アルファクラブ静岡株式会社〜富士葬祭〜┃冠婚葬祭互助会の業績・利益をまとめて分析

葬儀社の売上・利益・業績を調べる場合、上場しているなら決算発表情報・有価証券報告書をみれば分かります。非上場になると帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、売上・利益・業績の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回はアルファクラブ静岡株式会社(富士葬祭)の現状について、決算公告をもとに分析いたします。
決算公告は上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

アルファクラブ静岡株式会社(富士葬祭)の概要

アルファクラブ静岡株式会社(富士葬祭)は株式会社アルファクラブのグループ会社の1つですが、葬祭ブランドは同グループのメインブランド「さがみ典礼」ではなく「富士葬祭」となっています。

アルファクラブグループの事業領域は、以下の7つに分類されています。

1.冠婚葬祭互助会(11社) ←アルファクラブ静岡はココ!
2.コンサルティング(1社)
3.ケータリング(1社)
4.運送(バス・霊柩車)(3社)
5.保険(1社)
6.レジャー・リゾート(11社)
7.インターネット(1社、小さなお葬式

同社は1の冠婚葬祭互助会に属しており、静岡県が主な営業エリアとなります。

アルファクラブ静岡のルーツは1972年にまでさかのぼります。
設立当初はブライダル事業がメインでしたが、やがて葬儀事業に進出することになり、1980年に「株式会社富士互助センター」に社名を変更。
その後、静岡県内に葬儀斎場を次々とオープンし、2013年にアルファクラブグループに加盟して、商号を現在の「アルファクラブ静岡株式会社」へと変更しました。

アルファクラブ静岡は2024年6月現在、静岡県内で2か所の結婚式場と37か所の葬祭場を運営しています。

葬儀社の決算公告とは

決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。

ただし、大会社については貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。
次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は負債額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告の簡単な概要については以上になります。
なお上場企業の決算報告書(有価証券報告書)はEDINETで公開されており、誰でも閲覧可能で
す。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより

会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局への供託
  • 経済産業省の指定する保証会社との供託委託契約締結
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約締結

以上の3つの方法のいずれかを選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。

なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

アルファクラブ静岡の貸借対照表

決算期41期42期43期44期45期46期
利益剰余金15億6千6百万円20億1千4百万円23億2千8百万円16億9千3百万円10億7千8百万円12億1千8百万円
会計年度2018年6月期2019年6月期2020年6月期2021年6月期2022年6月期2023年6月期
資産流動資産33億4千4百万円45億3千9百万円48億6千6百万円55億2千6百万円60億4千1百万円78億1千2百万円
固定資産235億4千4百万円237億9千8百万円239億2千9百万円242億4千1百万円238億1千6百万円234億1千2百万円
有形固定資産
無形固定資産
投資その他の資産
繰延資産
資産合計268億8千8百万円283億3千7百万円287億9千5百万円297億6千8百万円298億5千6百万円312億2千4百万円
負債流動負債27億9千4百万円32億6千1百万円28億0千8百万円30億8千8百万円33億7千1百万円36億5千5百万円
役員賞与引当金
賞与引当金5百万円5百万円5百万円5百万円6百万円7百万円
その他
固定負債224億2千7百万円229億6千2百万円235億5千9百万円248億8千8百万円253億0千4百万円262億4千5百万円
退職給付引当金2千0百万円1千9百万円2千2百万円2千1百万円2千7百万円3千3百万円
雑収入復活引当金1千3百万円1千6百万円1千8百万円1千8百万円1千2百万円6百万円
役員退職慰労引当金
その他223億9千5百万円229億2千7百万円235億1千9百万円---
負債の部計252億2千1百万円262億2千3百万円263億6千7百万円279億7千6百万円286億7千5百万円299億0千0百万円
純資産株主資本16億6千6百万円21億1千4百万円24億2千8百万円17億9千3百万円11億7千8百万円13億1千8百万円
資本金1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円1億0千0百万円
 資本余剰金
資本準備金
その他資本余剰金
 利益剰余金15億6千6百万円20億1千4百万円23億2千8百万円16億9千3百万円10億7千8百万円12億1千8百万円
利益準備金
特別償却準備金
その他利益剰余金15億6千6百万円20億1千4百万円23億2千8百万円16億9千3百万円10億7千8百万円12億1千8百万円
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
(うち当期純損失)
新株予約権
評価・換算差額等-2百万円4百万円5百万円
その他有価証券評価差額金-2百万円4百万円5百万円
純資産の部計16億6千6百万円21億1千4百万円24億2千8百万円17億9千3百万円11億7千8百万円13億1千8百万円
負債・純資産合計268億8千8百万円283億3千7百万円287億9千5百万円297億6千8百万円298億5千6百万円312億2千4百万円

