伝統的工芸品「京仏壇」「京仏具」の団体組織|京都府仏具協同組合について解説

京都府仏具協同組合 概要

京都府仏具協同組合_バナー

※画像出典:京都府仏具協同組合

「京都府仏具協同組合(きょうとふぶつぐきょうどうくみあい)」は、京都府で組織されている仏壇店ならびに仏具店の協同組合組織です。

協同組合とは、共通の目的やニーズのために個人や企業、非営利団体などが集まって設立される組織のことです。

集まった団体や個人は組織の組合員として所属し、管理運営をおこなって組合の目的などを果たすことを目指します。

「京都府仏具協同組合」は戦前にその前身組織が設立されています。

昭和22年に現在の組織に改組されて以降も業界の維持発展に尽力してきており、また昭和51年から52年にかけて「京仏壇」「京仏具」が伝統的工芸品に認定されてからも、伝統的工芸品を形づくる伝統産業の発展のために継続して活動をおこなっています。

【団体名称】京都府仏具協同組合

【所在地】 京都市下京区西洞院通七条下る サンプレ京都ビル

【設立】  1947年5月改組設立

【組合員数】156事業所、156名(2019年4月時点)

【公式HP】 京都府仏具協同組合 | 経済産業大臣指定 伝統的工芸品 京仏壇・京仏具 (kyobutsugu.com)

目次

沿革・歴史

「京仏壇」「京仏具」は、古くからの歴史があると言われており、11世紀の平安時代に製作されたものが起源とされているようです。

京都府には仏教各宗派の本山が多く在り、伝統的に各仏教宗派の法式にのっとった仏壇・仏具が製作されてきたといわれています。

寺院用・家庭用を問わず、また木製品や金属製品をはじめとして法衣や表具、念珠や香具などといった仏具にかかわるすべての製品が京都府で製作されています。

京都府で仏壇店・仏具店の協同組織として組合が立ち上げられたのは戦前であるといわれています。

組合組織として各店が協力し合いながら、伝統的工芸品となった「京仏壇」「京仏具」を作り上げる技術・技法を現代まで受け継いでいます。

歴史

  • 戦前(年不明):神仏具統制組合が設立される
  • 1947(昭和22)年:京都府宗教用具商工協同組合が設立される
  • 1948(昭和23)年:金箔統制令の下で組合各部門の団結が図られ、業界の建て直しがなされる
  • 1980(昭和32)年:京都府仏具協同組合に改称される
  • 1976(昭和51)年:通産大臣より伝統的工芸品産業の産地指定を受ける
  • 1977(昭和52)年:通産大臣より伝統的工芸品産業の第1次振興計画の認定を受ける

※出典:組合の紹介 | 京都府仏具協同組合 (kyobutsugu.com)

事業・取り組み

「京都府仏具協同組合」では、下記にあげる事業に取り組んでいます。

  • 後継者の育成や技術・技法の改善に関する事業
  • 需要開拓や品質表示・消費者へのPRに関する事業
  • 福利厚生や親睦に関する事業
  • 見学会・講演会・機関紙発行に関する事業

「京都府仏具協同組合」は戦前にその前身組織が設立されており、昭和22年に現在の組織に改組されて以降も、京仏壇・京仏具の製作に携わる各部門の職人の技術や、これまでの歴史で培われてきた伝統的技法を守り、これからの時代に引き継いでいくための取り組みをおこなっています。

「京仏壇」ならびに「京仏具」は、昭和51年から52年にかけて、国から「伝統的工芸品」の指定を受けており、一般的な商品以上の価値を持つことになりました。

その上、平成18年に導入された地域団体商標制度によって「京仏壇」「京仏具」が商標登録され、「京都府仏具協同組合」への組合加盟店にのみ、その商標が使用できることとなったことを活かして、お客様に安心してお求めいただける目印を提示することが可能となっています。

伝統的工芸品

経済産業省_伝統的工芸品

※画像出典:伝統的工芸品 (METI/経済産業省)

伝統的工芸品とは、求められる要件をすべて満たし、伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和49年法律第57号)に基づいて、経済産業大臣の指定を受けた工芸品のことをいいます。

指定されるにあたって求められる要件は下記の通りです。

  1. 主として日常生活で使用する工芸品であること
  2. 製造工程のうち、製品の持ち味に大きな影響を与える部分は、手作業が中心であること
  3. 100年以上の歴史を有し、今日まで継続している伝統的な技術・技法により製造されるものであること
  4. 主たる原材料が原則として100年以上継続的に使用されていること
  5. 一定の地域で当該工芸品を製造する事業者がある程度の規模を保ち、地域産業として成立していること

