に当期純損失が生じた葬儀社も多く、レクストワンのケースも同様の現象と考えられます。
しかし2022年に入って新型コロナ関連の規制も緩和されつつあることから、葬儀業界も全体的に回復基調にあるようです。
レクストワンの債務超過については、2021年7月期に発生した当期純損失によるものですので、2022年7月期には黒字転換している可能性もあります。
レクストワンの資産と負債について
自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。
この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。
資産合計の推移
貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。
・流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など
・固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
・無形固定資産:ソフトウェアなど
・繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など
レクストワンの資産合計の推移は以下のようになっています。

レクストワンの資産合計の推移をみると、2021年7月期に1億8千5百万円ほど減少していますが、これは新型コロナの影響による損失が主な原因とも考えられます。
また49期から50期までは1か月間しか経過していないので、資産合計にほとんど変動がないのは当然といえるでしょう。
負債合計の推移
貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。
・流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります。
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など
・固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など
レクストワンの負債合計の推移は以下のようになっています。

負債合計の推移をグラフで確認すると、株式会社レクストワン
の負債合計は2021年7月期に約1億円減少しています。
資産合計の減少金額が1億8千5百万円ですので、資産合計・負債合計の両面から見ると、レクストワンの実質的な資産減少金額は、当期純損失の金額とほぼ同額なのが分かります。
レクストワンは2021年7月期に債務超過に陥っているものの、マイナス分は8千万円ほどですので短期間で黒字回復する可能性も十分にあります。
短期的な安全指標である流動比率(流動負債÷流動資産×100)も、285.04%と安全レベルとされる200%を超えている状態です。
レクストワンの純資産について
自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。
純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。
この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。
レクストワンの純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)
純資産合計の推移
会社の所有する現金や建物などの資産から負債(借金)を差し引いたものとなります。
純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

レクストワンの純資産は、2021年7月期に発生した当期純損失分とほぼ同額のマイナスとなっています。
2020年から2020年にかけては、葬儀業界内でも新型コロナの影響で収益が一時的に悪化したケースが少なくありません。
こういった事情を鑑みると、レクストワンのケースも新型コロナの影響による、一時的な収益悪化の可能性もあります。
当期純利益の推移
会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。
当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。

レクストワンの2021年7月期における当期純損失は、8千6百万円となっています。
とはいえ、2020年7月期までは極端に巨額の当期純損失が発生していないので、新型コロナによる一時的な収益悪化の可能性もあります。
2022年7月期の決算公告が待たれるところです。
利益剰余金の推移
利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。
内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため企業が生き残るための重要な資金源となります。
レクストワンの場合は以下のように推移しております。

レクストワンの利益剰余金は2021年7月期に-1億円に達していますが、2020年7月期から2021年7月期に発生したマイナス分は、8千6百万円と当期純損失と同額です。
このことから、マイナス分のほとんどは新型コロナの影響による一時的な収益悪化によるものと考えられます。
また2017年7月期から2020年6月期にかけて、株式会社レクストワンの利益剰余金のマイナス分は大幅に減少していますが、同時期に資本金が7千万円から2千万円に減少しています。
あくまで仮説になりますが、この期間に資本金減少分を利用して、利益剰余金のマイナス分を一旦清算しているのかもしれません。
株式会社レクストワンのまとめ
今回は株式会社レクストワンの決算公告を参考に、現状分析を行いました。
外部からでは見えない企業の内部状況も、決算公告で公開される貸借対照表を分析することで、ある程度まで把握できる点がお判りいただけたかと思います。
株式会社レクストワンも、新型コロナ関連の行動規制による影響を受けたことは間違いありませんが、決算公告を見る限りでは、経営状態の短期的な危険性は少なそうです。
葬儀業界の今後の先行きは不透明な状況ですが、2022年に入って新型コロナ関連の規制も緩和されつつあります。
株式会社レクストワンも、アルファクラブのグループ企業として再出発を図ると思われますので、今後の動向を注視していきたいと思います。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。より詳しい情報を知りたい方はお気軽にお問合せ下さい。
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