新たな価値観を提案|葬儀業界の変化が生み出した商品・サービスを紹介

フューネラルビジネスフェア

近年、葬儀業界は大きく変化しています。
ここ10年ほどは葬儀規模も徐々に縮小傾向にありましたが、新型コロナウイルス感染症の流行により、大きく加速しました。
また、「墓じまい」や墓を持たない選択をする人が増えるなど、供養の形も大きく変化しています。

一方で、葬儀規模の縮小や供養の形が変化しているからこそ、生まれている「新しいカタチ」も多くあります。
本記事では、フューネラルビジネスフェアの場をお借りして、葬儀業界を支える企業様にこれまでの変化を踏まえた上で、新しい時代に対応するお考えやこれからの展望について伺いました。

目次

数字で見る葬儀業界の変化

売上高と取扱件数

葬儀業 推移
出典:「特定サービス産業動態統計調査」対個人サービス業「葬儀業」(経済産業省)をもとにグラフを作成

「特定サービス産業動態統計調査」(経済産業省)によると、2022年の葬儀業の売上高は約5,607億円、取扱件数は約49万7千件となっています。
いずれも前年と比較すると増加しているものの、取り扱い件数は、調査期間中で過去最高を記録している一方で、売上高は2012年と同水準であることがわかります。

一概には言えませんが、家族葬などの小規模な葬儀を望む人が増えたことで、葬儀単価が減少していることが大きな要因と言えるでしょう。
フューネラルビジネスフェアでお話を伺えた企業様からも、「もともと縮小化の傾向があったが、コロナ禍で加速した」との声が多数聞かれました。

葬儀の新たなカタチを提案

葬儀業界の変化により生まれたサービスや既成概念にとらわれない新たな葬儀・供養の形もあります。
ここでは、葬儀業界の変化を踏まえ、新たな価値観の提案をする企業様や変化しているからこそ生まれたサービス、商品を紹介します。

タイムリープ株式会社

タイムリープ株式会社様は、店舗の無人化を推進し、オンライン接客を実現する「RURA」を提案する企業です。すでに多岐にわたる業種で店舗の無人化を実現しました。
今回のフューネラルビジネスフェアでは、葬儀業界の人手不足に対応し、機会損失を防ぐために少ない人数で多くの店舗の接客できる遠隔接客サービスを提案しています。

「RURA」について教えてください

「RURA」は、インターネットを通じて、離れた場所から接客を行なうことができる遠隔接客サービスです。

これまでは、必ず店舗に人を配置するか、いない時間は店舗を閉じるという選択肢しかありませんでした。
しかし、「RURA」を導入し、無人の店舗にモニターを置くことで、少ない人数で多くの店舗の接客ができます。
今回設置したデモ画面では、2人のスタッフで20店舗の対応をしています。

また、「RURA」で一次受付をするスタッフがそれほど葬儀に詳しくない場合でも、その間により詳しいスタッフが当該店舗に駆け付けたり、お客様に「RURA」で対応するなど、手厚い説明をすることができます。
葬儀社様からは、お買い物のついでに「話を聞いてみたい」と気軽に葬儀会館に立ち寄るお客様も少なくないと伺っています。
そうした際に、店舗が閉まってたために他の葬儀社様に行ってしまうという機会損失を防ぐことが可能です。

また、新たに拠点を増やしたいけど、スタッフが足りないなど、人手不足や人材難の悩みを抱えている葬儀社様のお役にも立てると考えています。

これからの展望を教えてください

去年に続き、2度目の出展になります。
すでに多くの引き合いをいただいていますが、さらに「RURA」のご理解をいただき、ご活用していただきたいと思っています。 

アルゴダンザ・ジャパン

アルゴダンザ・ジャパン様が紹介しているのは、メモリアル・ダイヤモンドです。ご遺骨の成分だけを使って制作した合成ダイヤモンドは、輝きも硬さも天然のダイヤモンドと全く同じなのだそうです。
社名にもなっている「アルゴダンザ(ALGORDANZA)」はロマンシュ語で「追悼」を意味します。

メモリアル・ダイヤモンドをおすすめする理由を教えてください

人が亡くなると、残るのはご遺骨だけです。そのご遺骨もお墓に納骨することが一般的ですが、さまざまな理由で大切な人との離れがたさを感じている人も少なくありません。
そんなご遺族様のつらい時期に手元に残るものが欲しいという思いを受け、スタートしたサービスです。

