葬儀業界における個人情報保護を啓発する業界団体|日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)について解説

JFIMA

葬儀という厳粛な儀式を取り扱う葬儀社では、その業務の特性上、故人様および喪主様・ご遺族様の個人情報の中でも、非常にパーソナルな部分に触れる機会が多くなります。
万が一お客様の個人情報が、葬儀社の不適切な管理により漏洩(ろうえい)した場合、お客様(喪主様・ご遺族様)が受ける精神的苦痛の深さは計り知れません。

こうしたトラブルが発生した場合、当該葬儀社はもちろんのこと、葬儀業界全体の信頼性にも悪影響を及ぼしかねません。
しかし残念ながら、小規模事業者が多くを占める葬儀業界では、情報セキュリティーに対する認識が不足している企業も散見されます。

そこで本記事では、葬儀業界における個人情報保護を目的とした業界団体「一般社団法人日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)」を紹介します。

目次

一般社団法人日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)の概要

JFIMA
出典:一般社団法人日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)

かつての葬儀では、近隣住民が喪家をサポートすることも多かったため、ご遺族様の氏名や住所・家族構成といった個人情報を保護するといった意識も希薄だったようです。
しかし時代の移り変わりとともに、プライバシー保護の機運が高まりをみせ、個人情報保護法が施行されるにいたりました。

当然ながら、葬儀業界でも情報セキュリティへの意識向上が不可欠となりましたが、長く続いた慣習の変更はなかなか進まなかったようです。
こうした状況の中、葬祭関連事業者に適切な個人情報の管理を促すとともに、消費者に対し、個人情報の保護の意識を啓発することを目的として、一般社団法人日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)は設立されました。

【団体名称】 一般社団法人日本葬祭情報管理協議会
【所在地】 〒102-0084 東京都千代田区二番町9-3 THE BASE
【代表理事】 安井潤一郎
【公式HP】https://jfima.jp/

個人情報保護法とは?

個人情報

日本では、個人情報を取り扱ううえでの共通のルールとして「個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)」が制定されています。
葬儀社における情報セキュリティ教育を考えるうえで、個人情報保護法の理解は不可欠な要素となります。

個人情報保護法の概要

個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)」は、個人情報の有用性に配慮しながら、個人の権利や利益を守ることを目的とした法律です。
国や地方自治体のほか、個人情報を扱う全ての事業者や組織が守るべき法律であり、平成15年(2003年)5月に制定され、平成17年(2005年)4月に全面施行されました。

なお、個人情報保護法は定期的に検討がされており、これまでにも大きな改正が3回行われています。

個人情報保護法における個人情報該当事項

個人情報保護法における個人情報とは、特定の個人を識別できる情報です。氏名、生年月日、住所、電話番号、顔写真などが該当します。
個別の情報では識別ができない場合でも、他の情報と組み合わせることで特定の個人を識別できる場合は、個人情報として扱われます。
そのほか、「個人識別符号(顔認証データ、声紋、マイナンバー、運転免許証番号など)」も個人情報に該当します。

また、その情報が漏洩することで、本人が不当な差別や偏見などの不利益を被る可能性がある「要配慮個人情報」情報には、特に注意が必要です。
人種、社会的身分、病歴、前科、犯罪被害などの本人に偏見や不利益が起こる可能性がある情報が該当します。

なお、個人情報保護法で保護の対象になるのは、生存する個人の情報です。つまり、故人様に関する情報は保護の対象となりません。
ただし、故人様に関する情報であっても生存する喪主様、ご遺族様などに関連する情報である場合は、喪主様、ご遺族様の個人情報です。
自治体によっては、個人情報保護条例を制定し、故人様の情報であっても個人情報保護の対象であることを明記しています。

