碑文谷創の葬送基礎講座

碑文谷創の葬送基礎講座24 葬祭ディレクター

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葬祭ディレクター技能審査が労働省から認定を受けたのが1996(平成8)年であるから、2020(令和2)年の9月の試験が25回目となる。
葬儀の個人化が発生し、その変化のただ中を歩んできたことになる。

大手葬祭事業者によるテレビCMも近年珍しいものではなくなっている。
民放地方局では15年前くらいから放映がなされてきた。
首都圏でもここ数年は夜間ではなく夕方のニュース番組で見られることが多くなっている。
テレビCMやホームページで強調されることが多いのが「葬祭ディレクター〇名」というもの。大手では「在籍150名」などという宣伝も見られる。

葬祭ディレクターには2級(葬祭実務経験2年以上)と1級(実務経験5年以上、もしくは2級取得後2年以上)の2種類がある。
2級、1級には重複もあるので葬祭ディレクターの実数は約3万名程度と推定され、同じく推定で葬祭業界で働く人は約10万名と推定されるので約3割以上を占めていると思われる。
したがって、葬祭現場の前線で働く人の約半数近くが有資格者と思われる。

葬祭ディレクター技能審査

葬祭ディレクター技能審査協会による「〔厚生労働省認定〕葬祭ディレクター技能審査」についての説明は次のようになっている。

 葬祭ディレクター技能審査制度は、葬祭業に従事する人々の知識・技能の向上を図り、併せて社会的地位向上を図ることを目的として、平成8(1996)年3月に厚生労働省(当時、労働省)より技能審査として認定を受けた制度です。試験は、厚生労働省に届け出た規程に基づき、葬祭ディレクター技能審査協会(平成7年〈1995年〉設立、以下、本協会)が実施しており、葬祭ディレクター(1級、2級)の認定は試験結果に基づき本協会が行っています。

 平成8(1996)年夏に第1回試験を実施して以来、令和元(2019)年までに本協会が認定した1級葬祭ディレクター、2級葬祭ディレクターの累計は35,590人に及びます。これは葬儀業従業者総数約84,000人(『平成28年経済センサス』)に対し42.4%を占めます。

 資格取得者それぞれが、各葬儀の現場にあって活躍されることにより、本制度は、消費者から信頼の指標として広く認知されるようになりました。マスコミ報道等でも数多く取り上げられ、社会的認知度は年々高まっています。それゆえに資格取得者は、消費者からの信頼をいっそう得られるよう、資格取得後もさらに継続して努力するよう求められています。

 日本は高齢化率(65歳以上人口が全人口に占める割合)が27.7%(『平成30年版高齢社会白書』平成29年10月1日高齢化の状況)で、世界一の「超高齢社会(本格的な高齢社会)」です。地域社会や家族のありようが変化する中で、葬祭業の果たす社会的重要性が高まっています。利用者の意向、真に求められていることに真剣に耳を傾け、細心に、かつ専門家として、葬祭サービスを提供することが求められています。利用者の期待に応えられるレベルの人材であるかを総合的かつ客観的に評価する本制度の社会的責任はますます大きくなっています。
 葬儀を巡る環境は大きく変化しています。平成13年に消費者契約法、平成17年に個人情報保護法が施行。同年には公正取引委員会が葬儀サービスの取引実態調査を、平成19年には総務省が葬祭業取引適正化に関する調査を実施、平成23年、24年には経済産業省が葬祭業を含むライフエンディング・ステージに関する報告書を公表するなど、葬祭業に対する社会的監視が強化され、葬祭業に従事する者にとってコンプライアンス(法令遵守)は極めて重要なものと認識しています。

 葬祭従事者に求められることも、年々より深く、広くなっています。亡くなった方の尊厳を確保すること、個々のご遺族の亡き人を弔う気持ち、意向を大切にし、深い悲嘆にあることを理解すること、かつ文化・宗教への適切な理解をもって、弔いができるよう専門家として支援することです。よりいっそうホスピタリティに富んだ、上質で倫理性が高いサービスを提供できる人材育成が求められています。

 葬祭ディレクター技能審査制度の主旨をご理解いただき、一人でも多くの方が、本試験を受験されるようお勧めします。

 

技能審査制度の位置づけ

葬祭ディレクター技能審査は厚生労働省が認定している制度である。
弁護士、看護師のように資格を有しないと仕事に従事できない「士(サムライ)」としての資格ではなく、従事者の知識・技能等を判定して付与される資格である。

現在、厚労省が公表している雇用・労働に関する人材開発の技能の評価・振興の制度は「技能検定」と「社内検定」の2種類で、その中間にかつてあった「技能審査」は今は書かれていない。

かつてあった技能審査の大半は廃されるか、技能検定か社内検定となり一部は民間資格になった。
新たに技能審査として認定されるものはなく、葬祭ディレクター技能審査は技能審査として生き残っている希少な制度としてある。
将来的には「技能検定」「社内検定」あるいは民間資格のいずれかの選択を迫れる可能性がある。