ご遺骨の一部を持ち歩く方もいらっしゃいますが、弊社のサービスでは美しいダイヤモンドという形で身に付けられるようになっています。
男性であれば全骨の4分の1程度、女性であれば3分の1程度のご遺骨でメモリアル・ダイヤモンドの制作が可能です。

ここ5年程は、すべてのご遺骨を使ったメモリアル・ダイヤモンドの制作をご希望される方が増えていて、全体の4割を占めています。「ダイヤモンド葬」として、お墓を持たない方の選択肢の一つになっています。 

これからの展望を教えてください

メモリアル・ダイヤモンドを制作するサービスを始めて、今年で19年になります。最初は、「何これ?」という反応が多かったのですが、少しずつ知って頂けているようで、依頼が増えています。

フューネラルビジネスフェアには、取扱店を増やしたいという思いから参加しました。もっとメモリアル・ダイヤモンドを知っていただき、必要としている人に届けたいと考えています。 

株式会社丹青ヒューマネット

丹青ヒューマネット
丹青ヒューマネット

空間づくりで知られる丹青グループの一社、株式会社 丹青ヒューマネット様が新たに提案するのが「VRセレモニー空間サービス」です。

どんなサービスなのでしょうか?

「VRセレモニー空間サービス」は、ご遺体を供養する実際のお葬儀とは別に、故人様を追悼するために作られたWEB上の空間です。

スマホやパソコン、タブレットなどからアクセスし、訪れた人がメッセージを投稿したり、思い出の写真をアップするお部屋、喪主がごあいさつをするお部屋などさまざまな空間に入ることができます。
記帳ができるシステムがあり、どなたが訪れたかもわかるようになっています。

設定された期間内であれば、いつでも何度でも訪問することができ、他の方が投稿した写真やメッセージも読むことも可能です。
期間が終わると、お部屋はクローズされます。主催者、もしくは間に入る葬儀社様がダウンロードすることで、メッセージや写真などのデータの保存ができます。
葬儀社様の付加価値として、そのデータを使ったアルバムの制作など、新たな商品も考えられるのではないでしょうか。 

VRセレモニー空間サービスで追悼の場を設けることで、葬儀規模の縮小化や遠方で参列してもらえなかった人が多かったなど、弔いに物足りなさを感じている人の癒しになることが考えられます。
また、リアルでもデジタルでも、故人様との大切な思い出を共有することで、ご家族様にとってはグリーフケアにもつながるサービスです。 

株式会社日本コフィン

株式会社 日本コフィン様は、50年以上の歴史を持つ、広島県の棺メーカーです。海外からの輸入棺が多くを占めるなか、国内製造にこだわった棺の製造をしています。

今回おすすめしている商品を教えてください

日本環境協会認定のエコマークを取得した「NC e-LITE」を紹介しています。昨年から取り扱いを始めた棺で、地球環境問題に対する取り組みから生まれました。
接着剤など人体に有害な物質の使用を制限し、人工森林の間伐材を使用した商品です。

また、葬儀社様には、華道家の假屋崎省吾先生プロデュースの棺・骨壺「花筺(はながたみ)」もおすすめしています。
デザインを変えながら現在は、11種類を取り扱っています。華やかなデザインは、お客様からご好評をいただき、長く続くシリーズになりました。

これからの展望をお聞かせください

SDGsに対する意識が高まるなか、これからますます地球環境を意識した棺を提供できるよう、研究・開発に取り組んでいきたいと思っています。

株式会社カワキタ

今回のフューネラルビジネスフェアで、オリジナルクラッシック霊柩車を展示していたのは、富山市にある葬儀用車両専門メーカーの株式会社カワキタ様です。 

今回、展示している商品について教えてください

今回、展示しているのは、新車国産車をベースとしたオリジナルクラシック霊柩車M-Ⅱクラスです。
弊社では、葬儀用車両の製造を行っており、異なるタイプの霊柩車や湯灌車、搬送車、バス型なども取り扱っています。

最近の状況は、いかがでしょうか

葬儀社様からは、霊柩車よりも搬送車での出棺を望むご遺族様が増えていると伺います。
もともと葬儀の規模を縮小する傾向がありましたが、コロナ禍でごく身近な近親者だけでお見送りをする小さな家族葬をなさる方が増えたことが輪をかけているようです。
少し寂しいような気がしています。

