【上場企業】株式会社 広済堂ホールディングス┃火葬業・葬祭業企業の売上・業績・利益をまとめて分析

広済堂

葬祭サービスを提供する企業は、日本全国に7,000社以上存在するといわれていますが、株式を公開している上場企業は7社(2024年7月29日現在)のみです。
潤沢な資金を保有する大手冠婚葬祭互助会や、全国的に事業を展開するような大手葬儀社であっても、そのほとんどは「非上場企業」のため、詳しい内部事情についての情報は開示されていません。

しかし上場企業では、株主や投資家に対して投資判断に資する情報を提供するために、業績や財務状況に関する詳細な情報を開示する義務を負っています。
インターネットが普及した現在では、上場企業の情報開示も自社ホームページ上でおこなわれているため、基本的には誰でも閲覧可能です。

上場葬儀社の決算資料には、葬儀業界に身を置く方にとって有益な情報が多数掲載されているため、できればすべて目を通しておきたいところです。
とはいえ葬儀の現場に立たれている方の多くは、日々の業務に邁進されているため、なかなか時間を取るのが難しいのが現状でしょう。

そこで本記事では、葬儀業界における上場企業のうちの1社「 株式会社 広済堂ホールディングス」の業績や財務状況について、決算資料を参考に詳しく解説いたします。

⁂同社では2024年3月期における会計処理に不備があったとして、決算短信ならびに有価証券報告書の訂正をおこないました。
株式会社広済堂ホールディングス『過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び過年度の 決算短信の訂正に関するお知らせ』
この訂正にともない、本記事記載の貸借対照表・損益計算書・グラフの各データも修正をおこなっております。

目次

上場企業の決算とは

株式の上場には、資金調達が容易になる、社会的信頼性や知名度が向上するなどのメリットがある反面、業績や財務状況などの内部情報について詳細に開示する義務が生じるなど、デメリットも少なくありません。
上場企業と非上場企業の決算に関する主な違いについて、以下にまとめました。

項目上場企業非上場企業
情報開示厳格な情報開示義務あり比較的緩やかな情報開示
決算発表四半期ごとに決算発表年1回または年2回の決算発表
監査会計監査人(公認会計士・監査法人)による監査が義務付けられている会計監査人の監査が不要なケースも多い
会社法上の大会社(資本額が5億円以上または期末の負債額が200億円以上の株式会社)は、会計監査人による監査が義務付けられている

非上場企業の場合、決算資料として貸借対照表(資本額が5億円以上または期末の負債額が200億円以上の大会社は、貸借対照表および損益計算書)を、定時株主総会(毎事業年度の終了後)の終結後遅滞なく公告するよう会社法で定められています。

しかし上場企業では毎事業年度の終了後だけでなく、四半期(3か月)ごとに決算をおこない、その結果を発表する必要があるため、主に以下の決算資料を開示します。

  • 有価証券報告書(年1回:事業年度終了後3カ月以内)
  • 半期報告書(年1回:半期経過後45 日以内)
  • 決算短信(年4回:四半期決算後45日以内)

以前は上記のほかに「四半期報告書(年4回:四半期決算後45日以内)」の提出も義務付けられていましたが、2024年4月から廃止となりました。

有価証券報告書(ゆうかしょうけんほうこくしょ)とは

有価証券報告書(ゆうかしょうけんほうこくしょ)は、上場企業が投資家や株主に対して、企業の経営状況や財務情報を詳しく報告するための書類で、すべての上場企業に提出が義務付けられています。
有価証券報告書は、投資家に対して企業の現状と将来の見通しを、透明かつ正確に伝えることを目的に開示されます。

有価証券報告書には、主に以下のような情報が記載されます。

情報の種類具体的な内容
企業情報企業の概要、沿革、事業内容、主要な製品やサービスについての説明
経営方針・戦略経営陣のビジョンや中長期的な経営戦略、事業計画など
財務情報損益計算・貸借対照表・キャッシュフロー計算書などの財務諸表など
経営成績直近の業績や過去数年間の業績推移、セグメント別の業績など
リスク情報経営に影響を与える可能性のあるリスク要因についての説明、および対応策
役員報酬取締役や監査役の報酬に関する情報

