株式会社日本セレモニー(山口) 〜典礼会館〜┃冠婚葬祭互助会の業績・利益をまとめて分析

日本セレモニー 山口

葬儀社の売上・利益・業績を調べる場合、上場しているなら決算発表情報・有価証券報告書をみれば分かります。非上場になると帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、売上・利益・業績の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は日本セレモニー(山口)の現状について、決算公告をもとに分析いたします。
決算公告は上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社日本セレモニー(山口)の概要

日本セレモニー(山口)は、2022年に創立50周年を迎えた愛グループに属しており、典礼会館名義で葬祭事業と冠婚葬祭互助会事業を運営しています。
愛グループはM&Aによって規模が拡大し、現在以下の13社で構成されています。
結婚相談所・ブライダル事業については、2023年4月に株式取得でグループに迎え入れたムスベル株式会社が担っているようです。

◆ 愛グループ

日本セレモニー(山口)は、山口県内で32会館を運営しており『ミライエール』と名付けられた互助会は、安心できる未来のためのライフサポートシステムとなっています。

【名称】株式会社日本セレモニー(山口)
【設立】1972年6月14日
【代表取締役】神田 輝
【所在地】山口県下関市王喜本町6-4-50
【資本金】1千万円
【公式サイト】https://www.nihon-ceremony.jp/
【事業内容】・葬祭事業
      ・冠婚葬祭互助会事業
 出典:株式会社日本セレモニー(山口)会社概要 

葬儀社の決算公告とは

決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。

ただし、大会社については貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。
次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は負債額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告の簡単な概要については以上になります。
なお上場企業の決算報告書(有価証券報告書)はEDINETで公開されており、誰でも閲覧可能です。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより

会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局への供託
  • 経済産業省の指定する保証会社との供託委託契約締結
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約締結

以上の3つの方法のいずれかを選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。

なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

株式会社日本セレモニー(山口)の貸借対照表

決算期46期47期48期49期50期51期52期
利益剰余金221億3千8百万円244億5千7百万円250億2千6百万円278億7千7百万円302億5千6百万円336億2千1百万円358億9千1百万円
会計年度2018年1月期2019年1月期2020年1月期2021年1月期2022年1月期2023年1月期2024年1月期
資産流動資産116億4千9百万円165億3千1百万円163億7千1百万円188億6千2百万円208億6千8百万円258億0千4百万円265億8千9百万円
固定資産1496億2千3百万円1413億6千3百万円1419億9千8百万円1398億4千4百万円1390億0千3百万円1389億5千9百万円1405億1千7百万円
有形固定資産
無形固定資産
投資その他の資産
繰延資産
資産合計1612億7千2百万円1578億9千4百万円1583億6千9百万円1587億0千6百万円1598億7千1百万円1647億6千3百万円1671億0千6百万円
負債流動負債1113億3千6百万円183億0千7百万円184億9千3百万円152億8千6百万円156億5千5百万円159億7千9百万円153億5千8百万円
役員賞与引当金
賞与引当金7千4百万円7千6百万円7千0百万円4千9百万円6千1百万円6千5百万円6千9百万円
その他1億1千1百万円182億3千1百万円184億2千3百万円152億3千7百万円155億9千4百万円159億1千4百万円152億8千9百万円
固定負債265億8千3百万円1139億1千2百万円1136億3千1百万円1143億2千1百万円1127億3千5百万円1139億3千3百万円1146億2千2百万円
退職給付引当金4億6千2百万円4億8千6百万円5億2千1百万円5億4千8百万円5億7千1百万円6億0千7百万円6億4千0百万円
雑収入復活引当金
役員退職慰労引当金
その他261億2千1百万円1134億2千5百万円1131億1千0百万円1137億7千3百万円1121億6千3百万円1133億2千5百万円1139億8千1百万円
負債の部計1379億1千9百万円1322億1千9百万円1321億2千4百万円1296億0千7百万円1283億9千0百万円1299億1千2百万円1299億8千0百万円
純資産株主資本233億4千2百万円256億6千0百万円262億3千0百万円290億8千1百万円314億5千9百万円348億2千5百万円370億9千4百万円
資本金1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円
 資本剰余金11億0千3百万円11億0千3百万円11億0千3百万円11億0千3百万円11億0千3百万円11億0千3百万円11億0千3百万円
資本準備金11億0千3百万円11億0千3百万円11億0千3百万円11億0千3百万円11億0千3百万円11億0千3百万円11億0千3百万円
その他資本余剰金
 利益剰余金221億3千8百万円244億5千7百万円250億2千6百万円278億7千7百万円302億5千6百万円336億2千1百万円358億9千1百万円
利益準備金1百万円1百万円1百万円1百万円1百万円1百万円1百万円
特別償却準備金
その他利益剰余金221億3千7百万円244億5千5百万円250億2千5百万円278億7千6百万円302億5千4百万円336億2千0百万円358億8千9百万円
評価・換算差額等1千1百万円1千4百万円1千4百万円1千6百万円2千1百万円2千6百万円3千1百万円
その他有価証券評価差額金1千1百万円1千4百万円1千4百万円1千6百万円2千1百万円2千6百万円3千1百万円
(うち当期純損失)
新株予約権
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
純資産の部計233億5千2百万円256億7千4百万円262億4千3百万円290億9千6百万円314億8千0百万円348億5千0百万円371億2千5百万円
負債・純資産合計1612億7千2百万円1578億9千3百万円1583億6千8百万円1587億0千4百万円1598億7千0百万円1647億6千3百万円1671億0千5百万円