※出典:伝統的工芸品とは – KOGEI JAPAN(コウゲイジャパン)

特徴

「京仏壇」「京仏具」の特徴

京都府仏具協同組合、創立70周年記念ビデオ 「伝承と技と心」 (youtube.com)

「京仏壇」「京仏具」は、京都府の中でも京都市、亀岡市周辺で製作されている仏壇仏具のことを呼んでいます。

大きく取り上げられる特徴として、2000点ほどあるといわれる各部分を製作する工程が細分化そして分業されており、ひとつひとつが職人たちの手作業によって作り上げられていることです。

製作に求められる職人の技術力の高さは注目されるところであり、また、製作に関わる職種もおよそ40種あるといわれて、数多くの職人が携わっています。

製作工程

1.木地(きじ)工程

原木を仏壇仏具に形作る工程です。

掘りの部分は木彫刻工程に、それ以外の部分は漆塗工程に渡すまでをおこなっています。

京仏壇には桧や松、欅を2年から3年ほど乾燥させたものが使用されます。

これは耐久性があって彫刻するのに程よい硬さだからといわれていることにくわえて、漆を塗ることにも相性が良い材料とされています。

この工程に携わる職人を木地師(きじし)と呼び、木地師の仕事は檜や松などの素材を使って、宗派ごとに定められた形に木地をつくっていくことです。

2.屋根工程

仏壇の屋根の内側にあたる部分を製作する工程です。

木地工程とは別に、屋根の部分だけ独立して作業をおこなっています。

この工程に携わる職人を屋根師(やねし)と呼び、屋根師の仕事は小さな部品をひとつひとつ丁寧に組み立てて作りあげていくことです。

3.木彫刻(もくちょうこく)工程

宮殿(くうでん)、須弥壇(しゅみだん)、卓などに細かな図柄の彫刻を施していく工程です。

宗派によって彫刻するものが異なっており、浄土真宗本願寺派であれば「素牡丹」、真宗大谷派であれば「雲に天人」などと様々な草花や生き物があります。

この工程に携わる職人を彫刻師(ちょうこくし)と呼び、彫刻師の仕事はノミや小刀を使って、ひとつひとつ手作業で彫っていきます。

技術力が問われる仕事といえ、躍動感にあふれて生命力を感じる彫刻をいかに施すことができるかが重要になる作業といわれています。

4.漆塗(うるしぬり)工程

形作られた仏壇仏具の表面を、漆で黒色や朱色などの色に塗り上げる工程です。

仏壇仏具の表面を美しく仕上げるためには下地の処理が重要であるといわれています。

まずは刻苧(こくそ)や布張、和紙張などで下地処理を調えた後で下地塗を始めます。

これは反りや割れを防ぐためといわれています。

下地には「砥粉(とのこ)」と「生漆(きうるし)」を混ぜた「本堅地(ほんがたじ)」を塗っていきます。

下地を塗った後は、下塗りからはじまって研磨と漆の重ね塗りを交互に行いながら中塗り、上塗りと仕上げをおこなっていきます。

このとき、漆を塗り重ねていくためには乾燥をしっかりとさせることが重要です。

漆は常温で置いておくだけでは乾燥しないため、漆風呂という漆が乾燥するのに適した温度と湿度の場所で乾燥させ、さらにほこりがつかないようにしっかりと管理する必要があります。