決算短信(けっさんたんしん)とは

決算短信(けっさんたんしん)は、上場企業が四半期ごとに業績を迅速に報告するための書類です。
決算短信は、株主や投資家などに対して企業の最新の業績情報をタイムリーに提供し、適切な投資判断を支援することを目的に開示されます。

決算短信は速報性が重視されるため、通常は有価証券報告書にくらべ、簡潔かつ要約された形式で提供されます。
決算短信には、主に以下のような情報が記載されます。

  1. 経営成績の概要:売上高、営業利益、経常利益、当期純利益などの主要な財務指標が記載されます。これにより、企業の業績の概要を迅速に把握することができます。
  2. セグメント情報:企業の主要な事業部門ごとの業績が報告されます。これにより、どの部門が収益を上げているか、または損失を出しているかを確認できます。
  3. 財務状況の概要:貸借対照表の主要な項目(資産、負債、純資産)やキャッシュフローの状況が簡潔に示されます。
  4. 業績予想:企業が将来の業績見通しを示す場合もあります。これは、投資家が企業の将来性を  評価する際の重要な参考情報となります。

四半期報告書の廃止について

2023年11月20日に成立した金融商品取引法等の一部を改正する法律により、これまで上場企業に提出が義務付けられていた「四半期報告書」が廃止されました。
この改正は、企業の報告負担の軽減と経営の柔軟性向上を目的としています。

四半期報告書は、上場企業が3か月ごとに業績を報告するための書類ですが、四半期決算短信(以下「決算短信」)と内容も類似していることにくわえ、作成時期も重なっていることから、企業における業務負担の大きさが課題となっていました。
また、短期的な業績に焦点が当たりすぎることで、長期的な経営戦略の妨げになるという批判もありました。

そこで今回の法改正では、3か月ごとの情報開示を決算短信に1本化するとともに、これまでの四半期報告書にくらべて閲覧期間が長く(3年から5年に延長)設定された「半期報告書」の提出が新たに義務付けることで、上記のような課題の解消が図られています。

株式会社 広済堂ホールディングスの概要

株式会社 広済堂ホールディングスは、東京都港区に本社を構え「エンディング関連事業」「情報ソリューション事業」「人材サービス事業」の3分野において事業を展開しています。
「人生100年をもっと豊かに」を企業理念とし、社名は広く社会に貢献するという意味の「広済(KOSAi)」と、常識にとらわれず積極的に新たなことに取り組むという、進取の精神「iDO」から名づけられました。

広済堂ホールディングスの沿革

株式会社 広済堂ホールディングスは、1949年(昭和24年)「櫻井謄写堂」を創業したことから始まります。
廣済堂印刷 株式会社が、株式会社 関西廣済堂と合併して株式会社 廣済堂に社名変更し、2021年に現在の『株式会社  広済堂ホールディングス』となっています。

広済堂ホールディングスの主な沿革は次のとおりです。

1949年(昭和24年)
「櫻井謄写堂」を創業
1962年(昭和37年)
株式会社 関西櫻井廣済堂を設立
1972年(昭和47年)
社名を廣済堂印刷株式会社に変更
1975年(昭和50年)
社名を株式会社 関西廣済堂に変更
1981年(昭和56年)
社名を株式会社 廣済堂に変更
1997年(平成9年)
東京証券取引所市場 第二部に株式を上場
1999年(平成11年)
1997年の東京証券取引所市場第二部に続き、大阪証券取引所市場第二部に株式を上場
2000年(平成12年)
東京・大阪証券取引所市場第一部に株式を上場
2006年(平成18年)
威海廣済堂北越包装有限公司(現 威海廣済堂包装有限公司)設立
2012年(平成24年)
株式会社廣済堂ビジネスサポート 設立
2013年(平成25年)
KOSAIDO HR VIETNAM CO., LTD. 設立・株式会社金羊社 持分法適用会社になる
2020年(令和2年)
新中期経営計画(2020-2022年度)「廣済堂 大改造計画2020」発表
株式会社KOSAIDO Innovation Lab 設立
2021年(令和3年)
株式会社広済堂ネクスト設立
株式会社広済堂HRソリューションズ設立
10月1日 持株会社体制への移行に伴い、株式会社広済堂ホールディングスに社名変更
2022年(令和4年)
株式会社広済堂ライフウェル 葬儀事業開始
株式会社グランセレモ東京 設立
中期経営計画(2022-2024年度)「中期経営計画2.0」発表
2023年(令和5年)
東京博善あんしんサポート株式会社 事業開始
中期経営計画(2023-2025年度)「中期経営計画3.0」発表
2024年(令和6年)
中期経営計画(2023‐2026年度)「中期経営計画4.0」発表

