アフターコロナに向けた動きも⁉上場葬儀社における売上・利益・施工状況に関するまとめ

上場葬儀社決算分析

葬儀系カテゴリでWeb検索すると株式関連サイトでも多くの企業がヒットしますが、葬儀事業において上場している企業は現在のところ7社のみです。
上場企業では大きく分けて以下3種類の定期的な発表・公表が義務づけられています。

①決算説明資料(1年に1回)
②有価証券報告書(1年に1回)
③決算短信(3ヶ月に1回) ※第●四半期など

本記事では上記の公開資料のいずれかより、『葬儀・葬祭事業』のカテゴリ情報を抽出し、葬儀・葬祭事業運営の現状や今後について詳しく解説します。

なお前回の四半期分析記事は以下をご覧ください。

目次

上場葬儀社における直近の決算数字の推移

※決算出が各社で異なりますので、前期比の成長率のみ表示しております。詳細の数字は各社様のIR情報にてご確認下さい。

屋号葬祭事業における屋号発表日回次種類
平安レイサービス㈱湘和会堂2022年05月06日53期決算
㈱サン・ライフHDファミリーホール2022年05月09日4期決算
㈱ティアティア2022年05月13日26期第2四半
燦HD㈱公益社葬仙タルイ2022年05月12日93期決算
㈱ニチリョクラステル2022年05月13日56期決算
㈱きずなHDファミーユ2022年04月14日5期第3四半期
こころネット㈱たまのや2022年05月12日56期決算

平安レイ様 2022年3月期 決算期 報告書における葬儀・葬祭事業の内容

決算数字(売上高・営業利益・経常利益)

  • 売上高:76億8百万円(前年同期比8.0%増加)
  • 営業利益:19億98百万円(前年同期比18.5%増加)
  • 経常利益:13億66百万円(前年同期比25.0%増加)
  • 当期純利益:9億32百万円(前年同期比32.0%増加)

葬儀・葬祭セグメントの振返りと今後

当期は新型コロナの感染対策として高濃度オゾン発生器を導入し、感染リスク回避に向けた取り組みを早期に実施し、安心安全をアピールしました。
高品質・高付加価値・高単価なオリジナルプランの提案により、葬儀単価の向上を実現されたようです。

葬儀の小規模化・簡素化の流れに対応すべく、1日1組限定の小規模ホールを開業するとともに、故人にゆっくりと寄り添える貸切型の安置室「貴殯室」を新設しました。

また開放的なワンフロアの大規模式場を、小規模葬儀にも対応可能なフレキシブルな設計にリニューアルするなど、式場利用の効率化も図っています。
さらに葬儀プランも、近年の利用者ニーズの傾向を考慮してセット内容を組み替えるなど、常に進化を継続されたようです。

今後は従来の集中出店によるドミナント戦略に加え、フランチャイズ事業の充実や、自社式場を所有しない小規模葬儀社との提携を進めるなど、さらなる効率化を計画しているようです。
また食材や調理、式典アイテムなどの内製化を推進し、高品質を維持しつつ売上原価の抑制することで、さらなる収益向上に注力しています。

現状の葬儀事業における数字

  • 葬儀会館数
    • フランチャイズ(FC):1
    • 直営:46
    • 総数:47
  • 葬儀施行
    • 件数:6,954件
    • 増減率:+2.2%
    • 単価:110万5,838円
    • 単価増減率:+0.3%

サン・ライフHD様 2022年3月期 決算期 報告書における葬儀・葬祭事業の内容

決算数字(売上高・営業利益・経常利益)

  • 売上高:79億83百万円(前年同期比5.3%増加)
  • 営業利益:16億58百万円(前年同期比10.6%増加)
  • 経常利益:4億54百万円(前年同期比85.3%増加)
  • 当期純利益:4億6百万円(前年同期比300.7%増加)

葬儀・葬祭セグメントの振返りと今後

サン・ライフHD様では、葬儀の小規模化の流れに対応すべく、一般葬、家族葬対応施設「サン・ライフ 小田急相模原駅前ファミリーホール」や、家族葬対応施設「ファミリーホール日野」(東京都日野市)を開設し、葬儀施行件数を増加させました。
利用者のニーズに寄り添うべく、積極的に企業としての構造改革を推進した結果、大幅な利益の向上となったようです。

今後も式典事業におけるブランド戦略の再構築に向けて、継続的な見直しを実施すると思われます。
創業90年の老舗企業として、次の100年に向けた円滑な事業継承のために、次世代経営陣の育成にも注力されているようです。

さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)に対応すべく、IT専門職人材の確保・育成など今後に目を向けた動きも積極的に実施しています。

現状の葬儀事業における数字

  • 葬儀会館数
    • 直営:33
  • 葬儀施行
    • 件数:具体的な件数は記載されていませんが、前年同期より増加となっています。

ティア様 2022年9月期 第2四半期 報告書における葬儀・葬祭事業の内容

決算数字(売上高・営業利益・経常利益)

