新型コロナが発生した2020年以降、葬儀業界は大きな打撃を被っていますが、その中でも冠婚葬祭互助会事業者は大きな影響を受けたといわれています。
しかし、そういった状況下にあっても、互助会大手のアルファクラブグループは堅調に成長を続けているようです。
そこで今回は、アルファクラブグループの全体像や歴史、決算公告から見た利益や業績についてまとめたいと思います。
地域密着型の葬儀社様にとって参考になる部分もあるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
アルファクラブグループの概要
アルファクラブグループの中核事業は互助会および冠婚・葬祭サービスで、グループ会社の多くは冠婚葬祭互助会事業者として経済産業大臣許可を受けています。
しかし近年では、冠婚葬祭互助会事業を行わなわず、小規模葬儀に特化した葬祭事業グループも形成されています。
アルファクラブグループの構成
アルファクラブグループは冠婚葬祭事業以外にも、多岐にわたり事業を拡大しています。
公式ホームページ上に公開されているグループ構成は、以下の通りです。
- 冠婚葬祭互助会
アルファクラブ株式会社(栃木)は栃木県宇都宮市に本社を置き、冠婚施設5カ所と葬祭施設54ヵ所を運営しています。
取扱業務は、冠婚葬祭互助会事業、婚礼サービス・葬祭サービスの提供、貸衣装・着付け、寝台車・霊柩車での搬送業務、損害保険代理店業務となっています。
アルファクラブ武蔵野 株式会社は埼玉県さいたま市大宮区に本社を構え、結婚式場9施設と葬祭式場69施設を運営しています。
取扱業務は、冠婚葬祭互助会事業、婚礼サービス・葬祭サービスの提供、多目的ホールの運営・企画となっています。
アルファクラブ東北 株式会社は、株式会社ライフアンサージと株式会社岩手互助センターを合併するかたちで、2015年に設立されました。
福島県郡山市の本社を中心に、福島県内に5か所、山形県に1か所、岩手県内に2カ所の支社を設けて、広範囲で事業を展開しています。
茨城県・福島県・山形県・岩手県で、冠婚葬祭互助会事業および婚礼・葬祭サービスを提供しています。
アルファクラブ株式会社(福島)は福島県郡山氏の本社を筆頭に、福島県内に6か所、茨城県内に2カ所設置された事業所を中心に事業を展開しています。
婚礼・葬祭サービスの提供はもちろん、仏壇や墓石・墓所の販売やエンバーミングの施行まで手掛けています。
アルファクラブ静岡 株式会社は、富士互助センターがアルファクラブグループの傘下に入り、旧ハートリンク・旧西駿河冠婚葬祭互助会を吸収合併したのち、2013年に現社名に変更されました。
アルファクラブグループの葬祭ブランドは「さがみ典礼」がメインですが、アルファクラブ静岡 株式会社では、現在も「富士葬祭」名義で葬祭サービスを提供しています。
サイカンシステム株式会社は埼玉県さいたま市大宮区を拠点に、埼玉県で長く冠婚葬祭互助会事業を営んでおり、2008年にアルファクラブグループと業務提携しました。
婚礼事業では「ベルヴィ」名義でサービスを提供していますが、葬祭事業では「さがみ典礼」ではなく「プリエ」という名称で葬祭ホールを展開しています。
せいしん株式会社は埼玉県さいたま市大宮区を拠点に、「ベルヴィ」名義で婚礼事業を、「さがみ典礼」名義で葬祭事業を展開しています。
株式会社 東冠は東京都足立区を拠点に、冠婚葬祭互助会事業および婚礼・葬祭サービスの提供から、仏壇・墓石販売や貸衣装業、仕出し料理業、不動産賃貸業まで幅広く事業を展開しています。
2015年に業務提携というかたちで、アルファクラブグループに加入しました。
株式会社レクスト岐阜は、岐阜県内で葬祭ホール10ヵ所とウエディングホール1か所を運営する冠葬祭互助会事業者で、2019年から2020年の期間に、社名が「株式会社岐裳会」から「株式会社レクスト岐阜」に変更されています。
葬祭事業では「レクスト岐阜」以外にも「ルネス」「愛昇殿」名義を使用しており、近年では「小さなお葬式」名義で家族葬ホールも展開しているようです。
正式な社名は「株式会社レクストワン 子安葬儀本店」となっており、冠婚葬祭互助会事業は行っていません。
葬祭事業では「子安葬儀」名義を使用していますが、近年では「小さなお葬式 ファミール絆」の名称で家族葬ホールを運営しているようです。
また、株式会社 レクスト岐阜の運営する葬祭ホールも共用していると思われます。
1981年に葬祭事業として設立された「株式会社長野さがみ典礼」から1983年に「信州さがみ典礼」に改称。
1983年に設立された冠婚事業「ベルヴィ信州株式会社」、および1988年設立の冠婚葬祭互助会事業「アルファライフ株式会社」と共に3社で「信州玉姫殿グループ」を構成しています。
- コンサルティング業務
- ケータリング
- 一般貸切旅客運送バス事業/霊柩貨物事業