出典:株式会社 広済堂ホールディングス 沿革

広済堂ホールディングスの事業展開

広済堂ホールディングスは、22社のグループ企業で構成されていますが、そのうちの主な企業は以下の表のとおりです。

株式会社 広済堂ホールディングス事業名事業内容グループ企業名
エンディング関連事業火葬場運営・式場提供東京博善 株式会社
葬儀のプランニング・運営株式会社 広済堂ライフウェル
葬儀のプランニング・運営株式会社 グランセレモ東京
相続に関する相談東京博善あんしんサポート 株式会社
情報ソリューション事業情報ソリューション株式会社 広済堂ネクスト
パッケージ印刷威海廣済堂包装 有限公司
IT/デジタルソリューションx-climb株式会社
人材サービス事業媒体・HR Tech・人材紹介(国内・海外)・環境情報誌・ラック取次株式会社 広済堂ビジネスサポート
人材派遣・人材紹介・業務請負株式会社 キャリアステーション
人材派遣・人材紹介株式会社 ファインズ
人材サービスKOSAIDO HR VIETNAM CO.,LTD.
出典:株式会社 広済堂ホールディングス グループ企業

このほかの関連企業は以下のとおりです。

  • 株式会社 広済堂エンジニアリング:火葬炉プラントの維持管理
  • 株式会社 広済堂ファイナンス:資産コンサルティング
  • H.A.Deve Lopment2:資産コンサルティング
  • 株式会社 共同システムサービス:人材サービス(2024年に株式会社 キャリアステーションに吸収合併)
  • 株式会社 エヌティ:人材サービス(2024年に株式会社 キャリアステーションに吸収合併)
  • 株式会社 広済堂ハウスキーピングサービス:人材サービス
  • KOSAIDO HR VIETNAM CO.,LTD.:人材サービス

その他、非連結子会社で、持分法非適用会社が6社あります。

東京博善は東京都23区において、6か所の火葬場を運営しています。
東京23区でおこなわれる火葬の約70%を取り扱っており、それぞれの火葬場に併設された葬儀場では「東京博善のお葬式」名義で葬儀サービスが提供されています。

東京博善が運営する葬儀場併設の火葬場は、以下のとおりです。

東京博善では2023年4月より9月までに斎場を改修し、式場の大幅な増設を図り順調に稼働拡大しています。

株式会社 広済堂ライフウェルは、東京博善が運営する葬儀場併設の火葬場で、葬儀サービスを提供しています。
広済堂ホールディングスは、2020年に中期経営計画「廣済堂 大改造計画 2020」を発表しました。
その実現に向け、経営強化のために設立された事業開発子会社である、株式会社KOSAIDO Innovation Lab(KOIL)の業務を継承し、2021年6月に広済堂ライフウェルが設立されました。

また広済堂ライフウェルは、2023年に株式会社 ニチリョクが扱う、赤坂一ツ木陵苑(東京都港区)の自動搬送式納骨堂のセット販売実施を発表しています。
広済堂ライフウェルの葬儀をおこなう顧客をニチリョクに紹介して、赤坂一ツ木陵苑で納骨を希望する方に葬儀と納骨堂を、それぞれ割引価格で販売するものです。
これにより収益増加が見込まれるのと同時に、両社における今後の取引関係が築けるものと思われます。

株式会社 グランセレモ東京は、2022年4月に大手葬儀社「公益社」の持株会社である上場企業「燦ホールディングス」と広済堂ホールディングスの合弁会社として設立されました。
主に東京博善が運営する葬儀場併設の火葬場において、葬儀サービスを提供しています。