  • 売上高:66億88百万円(前年同期比8.1%増加)
  • 営業利益:13億30百万円(前年同期比16.8%増加)
  • 経常利益:8億77百万円(前年同期比21.3%増加)
  • 当期純利益:5億86百万円(前年同期比19.8%増加)

葬儀・葬祭セグメントの振返りと今後

フランチャイズ事業も含め積極的な出店体制が特徴的なティア様では、新店舗開業により葬儀施行件数が増加した結果、増収増益となっています。
しかし葬儀の小規模化と新型コロナの影響で、葬儀施行単価はやや増加したものの、供花など葬儀付帯商品の売上については減少したようです。

中長期計画によると、今後も直営店・フランチャイズともに年間6~7軒の出店を計画されており、2024年には167店舗を予定しています。
会食などの葬儀付帯業務の内製化にも取り組みつつ、日本で一番 「ありがとう」 と言われる葬儀社を目指した経営方針も加速しそうです。

現状の葬儀事業における数字

  • 葬儀会館数
  • フランチャイズ(FC):56
    • 直営:81
    • 総数:137
  • 葬儀施行
    • 件数:7,365件
    • 増減率:+12.2%
    • 単価:90万8,079円
    • 単価増減率:+7.7%

燦HD様 2022年3月期 決算期 報告書における葬儀・葬祭事業の内容

決算数字(売上高・営業利益・経常利益)

  • 売上高:196億16百万円(前年同期比6.1%増加)
    • 公益社:166億1百万円(前年同期比7.3%増加)
    • 葬仙 : 13億67百万円(前年同期比8.0%増加)
    • タルイ: 16億48百万円(前年同期比5.8%減少)
  • 営業利益:23億35百万円(前年同期比72.8%増加)
  • 経常利益:33億86百万円(前年同期比33.5%増加)
  • 当期純利益:20億40百万円(前年同期比30.6%増加)

葬儀・葬祭セグメントの振返りと今後

グループ内の公益社・葬仙・タルイともに葬儀施行件数は増加したものの、葬儀施行単価が若干減少したため、売上高の伸び率は6.1%にとどまりました。

しかし業務効率改善と人件費コントロールの徹底により、収益は大幅に増加しています。
新型コロナ関連の規制が徐々に緩和されたことにより、大規模葬儀施行件数の回復した点も当期純利益を30%以上増加させた要因の一つとなっているようです。

今後は葬祭事業を軸としつつも、グループ会社の「ライフフォワード」を中心にライフエンディング領域に事業を拡大し、顧客との長期的な関係構築を目指すようです。
また燦HD様は、東京23区内で6か所の民間火葬場を運営する広済堂HDとの合弁会社「グランセレモ東京」を設立し、納棺サービスの提供を開始するなど他業種との連携を強化する方針を打ち出しています。

さらに出店計画においては、従来の集中出店によるドミナント戦略を維持しつつも、旗艦店に物流センターを置くことで、経営資源共有による業務効率化を図る方針のようです。
2025年までに31の新規出店を果たし、会館数107を目指す旨が中期経営計画に明記されています。

現状の葬儀事業における数字

  • 葬儀会館数
    • 直営:76
  • 葬儀施行
    • 件数:1万5,994件
    • 増減率:+8.5%
    • 単価:102万383円
    • 単価増減率:ー2.0%

ニチリョク様 2022年3月期 決算期 報告書における葬儀・葬祭事業の内容

決算数字(売上高・営業利益・経常利益)

  • 売上高:14億67百万円(前年同期比9.2%増加)
  • 営業利益:5億17百万円(前年同期比46.9%増加)
  • 経常利益:1億84百万円(黒字転換)
  • 当期純利益:1億29百万円(黒字転換)

葬儀・葬祭セグメントの振返りと今後

当期は有料会員サービスである「愛彩花倶楽部」を、葬儀だけでなく終活領域全般に対応した「さくら倶楽部」へ名称変更し、特典内容を大幅に刷新しました。
また無料会員サービスとして「あおい倶楽部」を新設し、顧客との接点拡大に努めた結果、受注件数は過去最高を記録するとともに収益の大幅な改善に成功しています。

ニチリョク様では、今後の動向についての詳細な活動内容は発表されていませんが、2023年3月期の業績見通しについては、売上高35億円(前年同期比17.5%増)を想定しています。
また営業利益3億円(同3.0%増)、経常利益2億円(同8.6%増)、当期純利益2億6千万円(同101.2%増)を数値目標としています。

現状の葬儀事業における数字

  • 葬儀会館数
    • 直営:4
  • 葬儀施行
    • 件数:具体的な葬儀施行件数は明記されていませんが、当期は過去最高を記録しています。

きずなHD様 2022年5月期 第3四半期 報告書における葬儀・葬祭事業の内容

決算数字(売上高・営業利益・経常利益)