葬儀業界における個人情報管理の重要性

セキュリティ

葬儀業界では、その業務の特性から多くの個人情報を取り扱います。たとえば、地域の慣習として、葬儀に関する問い合わせがあった場合には、それに応じて、葬儀の詳細をお伝えしてきたこともあったかもしれません。
しかし、どこまで葬儀の情報をお伝えすべきかは、それぞれのお客様(喪主様・ご遺族様)の考えにより異なります。

かつては、故人様、喪主様、ご遺族様の関係者ばかりでなく、仏壇、墓石、返礼品などを取り扱う業者が営業目的で情報を入手したということもあったようです。
精神的に落ち込んでいるときに無神経な営業をされ、不快な思いや不安を感じたご遺族様がいたという話も耳にします。

日本葬祭情報管理協議会では、「個人情報保護法」を踏まえて、葬祭関連企業・団体のプライバシー・ポリシーの確立と普及を推進しています。

管理すべき葬祭情報

葬儀

日本葬祭情報管理協議会における葬祭情報とは、葬儀を請け負い、実施する際に葬祭関連企業が葬家から知り得たすべての情報です。施行の準備のために聞き取った葬家や喪主様、故人様それぞれに関する情報も含まれます。

一般社団法人日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)では、葬祭情報の具体例として以下のような事柄を挙げています。

・死亡届:故人の氏名・本籍・現住所・生年月日・配偶者の有無・届け人の氏名・住所・本籍・続柄・生年月日・連絡先電話番号等々
・死亡診断書:死亡年月日・直接の死因・間接の死因・病歴・死亡場所・検死所見等々(これらは併せて1枚の書類になっています。)

次には、葬儀施行のための打ち合わせにおいて知ることができるものとして、

喪主との続柄・世帯構成・構成家族の職業・世帯環境(地域社会とのかかわりや会社での地位など…多々)・親族間の相関や遺言・相続にかかわる状況

場合によっては死亡保険金の額など家計状況、暮しむきといったような、通常は個人や世帯が秘密にしておきたい事項などがあげられます。

出典:一般社団法人日本葬祭情報管理協議会 「葬祭情報とは? お葬式とプライバシー」

一般社団法人日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)は、葬儀という状況を鑑みて、お客様(喪主様・ご遺族様)が個人情報を事前対処することが難しく、また精神的な面からも突発的に流出・拡散してしまう危険を抱えていることを指摘しています。
故人様やお客様(喪主様・ご遺族様)にとって、外部に知らせるべき情報がある一方で、公開されたくない情報もあります。それぞれの基準が異なるため、画一的な線引きができないのです。

こうした事情から、葬儀業界における情報管理は、一般的なプライバシー情報保護の基準を当てはめるのではなく、より高いレベルでの情報管理システム構築が必要になります。

一般社団法人日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)の取り組み

安心

葬儀業界において、個人情報の管理体制を構築することは非常に重要といえるでしょう。
消費者であるお客様(喪主様・ご遺族様)は、適切な情報管理が行われている葬儀社様を選択することが個人情報を守ることにもつながります。

情報管理体制が適切であるか判断するには基準が必要です。また、当該企業だけでなく、取引先など関連する企業でも情報管理が大切になります。
それらを踏まえ、一般社団法人日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)は、2つの活動を行っています。

  • PIP認証
  • オンブズマン活動

PIP認証制度

PIP(プライベート・インフォメーション・プロテクト)認証制度」は、一般社団法人日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)が提唱する制度で、葬儀社を中心とした葬祭関連事業者を対象にしています。

認証されるには、故人様や葬家様の個人情報が拡散することを防止するための法的、社会的知識を習得するとともに社内の管理システムの構築が必要です。
管理状況の監査と機能評価により、一定の水準に達した葬祭関連企業を「個人および故人の情報を守ることができる信用のできる葬祭企業である」と認定、第三者機関として一般社団法人日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)がPIP認証します。

