近畿・中国・北陸地域 株式会社セレマ┃冠婚葬祭互助会の業績・利益をまとめて分析

セレマ 売上、利益、業績┃葬儀・葬祭の冠婚葬祭互助会

葬儀社の売上・利益・業績を調べる場合、上場しているなら決算発表情報・有価証券報告書をみれば分かります。非上場になると帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、売上・利益・業績の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社セレマの現状について、決算公告をもとに分析いたします。
決算公告は上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社セレマの概要

株式会社 セレマは、昭和34年に「有限会社 京都市冠婚葬祭互助センター」を創設したことに始まります。
冠婚葬祭業界最大手の株式会社ベルコ系列企業で、代表取締役の齋藤秀市氏はベルコの代表取締役会長を務めています。

セレマという社名は「Ceremony(セレモニー:儀式・葬儀)」「Remember(リメンバー:記憶・思い出)」「Marriage(マリッジ:結婚)」の頭2文字ずつを組み合わせた造語のようです。

近畿・中国・北陸地域を中心に冠婚葬祭互助会事業を運営し、葬儀場は約120ホール、結婚式場は14式場(2024年6月現在)です。

株式会社 セレマの2023年7月期の会員状況及び施行件数は、以下のとおりです。
・会員口数:941,046 口
・挙式組数:1,713 組
・葬儀件数:21,336 件

【名称】株式会社 セレマ
【設立】昭和34年5月
【代表取締役】齋藤 秀市
【所在地】京都市中京区西ノ京中御門東町134
【公式サイト】https://cerema.co.jp/company/
【事業内容】冠婚葬祭互助会(前払式特定取引業)
      
出典:株式会社 セレマ 会社概要

葬儀社の決算公告とは

決算公告はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告と言います。

さらに大会社については、貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。
次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は貸借対照表の負債の部に計上されている合計額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。

公告の方法は全部で3つあります。
1つ目は官報に掲載、2つ目は日刊新聞紙に掲載、3つ目は電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告の簡単な概要については以上になります。
なお上場企業の決算報告書(有価証券報告書)はEDINETで公開されており、誰でも閲覧可能です。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより
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会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

1つ目は法務局に供託する、
2つ目は経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶこと、
3つ目は銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶこと

以上の3つの方法のいずれかを選択する必要があります。

また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

株式会社セレマの貸借対照表 

会計年度2018年7月期2019年7月期2020年7月期2021年7月期2022年7月期2023年7月期
利益剰余金450億4千9百万円491億3千2百万円515億1千2百万円542億9千9百万円595億2千1百万円642億4千3百万円



流動資産591億1千6百万円589億5千3百万円471億4千3百万円480億3千7百万円558億0千5百万円616億4千2百万円
固定資産925億3千4百万円949億7千9百万円1099億1千3百万円1114億6千4百万円1108億0千4百万円1073億3千1百万円
有形固定資産653億3千3百万円682億8千8百万円847億1千4百万円867億3千9百万円871億4千2百万円857億8千3百万円
無形固定資産2億2千9百万円1億3千5百万円6千9百万円6千7百万円6千6百万円6千7百万円
投資その他の資産269億7千1百万円265億5千6百万円251億2千9百万円246億5千8百万円235億9千5百万円214億8千1百万円
繰延資産
資産合計1516億5千0百万円1539億3千2百万円1570億5千6百万円1595億0千1百万円1666億0千9百万円1689億7千3百万円



流動負債137億1千4百万円116億0千3百万円110億4千9百万円112億6千7百万円122億9千3百万円122億4千5百万円
役員賞与引当金
賞与引当金
その他
固定負債927億8千6百万円930億9千7百万円943億9千5百万円938億3千4百万円946億9千4百万円923億8千2百万円
退職給付引当金
雑収入復活引当金
役員退職慰労引当金
その他
負債の部計1065億0千0百万円1047億0千0百万円1054億4千4百万円1051億0千1百万円1069億8千7百万円1046億2千7百万円




株主資本451億4千9百万円492億3千2百万円516億1千2百万円544億0千0百万円596億2千1百万円643億4千3百万円
資本金1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円
資本余剰金
資本準備金
その他資本余剰金
利益剰余金450億4千9百万円491億3千2百万円515億1千2百万円542億9千9百万円595億2千1百万円642億4千3百万円
利益準備金1千6百万円1千6百万円1千6百万円1千6百万円1千6百万円1千6百万円
特別償却準備金
その他利益剰余金450億3千2百万円491億1千6百万円514億9千5百万円542億8千3百万円595億0千5百万円642億2千7百万円
評価・換算差額等1百万円1百万円3百万円
その他有価証券評価差額金1百万円1百万円3百万円
(うち当期純損失)
新株予約権
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
純資産の部計451億5千0百万円492億3千2百万円516億1千2百万円543億9千9百万円596億2千2百万円643億4千6百万円
負債・純資産合計1516億5千0百万円1539億3千2百万円1570億5千6百万円1595億0千1百万円1666億0千9百万円1689億7千3百万円

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である自己資本比率が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。自己資本比率が10%を下回っている場合は経営状態は良いとは言えません。

自己資本比率が低い場合は、借入金などの負債が多い状況と考えられますので、資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で自己資本比率が高い場合は、返済義務を有しない資金を大量に抱えているので、倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は、企業の中長期的な安定性を確認できる指標ですが、適正とされる自己資本比率は業種によって大きく異なります。

例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

※のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

株式会社セレマの自己資本比率は38.10%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」の計算式で算出可能です。

株式会社セレマの2023年7月期の自己資本比率を求める式は下記のようになります。

643億4千6百万円(純資産)÷ 1689億7千3百万円(総資産)× 100=38.1%

上記の式から同社の自己資本比率は38.10%(前年比で2.31ポイント上昇)となりました。

株式会社セレマ 利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが、利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。