東京博善安心サポート株式会社は、資産コンサルティング事業をおこなう企業で、2022年に設立されました。
専属の相続専門税理士が斎場利用者を対象に、相続関連の手続きサポートを提供しています。

このほか株式会社 広済堂ネクストは、クラウドサービス「斎場予約システム」を開発し、千葉県野田市の野田市斎場・野田市関宿斎場に導入し、2023年4月より稼働開始しました。
火葬場の予約の際に、オンラインでの予約ができるうえに空き状況の確認も可能で、斎場スタッフも予約の管理がしやすくなり、人為的ミスが防止できます。
今後もシステムの機能を改善し、地方自治体の斎場での導入を目指すとしています。

広済堂ホールディングスの吸収合併と業務提携

広済堂ホールディングスは、これまで多くの企業と吸収合併や業務提携を繰り返して現在に至っています。
創業以来、印刷事業を継続するとともに、1994年に東京博善の株式を取得して子会社とし、2020年には東京博善の株式併合により完全子会社としました。

近年の主な吸収合併と業務提携は以下のとおりです。

1994年(平成6年)
東京博善の株式を取得し、子会社とする
1999年(平成11年)
廣済堂印刷株式会社と、株式会社 関西廣済堂が合併し、社名を株式会社 廣済堂に変更
2002年(平成14年)
廣済堂新聞印刷株式会社を合併
2008年(平成20年)
札幌廣済堂印刷株式会社・株式会社 廣済堂製版センターを合併
2017年(平成29年)
株式会社 廣済堂ビジネスサポートが、株式会社 テイクワンを吸収合併
2019年(令和1年)
株式会社 廣済堂を、ラオックスホールディングス 株式会社代表取締役の羅 怡文(ら いぶん)氏が買収
2020年(令和2年)
東京博善の株式合併により、完全子会社とする
2022年(令和2年)
エンディング産業展がTSO International 株式会社から、東京博善に事業譲渡される
2022年(令和4年)
燦ホールディングスとの合弁会社、株式会社 グランセレモ東京を設立
2024年(令和6年)
SBIホールディングスとの業務提携・資本提携をおこなう
株式会社 キャリアステーションに株式会社 共同システムサービスおよび株式会社 エヌティを吸収合併

出典:株式会社 広済堂ホールディングス 沿革

2019年には、株式会社 廣済堂(現 広済堂ホールディングス)の買収騒動が勃発しました。
村上ファンドと麻生グループによるTBO(株式公開買い付け)合戦に発展しましたが、最終的には家電量販店のラオックス株式会社 社長の羅 怡文氏が筆頭株主となっています。

2024年には、広済堂ホールディングスと証券・銀行・保険を中核事業とするSBIホールディングスとの資産コンサルティング事業における、資本業務提携がおこなわれました。
将来的には「東京博善あんしんサポート 株式会社」から「SBI東京あんしんサポート 株式会社」に商号変更がおこなわれるとみられ、現在協議中です。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

商号株式会社 広済堂ホールディングス
所在地東京都港区芝浦1-2-3 シーバンスS館13F
設立年月日1949年 1月
代表者代表取締役会長 羅 怡文
代表取締役社長 前川 雅彦
資本金3億6千3百万円
社員数1,100名(グループ全体 2024年3月末現在)
事業内容・エンディング関連事業
・情報ソリューション事業
・人材サービス事業
上場区分東京証券取引所 プライム市場
公式ホームページhttps://www.kosaido.co.jp/
出典:株式会社 広済堂ホールディングス 会社概要

広済堂ホールディングスの貸借対照表

決算期55期56期57期58期59期60期
会計年度2019年3月期2020年3月期2021年3月期2022年3月期2023年3月期2024年3月期
利益剰余金258億0千7百万円226億5千1百万円233億4千2百万円267億4千2百万円305億6千1百万円336億9千4百万円



