世界最大の展示会『CES』葬儀領域の関連性┃世界の相続系プラットフォームサービスを解説

CESエイジテック

ライフエンディング領域におけるビジネスでも技術の波、テクノロジーの進化はやってきています。

葬儀業界で昨今話題になったのが、オンライン葬儀(リモート葬儀)、終活では遺言・遺書のオンラインサービスです。
また相続関連業界では、プラットフォームが複数乱立といったところで、技術的な進化が進んでいる状況です。

ライフエンディング領域の対象は高齢者が中心になっており、超高齢化社会に突入している日本社会にとっては非常に重要性・関連性の高い領域です。

世界的にも高齢者に向けたサービスは発展しており、毎年ラスベガスでおこなわれているCESという世界最大のイベントでは『エイジテック(age tech)』というカテゴリでブースが出展されています。

『エイジテック(age tech)』のなかには、国内で展開されている相続プラットフォームに該当する領域で、ファイナンシャルサービス(Financial Services)が存在します。

今回1月5日から8日まで開催されたCES2023における、『エイジテック(age tech)』カテゴリにおいて、ファイナンシャルサービス(Financial Services)の会社について紹介をおこなって参ります。

国内における相続プラットフォームとの違い等を見比べると面白いかもしれません。

目次

世界最大の展示会 CESとは

age-tech

CESはConsumer Electronic Show(コンシューマー エレクトロニック ショウ)の略称となっており、国内ではCESのことを『セス』って呼んでる人が多く、英語圏では『シーイーエス』と呼ぶ人が多いです。
内容は世界最大の展示会・見本市などと呼ばれていますが、展示スペースは異常に大きく徒歩で見回っても3日間かかっても見切れないほど出展ブースがあります。

展示内容は主に最先端技術や新たなビジネスモデルの商品やサービスが中心です。
国内のマスメディアではSony・ソニー・ホンダモビリティがEV『AFEELA(アフィーラ)』という電気自動車が話題になりました。
https://square.sony.com/ja/ces2023/

最先端技術というと、「AI/ビッグデータ/IoT」を指すことが多く、葬儀・仏壇・墓石と関係ないように思われますが、対象顧客である高齢者と捉えると、実は関連性があったりします。
高齢者向けにテクノロジーによるソリューションが世の中のニーズとしてあり、CESでは『age-tech(エイジ・テック)』としてカテゴリが分かれている状況でした。

ここからは『age-tech(エイジ・テック)』について解説を進めていきます。

age-tech(エイジ・テック)とは

エイジテックCES

「そもそもエイジ・テックって何?」という方もいるかもしれません。
そこで、まずはエイジ・テックとは何かについて確認しておきましょう。

エイジ・テックの「エイジ」は「エイジ」は高齢を意味する英語ageで、「テック」はテクノロジーのテックです。このことからもわかるように、エイジ・テックとは、高齢者のニーズを念頭に置いたテクノロジーを使ったサービスのことを意味します。言い換えると、エイジ・テックは、テクノロジーの力により、高齢者の抱える悩みを解決したり、生活の質を向上させたりする、あらゆるサービスを広く含む概念であると言えます。

エイジ・テックの例としては、AIを使ったアプリにより訪問ケアをスマート化(テクノロジーを利用した効率化)したサービスや、高齢者を対象にした対話型AIなどが挙げられます。

先進国では一般的にいって少子高齢化が進んでおり、その帰結として人口において高齢者が占める割合が増加傾向にあります。これにより、さまざまな市場においても高齢者のニーズが大きな比重を占めることとなるため、エイジ・テックの重要性は今後さらに増加していくと予測されます。

