前回は、明治中期1887(明治20)年以降、太平洋戦争前夜の1935(昭和10)年頃までの大都市限定の葬祭業の変化を概観しました。
いわば葬祭業の黎明期ともいうべき時代です。
触れていなかった重要なものに「火葬」があります。
現代の葬儀の歴史(変化)について語る前に、今回は火葬(cremation)の歴史について概観しておきます。
天皇、皇后が火葬を希望
「宮内庁は昨年4月、新たな陵と葬儀のあり方の検討を行うと表明。両陛下は武蔵陵墓地の用地に余裕がなくなっていることや国民生活への影響を少なくすることを考慮して検討を進めてほしいとの意向を示されていた。また一般社会で火葬が通常化していることなどから火葬を希望された。」(日本経済新聞2013年11月14日)
天皇、皇后(現在の上皇、上皇后)が明治天皇、大正天皇、昭和天皇が土葬されたのとは異なり、現代日本では一般化している火葬を希望された、とのニュースは皇室の近代化というニュアンスで報道されました。
ちなみに日本の火葬率は99.99%(胎児を除く。土葬は全国でわずか117件。厚労省「平成30年衛生行政報告例平成30年度」)となっています。
火葬の起源
「火葬は仏教の葬法」と言われ、記録によれば700年(飛鳥時代)に僧道昭のときが最初とされています。
しかし、考古学上は5世紀後半頃の遺跡から焼骨が発見されていることから、6世紀半ばの仏教伝来以前から日本でも火葬が行われていたと思われます。
天皇の火葬は、女性としては史上3人目の女性天皇である持統天皇(645-703)が最初。以降、天皇は土葬されるケースもあれば火葬されるケースもありました。