- アルファ交通株式会社(栃木)
- アルファ交通株式会社(埼玉)
- アルファオートサービス株式会社
- 保険
- レジャー/リゾート
- 埼玉県
- 栃木県
- 福島県
- オーベルジュ鈴鐘
- 並木温泉ゆの郷
- ホテルアーバングレイスヴィラ
ホームページに記載されている関連会社は上記の通りですが、葬儀ポータルサイト最大手「小さなお葬式」を運営する「株式会社ユニクエスト(代表取締役:重野 心平)」も、2013年にアルファクラブ武蔵野株式会社の子会社になっています。
アルファクラブグループの歴史
現在では冠婚葬祭互助会大手となっているアルファクラブグループですが、さまざまな紆余曲折を経て現状に至っています。
これまでのアルファクラブグループにおける、大きな出来事をまとめてみました。
- 1962年6月:和田 兼保氏により埼玉県川口市で総合葬儀社「有限会社さがみ典礼」発足
- 1972年5月:「株式会社武蔵野互助会」設立
- 1972年6月:和田昌也氏が「株式会社武蔵野互助会」代表取締役に就任
- 1973年10月:「株式会社埼玉県民護助会」を設立
- 1975年8月:「有限会社さがみ典礼」から「株式会社さがみ典礼」に組織変更
- 1978年3月:前払式特定取引業として経済産業大臣認可
- 1978年10月:商号を「株式会社互助センター」に変更
- 1980年3月:「株式会社互助センター」の葬祭部として「さがみ典礼」発足
- 1980年3月:「株式会社互助センター」の冠婚部として「BelleVie」発足
- 1983年5月:「株式会社 福島県民生活互助会」を買収し「互助センター株式会社」を設立(代表取締役:和田昌也氏・武田七郎氏)
- 1989年5月:「互助センター株式会社」から「アルファクラブ福島株式会社」に社名変更
- 1989年5月:「株式会社互助センター」から「アルファクラブ栃木株式会社」に社名変更
- 1989年5月:「武蔵野互助会株式会社」から「アルファクラブ武蔵野株式会社」に社名変更
- 1997年11月:「アルファクラブ栃木株式会社」から「アルファクラブ株式会社」社名変更
- 1998年12月:神田成二氏が「アルファクラブ武蔵野株式会社」代表取締役社長に就任
- 2003年12月:「株式会社ライフパーク」の株式を取得し、稲川治利氏が代表取締役に就任
- 2004年1月:「株式会社ライフパーク」が「株式会社アンサージ」を引き受け
- 2004年5月:「株式会社ライフパーク」から「株式会社ライフアンサージ」に社名変更
- 2008年2月:「株式会社サイカンシステム」と業務提携契約を締結
- 2008年3月:「株式会社岩手互助センター」の株式を取得し、稲川治利氏が代表取締役に就任
- 2013年9月:「株式会社富士互助センター」が傘下入りして「アルファクラブ静岡株式会社」に社名変更
- 2015年7月:「株式会社ライフアンサージ」と「株式会社岩手互助センター」を合併して「アルファクラブ東北株式会社」発足
- 2015年9月:株式会社東冠と業務提携契約を締結
- 2018年6月:代表取締役会長:神田 成二氏・代表取締役社長:稲川 治利氏がそれぞれ就任
アルファクラブグループの決算公告からみる利益や業績
株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告と言います。
公告の方法は全部で3つあります。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)
決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。
主要グループ会社は以下の9社です。
- アルファクラブ株式会社(栃木)
- アルファクラブ武蔵野株式会社
- アルファクラブ東北株式会社
- アルファクラブ株式会社(福島県)
- アルファクラブ静岡株式会社
- ㈱ユニクエスト・オンライン
- 株式会社東冠
- 株式会社レクスト岐阜
- 株式会社レクストワン
上記以外のグループ会社の業績は、今回の分析に含まれておりません。
アルファクラブグループの利益剰余金
利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
利益剰余金は、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため企業が生き残るための重要な資金源となります。
アルファクラブグループの利益剰余金の推移は以下の通りです。
アルファクラブグループ全体の利益剰余金は、2020年度に一度減少していますが、2021年度には229億7千8百万円(前年対比1.29%増)と再び増加に転じています。
このことから一時的な利益剰余金の減少は、新型コロナの影響と考えられます。