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である自己資本比率が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。自己資本比率が10%を下回っている場合は経営状態は良いとは言えません。

自己資本比率が低い場合は、借入金などの負債が多い状況と考えられますので、資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で自己資本比率が高い場合は、返済義務を有しない資金を大量に抱えているので、倒産リスクは低くなると考えられます。

貸借対照表 図解

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。

例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

※のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともある

株式会社日本セレモニー(山口)の自己資本比率は22.22%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」の計算式で算出可能です。
日本セレモニー(山口)の2024年1月期の自己資本比率を求める式は、下記のようになります。

371億2千5百万円(純資産)÷ 1671億0千5百万円(総資産)×100=22.22%

上記の式から同社の自己資本比率は22.22%で、前年同期と比べて1.07%上昇となり、財務状況は安定しているようです。

株式会社日本セレモニー(山口) 利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないのですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。

日本セレモニー(山口)の場合は以下のように推移しております。

日本セレモニー(山口)の2024年1月期における利益剰余金は、358億9千1百万円(前年同期比6.75%増)となっています。
過去7年間にわたって利益剰余金は順調に増加を続けています。2024年1月期は2020年1月期と比較すると108億6千5百万円増加しています。

株式会社日本セレモニー(山口)の損益計算書

損益計算書を確認することで、当該企業が「どれだけ売り上げ(=収益)」「費用を何に使って(=費用)」「どれくらいの儲けが出たのか(=利益)」が一目で分かるものです。
特に注目したい項目は、売上高・営業利益・経常利益・当期純利益となります。

