株式会社 メイプルシティ~愛グループ~┃イタリアンレストランの業績・利益をまとめて分析

メイプルシティの業績利益を徹底分析

葬儀社の業績・利益を調べる場合、帝国データバンク(TDB)か、商工リサーチ(TSR)、はたまた日経テレコンで調べるのが一般的ですが、いずれも有料です。
ちょっと知りたい、ざっくり今すぐ把握したい、葬儀社の業績・利益の比較をしてみたい、そんな方に向けてまとめました。

今回は株式会社 メイプルシティの現状について、貸借対照表をもとに分析いたします。
上場企業の決算資料ほど詳細ではありませんが、事業の大まかな状況はつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

株式会社メイプルシティの概要

典礼会館名義で葬儀事業を営む愛グループは、1972年6月に設立された「下関市冠婚葬祭互助会」からスタートしました。
その後、積極的なM&Aにより営業エリアを拡大し、現在では以下の12社で構成されるグループ企業となっており、決算公告は各社で別々に出されています。

■愛グループ

  1. 株式会社 日本セレモニー(広島)
  2. 株式会社 日本セレモニー(長崎)
  3. 株式会社 日本セレモニー(山口県)
  4. 株式会社 へいあん秋田
  5. 株式会社 サンファミリー
  6. 株式会社 へいあんファミリー
  7. 株式会社 愛グループホールディングス
  8. 株式会社 メイプルシティ←今回分析を行うのはココ
  9. 株式会社 防長互助センター
  10. 株式会社 合掌堂
  11. 株式会社 トレーダー 愛
  12. 株式会社 せいぜん

上記グループ会社のうち、株式会社 メイプルシティ(イタリアンレストラン事業)と、株式会社 トレーダー愛(料理や生花など冠婚葬祭事業の付帯業務に関わる仕入・製造及び商品開発)は、直接的に冠婚葬祭事業を行っていないようです。
しかし愛グループの組織図は公開されていないため、グループ各社が関与する業務の範囲は明確ではありません。

「株式会社 メイプルシティ」は2018年12月に、M&Aにより愛グループの傘下に入りました。
広島県大竹市に本社を置き、主に「Zona ITALIA」名義で13店舗のイタリアンレストランを運営する、飲食店経営専門企業です。

メイプルシティが運営しているイタリアンレストランは以下の通りです。

  • オーソレミオ
  • シシリー
  • Sakanaya
  • Zona ITALIA
  • Zona ITALIA 徳山店(山口県周南市)
  • KAIZOKU
  • Zona Bel Pizza
  • Zona ITALIA in・Centro
  • Zona ITALIA OSOUZAI
  • Zona ITALIA SHIMONOSEKI
  • Zona ITALIA FUKUYAMA
  • Zona ITALIA HACHIGAMINE
  • Zona ITALIA OKAYAMA

愛グループの傘下に入って以降は、広島県だけでなく岡山県や山口県も含めた中国地方全域において、積極的に出店しています。(Zona ITALIA 徳山店は、M&A以前から山口県周南市で営業しています)

葬儀社の決算公告とは

決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。

公告の方法は全部で3つあります。

  • 官報に掲載
  • 日刊新聞紙に掲載
  • 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)

決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせております。

なぜ葬儀社は決算公告をおこなうのか?

大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。

冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。

一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。

出典:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会ホームページより
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会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。

  • 法務局に供託する
  • 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
  • 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ

上記のいずれかの方法を選択する必要があります。

また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。

経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧

上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。

メイプルシティの貸借対照表 

メイプルシティ貸借対照表-min

貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10%を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。

自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。

自己資本比率は中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。

逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。

のれん:その会社が持つ技術やブランドで、目には見えない価値の高い資産のこと

貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致します。
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、
貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともあります。

メイプルシティの自己資本比率は46.86%

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」の計算式で算出可能です。
メイプルシティの自己資本比率を求める式は下記のようになります。

2億0千9百万円÷4億4千6百万円×100=46.86
メイプルシティの2023年1月期における自己資本比率は、46.86%(前年同期比0.12%増)となっています。

メイプルシティの資産と負債について

自己資本比率の次に確認したいのは、資産と負債の額になります。
貸借対照表でいうところの資産は左側に、負債は右側上段に記載があります。

この赤い円の箇所を確認することで、その会社の資産と借金の額を確認できます。

資産合計の推移

貸借対照表の左側に記載されており、「会社の所有する資産」を表します。
資産は下記の3つに構成されています。

・流動資産 = 1年以内に現金化もしくは費用化できる資産
例) 現金、有価証券、商品、製品など

・固定資産 = 長期にわたって会社が保有するものや1年を超えて現金もしくは費用となる資産で有形固定資産や無形固定資産がある。
例)・有形固定資産:建物、土地、車など
  ・無形固定資産:ソフトウェアなど

繰延(くりのべ)資産 = 会社設立にかかった費用や社債発行にかかった費用を一括して費用として計上せずに資産として計上し期間内(数年など)に分けて償却するものとなります。
例) 創立費、開業費、開発費など

