株式会社 フローラ~メモリアルホール~┃冠婚葬祭互助会の業績・利益をまとめて分析

フローラの利益・業績を徹底分析

葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社 フローラの現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社 フローラの概要

株式会社 フローラは福島県南相馬市に本社を置き、宮城県・福島県・岐阜県を中心に冠婚葬祭互助会事業を展開しています。
運営事業所は、メモリアルホール(葬祭ホール)21ヵ所、ウェディングパーク(婚礼式場)3か所、レストラン1か所、フラワーショップ2ヵ所となっています。

近年では葬祭事業に注力しているようで、ウェディングパークからメモリアルホールへの転換を進めているようです。

  • 1997年9月:ウエディングパーク角田 → メモリアルホール角田
  • 2020年3月:ウエディングパーク桜 → メモリアルホール大河原
  • 2021年5月:ウエディングパーク益田 → メモリアルホール益田
  • 2021年10月:ウエディングパーク原町 →メモリアルホール南相馬

互助会会員口数は105,000口を超えており、宮城、福島、岐阜を中心に多くの方が加入しています。
また、地域企業173社と提携を結び、提携企業の従業員及び家族は互助会会員と同じサービスが受けられます。

【名称】株式会社 フローラ
【設立】1981年(昭和56年)5月
【代表取締役】三浦 尚克
【所在地】福島県南相馬市原町区高見町2丁目30-6
【資本金】9,800万円
【公式サイト】https://www.flora-g.co.jp/
【事業内容】・結婚式場運営
      ・葬祭式場運営
      ・レストラン・フラワーショップ運営
      ・冠婚葬祭互助会運営

出典:株式会社 フローラ 会社概要

葬儀社の決算公告とは

決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより
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会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局に供託する
  • 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ

上記のいずれかの方法を選択する必要があります。

また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

フローラの貸借対照表 

決算期第37期第38期第39期第40期第41期第42期
会計年度2018年4月期2019年4月期2020年4月期2021年4月期2022年4月期2023年4月期
利益剰余金30億1千5百万円30億4千4百万円33億5千2百万円32億9千8百万円33億5千0百万円35億9千5百万円


流動資産68億9千0百万円42億6千4百万円46億7千5百万円39億8千5百万円27億7千2百万円24億4千9百万円
固定資産142億0千0百万円163億0千6百万円157億0千1百万円159億0千0百万円165億0千6百万円169億9千6百万円
有形固定資産
無形固定資産
投資その他の資産
繰延資産1百万円1百万円1百万円1百万円1百万円1百万円
資産合計210億9千1百万円205億7千1百万円203億7千7百万円198億8千6百万円192億7千9百万円194億4千6百万円


流動負債21億3千0百万円18億6千3百万円16億3千2百万円14億5千2百万円10億5千3百万円13億1千5百万円
役員賞与引当金
賞与引当金
その他
固定負債158億4千7百万円155億6千5百万円152億9千4百万円150億3千7百万円147億7千7百万円144億3千7百万円
退職給付引当金
雑収入復活引当金
役員退職慰労引当金
その他
負債の部計179億7千7百万円174億2千8百万円169億2千6百万円164億8千9百万円158億3千0百万円157億5千2百万円




株主資本31億1千4百万円31億4千3百万円34億5千1百万円33億9千7百万円34億4千9百万円36億9千4百万円
資本金9千8百万円9千8百万円9千8百万円9千8百万円9千8百万円9千8百万円
 資本余剰金1百万円1百万円1百万円1百万円1百万円1百万円
資本準備金1百万円1百万円1百万円1百万円1百万円1百万円
その他資本余剰金
 利益剰余金30億1千5百万円30億4千4百万円33億5千2百万円32億9千8百万円33億5千0百万円35億9千5百万円
利益準備金1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円
特別償却準備金
その他利益剰余金29億1千5百万円29億4千4百万円32億5千2百万円31億9千8百万円32億5千0百万円34億9千5百万円
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
(うち当期純利益)1億0千4百万円7千7百万円3億5千7百万円9千2百万円5千2百万円24千4百万円
新株予約権
自己資本
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
純資産の部計31億1千4百万円31億4千3百万円34億5千1百万円33億9千7百万円34億4千9百万円36億9千4百万円
負債・純資産合計210億9千1百万円205億7千1百万円203億7千7百万円198億8千6百万円192億7千9百万円194億4千6百万円

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10%を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。

自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。

逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。

フローラの自己資本比率は18.99%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」の計算式で算出可能です。
フローラの自己資本比率を求める式は下記のようになります。

36億9千4百万円÷194億4千6百万円×100=18.99
フローラの2023年4月期における自己資本比率は、18.99%(前年同期比1.1%増)となっています。

フローラの資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。

・流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

・固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
  ・無形固定資産:ソフトウェアなど

繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など

フローラの資産合計の推移は以下のようになっています。

フローラの2023年4月期における資産合計は、194億4千6百万円(前年同期比0.87%増)となりました。
フローラの資産合計は毎年緩やかに減少していましたが、2023年4月期にはわずかに増加に転じました。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。

流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります。
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

フローラの負債合計の推移は以下のようになっています。

フローラの2023年4月期における負債合計は157億5千2百万円(前年同期比0.49%減)となっています。

フローラでは、年々負債合計も緩やかに減少し、自己資本比率は年を追うごとに向上しています。(2018年4月期14.76%→2023年4月期18.99%)

また財務安定性指標の一つである流動比率(流動資産÷流動負債×100)は、2023年4月期の時点で186.24%(安全ラインは100%以上)となっており、支払い能力についての不安は感じられません。

フローラの純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。

純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。

この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。

フローラの純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

会社の所有する現金や建物などの資産から負債(借金)を差し引いたものとなります。
純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

フローラの2023年4期における純資産合計は、36億9千4百万円(前年同期比7.10%増)となっています。

2020年から2021年にかけて、葬儀業界は新型コロナの影響により大きな打撃を受けました。
フローラの純資産合計は、新型コロナ発生前の2019年4月期にくらべても、5億5千1百万円増加しています。

このことから、フローラでは新型コロナの影響にから脱却し、順調に回復している印象です。

当期純利益の推移

会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。

当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。

フローラの2023年4月期における当期純利益は2億4千4百万円(前年同期比369.2%増 )となっています。

2020年4月期におけるフローラの当期純利益は3億5千7百万円(前年同期比363.6%増)と突出して多くなっていますが、2019年4月期までは1億円前後で推移していました。
詳細な資料がないため、2020年4月期の当期純利益が大幅に増加した理由は不明ですが、2023年4月期には前年より一気に回復し、過去5年間で2番目に高い数値となっています。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。

フローラの場合は以下のように推移しております。

フローラの2023年4月期における利益剰余金は、35億9千5百万円(前年同期比7.31%増)でした。
フローラの利益剰余金は過去6年間にわたって堅調に推移してきましたが、新型コロナが5類に移行した2023年では、前年に比べ2億円以上の大幅増加となっています。

株式会社 フローラのまとめ

今回は株式会社 フローラの決算公告を参考に、現状分析を行いました。
新型コロナの影響が大きかった2020年から2021年にかけて、フローラもダメージを受けたようですが、財務状況が大幅に悪化することはなく、安定した経営状態がうかがえます。

2023年5月からは新型コロナも5類に移行し、葬儀業界の業績も回復傾向にありますので、株式会社 フローラの2024年決算公告にも注目したいと思います。

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