損益計算書

決算期46期47期48期49期50期51期52期
会計年度2018年1月期2019年1月期2020年1月期2021年1月期2022年1月期2023年1月期2024年1月期
売上高417億3千4百万円430億0千9百万円424億2千6百万円301億5千2百万円342億2千7百万円390億8千8百万円394億6千7百万円
売上原価186億0千8百万円191億9千2百万円189億8千2百万円119億0千8百万円134億9千1百万円159億0千5百万円161億2千2百万円
売上総利益231億2千5百万円238億1千6百万円234億4千4百万円182億4千4百万円207億3千6百万円231億8千3百万円233億4千4百万円
販売費及び一般管理費185億9千1百万円195億6千8百万円199億8千0百万円170億3千3百万円164億2千3百万円171億7千3百万円197億4千7百万円
営業利益45億3千4百万円42億4千8百万円34億6千4百万円12億1千0百万円43億1千2百万円60億1千0百万円35億9千7百万円
営業外収益10億4千4百万円11億7千6百万円11億2千3百万円32億7千4百万円12億3千4百万円10億8千8百万円11億9千4百万円
営業外費用2億6千2百万円3億1千0百万円2億4千5百万円3億4千3百万円2億1千8百万円1億8千0百万円2億0千2百万円
経常利益53億1千6百万円51億1千4百万円43億4千2百万円41億4千2百万円53億2千9百万円69億1千8百万円45億8千8百万円
特別利益3億2千0百万円13億8千8百万円2億5千5百万円1千7百万円
特別損失13億8千2百万円25億2千5百万円34億4千6百万円7億8千4百万円15億1千7百万円14億9千7百万円10億7千8百万円
税引前当期純利益42億5千3百万円39億7千7百万円11億5千1百万円33億7千4百万円38億1千1百万円54億2千1百万円35億1千0百万円
法人税、住民税及び事業税17億2千3百万円18億0千5百万円12億1千6百万円6億7千3百万円17億9千4百万円22億3千5百万円12億2千1百万円
法人等調整額-2億9千9百万円-3億2千5百万円-8億1千2百万円-1億8千4百万円-3億9千6百万円-3億5千8百万円-1億5千9百万円
当期純利益28億3千0百万円24億9千7百万円7億4千8百万円28億8千6百万円24億1千4百万円35億4千4百万円24億4千8百万円

日本セレモニー(山口)の損益計算書を確認すると、重要ポイントである売上高・営業利益・経常利益が、前年同期を上回っているのが分かります。

売上金額の推移

日本セレモニー(山口)の2024年1月期の売上高は、394億6千7百万円となり、前年同期比0.97%増加しました。
新型コロナの影響が大きかった2021年1月期に大きく減少しましたが、2022年1月期には増加に転じています。2024年にはさらに回復して、コロナ発生前の水準近くになっています。

営業利益の推移

営業利益とは、売上総利益から販管費(=販売費および一般管理費)を差し引いて算出されます。つまり、どのくらい本業で儲ける能力があるかを表す数字となります。

日本セレモニー(山口)の2024年1月期の営業利益は35億9千7百万円で、前年同期比40.15%減少しました。
前年同期に比べて「販売費及び一般管理費」が大幅に増加したのが、営業利益減少の主な要因と考えられます。

事業活動による純粋な利益を表す営業利益率は「営業利益÷売上高」で求められますが、おおむね5%を超えると優良とされています。
35億9千7百万円(営業利益)÷ 394億6千7百万 円(売上高)×100=9.11%

上記の式から日本セレモニー(山口)の営業利益率は9.11%と、安全指標を上回っており不安な点は見受けられません。

経常利益の推移

経常利益はその会社の実力が一番分かる数字で、本業以外の稼ぎ(金融商品、株、為替などの取引で発生した利益)も含めその会社全体でどれだけ稼ぐ力があるか分かります。

日本セレモニー(山口)の2024年1月期における経常利益は、45億8千8百万円で、前年同期比33.68%減少しました。

株式会社日本セレモニー(山口)のまとめ

今回は日本セレモニー(山口)の決算公告を参考に、現状分析をおこないました。貸借対照表からみる限り、日本セレモニー(山口)の財務状況に不安は見受けられません。
2022年、2023年は9会館をオープン、2024年は「邸宅の家族葬 鶴林」を「家族葬ホール西岐波典礼会館」にリニューアルしました。

2020年から2021年にかけて、新型コロナの影響を受け、葬儀業界も大きな打撃を被りましたが、2023年5月からはコロナも5類に移行し、葬儀業界も回復の兆しが見えています。

日本セレモニー(山口)は、全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)に加盟し、未来にエールを送るという意味から名づけられた、互助会システム『ミライエール』を運営しています。
成人式、婚礼、葬儀など利用者に応じたさまざまなプランを備えて、会員を募っています。

また典礼会館の会館ごとに、どなたでも参加可能な施設見学や事前相談会、終活相談会などのイベントを開催していることも、地域との関係性を維持することに役立っているといえるでしょう。
今後も日本セレモニー(山口)の決算公告に注目したいと思います。

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