上場企業同士の買収劇|葬祭大手の燦HDがきずなHDに対するTOB開始を発表

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大手葬儀社の公益社などを傘下に持つ上場企業の燦ホールディングス株式会社(以下 燦HD)は、「家族葬のファミーユ」を中核企業とする上場企業の株式会社きずなホールディングス(以下 きずなHD)の完全子会社化を目的とした、株式公開買付け(TOB)を開始すると発表しました。

参照:株式会社きずなホールディングス「燦ホールディングス株式会社による 当社株券等に対する公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ」
参照:燦ホールディングス株式会社「株式会社きずなホールディングス(証券コード:7086)の株券等に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」

TOB(Takeover Bid)
企業が他社の株式を公開買付けによって取得し、経営権を掌握する手法

燦HD・きずなHDのいずれも、葬儀業界に大きな影響力を持つ企業ですので、今回の動きは非常に興味深いニュースといえるでしょう。
そこで本記事では、燦HDによるきずなHD株式公開買付けについて、葬儀社様が気になる部分に内容を絞って、分かりやすく紹介いたします。

目次

燦HDによるきずなHD株式公開買付けの概要

燦HDでは、きずなHDの筆頭株主である投資事業有限責任組合アドバンテッジパートナーズⅤ号など主要株主(合計所有割合:44.95%)からは、すでに合意も得ているとのことです。

■届出当初の買付け等の期間

2024 年7月 16 日(火曜日)から 2024 年8月 27 日(火曜日)まで(30 営業日)

■買付け等の価格

  1. 普通株式1株につき、金 2,120 円
  2. 新株予約権
    1. 2016 年 12 月 16 日開催の対象者臨時株主総会及び同日開催の対象者取締役会の決議に基づき発行された新株予約権(以下「第1回新株予約権」といいます。)(行使期間は 2017 年6月1日から 2026 年 12 月 15 日まで)1個につき、金 3,240 円
    2. 2017 年 12 月 25 日開催の対象者臨時株主総会及び同日開催の対象者取締役会の決議に基づき発行された新株予約権(以下「第2回新株予約権」といいます。)(行使期間は 2017 年 12 月 25 日から 2027 年 12 月 24 日まで)1個につき、金 2,640 円
    3. 2019 年5月 30 日開催の対象者臨時株主総会及び同日開催の対象者取締役会の決議に基づき発行された新株予約権(以下「第3回新株予約権」といいます。)(行使期間は 2022 年6月1日から 2029 年5月 30 日まで)1個につき、金 2,240 円
出典:燦ホールディングス株式会社「株式会社きずなホールディングス(証券コード:7086)の株券等に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」

燦HD・きずなHDの企業概要

葬儀業界では数少ない上場企業である燦HDが、同業の上場企業を買収するということで、今回の取引は大きな注目を集めています。
燦HD、ならびにきずなHDについて、簡単に紹介いたします。

燦ホールディングス株式会社概要

燦HDTOPページ
社名燦ホールディングス株式会社
設立1944年(昭和19年)10月2日(創業1932年8月)
本社所在地東京本社:東京都港区南青山1-1-1 新青山ビル西館14F
大阪本社:大阪市北区天神橋4-6-39
代表者代表取締役社長 播島 聡
会館数株式会社公益社:65(東京都・神奈川県・千葉県・大阪府・奈良県・兵庫県)
株式会社葬仙 :14(鳥取県・島根県)
株式会社タルイ:12(兵庫県)
上場市場東京証券取引所プライム市場
公式ホームページhttps://www.san-hd.co.jp/index.html

株式会社きずなホールディングス概要

きずなHD
社名株式会社きずなホールディングス
設立2017年6月
本社所在地東京都港区浜松町2丁目2-12 JEI浜松町ビル2階
代表者代表取締役社長 兼 グループCEO 中道 康彰
会館数株式会社 家族葬のファミーユ:127(北海道・千葉県・神奈川県・埼玉県・愛知県・熊本県・宮崎県)
株式会社 花駒:12(京都府・奈良件・大阪府)
株式会社 備前屋:11(岡山県)
上場市場東京証券取引所グロース市場
公式ホームページhttps://www.kizuna-hd.co.jp/

公開買付けの目的

燦HDでは今回の公開買付けの主な目的として「家族葬等の小規模葬儀の成長」および「出店地域の補完作用」をあげています。

大手葬儀社の公益社などを傘下に持つ燦HDでは、これまで一般葬や社葬を中心に事業を展開してきましたが、2023年3月以降、少人数での家族葬に特化した葬儀ブランド「ENDING HAUS.」の全国展開に注力しており、すでに13会館(2024年6月26日現在)を開業しています。

一方きずなHDでは、小規模葬儀に特化した家族葬のファミーユを中心に、全国に150会館を展開しています。
燦HDとしては、きずなHDを完全子会社化することで小規模葬儀事業のノウハウを獲得し、「ENDING HAUS.」のさらなる成長が期待できるとしています。

また燦HD・きずなHDの両社では、それぞれ数多く(燦HD:91会館きずなHD:150会館)の葬儀会館を広域で展開しているものの、双方の商圏がほとんど重複していないことから、大幅な地域補完効果にも期待しているとのことです。
今回の買収が無事に成立した場合、燦HDの会館展開は以下のようになることが想定されます。

燦HDきずなHD都道府県別会館展開
                                          *直営会館のみカウント 2024年7月14日時点

きずなHD現代表の中道 康彰氏は留任の見込み

今回の公開買付けが成立した場合、きずなHDの株式は上場廃止となることが予想されますが、きずなグループ(家族葬のファミーユ・花駒・備前屋)自体は子会社として存続され、その経営については現在の代表取締役社長兼グループCEOである中道康彰氏とのあいだで、委任契約が締結されるとのことです。

燦HD・きずなHD双方から出された、今回の公開買付けに関するリリースによれば、交渉は2024年2月1日より開始されたようですが、合意に至るまでの過程で中道氏との経営委任契約締結が前提条件とされたようです。
この経営委任契約には、有効期限や禁止事項をはじめ、さまざまな内容が盛り込まれているものの、報酬については現在と同一水準とされています。

まとめ

本記事では、2024年7月12日に発表された、燦HDによるきずなHDの株式公開買い付けについて紹介しました。
近年の葬儀業界では、東京博善を傘下に持つ広済堂HDと燦HDによる合弁企業「グランセレモ東京」の設立や、ティアによる八光殿(大阪府)・東海典礼(愛知県)の買収など、上場企業の動きが活発化しています。

また大手冠婚葬祭互助会では、以前よりM&Aによる営業エリア拡大を積極的におこなっていましたが、近年では葬儀保険(少額短期保険)の普及に力を注いでいるようです。
上場企業や大手互助会の動向は、地域密着型の中小葬儀社様にも、少なからず影響する可能性が高いでしょう。

葬研では、今後も葬儀業界における多種多様なニュースを収集し、広く情報を発信していきます。

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