流動資産243億4千5百万円348億3千4百万円213億6千4百万円313億5千0百万円279億9千8百万円345億6千9百万円
固定資産526億0千2百万円473億2千6百万円432億1千4百万円423億8千0百万円431億3千4百万円428億4千5百万円
有形固定資産414億9千7百万円385億3千9百万円367億9千4百万円358億2千0百万円358億0千7百万円370億6千0百万円
無形固定資産8億9千1百万円6億9千7百万円6億5千7百万円9億1千6百万円8億8千6百万円7億0千2百万円
投資その他の資産102億1千3百万円80億8千9百万円57億6千1百万円56億4千3百万円64億4千0百万円50億8千1百万円
繰延資産4千8百万円2千9百万円1千4百万円5百万円1百万円0百万円
資産合計769億9千5百万円821億8千9百万円645億9千2百万円737億3千5百万円711億3千3百万円774億1千4百万円



流動負債160億3千2百万円287億6千3百万円131億0千9百万円174億9千2百万円124億4千3百万円145億7千4百万円
役員賞与引当金
賞与引当金
その他
固定負債148億7千5百万円224億2千6百万円198億6千0百万円187億2千3百万円172億5千6百万円158億5千9百万円
退職給付引当金
雑収入復活引当金
役員退職慰労引当金
(うち雑収入復活引当金)
負債の部計309億0千7百万円511億8千9百万円329億6千9百万円362億1千5百万円296億9千9百万円304億3千3百万円




株主資本270億0千7百万円303億9千9百万円310億9千1百万円372億3千9百万円410億6千0百万円460億2千9百万円
資本金10億0千0百万円10億0千0百万円10億0千1百万円24億7千8百万円1億0千0百万円3億6千3百万円
資本剰余金2億0千6百万円67億5千3百万円67億5千4百万円80億2千5百万円104億0千4百万円119億8千5百万円
資本準備金
その他資本余剰金
利益剰余金258億0千7百万円226億5千1百万円233億4千2百万円267億4千2百万円305億6千1百万円336億9千4百万円
利益準備金
特別償却準備金
自己株式-6百万円-6百万円-6百万円-8百万円-6百万円-1千3百万円
新株予約権9百万円1千1百万円8億0千0百万円
その他有価証券評価差額金14億2千8百万円11億7千7百万円9億5千0百万円6億8千1百万円6億7千8百万円3億7千9百万円
土地再評価差額金-11億9千5百万円-6億2千3百万円-4億5千9百万円-4億5千9百万円-4億5千9百万円-4億5千9百万円
為替換算調整勘定-1億0千5百万円-7千2百万円-7千0百万円-4千1百万円-3千1百万円-8百万円
その他の包括利益累計額1億2千7百万円4億8千1百万円4億2千0百万円1億8千0百万円1億8千7百万円-8千8百万円
非支配株主持分189億5千2百万円1億2千0百万円1億1千0百万円9千1百万円1億7千5百万円2億3千9百万円
純資産の部計460億8千6百万円309億9千9百万円316億2千1百万円375億1千7百万円414億3千2百万円469億8千0百万円
負債・純資産合計769億9千3百万円821億8千9百万円645億9千0百万円737億3千4百万円711億3千2百万円774億1千3百万円

貸借対照表は、企業の財政状態をスナップ写真のように捉えたもの。いわば、企業の「健康診断書」です。この診断書を読み解くことで、企業の安定性や成長性、さらにはリスクなどを評価することができます。

貸借対照表は資産・負債・純資産の3つの主要部分に分かれています。

資産は企業が所有するすべての価値あるものを示し、流動資産と固定資産に分類されます。流動資産には現金や売掛金、在庫などが含まれ、短期間で現金化できるものです。
一方、固定資産には土地や建物、機械設備など長期間使用されるものが含まれます。

次に、負債は企業が返済義務を負う全ての債務を示し、流動負債固定負債に分類されます。

  • 流動負債:1年以内に返済義務のある借入金や買掛金
  • 固定負債:1年以上の返済期間がある長期借入金など

最後に資本金・資本剰余金・利益剰余金などで構成される純資産は、資産から負債を差し引いたもので、企業の自己資本と考えられます。

■貸借対照表で重視すべきポイント

自己資本比率企業が自己資金でどれだけ経営しているかを示す指標です。この比率が高いほど、外部からの借入に頼らず、安定した経営を行っていると評価されます。
流動比率短期的な支払能力を示す指標です。手持ちの現金やすぐに現金化できる資産が、短期の借入金をどれだけカバーできるかを示します。流動比率は以下の計算式で算出できます。
「流動比率(%)=流動資産 ÷ 流動負債 × 100​(単位%)」
利益剰余金過去に生み出した利益のうち、配当やその他の用途に回されずに残っているお金です。企業の内部留保を示し、将来の投資や債務返済に利用できる資金源となります。