メイプルシティの資産合計の推移は以下のようになっています。

メイプルシティ_資産合計

メイプルシティの2023年1月期における資産合計は4億4千6百万円(前年同期比14.56%減)となっています。

2019年末に発生した新型コロナの影響により、全国各地の飲食店は時短営業や休業を余儀なくされました。
繰り返し発出される行動制限規制のため、メイプルシティが運営するイタリアンレストラン各店舗もたびたび休業に追い込まれていたようです。

こうした事情から、当然ながら売上高は大きく減少したことが想定され、資産合計の減少要因になったものと思われます。

負債合計の推移

貸借対照表の右側上段に記載されており、「返す必要のある他人からの借金」を表します。
負債は下記の2つで構成されています。

流動負債 = 1年以内に支払い期日を迎える負債となります。
例) 家賃、従業員の給与や賞与、買掛金(サービスや商品の金額を後払いするもの)など

固定負債 = 1年以内に支払い期日を迎えない負債となりますので、流動負債以外の負債は固定負債になるということです。
例) 従業員の退職金、社債、長期借入金など

メイプルシティの負債合計の推移は以下のようになっています。

メイプルシティ_負債合計

メイプルシティの2023年1月期における負債合計は2億3千7百万円(前年同期比14.75%減)となっています。
4期連続での減少となり、自己資本比率も年々向上しているようです。

メイプルシティの純資産について

自己資本比率、資産合計、そして負債合計をみてきましたが、最後に確認したいのは「純資産」となります。
純資産は貸借対照表でいうところの右側下段に記載があります。

純資産は資産(現金、土地、建物など)から負債(借金)を差し引いたものです。

この赤い丸の箇所を確認することでその会社の純資産を確認できます。

メイプルシティの純資産合計、当期純利益、利益剰余金の推移はそれぞれ以下のようになっています。(各用語についても分かりやすく解説しています)

純資産合計の推移

会社の所有する現金や建物などの資産から負債(借金)を差し引いたものとなります。
純資産の割合が高ければ財務健全性が高いと考えます。一方で、純資産がマイナスの状態を債務超過といい、2期連続で債務超過の状態が続いた場合、東証上場の廃止基準に抵触することがあります。

メイプルシティ_純資産合計

メイプルシティの2023年1月期における純資産合計は、2億0千9百万円(前年同期比14.34%減)となっています。

2020年から2022年にかけて発出された新型コロナ関連の行動制限や営業自粛要請により、多くの飲食店が廃業に追い込まれる中、メイプルシティは純資産合計を大きく減少させることなくプラスを維持しています。

当期純利益の推移

会社が1年間で得た全収益から法人税や住民税そして費用を差し引いたものが当期純利益となります。
この当期純利益がマイナスとなると当期純損失となります。

当期純利益の額をみることで、その会社の収益性がどのくらいなのか判断できる指標になります。

メイプルシティ当期純利益-min

メイプルシティでは、2023年1月期において3千5百万円の当期純損失が発生しています。
新型コロナの影響が最も大きかったと思われる2021年1月期に比べると、マイナス幅は圧縮されていますが、回復に時間がかかっているのかもしれません。

利益剰余金の推移

利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
内部留保は恐らく聞き馴染みのある単語だと思います。利益剰余金は貸借対照表で言うところの純資産の部に記載があります。

内部留保(利益剰余金)が多くあればあるほど、金融危機などの影響で経営が赤字になった際に従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため企業が生き残るための重要な資金源となります。

メイプルシティの場合は以下のように推移しております。

メイプルシティ_利益剰余金

メイプルシティの2023年1月期における利益剰余金は、1億9千9百万円(前年同期比14.96%減)となっています。
前述したとおり、利益剰余金は不測の事態に備えるための資金ですが、今回のコロナ禍はまさに不測の事態といえますので、メイプルシティでは利益剰余金がしっかりと役目を果たしているといえるでしょう。

利益剰余金は営業利益が発生すれば増加しますが、葬祭業界にくらべ飲食業界の回復は遅れているようですので、営業利益の確保にはもう少し時間が必要かもしれません。

メイプルシティのまとめ

今回は株式会社 メイプルシティの決算公告を参考に、現状分析を行いました。
冠婚葬祭互助会事業を中核とする愛グループにあって、飲食店経営を専門に扱うメイプルシティの業績は葬祭事業と推移が異なるようです。
しかし新型コロナの影響により深刻な被害を受けた飲食業界にあって、メイプルシティでは損失を最小限に抑えられている印象を受けました。

2021年末に緊急事態宣言が解除されて以降、葬祭業界の業績は比較的早い段階で回復に向かっているようですが、飲食業界では今少し時間が必要とされています。
愛グループにおけるメイプルシティの役割は明確ではありませんが、冠婚葬祭部門の付帯業務内製化には多少なりとも関係していると思われますので、飲食事業単体の企業とは状況が異なるのかもしれません。

2023年5月には新型コロナも5類相当に移行し、葬儀業界も全般的に回復傾向にあるといわれていますので、今後のメイプルシティの決算公告にも引き続き注目していきたいと思います。

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