土葬でも火葬でもないアクアメーションとは?
先日お送りいたしました記事「エコ時代の埋葬:ルーク・ペリー氏の場合」においては、人体に含まれる環境有害物質を無化する特殊なスーツを用いたエコ時代の埋葬という動向を紹介いたしました。
エコな葬送形態は実際今後より注目が集まることが予想されますが、そんな中密かに注目を集めているのがアクアメーションと呼ばれる新たな葬送形態です。
[caption id="attachment_10727" align="aligncenter" width="920"] Pixabayより(https://pixabay.com/photos/drops-of-water-water-liquid-fresh-578897/)[/caption]
アクアメーションは遺体を液体によって溶かす葬送形態であり、特に火葬の代替として注目されています。
遺体を溶かすと聞くと、少し抵抗がある方も多いのではないでしょうか。
しかし、米国の人気葬儀関連情報ユーチューブチャンネル「葬儀屋に聞いてみて!(Ask A Mortician)」を運営するケイトリン・ドーティ氏によると、アクアメーションはエコな葬送形態として今後注目に値するとされています。
[caption id="attachment_10724" align="aligncenter" width="589"] ケイトリン・ドーティ氏 (https://en.wikipedia.org/wiki/Caitlin_Doughty)[/caption]
アクアメーションとは具体的にどのようなものなのか。
ドーティ氏はアクアメーションがなぜこれから注目に値すると考えるのか。
以下で探ってみましょう。
アクアメーションとは?
概要
上述しましたように、アクアメーションは、火葬のように遺体を焼却するのではなく、アルカリ性の液体によって溶かすことにより処分する葬送形態です。
アクアメーションはほかにも次のような呼び名があります:
- アルカリ性加水分解(Alkaline hydrolysis)
- 水火葬(Water Cremation)
- 火なし火葬(Flameless Cremation)
下図のようなアクアメーションの機器の中において、遺体は水酸化カリウムの溶けた強アルカリ性の水につけられます。
[caption id="attachment_14156" align="aligncenter" width="450"] アクアメーションの機器。Matthewsより(リンク)[/caption]その後、液体の温度は摂氏150度程度の高温に上げられ、遺体の分解が行われます。
遺体の分解は約90分で完了しますが、これは火葬に必要な平均時間とほぼ同じといってよいかと思います(参照1)。
遺体分解後は、遺体を分解した液体および火葬の場合と同じように遺骨が残ります。
アクアメーションのメリット
アクアメーションは環境に配慮した葬送形態の一つです。
アメリカの伝統的な埋葬形態はエンバーミングと呼ばれる遺体保存処置のために多数の環境有害物質を用いたうえで、荘重な棺に遺体を収め、埋葬を行うというものです。
この伝統的な埋葬形態では、エンバーミングの際に用いられた化学物質やもともと人体に蓄積されていた環境有害物質が土壌汚染の原因となります。
こうした環境問題に加えて、伝統的埋葬形態は単純に多くの土地が毎年必要であるという土地問題や遺体処理や棺すべての過程で費用が高額になる傾向があり、経済的に豊かでない人々は資金を工面できないという社会経済的な問題もあります。
これに対して、アクアメーションは火葬と同じように土壌汚染の原因とならず、土地問題も解消し、さらに費用の面でも安価なものとなっているため、こうした問題の解決策となっています。
さらに、火葬の場合には、遺体焼却に際して水銀等の有害物質が大気中に放出されることとなりますが、アクアメーションの場合にはこの問題がありません。
また、アクアメーションに必要な電力は火葬の8分の1であり、二酸化炭素排出量も4分の1以下となっています。
これらの点でアクアメーションは火葬よりも環境に配慮した葬送形態であるといえます。
[caption id="attachment_14161" align="aligncenter" width="400"] 埋葬に使われる棺のイメージ。Pixabayより。[/caption]とはいえ、そうであっても、長い年月をかけて実際の葬送の実践や文化的語彙に溶け込んだ火葬に比べて、日本で生まれ育った方であれば「遺体を溶かす」という葬送形態は心理的抵抗があるのではないでしょうか。
そうれあれば、火葬ですら比較的最近許容し始めたキリスト教文化圏に属す人々は、アクアメーションに対してより強い心理的抵抗、嫌悪感を示すことが予期されます。
それにもかかわらず、ドーティ氏はアクアメーションが広まる可能性を示唆しています。
ドーティ氏の意見をみてみましょう。