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火葬に代わる!?アクアメーションとは何か

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土葬でも火葬でもないアクアメーションとは?

先日お送りいたしました記事「エコ時代の埋葬:ルーク・ペリー氏の場合」においては、人体に含まれる環境有害物質を無化する特殊なスーツを用いたエコ時代の埋葬という動向を紹介いたしました。

 

エコな葬送形態は実際今後より注目が集まることが予想されますが、そんな中密かに注目を集めているのがアクアメーションと呼ばれる新たな葬送形態です。

 

アクアメーションは遺体を液体によって溶かす葬送形態であり、特に火葬の代替として注目されています。

 

遺体を溶かすと聞くと、少し抵抗がある方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、米国の人気葬儀関連情報ユーチューブチャンネル「葬儀屋に聞いてみて!(Ask A Mortician)」を運営するケイトリン・ドーティ氏によると、アクアメーションはエコな葬送形態として今後注目に値するとされています。

ケイトリン・ドーティ氏 (<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/Caitlin_Doughty" target="_blank" rel="noopener">https://en.wikipedia.org/wiki/Caitlin_Doughty</a>)

ケイトリン・ドーティ氏 (https://en.wikipedia.org/wiki/Caitlin_Doughty)

 

アクアメーションとは具体的にどのようなものなのか。

ドーティ氏はアクアメーションがなぜこれから注目に値すると考えるのか。

以下で探ってみましょう。

 

アクアメーションとは?

概要

上述しましたように、アクアメーションは、火葬のように遺体を焼却するのではなく、アルカリ性の液体によって溶かすことにより処分する葬送形態です。

アクアメーションはほかにも次のような呼び名があります:

  • アルカリ性加水分解(Alkaline hydrolysis
  • 水火葬(Water Cremation
  • 火なし火葬(Flameless Cremation)

下図のようなアクアメーションの機器の中において、遺体は水酸化カリウムの溶けた強アルカリ性の水につけられます。

アクアメーションの機器

アクアメーションの機器。Matthewsより(リンク

その後、液体の温度は摂氏150度程度の高温に上げられ、遺体の分解が行われます。

遺体の分解は約90分で完了しますが、これは火葬に必要な平均時間とほぼ同じといってよいかと思います(参照1)。

遺体分解後は、遺体を分解した液体および火葬の場合と同じように遺骨が残ります。

 

アクアメーションのメリット

アクアメーションは環境に配慮した葬送形態の一つです。

 

アメリカの伝統的な埋葬形態はエンバーミングと呼ばれる遺体保存処置のために多数の環境有害物質を用いたうえで、荘重な棺に遺体を収め、埋葬を行うというものです。

この伝統的な埋葬形態では、エンバーミングの際に用いられた化学物質やもともと人体に蓄積されていた環境有害物質が土壌汚染の原因となります。

こうした環境問題に加えて、伝統的埋葬形態は単純に多くの土地が毎年必要であるという土地問題や遺体処理や棺すべての過程で費用が高額になる傾向があり、経済的に豊かでない人々は資金を工面できないという社会経済的な問題もあります。

 

これに対して、アクアメーションは火葬と同じように土壌汚染の原因とならず、土地問題も解消し、さらに費用の面でも安価なものとなっているため、こうした問題の解決策となっています。

さらに、火葬の場合には、遺体焼却に際して水銀等の有害物質が大気中に放出されることとなりますが、アクアメーションの場合にはこの問題がありません。

また、アクアメーションに必要な電力は火葬の8分の1であり、二酸化炭素排出量も4分の1以下となっています。

これらの点でアクアメーションは火葬よりも環境に配慮した葬送形態であるといえます。

埋葬に使われる棺

埋葬に使われる棺のイメージ。Pixabayより。

とはいえ、そうであっても、長い年月をかけて実際の葬送の実践や文化的語彙に溶け込んだ火葬に比べて、日本で生まれ育った方であれば「遺体を溶かす」という葬送形態は心理的抵抗があるのではないでしょうか。

そうれあれば、火葬ですら比較的最近許容し始めたキリスト教文化圏に属す人々は、アクアメーションに対してより強い心理的抵抗、嫌悪感を示すことが予期されます。

 

