新型コロナが発生した2020年以降、葬儀業界は大きな打撃を被っていますが、その中でも冠婚葬祭互助会事業者は大きな影響を受けたといわれています。
しかし、そういった状況下にあっても、互助会最大手のベルコグループは堅調に成長を続けているようです。
そこで今回は、ベルコグループの全体像や歴史、決算公告から見た利益や業績についてまとめます。
貸借対照表をもとに資産や負債、純資産などから財政状況を分析することで、その会社の経営状態の把握が可能です。
葬儀社様にとって参考になる部分もあるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
ベルコグループの概要
ベルコは、昭和44年(1969年)に創業され、全国で互助会事業を含め冠婚葬祭事業を展開しています。
加入者数は250万口を超えており、全国の互助会で最大規模です。
年間約40,000件の葬儀数があります。
また、互助会会員に対してさまざまなサービスを実施。
冠婚葬祭の費用がお得になるだけでなく、イベントやセミナーでの会員特典が受けられます。
子どものお宮参りや初節句、成人式などのイベントに自社施設での貸衣装や写真撮影をおこなっています。
【名称】株式会社ベルコ
【設立】1969年(昭和44年)4月3日
【代表取締役】齋藤 斎
【本社所在地】兵庫県西宮市津門川町1-1
【公式HP】https://www.bellco.co.jp
ベルコグループの構成
ベルコ公式ホームページの「葬儀場を探す」を確認すると、ベルコグループは主に以下の4社で構成されているようです。
ただし、各社は独立企業として運営されているため、決算は連結されていません。
ベルコは数年前より新たな事業として、次の4つの事業を展開しています。
- 生命保険事業 みどり生命
- ホテル事業 ホテルロイヤルクラシック大阪
- 老人ホーム紹介業 あなたらしく
- リゾートウエディング事業 ファーストウエディング
2023年6月より、新事業を紹介する新CMもオンエアしています。
セレマ
株式会社セレマは冠婚葬祭業界最大手の株式会社ベルコ系列企業ですが、創業はセレマのほうが早く、前身となる「有限会社 京都市冠婚葬祭互助センター」は1959年(昭和34年)開業です。(ベルコは1969年創業)
2020年から2021年にかけて代表取締役社長が齋藤武雄氏から、斎藤秀市氏(ベルコ代表取締役会長)に変更されています。
セレマという社名は「Ceremony(セレモニー:儀式・葬儀)」「Remember(リメンバー:記憶・思い出)」「Marriage(マリッジ:結婚)」の頭2文字ずつを組み合わせた造語のようです。
【名称】株式会社セレマ
【設立】昭和34年(1959年)5月
【所在地】〒604-8471 京都市中京区西ノ京中御門東町134
【代表者】齋藤 秀市
【公式HP】https://cerema.co.jp/
ごじょいる
株式会社ごじょいるは1973年1月に東京都で設立されました。現在は東京都、埼玉県、山梨県、茨城県、長野県に葬儀場を58施設。そして東京都、山梨県に結婚式場を2施設、フォトスタジオを3施設、ドレスサロンを1施設展開しております。
設立から2022年までは「株式会社互助センター友の会」という社名でしたが、2022年7月に「互助会」「JOY(喜び)」「要る(必要とされる)」を合わせて生まれた言葉「ごじょいる」という社名に変更されました。
【名称】株式会社ごじょいる
【設立】昭和48年(1973年)1月25日
【所在地】〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-3-15
【代表者】齋藤 秀市
【公式HP】https://gojoiru.co.jp/
玉姫グループ
株式会社 玉姫グループは青森県八戸市に本社を構える企業で、青森県・岩手県・秋田県・愛知県を中心に冠婚葬祭互助会事業を展開しています。
株式会社 玉姫グループの葬儀式場は「玉泉院」「眞照堂」「シティホール」名義で運営されているようです。
【名称】株式会社 玉姫グループ
【設立】昭和56年(1981年)5月27日
【所在地】〒031-0803 青森県八戸市諏訪三丁目14番15号
【代表者】木崎 秀安
【公式HP】https://tamahime.co.jp/index.php
ベルコの沿革
- 1969年4月3日
兵庫県西宮市馬場町にて「株式会社阪神互助センター(のちの株式会社互助センター)」として業務を開始 - 1973年
本社を西宮市平松町に移転、堺営業所開設 通産省より前払式特定取引業として許可番号「第5006号」を受ける
「(社)全日本冠婚葬祭互助協会」設立と同時に加盟「(社)全日本冠婚葬祭互助協同組合」設立と同時に加盟
「互助会保証(株)」に出資 - 1975年8月
本社を西宮市津門川町に移転、社名を「株式会社互助センター」に変更 - 1987年
社名を「株式会社ベルコ」に変更 - 1990年
「あかつき会館(現、マリアージュインベルコ)」をグループ化 - 1997年
ホテル&ウェディング「ザ・ベルクラシック グループ」発足により 結婚式場を「ベルクラシック」に改名 - 2018年
(株)クラウディアコスチュームサービスより(株)ファーストウェディング株式取得 - 2021年
「アートクレフクラブ」・「オーシャンテラス ホテル&ウェディング」が参入
出典:株式会社 ベルコ沿革
ベルコグループの葬祭式場
ベルコグループの葬祭式場は、全国に1,600か所あります。
葬儀社の決算公告とは
決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。
ただし、大会社については貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。
次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は負債額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。
公告の方法は全部で3つあります。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)
決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせています。
なぜ葬儀社は決算公告を行うのか?