株式会社セレマの場合は以下のように推移しております。

株式会社 セレマの2023年7月期の利益剰余金は、642億4千3百万円(前年比7.93%増)となりました。
セレマの利益剰余金は年々増加し続けており、2023年は過去6年間で最高額となりました。

2020年から2021年にかけて、コロナの影響や葬儀の小規模化・簡素化の影響で、葬儀業界では全体的に売り上げが減少傾向にありましたが、セレマは黒字経営を継続していたようです。

株式会社セレマの損益計算書

損益計算書とは、一定の期間に企業が「どれだけ売り上げが上がり(=収益)」「費用を何に使って(=費用)」「どれくらいもうかったのか(=利益)」が一目で分かるものです。
英語では「Profit and Loss Statement」とあらわされるため、略語で「P/L」と呼ばれることもあります。

損益計算書

決算期52期53期54期55期56期57期
会計年度2018年7月期2019年7月期2020年7月期2021年7月期2022年7月期2023年7月期
売上高362億5千8百万円347億6千4百万円305億0千1百万円280億3千9百万円320億5千6百万円336億1千8百万円
売上原価232億5千2百万円223億9千2百万円210億3千4百万円188億1千2百万円210億0千7百万円221億6千0百万円
売上総利益130億0千6百万円123億7千2百万円94億6千7百万円92億2千7百万円110億4千9百万円114億5千8百万円
販売費及び一般管理費66億3千9百万円65億0千2百万円65億7千5百万円58億5千2百万円54億0千9百万円51億6千0百万円
営業利益63億6千7百万円58億7千0百万円28億9千2百万円33億7千5百万円56億4千0百万円62億9千8百万円
営業外収益14億3千9百万円13億6千4百万円10億9千0百万円12億5千1百万円9億9千8百万円11億9千2百万円
営業外費用2億2千8百万円5億8千7百万円2億7千4百万円2億8千1百万円3億9千2百万円2億9千5百万円
経常利益75億7千8百万円66億4千7百万円37億0千8百万円43億4千5百万円62億4千6百万円71億9千5百万円
特別利益9億4千6百万円9百万円1千7百万円5千4百万円17億2千8百万円2百万円
特別損失11億3千3百万円5億0千2百万円7千3百万円1億7千2百万円7百万円0百万円
税引前当期純利益73億9千1百万円61億5千4百万円36億5千2百万円4百万円79億6千7百万円71億9千7百万円
法人税、住民税及び事業税27億0千1百万円19億6千7百万円12億8千0百万円14億2千5百万円23億5千3百万円24億5千7百万円
法人等調整額-6千6百万円1億0千5百万円-7百万円1千5百万円3億9千2百万円億1千9百万円
当期純利益47億5千6百万円40億8千2百万円23億7千9百万円27億8千7百万円52億2千2百万円47億2千1百万円

売上金額の推移


株式会社セレマ
の2023年7月期における売上高は、336億1千8百万円(前年同期比4.87%増)となっています。
2021年度までは新型コロナの影響もあってか、セレマの売上高も減少傾向にありましたが、2022年7月期には増加に転じており、2020年7月期を上回りました。
2023年にはさらに増加し、コロナの影響から回復している様子がうかがえます。

営業利益の推移

営業利益とは、売上総利益から販管費(=販売費および一般管理費)を差し引いて算出されます。つまり、どのくらい本業で儲ける能力があるかを表す数字となります。

株式会社 セレマの2023年の営業利益は、62億9千8百万円(前年同期比11.77%増)となりました。
新型コロナの影響が大きかった2021年と2022年は、続けて営業利益が大きく減少しました。
しかし、2022年7月期には2021年7月期よりも67.11%と大きく増加し、2023年にはさらに伸びてコロナ以前の2019年7月期を超える利益を出しています。

企業の収益性を計る売上高営業利益率は、営業利益÷売上高×100の式で求められ、10%を超えれば有料水準とされています。
株式会社セレマの2022年7月期における売上高営業利益率は18.73%(前年同期比0.83%増)となりました。

経常利益の推移

経常利益はその会社の実力が一番分かる数字で、本業以外の稼ぎ(金融商品、株、為替などの取引で発生した利益)も含めその会社全体でどれだけ稼ぐ力があるか分かります。

2023年7月期における株式会社セレマの経常利益は、71億9千5百万円(前年同期比15.2%増)となりました。

本業以外の稼ぎ(金融商品、株、為替などの取引で発生した利益)は、損益計算書上では「営業外収益」として計上され、経常利益は「営業利益」+「営業外収益」-「営業外費用」で算出されます。

上場企業であれば有価証券報告書も公表されているため「営業外収益」の内容もある程度確認できますが、非上場企業の決算公告からの詳細は把握できません。
株式会社セレマの損益計算書を確認すると、つねに10億円前後の「営業外収益」を確保しています。

今期は特別利益が2百万円にとどまり、前年の17億2千8百万円と比べると大きく減少したため、当期純利益は47億2千1百万円(前年同期比9.59%減)となりました。

株式会社セレマ決算公告のまとめ

今回は株式会社セレマの決算公告から分析をおこないましたが、新型コロナの影響などで減少傾向にあった売上高も増加に転じており、特に不安要素は感じられませんでした。
2023年5月にはコロナも5類に移行しており、葬儀業界の業績も回復傾向にあります。

株式会社 セレマは、2023年も京都府や滋賀県、岡山県に、時代に合わせた家族葬ホールを続々とオープンさせており、積極的に事業拡大を続けています。
今後も、株式会社 セレマの決算公告に注目したいと思います。

ここまでご覧いただき、ありがとうございました。より詳しい情報を知りたい方はお気軽にお問合せ下さい。

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