PIP 認証されるまで

PIP 認証は、「葬祭情報管理責任者」の育成と資格認定制度を中心に構成されています。

  1. 認定講習(動画)を受講
  2. 審査に必要な準備リストを受け取る
  3.  必要に応じて改善や準備の実施
  4. 訪問調査・審査を行う
  5. 要改善箇所を改善し、事務局に報告
  6. 調査・審査により、適格となれば「葬祭情報管理適格事業所」として認定
  7. 「PIP 認証」の交付

認証を得ると一般社団法人日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)のホームページ上に「葬祭情報管理適格事業所」として掲載されるほか、チラシなどに認証マークの利用が可能となります。 

なお、「葬祭情報管理責任者」として現場指導権限のある部長職以上の方の登録が必要です。 認定事業所は、葬祭情報管理責任者が指導可能な範囲となります。
原則として複数の都道府県に事業所がある場合には、都道府県ごとの葬祭情報管理責任者の登録と審査・認定が必要です。

認定期間は2年。更新には、審査認定料と年会費が必要です。

PIP 認証取得のメリット

PIP 認証を得ることで、葬儀社様にとっては以下のようなメリットが考えられます。

  • お客様に「安心して相談できる葬儀社」であることの認識を促す。
  • 過去の利用者様が他者に葬儀社を紹介する際、PIP認証を取得していることで安心して紹介できる。
  • 葬儀社様のホームページに表示することで資料請求の際、個人情報に関する不安を軽減する。コンバージョン率(アクセスしたユーザーのうち、成果に至った割合)のアップにつながる。
  • 事前相談のために訪れたお客様に、PIP認証を明示することで安心感を促す。
  • 終活フェアなどでお客様に個人情報保護に力を入れていることをアピールすることで、信頼感を増し、当該葬儀社様に依頼する必然性を高める。
  • 雑誌や書籍などでも葬儀社を選択する基準のひとつとしてPIP認証が紹介されているため、信頼度が高まる。

PIP認証取得団体一覧

会社名所在地
後藤建設株式会社 コンフォートガーデン〒379-2301 群馬県太田市藪塚町1802
株式会社杉田フューネス〒156-0057 東京都世田谷区上北沢4-33-3
株式会社ライフクリーン〒169-0075 東京都新宿区高田馬場3-33-5  大野ビル102
日本葬祭アカデミー教務研究室〒102-0081 東京都千代田区四番町6-3-311
ダビアス富山 / 株式会社富山式典〒939-8261 富山県富山市萩原519-3
株式会社 金華堂〒416-0909 静岡県富士市松岡531-5
合資会社ときかわ〒411-0858 三島市中央町3-24
株式会社 吉田葬祭〒892-0805 鹿児島県鹿児島市大竜町10-2

葬祭オンブズマン

市民

PIP認証を推進する一方で、一般社団法人日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)では、一般消費者の協力を得て、PIP認証の評価を行う葬儀のオンブズマン的な活動を展開することを目指しています。
一般消費者がPIP認証と同じ講義内容を受講することで「葬祭オンブズマン」として、登録が可能です。

登録後は、「葬祭情報管理審査の市民オンブズマン」として、葬儀社訪問や啓発イベント・セミナーなどへ優先的に参加できるようになります。

一般社団法人日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)役員

役職氏名
代表理事安井 潤一郎
理事小野 次郎
理事熊田 篤嗣
理事友田 敬而
監事荻野 健二

まとめ

本記事では、一般社団法人日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)について紹介しました。

つらい思いを抱えている時期は、お客様(喪主様・ご遺族様)が無防備になりがちです。大切な個人情報を託す相手が信頼できる葬儀社様であることは、非常に重要といえるでしょう。
第三者機関である一般社団法人日本葬祭情報管理協議会(JFIMA)からPIP認証を受け、なおかつオンブズマン活動により、監視・検証をされている葬儀社様であれば、消費者に安心感を与えられる可能性も高まります。
一目でわかるPIP認証は、お客様(喪主様・ご遺族様)葬儀社を選ぶ際に、判断の一助になりそうです。

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