広済堂ホールディングスの自己資本比率は60.69%

自己資本比率は、一般的に30%以上:安定企業・50%以上:優良企業・70%以上:超優良企業といわれているものの、企業規模や事業内容によって目安となる数値は異なります。
ちなみに、葬儀業界における自己資本比率の中央値は10.5%、黒字かつ自己資本プラス企業の平均は27.7%とされています。(参照:日本政策金融公庫『業種別経営指標』

自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産(資産合計)×100」の計算式で算出可能です。
株式会社 広済堂ホールディングスにおける2024年3月期の自己資本比率は、以下のように算出されました。

469億8千0百万円(純資産の部計)÷ 774億1千3百万円(資産合計)×100=60.69%
上記の式から同社の自己資本比率は61.34%(前年比で3.09ポイント増加)となりました。

広済堂ホールディングスの利益剰余金

利益剰余金は、企業が過去の利益を蓄積したもので、企業の内部留保として再投資や事業拡大、設備投資、借入金の返済などに使われます。
利益剰余金は、企業が持続的な成長を図り、財務の安定性を高めるうえで、重要な役割を果たします。

広済堂ホールディングスの2024年3月期における利益剰余金は、336億9千4百万円(前年同期比10.25%増加)となりました。
利益剰余金の推移をみると、2020年3月期に減少したものの、翌年からは順調に回復し、以降は毎年積み上げられて、2024年3月期はコロナ禍前の2019年3月期より84億円以上増加しています。

広済堂ホールディングスの損益計算書

会計年度2019年3月期2020年3月期2021年3月期2022年3月期2023年3月期2024年3月期
売上高361億9千5百万円350億8千8百万円314億9千7百万円353億6千1百万円366億6千8百万円354億5千7百万円
売上原価259億2千9百万円253億5千2百万円226億4千1百万円244億9千5百万円243億9千2百万円219億8千6百万円
売上総利益102億6千6百万円97億3千6百万円88億5千6百万円108億6千5百万円122億7千6百万円134億7千1百万円
販売費及び一般管理費80億1千5百万円74億0千8百万円68億3千9百万円71億3千6百万円79億9千6百万円81億4千7百万円
営業利益22億5千1百万円23億2千8百万円20億1千7百万円37億3千0百万円42億8千0百万円53億2千4百万円
営業外収益3億4千6百万円3億0千7百万円4億4千5百万円4億1千5百万円3億8千0百万円4億5千7百万円
営業外費用9億5千9百万円4億2千5百万円6億3千8百万円5億3千3百万円4億7千5百万円4億6千8百万円
経常利益16億3千7百万円22億1千0百万円18億2千3百万円36億1千0百万円41億8千5百万円53億1千2百万円
特別利益2千0百万円4億2千6百万円5億3千7百万円1億4千8百万円9億6千3百万円
特別損失11億5千7百万円39億2千6百万円20億1千1百万円1億3千0百万円1億1千4百万円9百万円
税引前当期純利益4億9千9百万円-12億8千9百万円3億4千9百万円36億2千7百万円40億7千1百万円62億6千6百万円
法人税、住民税及び事業税8億4千8百万円6億4千7百万円7億8千3百万円3億7千7百万円4億8千4百万円14億2千0百万円
法人等調整額-3億5千5百万円8千3百万円-12億6千9百万円-3億5千9百万円-4億3千6百万円6億9千8百万円
当期純利益6百万円-20億2千1百万円8億3千6百万円36億0千9百万円40億2千3百万円43億9千6百万円

損益計算書は、企業の一定期間における収益と費用を対比し、最終的な利益または損失を明らかにする財務諸表です。いわば企業の「成績表」のようなものとなりますが、中でも特に注目したい項目は、売上高・営業利益・経常利益となります。