それにもかかわらず、ドーティ氏はアクアメーションが広まる可能性を示唆しています。

ドーティ氏の意見をみてみましょう。

 

ドーティ氏の意見

ドーティ氏と「葬儀屋に聞いてみて」について

まず最初にドーティ氏のプロフファイルを確認してみましょう。

 

1984年生まれのドーティ氏は葬儀屋を営みつつ、葬儀業界のあり方を問うべく、幅広い活動を行っています。

 

20111月にドーティ氏は死を避けるべきものとしてではなく肯定的に受け止める運動を行うための集まりとして、「よい死の会(The Order of the Good Death)」を設立しました(参照2)

The Order of the Good Deathウェブサイトトップ(<a href="http://www.orderofthegooddeath.com/" target="_blank" rel="noopener">http://www.orderofthegooddeath.com/</a>)

The Order of the Good Deathウェブサイトトップ(http://www.orderofthegooddeath.com/

この集まりの創設メンバーにはアーティストやライター、大学教授から法律家など、さまざまな分野で活躍する著名人が含まれています。

先日お伝えした記事にも登場したジェー・リム・リー氏もこの一員です(参照3)。

 

またドーティ氏は執筆活動も行っており、これまでに2冊の本を刊行しており、2019年の9月には新刊の発売が予定されています(参照4)。

すでに刊行された2冊はどちらも大きな成功をおさめ、このうちの1冊である From Here to Eternity 「世界のすごいお葬式」というタイトルで日本語訳も出版されています。

 

こうした活動に加えて、ドーティ氏は上述のユーチューブチャンネル「葬儀屋に聞いてみて!」を2011年10月より開始しました。

このチャンネルには2019年5月18日現在で75万のアカウントが登録を行っており、さらに公開されている動画はすべて10万回以上再生、12の動画は100万回以上の再生回数を誇っています。

葬儀屋に聞いてみて!のユーチューブチャンネル (<a href="https://www.youtube.com/channel/UCi5iiEyLwSLvlqnMi02u5gQ" target="_blank" rel="noopener">https://www.youtube.com/channel/UCi5iiEyLwSLvlqnMi02u5gQ</a>)

ユーチューブチャンネル「葬儀屋に聞いてみて!」 (https://www.youtube.com/channel/UCi5iiEyLwSLvlqnMi02u5gQ)

ここからもわかるように、「葬儀屋に聞いてみて!」は死という避けられがちなテーマを扱っているにもかかわらず、極めて人気の高いチャンネルとなっており、ドーティ氏はこの分野の重要なインフルエンサーであることがうかがえます。

 

アクアメーションについてのドーティ氏の見解

さて、このように死や葬儀産業に通暁し、影響力の大きいドーティ氏ですが、アクアメーションについては今後広がっていく見通しがあるとしています。

 

アクアメーションは死者への敬意を欠く?

ドーティ氏はアクアメーションに対して想定される反論として遺体をアルカリ性の液体で溶かして処理するという葬送形態は死者への敬意を欠いたものであるというものをあげています。

 

実際、2012年、ニューヨーク市のカトリック会議は、「火葬」がアクアメーションを含むようにこの語を再定義しようとする法案を拒否しましたが、この際にカトリック会議は次のように述べています(参照5)。

 

人体の神聖さおよび尊厳に対し教会がもつ崇敬は人体のゆうする自然的ならびに超自然的な性質への配慮に由来するものである。したがって、亡くなった人物の体は敬意をもって取り扱われなければならない。しかるに、遺体の化学処理に含まれる過程はこの尊厳に十分な敬意を払うものにはあたらない。

 

しかし、ドーティ氏の分析するところでは、こうした反論はあるものが直感的に悪い感情を想起させることをもって、それが倫理的にも悪いと結論付ける誤謬推理(いわゆるick factor ないし Wisdom of Repugnance)に基づいており、妥当な反論ではないと結論付けられています。

 

また、火葬自体もかつては「十分な敬意」を払った葬送形態としては認めらていませんでしたが、現在では許容される葬送形態として認められています。

このように、社会意識の変化に伴い、ある葬送形態が宗教・倫理的に許容されるものか否かは変わることがあり、火葬に対してそうであったように、アクアメーションに対する見方も今後変化する可能性はあるとドーティ氏は考えています。

 

今後アクアメーションが広がるには?

