ペット葬需要の高まりにともない、ペットの火葬や葬儀・ご供養サービスを提供する事業者も増加傾向にあります。
しかし現時点(2024年9月)の日本において、ペットの火葬や葬儀を規定する法律は存在せず、ペット葬サービスの内容や技術レベルも各事業者ごとに異なるため、いわば玉石混交といった状況です。
大切な家族であるペットを見送る飼い主様が、安心してペット葬サービスを利用するためには、業界全体の健全化が不可欠です。
そのため現在では、ペット葬事業者の資質や技術向上、ならびに業界全体の発展を目指し、複数の業界団体が設立されています。
- 一般社団法人日本動物葬儀霊園協会
- 一般社団法人日本ペット訪問供養協会
- 一般社団法人全国ペット霊園協会
- 一般社団法人東京都獣医師会霊園協会
- ペット火葬協会
しかしながら、各団体の運営方針や活動内容については、詳しくご存じない方が多いようです。
そこで本記事では、ペット葬儀における業界団体の1つ「日本動物葬儀霊園協会」を取り上げ、詳しく解説いたします。
日本動物葬儀霊園協会の概要
日本動物葬儀霊園協会は、日本で初めて法人化された一般社団法人です。各地域で実績と信頼が認められた動物霊園により構成された業界団体でもあります。
また、動物葬祭ディレクター試験の実施と認定を、日本で唯一実施できる団体法人です。
日本動物葬儀霊園協会加盟社数(2024年6月現在)は、会員94社・賛助会員29社の計123社となっています。
【団体名称】日本動物葬儀霊園協会
【所在地】〒920-0362 石川県金沢市古府西1丁目1
【代表者】理事長 中村修二
【所属員数】123社(2024年6月現在)
【公式ホームページ】https://ndsrk.org/
設立の目的と意義
設立の目的
日本動物葬儀霊園協会は、社会全体の公衆衛生に対する意識を高めることを目的として、動物の遺体を法律に基づき衛生的に扱う活動をおこなっています。
また、動物を愛する一般の方々に対して、ペット葬儀に関する知識や意識を高めるための活動も行い、消費者としての利益を守り、より良いものにしていくことを目指しています。
この目的を達成するために、同協会では以下の事業を行っています。
- 一般の方々を対象に、動物葬儀に関する検定試験を実施し、資格を付与
- 動物葬儀に関する本や資料を無償または原価で発行し、配布する
- 動物葬儀に関連する展示会の主催や参加
- 動物の遺体を正しく扱うための啓発活動や、相談・助言
日本動物葬儀霊園協会は、動物の遺体を正しく扱い、社会や動物を愛する人々の意識を高めるための活動を行い、安心してサービスを受けられるようにすることを目指しています。
活動方針
日本動物葬儀霊園協会の活動方針は以下の通りです。
- 動物葬祭ディレクターの試験を毎年続けて実施。
- 動物葬祭に関する専門書を発行(検定試験に必要な内容をカバー)。
- 動物葬祭業者同士の競争については、個々の事業者の経営努力と経営方針にゆだね、協会は基本的に関与しない。
- 動物葬儀に関する法律や規制が、動物愛護者の希望に沿った形で、民間業者が順調に業務ができるよう行政に協力。ただし、協会の基本方針は守る。
- 葬儀や霊園に関する展示会やセミナーを主催または参加し、動物葬儀の正しい理解と知識を広める活動や衛生意識を高めるための活動も行う。
- 動物葬儀に関して、誇張や嘘の広告、他者の誹謗中傷をする情報発信をなくすために、消費者保護の観点から取り組む。
公営火葬場のペット火葬取り扱いに対する考え
家庭で亡くなった犬や猫などのペットの遺体は、「一般廃棄物」として扱われ、市町村が収集・処理しています。しかし、昭和52年に厚生省からの通達で、ペット霊園業者が行う葬儀や火葬などは「宗教的な行為」として扱われ、一般廃棄物から除外されました。
そのため、市町村はペットの遺体を一般廃棄物として処理せず、葬儀や遺骨返還をともなうペット火葬は民間業者が行うことが定着しています。
近年は、一部の市町村が運営する火葬場や焼却場で、市町村直接、あるいは委託業者を通じて、葬儀や遺骨返還を行うケースが増えています。
これにより、地域の民間ペット火葬業者が太刀打ちできずに廃業や倒産に追い込まれるようになりました。結果として、その地域から民間業者がいなくなり、ペット愛好家が受けられるサービスの多様性が失われてしまったのです。
例えば、全ての市民が利用する人間の医療や火葬は、民間と行政の両方で行われていますが、ペットの医療はすべて民間で提供されています。そのためペットの火葬や遺骨返還も民間で行うべきです。
日本では自由経済が基本であり、サービス業は民間が中心です。市町村が半ば商売のようにペット火葬や遺骨返還を行うことは、違法の可能性があり、憲法の理念にも反します。
上記の理由から、ペット愛好家の権利を守り、ペット葬儀業者が健全に発展できるよう、ペット火葬の遺骨返還は民間業者が行うべきであり、市町村の施設で行うべきではないと考えます。今後もペット葬儀業者が協力して、この状況を改善するために行動することが必要です。