  • 売上高:68億7百万円(前年同期比15.1%増加)
  • 営業利益:8億12百万円(前年同期比65.7%増加)
  • 経常利益:6億81百万円(前年同期比86.1%増加)
  • 当期純利益:4億41百万円(前年同期比87.7%増加)

葬儀・葬祭セグメントの振返りと今後

きずなHD様では今期も積極出店方針を継続し、7ホールの新規出店を行いグループ直営ホール数は106店舗となっています。
葬祭ホールの増加に伴い増収増益となりましたが、新型コロナの影響も相まって、葬儀施行単価は若干の減少となりました。

また葬儀施行については、高付加価値・高単価のオーダーメイド型の葬儀プランの提案を強化しました。
その結果、オリジナルプラン件数は1,744件と前年同期に比べ241件の増加となりましたが、葬儀件数に占めるオリジナルプラン件数の比率は22.2%とわずかに減少しています。

今後の行動指針について詳細な言及はありませんが、2022年5月期5月度の月次業績をみると、さらに3店舗増加し直営ホールは109になっているようです。
今期当初に立てた計画通りに10ホールの新規開業を達成しており、今後も安定した出店を継続すると思われます。

また速報値ではありますが、売上高は86億7百万円(前年同期比15.6%増加)、1万752件(前年同期比18.1%増加)となっています。
葬儀付帯業務の内製化と外注化の見直しにより、今期の収益率が改善した点を考慮すると、さらなる効率的な収益構造構築の推進が予想されます。

現状の葬儀事業における数字

  • 葬儀会館数
    • 直営:106
  • 葬儀施行
    • 件数:7,853件
    • 増減率:+17.3%
    • 単価:80万6,000円
    • 単価増減率:ー1.6%

こころネットグループ様 2022年3月期 決算期 報告書における葬儀・葬祭事業の内容

決算数字(売上高・営業利益・経常利益)

  • 売上高:50億33百万円(前年同期比2.6%増加)
  • 営業利益:4億84百万円(前年同期比1.3%減少)
  • 経常利益:3億41百万円(前年同期比221.4%増加)
  • 当期純利益:1億50百万円(黒字転換)

葬儀・葬祭セグメントの振返りと今後

こころネットグループ様では、葬儀の小規模化の流れに対応すべく、2021年10月に「とわノイエ 会津」(福島県会津若松市)、2022年3月に「とわノイエ 越戸」(栃木県宇都宮市)と、家族葬向けホールを開業しました。
また新型コロナの影響による参列・会食自粛が継続する中、オプションサービスや会葬返礼品などの葬儀付帯商材の販売促進により、葬儀単価低下を最小限に食い止めたようです。

今後についてはM&Aを含めた計画的な出店を推進しつつも、既存店舗のスクラップアンドビルドも並行して実施する見込みです。
またDX化の加速に乗り遅れないよう、基幹システムやWeb戦略の見直しに加え、積極的なIT専門人材の確保・育成への資本注入が予想されます。

葬儀プランについても、利用者ニーズの変化に対応しながら抜本的な再構築を行い、競合との差別化を図るとしています。

現状の葬儀事業における数字

  • 葬儀会館数
    • 直営:30
  • 葬儀施行
    • 件数:5,204件
    • 増減率:+3.7%
    • 単価:96万7,525円
    • 単価増減率:-1.1%

まとめ

今回は上場葬儀社様が公開されている決算資料をもとに、葬儀施行状況や収益について紹介しました。

全体的には、葬儀の規模縮小の流れは継続すると予測したうえで、アフターコロナを見据えてすでに動き出している印象です。
小規模な葬儀でも収益化できるよう、業務や生産効率の改善に注力しており、高付加価値サービスの開発により、葬儀施行単価の向上を目指した動きが活発化しています。

業績の面では、新型コロナ関連の規制が徐々に緩和されつつあった今期は、各社とも前年同期にくらべ増収増益の傾向がみられました。
特に注目すべきは売上高よりも収益性の上昇率が高い点で、各社とも葬儀付帯業務の内製化など、業務効率化による経費削減に努めた結果が出始めています。

今回の調査で収集した各社の決算報告書や中期経営計画資料には、共通して「抜本的な再構築」「スクラップアンドビルド」という文言が散見されました。
葬儀の小規模化・簡素化の流れに対応すべく、各社とも既存の経営手法からの脱却と、大幅な方向転換を余儀なくされているようです。

また「AI技術」「IT人材の確保」といった言葉も見受けられることから、DXへの対応に向けた組織の構築も始まっていると思われます。

豊富な資金力をもつ上場葬儀社様と、地域密着型の中小葬儀社様では最適な施策が異なるかもしれません。
しかし全国的に縮小傾向にある葬儀業界では、方向転換が容易な中小葬儀社様の特性が有利に働く部分も多いでしょう。

また企業の規模を問わず必要となる施策など、業績改善のヒントが見つかる可能性もありますので、上場葬儀社の公開している資料の一読をおすすめします。

★お問合せフォーム https://souken.info/contact-inquiry/

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