漆の硬さや乾燥の具合は、職人の長年の経験で調整されているといわれています。

この工程に携わる職人を塗師(ぬし)と呼び、塗師の仕事は京仏壇の製作工程の中で、細心の注意が必要な作業といわれる漆塗りを施すことです。

5.蝋色(ろいろ)工程

漆塗で出来た刷毛目などの凹凸を、研ぎや磨きをおこなうことで艶を出し鏡面のように仕上げていく工程です。

艶や光沢を出すために「炭砥ぎ(すみとぎ)」、「胴擦り(どうずり)」、「摺り漆(すりうるし)」 、「磨き」の工程を経る必要があります。

「炭研ぎ」は駿河炭(蝋色炭)を使用しています。

「胴擦り」はさらに緻密に研ぎあげる作業です。

「摺り漆」は蝋色漆など生漆をすり込んで磨き上げ、より一層の艶を出しています。

「磨き」は磨き粉と油を使ってさらに磨き上げていきます。

この工程も漆塗工程同様、塗師が携わっています。

6.純金箔押工程

形作られて漆塗が終わった仏壇仏具の表面に金箔を施していく工程です。

仏壇で表現される仏像などは、古来より金色で表現することが定められているといわれています。

この工程では、仏像をや宮殿などの細かな部分に手作業でひとつひとつ金を施していくことになります。

京仏壇では独特の方法で金箔を施していきます。

均一に箔押漆を塗り、綿で拭き上げ、金箔を押して張っていくこの技法により、京仏壇特有の重厚な仕上がりになるのです。

この工程に携わる職人を箔押師(はくおしし)と呼び、金箔を張ることで京仏壇としての仕上がりを引き立たせていきます。

7.蒔絵(まきえ)工程

漆で描かれた文様の上に、金箔や銀箔を蒔いて図柄を表現した絵(蒔絵)を描く工程です。

蒔絵は漆の特性を生かして描かれており、蒔絵を描くための技法が生まれて、それが日本独自の美術工芸として洗練されながら発達してきた歴史があります。

京仏壇では、蒔絵によって様々な表現が用いられます。

技法には「消し粉蒔絵」や「研ぎ出し粉蒔絵」、「磨き粉蒔絵」やさらに高度な「肉合(ししあい)蒔絵」などの種類があります。

この工程に携わる職人を蒔絵師(まきえし)と呼び、無限といえる表現が存在するといわれる蒔絵によって京仏壇に彩りを加えています。

8.彩色(さいしき)工程

木地や金箔の上に絵を描く工程です。

京仏壇では、一般的な極彩色、木地の素材を活かした木地彩色、透明感を出した箔彩色という3つの彩色の技法が用いられます。彫刻された木地にうまく馴染ませるために、絵の具の調合がものをいう作業です。

この工程に携わる職人を彩色師(さいしきし)と呼び、色を付けて絵を描くことで蒔絵と同様に京仏壇に彩りを加えています。

9.錺金具(かざりかなぐ)工程

仏具や仏壇などの装飾として用いられている錺金具を製作する工程です。

錺金具とは仏壇を補強するための金具であり、また戸の蝶番(ちょうつがい)や各部の装飾で用いられている金具のことです。

素材には銅や真鍮(しんちゅう)などが用いられており、タガネという工具を使って細やかな彫刻を行っていきます。

この工程は薄い金属を加工していく作業になるので、集中力が要されてかつ繊細さが求められる作業とされます。

この工程に携わる職人を錺金具師(かざりかなぐし)と呼び、本体との調和が最も大切になるので洗練されたセンスとデリケートな技術が要求されるといわれています。

10.総合組立

各工程で仕上げられた部品を一か所にあつめて、最終の組み立てをおこない、仏壇などの商品として仕上げをおこないます。

11.仏像彫刻

京仏師の手によって仏像が彫刻されて世に送り出されます。

仏像彫刻の技法は、「一木造り」と「寄木造り」の二種類があるといわれています。

また、仏像彫刻に用いられる材料の木材は檜・松・ 樟・框・白壇などです。

「一木造り」は一本の木から仏像の全身を彫りだして表現する技法です。

材料に使われる木材の大きさに限界があることから、大きな仏像を彫像することには向いていないとされます。

この技法は、木地工程の仕上げにおいて、仏像や香木の白壇材の小像を彫刻する時に適しているといわれています。

「寄木造り」は大きな仏像を造るときに適した技法とされています。

この技法は、藤原時代の大仏師、 定朝によって完成されたとされる、合理的な彫像法であると伝えられています。

大きな仏像を造る場合、仏頭・ 胴体・両肩・膝の各部をそれぞれ別材によって用意し、これを木寄せすれば巨木を 用意する必要もなく、また像に内刳りを施す事により、像の干割を防ぐことができ、 その他多くの利点があります。又、信仰を対象とした仏像には儀軌という法則があり 、それを忠実にまもらねばなりません。現在も京仏師は平安の大仏師定朝を京仏師の 祖と敬い、仏像彫刻に励んでいます。

この工程に携わる職人を京仏師(きょうぶっし)と呼び、平安時代の仏師から敬い受け継がれている彫像法を用いて仏像や彫刻を作り上げています。

12.金属

家庭用仏壇や寺社仏閣で用いられている金属製の仏具製品は、鋳造金属製品を手がける職人の手によって、世に送り出されています。

現在では一人の職人の手によって鋳造から製品になるまでを手がけるのではなく、完全に分業化されているようです。

その製造工程は「鋳造」「仕上げ」「彫金」「ロクロ」「磨き」「メッキ」「色付け」など細分化されており、多数の職人が携わっています。

製造技法も「蝋型鋳造」「惣型鋳造」「込型鋳造」「生型鋳造」「CO2鋳造」と種類があり、その特徴によって使い分けをされているようです。

12-1鏧子(けいす)
鏧子(けいす)_京都府仏具協同組合

葬儀において、僧侶が読経の時に打ち鳴らす金属製の鉢形の鳴物を「鏧子(けいす)」といいます。

「打金(うちがね)」や「銅鉢(どうばち)」などとも呼ばれ、鳴らされる音は「梵音(ぼんおん)」と称されています。

「梵音」とは、清浄な声を意味する言葉で、その音色は極楽浄土に住んでいるとされる伝説の鳥「迦陵頻伽(かりょうびんが)」の鳴き声のように美しく、はるか遠くまで聞こえるといわれています。