アクアメーションが広がるには、もちろんまずそれが葬送形態として法律上認められる必要があります。

2005年にミネソタ州がアクアメーションを合法化して以来(参照6)、法律上アクアメーションを認める動きは徐々に広がりつつあります。

現在アメリカでは16の州がアクアメーションを法的に承認しており、最近では2017年にカリフォルニア州とネバダ州で合法化されました(参照7、8)。

これらの法律上の整備が示唆するように、アクアメーションの認知度や関心は近年高まりつつあるようです。

実際、グーグルトレンドによれば、アメリカでの2004年以降の「aquamation」の検索数は次のように増加傾向にあります。

 

このような関心の高まりが今後も続き、アクアメーションが合法化された場合、より多くの人がアクアメーションを葬送形態として選択するようになることが予測されます。

ドーティ氏はこれを踏まえて、葬儀業界もビジネスであるため、アクアメーションへの需要が高まればそれに合わせて、アクアメーションの提供も増加するであろうと予測しています。

動画の最後において、ドーティ氏はこのような人々の意識の変化の力に鑑みて、アクアメーション合法化の法案が出た際などに積極的に働きかけるよに人々に呼び掛けています。

視聴者に働きかけるドーティ氏(<a href="https://www.youtube.com/watch?v=pWo2-LHwGMM&amp;t=772s" target="_blank" rel="noopener">リンク</a>)

視聴者に働きかけるドーティ氏(リンク

最後に

以上、アクアメーションの概要およびその見通しについて、アメリカでの現状や葬儀情報ユーチューバーとして著名なドーティ氏の意見にフォーカスして紹介してきました。

 

2005年にはじまってすでに16の州でアクアメーションが法律上認められているという事実は、アメリカの葬儀業界においても重大な出来事であるはずです。

加えてドーティ氏のような当該業界でのインフルエンサーがアクアメーションの倫理性や将来性を多くの人々に説いているということはそれ自体が感化しえぬ要素なのではないかと思います。

 

アメリカ、さらに世界の葬儀業界におけるアクアメーションは今後さらに注目すべき動向になりそうです。

 

参照

  1. 'Dissolving the dead: A radical alternative to burial and cremation', BBC, https://www.bbc.co.uk/news/resources/idt-sh/dissolving_the_dead, [last access 27 June 2019].
  2. About, The Order of the Death, http://www.orderofthegooddeath.com/about, [last access 18 May 2019].
  3. Members, The Order of the Death, http://www.orderofthegooddeath.com/members, [last access 18 May 2019].
  4. Books, Caitlin Doughty, http://www.caitlindoughty.com/books, [last access 18 May 2019].
  5. 'NY Cathoric conference opposes 'chemical digestion' of human remains', https://www.catholicnewsagency.com/news/ny-catholic-conference-opposes-chemical-digestion-of-human-remains, [last access 30 June 2019].
  6. 'Alkaline Hydrolysis in Minnesota', https://www.nolo.com/legal-encyclopedia/is-alkaline-hydrolysis-legal-minnesota.html, [last access 30 June 2019]
  7. 'A cremation process that leaves only bones and brown syrup is coming to California', https://www.sacbee.com/news/nation-world/national/article179423001.html, [last access 30 June 2019].
  8. 'AN ACT relating to cremation; authorizing the use of alkaline hydrolysis for cremation; requiring notice be provided to certain entities relating to a crematory which intends to use alkaline hydrolysis for cremation; revising provisions relating to the location of a crematory; and providing other matters properly relating thereto.', https://www.leg.state.nv.us/App/NELIS/REL/79th2017/Bill/5000/Overview, [last access 30 June 2019].

 

  • この記事を書いた人
高木俊一(たかぎしゅんいち)

高木俊一(たかぎしゅんいち)

京都大学において学部で法学、修士にて哲学を学んだ後、2014年に渡英。現在、ロンドン大学の一つであるUniversity College Londonならびにケンブリッジ・ウィトゲンシュタイン・アーカイヴにて、博士課程で哲学の研究。
研究テーマは20世紀の哲学者ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』を中心としている。
研究のかたわら、翻訳やマーケットリサーチをおこない知見を広げることも。英国在住。
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