以下で紹介する企業も、そうしたエイジ・テックの重要性の高まりを受けて、着実に成長をしているようです。

なお、CES2022に出展しているエイジテック関連企業は、以下の21社です。

  • Braze MOBILITY(ブレイズ モビリティー)…車イス用の死角センサーを開発
  • camino(カミーノ)…高齢者向けのスマート歩行器を開発
  • RAZ MOBILITY(ラズ モビリティー)…障がい者や高齢者が使いやすい携帯電話を開発
  • flowly(フローリー)…神経系の慢性疾患を持つ方などの症状改善プログラムの開発
  • MindMics(マインドミックス)…精密な生体認証モニターの開発
  • AMICUS BRAIN(アミーカス ブレイン)…AIを活用した介護支援システムの開発
  • trust&will(トラスト アンド ウィル)…資産管理や不動産相続・遺言書関連サービス
  • Goalsetter(ゴールセッター)…金融教育、および資産管理アドバイスサービス
  • paperwork(ペーパーワーク)…資金面の健全性向上支援サービス
  • Mighty health(マイティ ヘルス)…健康維持プログラム
  • tellus(テルース)…高齢者施設などを対象とした健康管理と通知システム
  • ZIBRiO(ジブリオ)…高齢者の転倒・転落防止システム
  • Care.Coach(ケア・コーチ)…高齢者の包括的な健康管理システム
  • casana(カサーナ)…在宅療養患者の健康管理プログラム
  • labrador(ラブラドール)…生活支援ロボットの開発
  • Beeyonder(ビーヨンダー)…バーチャルツアー
  • kinoo(キノオ)…家族間のオンライン交流システム
  • GAMEBOARD(ゲームボード)…ボードゲームとデジタルを融合させたシステム
  • MITRE Engenuity(ミトレ エンジェニュイティー)…エイジテック製品のサイバーセキュリティ
  • National Institute on Aging Seed Fund(ナショナル インスティテュート オン エイジング シード ファンド)…老化研究企業向けの基金
  • THRIVEWELL(スライブ ウィル)…高齢者生活インフラの成熟に向けた技術開発の促進

本記事では、上記のうち「trust&will」「Goalsetter」「paperwork」の3社を紹介します。

(1) trust&will (トラストアンドウィル)

trust&will(トラストアンドウィル)のウェブサイトの画像

trust&will(トラストアンドウィル)の基本データ

:アメリカ合衆国
住所:カリフォルニア州サンディエゴ
設立:2017年10月26日
従業員:11-50人
サイトhttps://trustandwill.com/

trust&will(トラストアンドウィル)の商品/サービス概要

trust&will(トラストアンドウィル)は、家族がオンラインで遺産計画を作成、管理、分配するための簡単、迅速、かつ安全な方法を提供するオンラインサービスです。同社は、合理的かつ直感的なアプローチにより、財産設計をシンプルかつ手頃な価格で、利用しやすくしています。

提供されているプランには、信託と遺言のプラン、および遺言の検認のサービスがあります。trust&will(トラストアンドウィル)のミッションは、すべての家族が遺産を残せるよう支援することです。

同社の強みは、家族が財産計画を作成・管理するための方法を簡単かつ手頃な価格で提供できること、並びに同社のミッションに賛同するベンチャーキャピタルや金融機関の有力企業と提携していることにあると言えます。

trust&will(トラストアンドウィル)のサービスのイメージ

trust&will(トラストアンドウィル)の評価・資金調達情報

trust&will (トラストアンドウィル)は2020年11月に1500万ドル(日本円で約19億円)*を調達しています。同社は2019年には約200万ドル(約2億6千万円)を調達しており、2020年の資金調達で同社の総額は2300万ドル(約29億円)を超えることとなりました。同社は2018年のサービス開始以来、16万人のユーザーを抱えるまでに成長しており、複数の金融機関と戦略的パートナーシップを結んでいます。

*サンフランシスコを拠点とする最大のベンチャー投資家 Jackson Square Venturesが主導し、Fifth Third Capital Holdings、Northwestern Mutual Future Ventures、AARP、Rosecliff Ventures、などが参加

Fifth Third Capital Holdings(フィフス サード キャピタル ホールディングス):オハイオ州シンシナティを拠点とするベンチャー投資会社

Northwestern Mutual Future Ventures(ノースウェスタン ミューチャル フューチャー ベンチャーズ):デジタルヘルス、テクノロジー分野等への投資を行う企業

AARP(エイ エイ アール ピー):アメリカの高齢者問題に取り組む団体

Rosecliff Ventures(ローズクリフ ベンチャーズ):ニューヨークに本拠を置く投資管理会社

trust&will(トラストアンドウィル)が国内展開する可能性

trust&will(トラストアンドウィル)が国内展開するという情報は現在ありませんが、長期的には可能性が全くないわけではないでしょう。

(2) Goalsetter (ゴールセッター)

Goalsetter(ゴールセッター)のウェブサイトの画像

Goalsetter(ゴールセッター)の基本データ

:アメリカ合衆国
住所:ニューヨーク州ニューヨーク
設立 2016年
従業員:11-50人
サイトhttps://www.goalsetter.co/

Goalsetter(ゴールセッター)の商品/サービス概要

Goalsetter (ゴールセッター)は、ミレニアル世代(=2000年以降に成人を迎えた80年代から90年代半ば生まれの世代のこと)の母親とその子供をターゲットにしたサービスです。Goalsetter(ゴールセッター)の社名は、直訳すると「目標を設定する人」というものですが、その名が表す通り、Goalsetter(ゴールセッター)の提供するアプリは、子供がお小遣いを使って単に消費をするのではなく、貯蓄目標を計画的に貯めることができるようにすることを支援するものです。このように、Goalsetter(ゴールセッター)は家族が子供の将来の目標に貢献し、健全な経済的習慣を身につけられるようなプラットフォームを提供しています。

