株式会社セルモ 〜玉泉院・エルセルモ〜┃冠婚葬祭互助会の業績・利益をまとめて分析

葬儀社の売上・利益・業績を調べる場合、上場しているなら決算発表情報・有価証券報告書をみれば分かります。非上場になると帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、売上・利益・業績の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社セルモの現状について、決算公告をもとに分析いたします。
決算公告は上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社セルモの概要

セルモは1968年に設立し本社は熊本県熊本市にあります。葬儀事業(玉泉院)、婚礼事業(エルセルモ)、スタジオ事業、そして宿泊事業の4つを主力事業としています。
公式ホームページによると株式会社セルモのグループ会社は全部で15社あり、貸し切りバス事業、生花店、エンバーミングなど幅広く事業を展開しています。

葬儀社の決算公告とは

決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。
ただし、大会社については貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。

次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は貸借対照表の負債の部に計上されている合計額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

なお上場企業の決算報告書(有価証券報告書)はEDINETで公開されており、誰でも閲覧可能です。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより

会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局への供託
  • 経済産業省の指定する保証会社との供託委託契約締結
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約締結

以上の3つの方法のいずれかを選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。

なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

セルモの貸借対照表

セルモ_貸借対照表

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である自己資本比率が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。自己資本比率が10%を下回っている場合は経営状態は良いとは言えません。

自己資本比率が低い場合は、借入金などの負債が多い状況と考えられますので、資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。

例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

※のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

セルモの自己資本比率は26.95%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産」で求めることができます。
株式会社セルモの2022年3月期の自己資本比率を求める式は下記のようになります。

152億7千3百万円(純資産)÷ 566億7千9百万円(総資産)
上記の式から同社の自己資本比率は26.95%(前年同期比で0.12ポイント減少)となりました。

セルモの利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。

株式会社セルモの場合は以下のように推移しております。

セルモ_利益剰余金

過去3年間の利益剰余金の成長率の推移は2019年12月期は148億5千4百万円(前年比成長率は6.16%)、2020年12月期は149億6千1百万円(前年比成長率は0.72%)、2021年12月期は151億7千3百万円(前年比成長率は1.42%)となっています。

株式会社セルモの利益剰余金は、年々確実に積みあがっていることが分かります。

セルモの損益計算書

損益計算書を確認することで、当該企業が「どれだけ売り上げ(=収益)」「費用を何に使って(=費用)」「どれくらいの儲けが出たのか(=利益)」が一目で分かるものです。
特に注目したい項目は、売上高・営業利益・経常利益・当期純利益となります。

損益計算書

セルモ損益計算書

セルモの損益計算書を確認すると、営業利益を除く売上高・経常利益・当期純利益が前年同期を上回っており、新型コロナによる悪影響からの脱却が感じられます。

売上金額の推移

セルモ_売上高

過去3年間の売上高の成長率の推移は2019年12月期は94億4千9百万円(前年比成長率は1.66%)、2020年12月期は76億2千7百万円(前年比成長率は-19.28%)、2021年12月期は80億5千4百万円(前年比成長率は5.60%)となっています。

新型コロナ発生直後の2020年ほどではないものの、2021年時点では繰り返し行動制限などが発出されていました。
そういった状況下においても、セルモの売上高は回復に向かっていたようです。

営業利益の推移

営業利益とは、売上総利益から販管費(=販売費および一般管理費)を差し引いて算出されます。つまり、どのくらい本業で儲ける能力があるかを表す数字となります。

セルモ営業利益グラフ

過去3年間の営業利益の成長率の推移は2019年12月期は7億6千9百万円(前年比成長率は80.1%)、2020年12月期は8千4百万円(前年比成長率は-89.08%)、2021年12月期は3千2百万円(前年比成長率は-61.9%)となりました。

2020年以降、新型コロナ関連の行動制限が繰り返し発出されるなどした影響で、営業損失を発生させる葬儀社も多かった中、セルモでは黒字を維持していたようです。

経常利益の推移

経常利益はその会社の実力が一番分かる数字で、本業以外の稼ぎ(金融商品、株、為替などの取引で発生した利益)も含めその会社全体でどれだけ稼ぐ力があるか分かります。

セルモ_経常利益

過去3年間の経常利益の成長率の推移は、2019年12月期は9億9千6百万円(前年比成長率は10.18%)、2020年12月期は2億1千5百万円(前年比成長率は-78.41%)、2021年12月期は2億5千8百万円(前年比成長率は20%)となりました。

新型コロナ発生直後の2020年ほどではないものの、2021年時点では繰り返し行動制限などが発出されていました。
そういった状況下においても、セルモの経常利益は回復に向かっていたようです。

セルモのまとめ

今回は株式会社セルモの決算公告資料をもとに、経営安定性や財務状況などについて解説しました。
株式会社セルモでは、毎年6月中旬から7月前半にかけて決算公告を実施するため、2022年12月期の決算公告は今回の調査で取り上げられませんでした。
しかし2021年12月期の時点でも回復に向かっている様子がみられますので、2022年・2023年にはさらに回復している可能性が高そうです。

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