移動火葬車によるペット葬業務への向き合い方
「移動火葬車」とは、ペット用の火葬炉を搭載した専用の車両です。この車両は、飼い主の自宅など希望する場所に移動してペットの火葬ができます。
日本動物葬儀霊園協会は、移動火葬車という業態を推奨しているわけではありません。しかし、移動火葬車をただ廃止しようとするのではなく、その問題点を冷静に見つめ、移動火葬業者に対して指導や教育を行う方が、ペット葬儀業界全体にとって良いと考えています。
取り組むべきことは、一般の人々が抱いている「火葬は悪臭を伴う」という誤解を解く努力や、車がない人々にとって移動火葬車が便利であることを考慮することです。また、低い資金で始められる移動火葬業の過度な料金競争を抑えることも重要だと考えています。
最近、車を使った業態が増えており、ペット火葬車の廃絶を求める運動には社会的な正義が欠けています。行政を動かして法律で移動火葬車を禁止することは難しいでしょう。
また、移動火葬車の廃絶を求めることが、逆に行政がペット火葬を直接行うようになり、民間業者の衰退につながる恐れもあります。今は、業界内で争っている場合ではないと危機感を持っています。
移動火葬業者のみの業務体制であったとしても、良心的な業者と判断できれば何らかの方法で関係を維持します。
今後も一般動物愛護者の問題を解決し、安心して動物供養ができるように今後も努力していきます。
日本動物葬儀霊園協会の事業・取り組み
日本動物葬儀霊園協会は、動物の遺体の正しい取扱いに関する活動を主に行っています。
また、動物葬祭に関する検定試験や資格付与授業なども実施しています。その目的は、一般の動物愛護者の動物葬祭に関する知識や意識の向上を図ることで、ペット葬儀の利用者を守り、安心してサービスを利用できるようにすることです。
日本動物葬儀霊園協会の主な取り組みは、以下が挙げられます。
資格認定事業(個人対象)
動物葬祭ディレクターの一級および二級の検定試験を実施し、資格付与を行っています。動物葬祭ディレクターは、日本動物葬儀霊園協会が認定する資格です。
資格を取得すると、ペットの火葬や葬儀の知識やスキルを証明できます。また、動物葬祭概論書式の販売、過去問題集の販売もしています。
動物葬祭に関する書籍の監修及び発刊
日本動物葬儀霊園協会は「動物葬祭概論」を著書および出版しています。動物葬祭概論の内容は、動物の葬儀方法や、衛生管理などに関する知識などです。動物葬祭ディレクター検定試験は、動物葬祭概論を元に出題されています。
日本動物葬儀霊園協会の特徴
日本動物葬儀霊園協会は、各地域において信用と実績がある動物霊園葬儀業者が運営する法人による業界団体法人です。
日本動物葬儀霊園協会は、参議院議員 橋本聖子氏が顧問となっています。また、志賀聖一氏(遺体燃焼の基礎・群馬大学名誉教授)、濱野佐代子氏(ペットロス・日本獣医生命科学大学教授)などの専門家が学術顧問として参加しています。
日本動物葬儀霊園協会に加盟するメリット
日本動物葬儀霊園協会は、葬祭や霊園関連の展示会やセミナーの主催や参加をしています。動物葬祭業務への理解、知識を得られる環境を整えるだけでなく、公衆衛生意識の向上を目指して活動も行っています。
そのため、日本動物葬儀霊園協会に入会していると、納骨や火葬施設、スタッフの対応に知識がある業者だと認識してもらえるメリットがあります。
日本動物葬儀霊園協会の役員・理事(所属企業)
役職 | 氏名 | 所属企業・団体 |
理事長 | 中村 修二 | ペット愛葬社 |
副理事長 | 神谷 重範 | 東海動物霊苑 |
副理事長 | 宮嶋 博悦 | 北陸ペット葬儀社 |
執行理事 | 藤本 政光 | ジャパンペットセレモニー |
執行理事 | 冨岡 琢磨 代理 大髙教生 | 株式会社プレア |
執行理事 | 小林 勉 | 愛ペットグループ |
事務局長 | 中村 幸雅 | ペット愛葬社 |
理事 | 村上 かがり | 平野動物霊園 |
理事 | 渡辺 善治郎 代理 渡辺千穂 | フェアウェイペットメモリアルパーク |
理事 | 森田 裕子 | 総合ペットセレモニー株式会社 |
理事 | 小田 公武 | 小田ペット葬祭 |
理事 | 坂部 直希 | 徳島ペット供養苑 |
理事 | 藤井 真美 | 四日市ペット斎場 |
理事 | 仲宗根 和彦 | ペット葬祭永遠の家まごころ |
監事 | 松田 幸博 | ペット霊園アプリエ |
監事 | 山中 忠一 | 一宮どうぶつ霊園 |
まとめ
本記事では日本動物葬儀霊園協会の概要や取り組み・特徴などについて詳しく紹介しました。
日本動物葬儀霊園協会の会員数は、会員94社・賛助会員29社の計123社に達しており、ペット葬儀業界内で実績と信頼性のある業界団体といえるでしょう。
また同協会では、動物葬祭ディレクター検定試験や、動物葬祭概論の発行を通して人材育成をおこなっています。こうした地道な活動が結実すれば、葬儀業界の発展と品質向上につながることでしょう。