このことからもわかるように、同社の目標は、子供たちに貯蓄の手段を提供することで、生涯続く健全な経済習慣を身につけさせることにあります。同社の強みは、ミレニアル世代の母親をターゲットにした目標ベースの貯蓄とギフト機能のユニークな組み合わせで、初めて貯蓄する人をずっと貯蓄する人に変える、子供向けの最初の貯蓄手段となっていることにあると言えるでしょう。

Goalsetter(ゴールセッター)のサービスのイメージ

Goalsetter(ゴールセッター)の評価・資金調達情報

Goalsetter(ゴールセッター)は2021年12月に1,500万ドル*(約19億円)の資金調達を発表しています。これより以前は、同社は従来の個人消費向け市場のチャネルと口コミを通じて、親とその子供をアプリに引きつけることに注力してきましたが、この調達により法人向け市場への参入をすることとなり、事業を拡大しています。

*投資企業はPNC Bank、Mastercard US Bank、Northwestern Mutual Future Ventures、Elevate Capitalなど

PNC Bank(ピーシーエヌ バンク):ペンシルベニア州ピッツバーグ市に本拠を置く銀行持株会社

Elevate Capital(エレベート キャピタル):オレゴン州ポートランドに本拠を置くベンチャーキャピタル会社

Goalsetter(ゴールセッター)が国内展開する可能性

Goalsetter(ゴールセッター)が日本市場に参入することは可能ですが、徹底したマーケットリサーチと堅固なマーケティング戦略が必要となると思われます。既存の子供向け金融教育サービスとの差別化が鍵となるでしょう。

(3) paperwork  (ペーパーワーク)

paperwork(ペーパーワーク)のウェブサイトの画像

paperwork(ペーパーワーク)の基本データ

:アメリカ合衆国
住所:カリフォルニア州オークランド
設立:2019年10月1日
従業員:1-10人
サイトhttps://www.paperwork.co/

paperwork(ペーパーワーク)の商品/サービス概要

paperwork(ペーパーワーク)は、顧客の金融口座、保険契約、重要書類を整理、分析、管理するアプリを通じたサービスであり、ユーザーがファイナンシャル・ウェルネス、すなわち金銭的に心配をしなくてよい状況を達成・維持するのを支援しています。このために、paperwork(ペーパーワーク)は銀行、信用組合、その他の金融機関と提携し、提携先の会員が財政状況を時系列的に管理し、改善するのをサポートしています。

paperwork(ペーパーワーク)のサービスの背後には、アメリカ人の3分の2が経済的に脆弱であり、従来の金融リテラシーや教育プログラムでは十分な効果が見込まれないという状況があります。この問題に対処するために、同社は、モバイルテクノロジーとフィンテック(=金融サービスとIT技術の融合)の進歩を活用し、顧客データを使用して、財務状況の改善に焦点を当てたパーソナライズされた知見を提供しています。

このように、paperwork(ペーパーワーク)の強みは、提携先の会員がファイナンシャル・ヘルスを向上できるように、パーソナライズされた実行可能なアドバイスを提供できることにあるといえるでしょう。また、paperworkは経験豊富なフィンテックと金融リテラシーの専門家がチームを率いていることから、金融業界と顧客のニーズに対する強い理解を持っていることがうかがえます。

paperwork(ペーパーワーク)のサービスのイメージ

paperwork(ペーパーワーク)の評価・資金調達情報

paperwork(ペーパーワーク)は2022年2月に250万ドル*(約3億2千万円)のシード資金を調達しています。

*投資に参加したのはLaunchpad Capital、AARP、StartUp Mavericksなど

Launchpad Capital(ローンチパッド キャピタル):金融・保険・不動産などを中心に初期投資をおこなっているオークランドの投資会社

StartUp Mavericks(スタートアップ マーベリックス):主に急成長企業を支援しているロサンゼルスの投資会社

paperwork(ペーパーワーク)が国内展開する可能性

paperwork(ペーパーワーク)が国内展開するという情報は現在ありませんが、長期的にはこちらも可能性のない話しではありません。パーソナライズされたアドバイスを提供する財産管理のプラットフォームという強みを活かせば、日本においても市場を獲得することは可能であると思われますが、既存のサービスとの差別化を測る必要があり、しっかりとしたマーケティング戦略が必要となります。

まとめ – CES エイジテック(age tech)における相続系プラットフォームサービス

本記事では、CES エイジテック(age tech)におけるファイナンシャル・プラットフォームサービスとして、trust&will(トラストアンドウィル)、Goalsetter(ゴールセッター)、paperwork(ペーパーワーク)の3社をご紹介いたしました。

3社とも順調に成長を続けていますが、長期的には日本における展開可能性もあることを考えると、今後の動向にさらに注目が必要です。

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