葬祭ディレクター技能審査についてはさまざまな制度の改善策が提起されているが、こうした中間的な位置にあることで、制度の大幅な変更は規制されている状態にある。

また、5年か10年おきの「更新」の必要性を主張する人がいるが、その必要性は認めるが、現在のところ基本となる技能検定に更新が定められていないため、更新制度を導入できないという事情を抱えている。

葬祭ディレクター技能審査が厚労省から評価されていないわけではなく、新たに技能検定に取り組もうとする団体には葬祭ディレクター技能審査のマニュアル、教材、試験制度等を参考とするよう勧められている実例がある。

技能検定に進む難問は、現在の受験料が高額なことにある。
他の事業団体においても実質は葬祭ディレクターとほぼ同程度の費用が発生していると思われるが、費用の全額を受験料でまかなうのではなく、大手事業者が試験費用の半額以上を負担し補助することで受験料を引き下げている。
葬祭業界にはいわゆる大手事業者が少なく、試験費用を負担する事業者がなく、試験費用は受験者の支払う受験料に専ら依存している(受験料は、受験者個人が支払うが、全額個人負担とするもの、事業者が一部または全額補助するもの、に分かれている)。
葬祭ディレクター技能審査の受験料が実費を上回って高額なのではなく、他事業団体のような大手事業者が試験費用の半額以上を負担する仕組みがないため実費を受験料にせざるを得なく、受験者が減少し受験収入が少なくなれば試験官の人件費等を引き下げ運用せざるを得なくなっている。

テレビCM等において葬祭ディレクターを宣伝材料とするのであるならば、年間1千件以上施行する事業者には100万円、年間5千件以上施行する事業者には500万円、年間1万件以上施行する事業者には1千万円程度自主的に負担させる仕組みができるとよい。
※賛助金、寄付を受けるため協会の法人化が必要となるが、現状では技能審査特有の問題から協会の法人化が制限されているという問題もある。

大規模事業者による費用負担が可能になることにより、受験料の引き下げ、技能検定への移行がスムースとなる。
但し、費用負担する大手事業者は費用負担のみで発言権はない、という条件確保が必要である。
「葬祭ディレクター制度は必要である」という事業者の認識いかんにこの制度の未来は託されている。

(参考)
かつて(2014(平成26)年)の厚労省資料によれば、「技能検定」「技能審査」「社内検定」は以下のように分類されていた。
これも技能審査が公益法人によるものは廃され(一部技能検定へ)、非営利団体に限定され、非営利団体も新規認定は行わない、とするものである。

 

技能検定

技能審査

社内検定

根拠

職業能力開発促進法第44条

技能審査認定規程 (48年告示)

社内検定認定規定 (59年告示)

概要

大臣(又は都道府県知事)が、労 働者の有する技能を一定の基準 によって検定し、これを公証する国 家検定制度。

非営利団体が実施する技能 審査のうち、技能振興上推奨 すべきものを大臣が認定する 制度。 (技能審査:労働者の有する職業 知識・技能を審査し証明する)

事業主等が、雇用する労働者に 対して実施する検定のうち、技能 振興上推奨すべきものを大臣が 認定する制度。なお、社内検定自 体は、大臣認定を受けなくても事 業主等が実施することはできる。

対象職種等

企業横断的・業界標準的な普遍 性を有する、技能および知識を 客観的に評価できる、対象労働者 が全国的に相当数存在する等と いった職種。

企業間で共通性のある技能で あるが、技能労働者が少ない、 特定地域にのみ存在する、技能 の幅が狭い等といった職種。 技能検定とは競合しないこと。

個別企業において、先端的な 技能、特有な技能など。 技能検定を補完するものであ ること。

被評価・受検対象者

一定以上の実務経験年数を 有する者など。

一定以上の実務経験年数を 有する者など。

事業主(事業主団体等の場合は、 その構成員である事業主)に雇用 される労働者に限定。 (系列企業の労働者や団体傘下の一人親 方等も可)

評価方法

具体的な試験基準、試験採点基準、試験実施要領、評価者の選任基準等を定める必要がある。 試験は、実技試験+学科試験 ・実技試験は、実際に作業等を行わせて技能程度を検定する。 ・学科試験は、作業の遂行に必要な正しい判断力及び知識の有無を判定する。

具体的な試験基準、試験採点基準、試験実施要領、評価者の選任基準等を定める必要がある。 試験は、実技試験+学科試験 ・実技試験は、実際に作業等を行わせて技能程度を検定する。 ・学科試験は、作業の遂行に必要な正しい判断力及び知識の有無を判定する。

具体的な試験基準、試験採点基準、試験実施要領、評価者の選任基準等を定める必要がある。 試験は、実技試験+学科試験 ・実技試験は、実際に作業等を行わせて技能程度を検定する。 ・学科試験は、作業の遂行に必要な正しい判断力及び知識の有無を判定する。