売上金額の推移

広済堂ホールディングスの2024年3月期における売上高は、354億5千7百万円(前年同期比3.30%減少)となりました。

広済堂ホールディングスの売上高は、2021年3月期にコロナの影響を受けたとみられ減少しましたが、2022年・2023年は続けて増加し、2024年3月期はわずかに減少しました。
これは、葬祭公益、情報、人材各セグメントの売上高が前年同期より減少したためです。
同社は減少した理由として、以下を挙げています。

  • 葬祭公益セグメント:前年比で死亡者数と火葬件数が減少
  • 情報セグメント:出版印刷領域での案件減少・BPO事業での受注減少
  • 人材セグメント:人材紹介事業での費用増が先行

なお、広済堂ホールディングスにおける葬祭セグメント(葬祭公益・葬祭収益)の売上高は、以下のように推移しています。

葬祭公益セグメント:火葬事業
葬祭収益セグメント:斎場運営事業・葬儀サービス事業

広済堂ホールディングスの2024年3月期における、葬祭セグメント業績は以下のとおりです。

セグメント売上高142億1千8百万円(前年同期比19.05%増加
セグメント利益 :45億8千7百万円(前年同期比45.71%増加

葬祭セグメント売上高は年々増加しており、2024年3月期はあとわずかで150億円にも達する数値で、過去6年間で最高額となっています。

また2024年3月期の、売上高におけるセグメント別売上高と構成比は以下のとおりです。

出典:株式会社 広済堂ホールディングス 2024年3月期決算短信

広済堂ホールディングスの、2024年3月期のセグメント別売上高構成比をみてみると、葬祭セグメントが全体の40.9%を占めており、2023年に増設した新式場の利用が拡大して増収となりました。

営業利益の推移

営業利益は、企業の本業から得られる利益を示す数値で、売上総利益から販管費(=販売費および一般管理費)を差し引いて算出されます。
企業の主たる事業の収益力を評価するうえで、重要な指標となる数値です。

広済堂ホールディングスの2024年3月期における営業利益は、53億2千4百万円(前年同期比24.39%増加)となりました 

同社の営業利益は、2021年3月期に減少しましたが、2022年3月期には一気に増加に転じ、2024年3月期には過去6年間で最高額となりました。

また2024年3月期の、営業利益におけるセグメント別の営業利益と構成比は、以下のとおりです。

出典:株式会社 広済堂ホールディングス 2024年3月期決算短信

広済堂ホールディングスの2024年3月期の、セグメント別の営業利益割合は、葬祭収益が全体の85.4%を占めています。
売上高割合では情報セグメントが41.9%でしたが、営業利益での割合は5.1%にとどまっていることからみても、広済堂ホールディングスの収益の中心が、葬祭セグメントであるのは間違いないでしょう。

また売上高割合では全体の1.3%であった、資産コンサルティングセグメントの営業利益割合は、売上高割合が41.9%あった、情報セグメントとほぼ同じ4.7%となっています。

営業利益率は、以下の計算式で算出されます。
売上高に対して営業利益がどれくらいの割合かを示します。

「営業利益率=営業利益 ÷ 売上高 × 100(%)」

広済堂ホールディングスの、2024年3月期の葬祭収益セグメントと、資産コンサルティングセグメントの営業利益率は次のとおりです。

葬祭収益セグメント:41億3千0百万円÷92億8千4百万円=44.49%
資産コンサルティングセグメント:2億8千6百万円÷4億5千9百万円=62.31%

資産コンサルティングセグメントの営業利益率が、葬祭収益セグメントを17.82%上回っています。
資産コンサルティングセグメントは、2024年3月期の途中から始まった新事業ですが、相続相談や不動産仲介事業、金融サービス事業の収益が確立しつつあり、長期的には中心事業にできるように推進するとしています。

経常利益の推移

経常利益とは、企業の本業だけでなく、本業以外の活動からも得られた利益を合計したものです。
営業利益に、受取利息や配当金などの営業外収益を加え、支払利息や有価証券の売却損などの営業外費用を差し引いて計算されます。

