◇◇◇ アメリカの葬儀系産業展で学べること?
ー葬儀ビジネスを盛り上げる方法についてー
地域密着型が目立つ
葬儀ビジネスに限らず、どの業界の人たちも、自身や事業を成長・発展させていくには、常に新しい情報やアイデアを得て思考し、時代とともに進化し続けていくことが必須である。
そのヒントとなる情報や商品やサービスなどが一か所に集まっているのが産業展だ。そこで、「葬儀関連の新しい情報や商品やサービス」を一度に見て知ることが可能な、アメリカ合衆国で開催されている産業展について調べてみた。
筆者が調べた限りでは全米に69展(註:アメリカ合衆国で開催されている葬儀系産業展のリストは後述)。
すでに今年5月までに開催された20展、6月に開催される30展、7月と8月に開催される9展、9月から12月に開催される10展の計69展となっており、葬儀系産業展は日本に比べて盛んだ。
ただし、日本で開催されている葬儀系産業展に比べて圧倒的に数が多い割には、日本の大型の葬儀系産業展に比べて、各展の規模はかなり小さい。アメリカの葬儀関連市場は大きいが、地域に密着した葬儀系産業展がほとんどで、出展者や来場者は各地域(各展)へ散らばっている印象がある。
実際に、2万人以上の会員(1万1千軒近くの葬儀場)が所属しているアメリカの葬儀ビジネス協会「NFDA / The National Funeral Directors Association(全米葬儀ディレクター協会)」が主催している産業展「NFDA International Convention & Expo(NFDA国際コンベンション&エクスポ)」の動員数は、2018年には4,029人だった。
同展は、開催地が毎年変わっており(全米各地を回っており)、2018年は、10月14日から17日にユタ州ソルトレークシティーで開催された。動員数4,029人の内訳は、329社1,565人の出展者と2,464人の来場者。海外からは29か国315人が来場した。
日本人の来場者は、ユタ州ソルトレークシティーで開催された2018年には9人(海外からの来場者315人中)、マサチューセッツ州ボストンで開催された2017年には55人(海外からの来場者542人中)、ペンシルベニア州フィラデルフィアで開催された2016年には19人( 海外からの来場者352人中)だった。
同展の広報責任者 Jessica Koth(ジェシカ・コス)さんは、「日系企業のSANWA Bussan Co. / 三和物産(2015年に出展)、Marius Co. / マリウス(2014年に出展)、Entry Japan KK / エントリージャパン(2011年に出展)、Tomoe Co. / 巴コーポレーション(2010年と2011年に出展)が過去に出展した」と話す。
勤勉な日本人らしく、アメリカへも足を運んで事業の発展に励んでいる日系企業の存在は素晴らしい。
今年の同展(2019 NFDA International Convention & Expo)は、イリノイ州シカゴで10月27日から3日間に渡って開催される。
[caption id="attachment_10755" align="alignnone" width="400"] NFDA国際コンベンション&エクスポ(会場入り口付近の様子) Copyright 2019 by National Funeral Directors Association[/caption] [caption id="attachment_10756" align="alignnone" width="400"] NFDA国際コンベンション&エクスポ(会場内の様子) Copyright 2019 by National Funeral Directors Association[/caption] [caption id="attachment_10757" align="alignnone" width="400"] NFDA国際コンベンション&エクスポ(会場内の様子) Copyright 2019 by National Funeral Directors Association[/caption]
最大の産業展は「NFDA International Convention & Expo」
前述のとおり、アメリカで最大の葬儀系産業展は、全米葬儀ディレクター協会が主催する「NFDA International Convention & Expo(NFDA国際コンベンション&エクスポ)」である。
「すべての来場者が並外れた経験を得られること」をコンセプトに、来場者が新しい方法で葬儀について考えられるワークショップや商品およびサービスを紹介している。同展の重要な課題である「消費者に葬儀と葬儀ディレクターの役割の重要性を伝えること」も強調している。
2018年に開催された同展では、顧客(遺族)の進化するニーズや願望を理解することに役立つ実用的な戦略を提示したワークショップが目立った。
例えば、「エンバーミング(遺体の消毒・保存処理などで長期保存が可能になる技術)と修復技術」、「オピオイド危機(近年のアメリカでは、オピオイド薬における死亡件数が増え、2017年にオピオイド危機と呼ぶ公衆衛生上の非常事態宣言が出された)」、「悲劇的な状況で亡くなった人を悲しむ家族への支援」、「マーケティング」、「コンプライアンス」など、近年話題となっているテーマを掲げていた。
[caption id="attachment_10758" align="alignnone" width="400"] NFDA国際コンベンション&エクスポ(会場内の様子) Copyright 2019 by National Funeral Directors Association[/caption] [caption id="attachment_10761" align="alignnone" width="400"] NFDA国際コンベンション&エクスポ(ワークショップの様子) Copyright 2019 by National Funeral Directors Association[/caption] [caption id="attachment_10762" align="alignnone" width="400"] NFDA国際コンベンション&エクスポ(ワークショップの様子) Copyright 2019 by National Funeral Directors Association[/caption]
展示会場では、来場者が価値のある業者と繋がれることをめざし、来場者である葬儀社が顧客(遺族)へ提供できる最新の葬儀関連商品やサービスの展示や紹介を行なった。レッドカーペットをテーマにした歓迎パーティーやオクトーバーフェストをテーマにした打ち上げパーティーなど楽しいイベントも開き、参加者にネットワークを築くチャンスも提供していた。
[caption id="attachment_10776" align="alignnone" width="400"] NFDA国際コンベンション&エクスポ(会場内の様子) Copyright 2019 by National Funeral Directors Association[/caption] [caption id="attachment_10777" align="alignnone" width="400"] NFDA国際コンベンション&エクスポ(会場内の様子) Copyright 2019 by National Funeral Directors Association[/caption] [caption id="attachment_10763" align="alignnone" width="400"] NFDA国際コンベンション&エクスポ(オープニングパーティーの様子) Copyright 2019 by National Funeral Directors Association[/caption] [caption id="attachment_10764" align="alignnone" width="400"] NFDA国際コンベンション&エクスポ(オープニングパーティーの様子) Copyright 2019 by National Funeral Directors Association[/caption]
同展の入場料金体系は4つ。ワークショップやパーティーに出席せずエクスポ(展示会)のみに来場する場合は325ドル(1ドル=110円換算で、約3万6千円)。エクスポ(展示会)の他、ワークショップやパーティーなど全てのイベントに来場する場合は970ドル(1ドル=110円換算で、約10万7千円)。同伴者・2人目として来場する場合は395ドル(1ドル=110円換算で、約4万3千5百円)。学生の場合は「免許更新のための継続教育のセミナー」以外のイベント全てに参加できて95ドル(1ドル=110円換算で、約1万5百円)となっている。