実施機関

○都道府県及び職能開協会 ○指定試験機関 ・事業主団体、その連合団体 ・一般社団法人、一般財団法人 ・法人である労働組合 ・営利を目的としない法人

○非営利団体 *平成12年行革大綱等に基づき、 公益法人が実施する技能審査は 認定廃止(13年に14職種を廃止 →うち3職種は指定試験機関 制度による技能検定へ)。 *非営利団体が実施する技能審査につ いても(局長通達により)新規認定は行わ ない。

○事業主 ○事業主団体又はその連合団体 なお、平成12年行革大綱等に基 づき、公益法人は対象外。

現状(平成26年)

128職種

8団体9職種

45事業主等123職種

試験

 試験は毎年9月に全国7会場(札幌、仙台、大宮、東京、横浜、京都、福岡)で開催されている。

1級

学科試験(配点200点)

・出題方法及び出題数は、正誤判定問題50問、多肢選択問題50問で、合計100問
・解答時間 50分

実技試験(配点200点)

・実技筆記試験 60問30分、配点60点

・幕張作業試験 7分、配点60点

・接遇作業試験 2分、配点20点

・司会作業試験 6分、配点60点 

2級

学科試験 (配点200点)

・出題方法及び出題数は、正誤判定問題25問、多肢選択問題25問で、合計50問
・解答時間 30分

実技試験(配点200点)

・実技筆記試験 60問30分、配点60点

・幕張作業試験 7分、配点60点

・接遇作業試験 2分、配点20点

・司会作業試験 4分、配点60点 

 

各試験の目的

学科試験

葬儀及び関連する事項についての知識を評価するために行います。葬儀に係る仕事の内容について、意味も含めて正確に理解できているかを判定します。かつ、社会的環境・公衆衛生・法律・行政手続・遺族心理・宗教等の関連知識の有無も判定します。

実技筆記試験

葬祭ディレクターとしての実践面における理解ができているかを評価するために行います。特に顧客(とりわけ死別直後のご遺族)に対し、適切な言葉づかい、心配り、サービスマインドができているかを見ます。加えて一般常識を弁えているか、顧客からの質問・要請・クレームに対して消費者の目線で適切に対応できるか、消費者(特にご遺族)からの信頼を得て、葬祭サービスを提供できるかを判定します。

幕張作業試験

葬儀式場設営のための基礎能力を評価するために行います。自宅や寺院等での式場設営の基礎技術であり、伝統的な式場装飾法である幕張装飾技法の習熟度を判定します。かつ、設営課題実現のための目的意識と処理能力を判定します。

接遇作業試験

葬儀の担当者としてのご遺族等への基本的な応接能力を評価するために行います。家族と死別した直後にあるご遺族や関係者に対して、適切な応接をすることができるか、挨拶、お悔やみ、意向を聴くこと、基本事項の確認を行うことを通して、礼等の基本的マナー、言葉遣い、進行の適切さ、姿勢、発声等を判定します。

司会作業試験

葬儀運営のための基礎能力を評価するために行います。葬儀ならびに告別式の内容を理解し、参列者に配慮して適切な案内・進行ができるかを判定するものです。かつ、必要な日本語読解力、文章表現力が備わっているか、マナーが優れているかを判定します。

 

葬祭ディレクター技能審査制度がもたらしたもの

本制度が葬祭業にもたらしたものは大きなものがある。
これを列挙してみよう。

①職業偏見が著しく減少し、「普通の仕事」になったこと。
②葬祭サービスの範囲、知識、技能の標準を規定したこと。
③人材開発が進み、旧弊の従事者が著しく減少したこと。
④人材開発により若年、女性が活躍できる職場が増加したこと。
⑤資格取得により従事者の職業としてのプライド、プロ意識が向上したこと。

 

葬祭業にはまだまだ大きな問題がある。
だが人材開発という点において葬祭ディレクター技能審査制度の貢献は明らかである。

 

※葬祭ディレクター技能審査の説明、各試験の目的は葬祭ディレクター技能審査協会のHP
www.sousai-director.jp/

より引用した。
但し、その原文は私が在任中に起草したものである。責任を明らかにするため記しておく。

 

 

  • この記事を書いた人
碑文谷創(ひもんやはじめ)

碑文谷創(ひもんやはじめ)

葬送ジャーナリスト。評論(死、葬送、宗教)

1946年生まれ。東北出身(岩手・一関市、宮城・仙台市)。東京神学大学大学院修士課程中退。出版社に勤務し、44歳で独立、葬送文化専門雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)。

葬祭ディレクター技能審査企画委員(1995~2016))、経産省「ライフエンディング・ステージ」研究会委員(2010~2011)、IFSA(一般社団法人日本遺体衛生保全協会)顧問(1993~)等を歴任。

現在、死、葬送、宗教に関する評論・講演活動を展開。著書:『葬儀概論』(現在4訂)『死に方を忘れた日本人』『「お葬式」はなぜするの ?』、『Q&Aでわかる葬儀・お墓で困らない本』ほか多数。

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