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である自己資本比率が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
例えば自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされています。

自己資本比率が低い場合は、借入金などの負債が多い状況と考えられますので、資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で自己資本比率が高い場合は、返済義務を有しない資金を大量に抱えているので、倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適な自己資本比率は業種によって大きく異なります。

例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

※のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

アルファクラブ静岡の自己資本比率は4.22%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」の計算式で算出可能です。
アルファクラブ静岡の2023年6月期の自己資本比率を求める式は下記のようになります。

13億1千8百万円(純資産)÷312億2千4百万円(総資産)×100=4.22%
上記の式から同社の自己資本比率は4.22%(前年比で0.27ポイント増加)となりました。

アルファクラブ静岡 利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため、企業が生き残るための重要な資金源となります。

株式会社アルファクラブ静岡の場合は以下のように推移しております。

過去3年間の利益剰余金の成長率の推移は、2021年6月期は16億9千3百万円(前年比成長率は-27.28%)、2022年6月期は10億7千8百万円(前年比成長率は-36.33%)、2023年6月期は12億1千8百万円(前年比成長率は12.99%増)となっていました。

アルファクラブ静岡の利益剰余金は2期連続の減少となっていましたが、これは業績不振によるものではなく、特別損失の影響が大きいようです。
2023年6月期の値からしても、コロナの影響から順調に回復しつつあると考えて良いでしょう。

特別損失とは?
経常的な業務内容とは無関係で、例外的に発生した一過性の損失。
固定資産や投資有価証券の売却損や、災害などによる損失などが該当し、新型コロナの影響による損失なども含まれる。

アルファクラブ静岡の損益計算書

損益計算書を確認することで、当該企業が「どれだけ売り上げ(=収益)」「費用を何に使って(=費用)」「どれくらいの儲けが出たのか(=利益)」が一目で分かるものです。
特に注目したい項目は、売上高・営業利益・経常利益・当期純利益となります。

損益計算書

決算期41期42期43期44期45期46期
会計年度2018年6月期2019年6月期2020年6月期2021年6月期2022年6月期2023年6月期
売上高64億0千7百万円63億3千0百万円55億0千8百万円51億5千9百万円56億8千6百万円66億4千6百万円
売上原価25億4千2百万円24億4千5百万円20億4千1百万円17億6千5百万円19億2千8百万円21億8千2百万円
売上総利益38億6千6百万円38億8千6百万円34億6千6百万円33億9千4百万円37億5千8百万円44億6千4百万円
販売費及び一般管理費33億4千8百万円34億2千3百万円33億9千6百万円32億2千0百万円33億4千6百万円39億7千3百万円
営業利益5億1千7百万円4億6千3百万円7千1百万円1億7千4百万円4億1千2百万円4億9千1百万円
営業外収益3億7千6百万円4億3千6百万円7億1千2百万円3億8千3百万円5億8千9百万円6億0千6百万円
営業外費用1億7千8百万円2億4千6百万円1億7千0百万円1億8千9百万円1億1千1百万円1億3千2百万円
経常利益7億1千5百万円6億5千3百万円6億1千3百万円3億6千8百万円8億8千9百万円9億6千5百万円
特別利益0百万円0百万円2百万円7百万円1千3百万円0百万円
特別損失3億1千3百万円2億7千6百万円3億9千7百万円8億8千2百万円14億8千7百万円6億6千0百万円
税引前当期純利益4億0千2百万円3億7千7百万円2億1千8百万円-5億0千7百万円-5億8千5百万円3億0千5百万円
法人税、住民税及び事業税3百万円1千7百万円1千2百万円3百万円3百万円3百万円
法人等調整額-1億2千7百万円-8千7百万円-1億0千8百万円-1億2千4百万円-2千8百万円1億6千2百万円
当期純利益5億2千7百万円4億4千8百万円3億1千4百万円-6億3千4百万円-6億1千6百万円1億4千1百万円

