株式会社 メモリアルアートの大野屋┃仏壇・墓石・葬儀の業績・利益をまとめて分析

メモリアルアートの大野屋の利益業績徹底分析

葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社 メモリアルアートの大野屋の現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社 メモリアルアートの大野屋の概要

メモリアルアートの大野屋は1939年に石材店「大野屋」としてスタートし、1976年に仏具部を設立してからは仏壇・墓石販売、および霊園運営を中核に事業展開してきました。
葬儀事業の本格的な立ち上げは2011年と比較的最近で、直営ホールも現在のところ以下の4カ所です。

  • おおのやホール小平
  • フューネラルリビング小平(おおのやホール小平に併設)
  • フューネラルリビング横浜
  • 常光閣(納骨堂併設)

上記のほか、東京・神奈川・千葉・埼玉の500箇所以上の葬儀会場で、葬祭サービスを提供しています。
現在のところ、冠婚葬祭互助会事業は行っていません。

なおメモリアルアートの大野屋では、子会社である株式会社SOU デザインでもシンプルなお葬式名義で、多摩地区を中心に葬儀事業を展開しています。
同社では、自社会館「家族葬式場 正縁ホール国分寺」のほか、多摩地区の公営・民営火葬場に併設された葬儀式場や、近隣の寺院斎場・貸しホールなどで葬祭サービスを提供しています。

近年の葬儀業界では、異なるコンセプトで複数の葬儀ブランドを展開するケースが増えつつあります。
シンプルなお葬式も、メモリアルアートの大野屋における葬祭事業のセカンドブランドという位置づけになるかもしれません

葬儀社の決算公告とは

決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いとはいえ、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより
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会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局に供託する
  • 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ

上記のいずれかの方法を選択する必要があります。

また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

メモリアルアートの大野屋の貸借対照表 

メモリアルアートの大野屋貸借対照表-min

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10%を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。

自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適とされる自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。

逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。

メモリアルアートの大野屋の自己資本比率は37.21%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」の計算式で算出可能です。
メモリアルアートの大野屋の自己資本比率を求める式は下記のようになります。

31億1千8百万円÷83億8千0百万円×100=37.21
メモリアルアートの大野屋の2023年12月期における自己資本比率は、37.21%(前年同期比1.21%増)となっています。
自己資本比率30~40%が安定企業の目安とされていますので、メモリアルアートの大野屋の財務状況に問題は無さそうです。

メモリアルアートの大野屋の資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。

・流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

・固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
  ・無形固定資産:ソフトウェアなど

繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など

メモリアルアートの大野屋の資産合計の推移は以下のようになっています。

メモリアルアートの大野屋の2023年12月期における資産合計は、83億8千1百万円(前年同期比2.42%減)となっています。
過去7年間における資産合計は、緩やかな増減を繰り返しているものの、大きな変動は見られません。

貸借対照表を確認すると、資産合計とともに負債合計も減少しているため、自己資本比率が向上する結果となりました。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。

流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります。
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

メモリアルアートの大野屋の負債合計の推移は以下のようになっています。

メモリアルアートの大野屋の2023年12月期における負債合計は52億4千9百万円(前年同期比4.34%減)となっています。
財務安定性指標の一つである流動比率(流動資産÷流動負債×100)は、2023年12月期の時点で143.88%(安全ラインは100%以上)となっており、短期的な支払い能力に不安は感じられません。

メモリアルアートの大野屋の純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。

純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。

この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。

メモリアルアートの大野屋の純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

会社の所有する現金や建物などの資産から負債(借金)を差し引いたものとなります。
純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

メモリアルアートの大野屋の2023年12月期における純資産合計は、31億1千8百万円(前年同期比0.84%増)となっています。
新型コロナの影響が最も大きかったと思われる2020年12月期には、メモリアルアートの大野屋の純資産合計も一旦減少したものの、2021年12月期に再び増加に転じてからは緩やかな増加を続けています。

当期純利益の推移

会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。

当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。

メモリアルアートの大野屋の2022年12月期における当期純利益は3千9百万円(前年同期比36.07%減)となりました。

2023年5月には新型コロナも5類相当に移行して、葬儀業界も全体的に回復傾向にあるといわれています。
しかし原油価格の高騰による輸送コストの増加や、円安による輸入物価の上昇により、多くに企業が利益の確保に苦戦しています。

メモリアルアートの大野屋が展開する、墓石事業・仏壇事業・葬儀事業は、いずれも上記のような日本の状況から大きな影響を受けている業種です。
こうした環境の中、前年同期に比べて減少したとはいえ、当期純利益を確保していますので、同社の安定した経営状況がうかがえます。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。

メモリアルアートの大野屋の場合は以下のように推移しております。

メモリアルアートの大野屋の2022年1月期における利益剰余金は、13億0千9百万円(前年同期比2.03%増)となっています。
その結果、新型コロナ発生前の2019年の水準を上回り、過去7年間で最高額となりました。

新型コロナの影響がもっとも大きかった2020年12月期こそ、メモリアルアートの大野屋の利益剰余金も一時的に減少したものの、2021年以降は再び増加に転じており、その後も堅調に推移しています。

株式会社 メモリアルアートの大野屋のまとめ

今回は株式会社 メモリアルアートの大野屋の決算公告を参考に、現状分析を行いました。
決算公告資料から得られる情報は限られるものの、企業の財務状況や経営安定性などを推し量る材料になることがお分かりいただけたかと思います。

新型コロナの影響は落ち着いたものの、日本を取り巻く環境は予断を許さない状況が続いており、葬儀業界も少なからず影響を受けています。
こうした状況において、大手企業の業績や動向は業界全体の今後を占ううえで、非常に重要な情報といえるでしょう。

葬研では、今後のメモリアルアートの大野屋の決算公告にも引き続き注目していきたいと思います。

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