アルファクラブグループの当期純利益・損失
会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。
当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。
アルファクラブグループの当期純利益・損失の推移は以下の通りです。
アルファクラブグループでは2017年度こそ当期純損失が発生していますが、過去4年間は利益を出し続けています。
アルファクラブグループ各社の会員数と前受金
アルファクラブグループでは、一部のグループ会社が会員数と前受金残高をホームページ上に公開しています。
各社の会員数と前受金残高は、以下の通りです。
アルファクラブグループ各社の代表取締役
アルファクラブグループのグループ各社では、代表取締役を複数社兼任しているケースが目立ちます。
各社の代表取締役は以下の通りです。
社名 | 代表取締役 |
アルファクラブ株式会社(栃木) | 会長:神田 成二氏・社長:稲川 治利氏 |
アルファクラブ武蔵野 株式会社 | 会長:神田 成二氏・社長:稲川 治利氏 |
アルファクラブ東北 株式会社 | 会長:稲川 治利氏・社長:神田 貢典氏 |
アルファクラブ株式会社(福島) | 神田 成二氏 |
アルファクラブ静岡 株式会社 | 神田 昌毅氏 |
サイカンシステム株式会社 | 和田 浩明氏 |
せいしん株式会社 | 神田 成二氏 |
株式会社 東冠 | 和田 浩明氏 |
株式会社 レクスト岐阜 | 神田 貢典氏・金森 茂明氏 |
株式会社 レクストワン | 神田 貢典氏 |
株式会社 信州さがみ典礼 | 池田 成彦氏 |
アルファクラブグループの葬儀ブランド
アルファクラブグループ内では、婚礼ブランドとして「BelleVie(ベルヴィ)」を、葬祭ブランドとして「さがみ典礼」をメインで使用しています。
しかし一部のグループ会社では、異なるブランド名称を使用しているケースが少なくありません。
グループ全体でブランド名称を統一することも可能かと思いますので、あえて別のブランド名称を利用している可能性が高いでしょう。
ここでは、あえて別ブランド名を使用している事情について、考えてみたいと思います。
さがみ典礼
アルファクラブグループの創業時の社名が「有限会社 さがみ典礼」です。
現在メインで使用している葬祭ブランドの「さがみ典礼」は、創業当時から使用しているものと思われ、もっとも思い入れのある名称でしょう。
今後展開する葬祭事業でも、メインブランドとして使用すると思われます。
富士葬祭
「アルファクラブ静岡」における葬祭事業で、主に使用されているブランド名が「富士葬祭」です。
「アルファクラブ静岡」の前身である「株式会社 富士互助センター」では、イメージキャラクターに左とん平さんを起用し、静岡県内で大々的にTVCMを放映していました。
左とん平さんが亡くなってからは、TVCMのイメージキャラクターが加藤 茶さんに変わっていますが、静岡県内では「富士葬祭」の知名度は非常に高くなっています。
こういった事情から「アルファクラブ静岡」では、引き続き「富士葬祭」を葬祭ブランドとして採用していると考えられます。
愛昇殿
アルファクラブグループの「レクスト岐阜」では、一部の葬祭ホールに「愛昇殿」の名称を使用しています。
「愛昇殿」は愛知県名古屋市に本拠を置く冠婚葬祭互助会事業者「株式会社レクスト」が使用している葬祭事業のブランド名です。
また「レクスト岐阜」はアルファクラブグループの傘下企業ですが、代表取締役は「アルファクラブ東北」の社長を務める神田 貢典氏と、「株式会社レクスト」の代表取締役である金森 茂明氏の複数代表となっています。
しかし「株式会社レクスト」と「アルファクラブグループ」において、直接的な業務提携関係は確認できません。
こういった状況から、冠婚葬祭互助会業界は各社が競い合う関係でありつつも、相互扶助的なつながりがあると考えられます。
おわりに~冠婚葬祭互助会に求められる情報開示~
冠婚葬祭互助会業界は、大手であっても上場する企業が少なく、公開されている情報も決して多くありません。
しかしアルファクラブグループは、冠婚葬祭互助会業界の中では比較的多くの情報を公開しているように感じました。
アルファクラブグループでは、それぞれのグループ企業ホームページにディスクロージャー(情報公開)ページが設置されており、直近の収益状況が確認できます。
冠婚葬祭互助会業界全体でも、ディスクロージャーページを設けている企業は少数でしょう。
情報化社会の現在において、企業の閉鎖性は消費者に悪印象を与えますが、冠婚葬祭互助会業界では情報公開に消極的な企業が少なくありません。
小規模化・簡素化が進む葬儀業界において、冠婚葬祭互助会事業者が生き残るためには、情報開示に対する認識を改める必要があるのかもしれません。