一方で、地域性やそれぞれのご家族の考え方により、最期だから盛大に霊柩車でお見送りをしたいという方も少なくありません。
搬送車を利用する人が増えたとしても、引き続き霊柩車も必要とされると考えていています。

お客様の反応はいかがですか

今回のフューネラルビジネスフェアでは、導入を検討されている方や立ち止ってご覧いただく方もいらっしゃいます。

霊柩車は、会館から火葬場の間など走行距離が短く、一度導入すると長くお使いいただくのが一般的です。
霊柩車や搬送車の導入を考えた際に「カワキタ」を思い出していただけるように、このような場で知っていただけたらと思っています。

東京ローソク製造株式会社

東京ローソク製造株式会社様は、100年近い歴史を持つ、ローソクの製造メーカーです。日本一の品揃えを誇るペットメモリアル商品総合メーカーとしても知られています。

おすすめの商品を教えてください

フューネラルビジネスフェアには、何度か出展させていただいていますが、ペットさんの供養に関する商品に声がけいただくことが多く、ニーズが増えていることを感じています。
そのため、商品のラインナップも充実させてきました。

今回、おすすめしているのがペットメモリアルのオーダーメイドグッズと珪藻土の骨壺です。
オーダーメイドグッズは、ペットさんのお写真をいただいて、デザイン、メッセージ、お名前などのご希望をいれて、オリジナルでたった一つのものをお作りしています。

珪藻土の骨壺は、ご自宅用にも埋葬用にもご利用いただける商品です。
陶器の骨壺でご自宅にお骨を安置している方から、カビの発生が気になるという声も耳にします。珪藻土であれば、調湿作用があるので、自然と湿度の調節をしてくれるため、お骨にとってはとても優しい環境です。

また、そのまま埋葬した場合でも、珪藻土はだんだん崩れていくため、お骨は土に還っていきます。樹木葬で珪藻土の骨壺を使われる方もいるようです。

これからどんな展開を考えていますか

これまでは、ペットさんのエンディングに向けた商品を扱ってきました。今後は、元気なペットさんのためのラインナップを充実させて、トータルでプロデュースできるようにしていきたいと考えています。

株式会社コーリング

コーリング

株式会社コーリング様は、長野県の葬儀社です。今年のフューネラルビジネスフェアでは、一般販売に先駆けて、従来品からさらに進化した「遺体凍結装置 エコ・スーパーコールドX-Ⅱ」の発表となりました。

商品について教えてください

「遺体凍結装置 エコ・スーパーコールドX-Ⅱ」は、ドライアイスの代わりに故人様をお守りする装置です。

ドライアイスは、通常、1日10キロを使います。もし5日間使うことになれば、5日分のドライアイスが必要です。
その都度、仕入れが必要になりますし、ご自宅に安置されている場合であれ葬儀社様の従業員の方がドライアイスを追加しに行く手間もかかります。

エコ・スーパーコールドX-Ⅱを使うことで従業員の方の負担を軽減できます。また、リース料金の負担だけで利用ができるので、ドライアイスの仕入れにかかる費用を抑えることが可能です。

さらにエコ・スーパーコールドX-Ⅱは、CO2が発生しないため、SDGsの観点から、社会貢献としてご利用いただいている葬儀社様もあります。

ドライアイスの場合は、お体の上に5キロのドライアイスを2つ乗せることが一般的ですが、小柄な故人様だと重そうに感じてしまいます。エコ・スーパーコールドX-Ⅱは、それよりもはるかに軽い装置です。
また、お体に充てる側だけが-30℃になるため、装置の上に置いている手は常温のままです。故人様にも優しい装置になっています。 

今回のフューネラルビジネスフェアでは、ご興味を持って見ていただけてると思います。すでにご利用いただいているお客様から、ご質問などをいただく機会もありました。

THE GOOD FLOWER JAPN株式会社

THE GOOD FLOWER JAPN

THE GOOD FLOWER JAPN株式会社様は、セレモニー・フラワーのプロ集団です。今年のヒューネラルビジネスフェアでは、新たな祭壇のカタチとして「メモリアルフォト祭壇」を提案しています。