鏧子の製作は「鎚起(ついき)」という、厚い黄銅板を打ち伸ばしては焼き戻し、焼き戻しては打ち伸ばすという工程を終始、人力によって30回以上繰り返すことで作り上げられています。

この打ち伸ばしの技術を習得するには10〜15年の歳月を要するといわれています。

また、望む音色を出せるように感覚を会得するには、さらに長い年月が必要であるとされています。

激しい肉体労働を求められる鏧子の製作は、現在では携わる職人が数人と少なくなっており、その後継者も少ないようです。

そのため、製造法も蝋付けや鋳物製の鏧子が多数を占めるようになってしまった中で、形の美しさに加えて音色が命といわれる鏧子の製造法は、京仏具が伝え続けている「鎚起」の技法に優るものはないといわれています。

※参照:京仏壇ができるまで | 京都府仏具協同組合 (kyobutsugu.com)

※参照:京仏壇(きょうぶつだん)の特徴 や歴史- KOGEI JAPAN(コウゲイジャパン)

加盟するメリット

「京都府仏具協同組合」は、「京仏壇」「京仏具」を世間一般に知ってもらうために活動している組織とされています。

そのうえで、仏壇仏具の制作に携わる店舗や職人個人をとりまとめる組合組織としても活動しています。

組合組織に加盟するメリットは、自分たちが作り上げる商品を、世間一般に認知してもらえるための活動を支えてもらえることが大きいといえます。

また、現代の日本社会において一店舗や一個人だけの力では、商品や技術を後の世に伝え残していくという努力にも限界が伺えるところです。

しかし、業界をまとめている大きな組織に所属して、組織に所属している者同士が横のつながりを密にすることで、大きな推進力を得ることが期待できます。

伝統的と称される文化や工芸品といった、古来から受け継がれているものは、未来へ引継ぎ、受け継ぐことが段々難しくなってきているといわれています。

理由はそれぞれありますが、特に大きな理由は、現代に生きる人びとに大きな興味を持ってもらえないことではないでしょうか。

また、工芸品を作り上げるための材料の入手や、職人技と呼ばれるような技術を継承し続けていくことの困難さがあげられるところです。

これは木材などの材料においては、森林開発や植林などといった政策に左右されることもあげられますが、日本国土の気候が変わりつつあり、植生の変遷が未来においてどうなっていくのかはっきりと見通せないといえます。

また、技術継承については、職人の成り手である後継者が不足していることが大きく取り上げられるところです。

これは工芸品の世界に限った話ではなく、現代日本の社会特性として「人不足」が慢性的であるといわれていること、加えて「人口減少社会」と言われ続けて解決の見通しがたっていないことが指摘されています。

こういった問題点に対しても、組合組織の一員として活動することで、一部地域の狹く小さな問題とするのではなく、日本全国にむけて周知して目を向けてもらえることを期待できるようになるでしょう。

役員・理事(所属企業)

「京都府仏具協同組合」の役員、組合加盟店、関連団体は以下の通りです。

所属する組合加盟店は46店舗、関連団体は8団体あります。

代表者(理事長)

理事長:田中雅一(2024年時点)

組合加盟店(46店舗)

「京都府仏具協同組合」に加盟している企業・店舗は下記の通りです。

※出典:組合加盟店 | 京都府仏具協同組合 (kyobutsugu.com)

関連団体(8団体)

「京都府仏具協同組合」に関係、連携をしている団体組織は下記の通りです。

※出典:組合の紹介 | 京都府仏具協同組合 (kyobutsugu.com)

まとめ

この記事では、「京都府仏具協同組合」について紹介しました。

仏教宗派の本山が多く存在する京都の地で、長年培われてきた仏具や仏壇の製造技法は、日本の伝統的工芸品として世界に向けて紹介される商品にまでなっています。

また、寺院用仏具等の制作においても、その培われた伝統的技術が惜しみなく用いられており、寺院を支え続けています。

こうした技術をもつ店舗や職人個人を、組織的にまとめて伝統的産業として発展できるようにしていく活動を担っている「京都府仏具協同組合」を知っていただければ幸いです。

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