大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。
冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。
一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。
会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。
- 法務局に供託する
- 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
- 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ
上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。
経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧
上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。
ベルコグループの決算公告からみる利益や業績
ここからは、ベルコグループの貸借対照表(4社合算)について詳しく分析します。
各項目を確認することで、ベルコグループのおおまかな財政状況が把握可能です。
ベルコグループの貸借対照表
貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10%を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。
自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。
自己資本比率は、中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適とされる自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。
貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともある
ベルコグループの自己資本比率は26.06%
自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
1569億1千7百万円÷6021億0千7百万円×100=26.06%
ベルコグループの2022年における自己資本比率は、26.06%(前年比0.97%増)となっています。
利益剰余金の推移
利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
利益剰余金は、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため企業が生き残るための重要な資金源となります。
ベルコグループの利益剰余金の推移は以下の通りです。
ベルコグループの2022年12月期における利益剰余金は、1565億6千7百万円(前年同期比5.33%増)となっています。
ベルコグループの利益剰余金は、過去5年間において順調に増加を続けており、財務上健全な状況といえそうです。
大手冠婚葬祭互助会の業績は、葬儀業界全体の置かれている状況を推し量る指標ともなりますので、引き続き2023年の決算公告が待たれます。
ベルコグループの損益計算書
損益計算書とは企業が「どれだけ売り上げが上がり(=収益)」「費用を何に使って(=費用)」「どれくらいもうかったのか(=利益)」が一目で分かるものです。
損益計算書
2021年に営業損失が発生していますが、2022年には2020年を上回る営業利益が発生しています。
同じく当期純利益も2021年に減少しましたが、2022年には2020年よりも増加しました。
売上金額の推移
ベルコグループにおける過去5年間の売上高は、以下のように推移しています。
ベルコグループでは、新型コロナウイルスの影響を受けたためか、2021年に売上高が大きく減少しましたが、2022年の決算公告では902億6千3百万円(前年同期比13.88%増)と大幅に改善しています。
2023年に新型コロナも5類相当に移行し、2023年の決算では2019年と同レベルまで売上高が回復するかもしれません。
営業利益の推移
営業利益とは、売上総利益から販管費(=販売費および一般管理費)を差し引いて算出されます。つまり、どのくらい本業で儲ける能力があるかを表す数字となります。
ベルコグループでは、2020年から新型コロナの影響が出始めたとみられ、営業利益が大きく減少し、2021年には営業損失が発生しました。
しかし、2022年に2020年を超える営業利益が出ており、新型コロナの影響も少なくなってきたと思われます。
経常利益の推移
経常利益はその会社の実力が一番分かる数字で、本業以外の稼ぎ(金融商品、株、為替などの取引で発生した利益)も含め、会社全体でどれだけ稼ぐ力があるか分かります。
ベルコグループの2022年経常利益は、95億0千7百万円(前年比61.08%増)となりました。
冠婚葬祭互助会の中でも最大手となる株式会社ベルコでは、営業外収益の金額も非常に大きいため、多少の営業損失が発生しても経常利益は黒字を維持しています。
2019年以降は減少傾向にあったベルコグループの経常利益ですが、2022年には増加に転じました。2018年の状態を回復するまでには時間を要するかもしれませんが、2023年の決算公告が待たれます。
ベルコグループのまとめ
ベルコグループ 株式会社ベルコの決算公告を参考に、業績や財務状況の分析をおこないました。
貸借対照表や損益計算書を分析した限りでは、ベルコグループの経営状況に特に不安な点は見当たりませんでした。
2020年から2022年にかけて、日本経済は新型コロナの影響で大きく落ち込み、ベルコグループも影響を受けましたが、その後は順調に回復しているようです。
葬儀業界で大きな影響力を持つ大手冠婚葬祭互助会各社の業績は、市場の傾向を推し量るうえでも非常に有益な資料となります。
ベルコグループは互助会事業と冠婚葬祭事業に加えて、新たに4つの事業を展開しています。
また、毎年のように全国に新しい葬儀式場をオープンさせており、互助会最大手としてますます事業拡大が予想されます。
今後も、ベルコグループの動向に注目していきたいと思います。