展示している祭壇について教えてください

弊社には、多くのフラワーデザイナーが在籍しており、常に新しいものを提案しています。今回のヒューネラルビジネスフェアでは、「メモリアルフォト祭壇」を提案させていただきました。
故人様の思い出や好きだったものをモチーフとして空間アートにしています。弊社は、花を扱う会社ですが、あえて花を減らすことで、費用を抑えました。

メモリアルフォト祭壇は、ご自宅での葬儀にも対応しています。葬儀の場合は、様式が決まっていることが多いのですが、必要に応じてデザイナーが担当することもあります。
これからも、故人様との思い出をデザイナーとともに作り上げていく空間を提案していきたいと考えています。

株式会社丸叶むらた

株式会社 丸叶むらた様は、創業から300年以上の歴史を持つ、お線香、ろうそくなどの供養に関する商品を取り扱う企業です。

おすすめの商品を教えてください

ブリザードフラワーとお線香のギフトセットです。
最近は、贈り物の需要が高まっていると感じています。

コロナ前から家族葬が増え、お葬儀があったことを後で知るケースが増えてきました。
以前であれは、葬儀に伺っていた関係だったのに、喪中はがきで亡くなったことを知り、何もできずに終わってしまう。そうかといって、お香典を送ると相手にお返しなどの気を使わせてしまうことも考えられます。
それならお線香を送ろうと考える方が増えているようです。

日本人は、自分がしてもらったことと同等のお返しをしたいという気持があります。自分の家のお葬儀の時にいただいたお香典と同じだけ返したい。そのため、比較的お高めのギフトを選ぶ方が多くなっています。
その反面、お線香ばかりたくさん頂いても困るという声からブリザードフラワーとのセットもご用意しました。弊社で開発しているお線香のセットは、本数が少ないものもあるので、もらいすぎて困るということもないと思います。

 これからの展望を教えてください

弊社は卸売り業なのでいろいろなメーカーさんのお線香も扱っています。他のメーカーさんの商品は、これまでのユーザー層に向けたものが中心です。弊社では、これからお線香を使う若い層に向けて新たな商品を開発していきたいと考えています。

株式会社ジャパン唐和

株式会社ジャパン唐和様は、大阪府四條畷市の葬祭用具の製造販売や葬祭ホールのトータルコーディネイトなどを行う企業です。今回のフューネラルビジネスフェアでは、デザイナーがトータルプロデュ―スした葬儀会場が設置されていました。

今回の展示について教えてください

葬儀のトータルプロデュ―スを提案しています。みなさん一つひとつ、骨壺、棺などを選んでいくと思いますが、私どもは、一つの窓口でお客様の痒い所に手が届くような形で提供していきます。
ホールの内装はもちろん、椅子は一脚からオーダーで作ることが可能です。トータル的なバランスを測り、無理なことをいかに可能にしていくかを日々考えています。

今回の会場は、デザイナーによる葬儀会場の一事例として設置しました。残念ながら映像として掲載していただくことはできないのですが、無宗教を前提とした会場になっています。
必要に応じて祭壇を設置することも可能ですし、故人様のメモリーなどを投影することもできます。

ご家族様からご満足いただくことで、その葬儀には価値が生まれるはずです。どんなことでも、ご相談いただければ対応していきたいと思っています。

株式会社モリヤ

静岡県掛川市で葬祭用品の製造をしているのが、株式会社モリヤ様です。木材加工を得意とする企業で、ここ数年は、フューネラルビジネスフェアに出展し、独自の商品を提案しています。

おすすめ商品を教えてください

今回、おすすめしているのは、木製丸壺です。桐でできた骨壺で、白木、塗り、焼きの3種類をご用意しました。内側には石が貼ってあり、熱いお骨を入れても燃えないように工夫されています。
ありがたいことに、フューネラルビジネスフェアでは、多くの反響をいただいています。

葬儀の規模が縮小化していくなか、葬儀社様に弊社が新しい価値を提案するという機会が増えました。これからも、「ないものを形に」していきたいと思っています。

まとめ

お話を伺うことができた企業様からは、葬儀の簡素化、縮小化がすすむ一方で、お客様から必要とされているものやサービスについて、アンテナを張り巡らせ、敏感に反応していることが感じられました。

フューネラルビジネスフェアという葬儀業界の最先端を知ることができる場だったこともあって、業界の変化をポジティブに受け止め、柔軟に対応している企業様が多かったように思います。

これからも変化を続けるであろう葬儀業界にたずさわる方の参考になれば幸いです。

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