アルファクラブ静岡における2023年6月期の損益計算書を確認すると、売上高・営業利益・経常利益において前年同期を上回っており、業績が回復に転じています。
当期純損失が発生していますが、これは特別損失によるものと考えられます。

売上金額の推移

過去3年間の売上高の成長率の推移は2021年6月期は51億5千9百万円(前年比成長率は-6.34%)、2022年6月期は56億8千6百万円(前年比成長率は10.22%)、2023年6月期は66億4千6百万円(前年比成長率は16.89%)となっています。

アルファクラブ静岡の売上高は、新型コロナの影響もあってか2021年6月期まで減少が続いていましたが、2022年6月期に引き続き2023年6月期も順調に増加しています。

営業利益の推移

営業利益とは、売上総利益から販管費(=販売費および一般管理費)を差し引いて算出されます。つまり、どのくらい本業で儲ける能力があるかを表す数字となります。

過去3年間の営業利益の成長率の推移は、2021年6月期は1億7千4百万円(前年比成長率は145.07%)、2022年6月期は4億1千2百万円(前年比成長率は136.78%、2023年6月期は4億9千1百万円(前年比成長率は19.17%)となっておりました。

アルファクラブ静岡の営業利益は、新型コロナの影響が最も大きかったと思われる2020年には大幅に減少しましたが、3期連続で順調に増加し、2023年6月期では5億円近くまで回復しています。

事業活動による純粋な利益を表す営業利益率「営業利益÷売上高×100」で求められますが、おおむね5%を超えると優良とされています。

4億9千1百万円(営業利益)÷66億4千6百万円(売上高)=7.39%
上記の式からアルファクラブ静岡の営業利益率は7.39%(2023年6月期)となっています。

経常利益の推移

経常利益はその会社の実力が一番分かる数字で、本業以外の稼ぎ(金融商品、株、為替などの取引で発生した利益)も含めその会社全体でどれだけ稼ぐ力があるか分かります。

過去3年間の経常利益の成長率の推移は、2021年6月期は3億6千8百万円(前年比成長率は-40.00%)、2022年6月期は8億8千9百万円(前年比成長率は141.58%)、2023年6月期は9億6千5百万円(前年比成長率は8.55%)となっておりました。

アルファクラブ静岡の2023年6月期における経常利益は、前年同期と比べても順調に増加しており、過去6年間で最高額となっています。

アルファクラブ静岡株式会社のまとめ

今回はアルファクラブ静岡(富士葬祭)の決算公告を参考に、同社の財務状況や業績の推移を分析しました。

新型コロナの影響もあり、2020年6月期には営業利益、経常利益の減少がみられましたが、2022年6月にはともに大きく回復しました。
2023年6月期は、前年よりわずかな増加となりましたが、新型コロナ流行以前と同程度まで回復しています。
また売上高についても、過去5年間にわたって極端な減少はみられず、売上原価率も向上しているなど、積極的に経営改善に取り組む企業姿勢が伺えました。

2023年5月には新型コロナも5類相当に移行し、予想通り葬儀業界も全体的に回復基調にあったと考えて良いでしょう。今後も引き続き、アルファクラブ静岡の2024年6月期決算公告が待たれるところです。
葬研では、今後もアルファクラブ静岡の動向に注目していきたいと思います。

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