本業だけでなく、投資活動や財務活動からも得られる利益を考慮することで、企業の安定的な収益力を評価することができます。

広済堂ホールディングスの2024年3月期における経常利益は、53億1千2百万円(前年同期比26.93%増加)となりました。

広済堂ホールディングスの経常利益は、営業利益と同様に2021年3月期に減少したものの、2022年3月期には一気に回復しました。
その後も順調に増加し続けて、2024年3月期には50億円を超えています。

広済堂HDにおける2025年3月期 第1四半期の業績

広済堂HDの2025年3月期 第1四半期決算短信が、2024年10月11日に公開されました。⽕葬件数の増加や式場増設による効果の継続、資産コンサルティング事業の成果により、前年⽐での大幅な増収・増益となったようです。

主な業績

  • 売上高 :87億5千7百万円(前年同期比14.6%増)
  • 営業利益:20億2千1百万円(前年同期比170.8%増)
  • 経常利益:18億8千6百万円(前年同期比130.6%増)

葬祭公益・葬祭収益セグメントの業績

  • 葬祭公益
    • 売上高 :12億7千7百万円(前年同期比5.8%増)
    • 営業利益:1億3千8百万円(前年同期比135.7%増)
  • 葬祭収益
    • 売上高 :23億4千5百万円(前年同期比30.6%増)
    • 営業利益:8億5千5百万円(前年同期比33.3%増)

出典:株式会社広済堂ホールディングス『2025年3⽉期第1四半期決算説明会資料』

同社の子会社である広済堂ライフウェル・グランセレモ東京の2社では、2024年3月期における葬儀施行件数が前年から倍増しており、2025年3月期は3,000件を見込んでいるようです。
今後も都内6か所の火葬場における式場増設を継続し、2030年3月期には30,000件まで伸長させるとしています。

⁂冒頭でもお知らせしたとおり、同社では2024年3月期における会計処理に不備があったとして、決算短信ならびに有価証券報告書の訂正をおこないました。
株式会社広済堂ホールディングス『過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び過年度の 決算短信の訂正に関するお知らせ』
この訂正にともない、本記事記載の各データも修正をおこなっております。

まとめ

本記事では、 広済堂ホールディングス 株式会社 の決算資料(決算短信有価証券報告書決算説明)を参考に、同社の業績や財務状況について解説いたしました。
上場企業である同社も、新型コロナの影響を受けたとみられますが、2022年以降は一気に回復し、業績を伸ばし続けています。

今期、葬祭収益セグメントでは、東京博善が運営する火葬場内式場を2023年4月より9月まで大幅な改修をおこない、高稼働率で収益を伸ばしました。
広済堂ホールディングスは、2025年3月期から2027年3月期を対象に「中期経営計画4.0」を発表し、長期成長戦略として2024年10月から順次施工開始し、2033年までに火葬場内式場について総計117室の増室を計画しています。

「中期経営計画4.0」の基本方針の中で、業績のさらなる向上策として「2023年度に増設した式場の収益最大化」と「資産コンサルティング事業の収益伸長」が挙げられています。
「2023年度に増設した式場の収益最大化」については、2024年3月期の決算からみてもすでに、今期増設した新式場の利用が順調に拡大し、増収となりました。

「資産コンサルティング事業の収益伸長」については今期、相続に関するコンサルティングサービスの提供開始や、不動産仲介事業、金融サービス事業での収入を中心に収益モデルが確立しつつあるとしています。
また、資金コンサルティング事業では、2024年に広済堂ホールディングスと証券・銀行・保険を中核事業とする、SBIホールディングスとの資産コンサルティング事業における、資本業務提携がこなわれており、今後は長期的に中心事業にできるように推進していくとのことです。

葬祭関連の上場企業の業績・動向を把握しておくことは、今後の葬儀業界と自社の経営方針を見定めるうえで、重要な指標となることでしょう。
広済堂ホールディングスは今後も業務提携などをおこない、葬祭セグメント事業・資産コンサルティング事業での事業領域拡大を図ることが考えられます。

葬研では、今後も広済堂ホールディングスをはじめ、上場企業の決算情報に注目したいと思います。

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