日本で施行される葬儀のおよそ40%を占めているのが冠婚葬祭互助会です。
事前に積立をしておくことで、いざというときに備えておくというシステムや設備が整った葬儀式場を所有する冠婚葬祭互助会は、消費者にとって利便性が高い仕組みといえるでしょう。
そんな冠婚葬祭互助会に寄せられる口コミには、好意的なものも多い反面、残念ながら厳しい意見も散見されます。
葬研では、それぞれの冠婚葬祭互助会に関する口コミを収集し、分析・考察をおこなってきましたが、良い口コミ・悪い口コミのいずれについても、共通点が少なくありませんでした。
冠婚葬祭互助会という共通の会員システムを基盤に事業を構築しているとはいえ、運営手法は事業者ごとに異なります。
にもかかわらず、各社に寄せられた口コミに共通点が多いのには、どんな理由があるのでしょうか。
そこで本記事では、冠婚葬祭互助会に関する口コミから、葬儀業界の問題点とともに検討すべき解決策を考察しました。
冠婚葬祭互助会以外の葬儀社様にとっても参考になる点が多いかと存じますので、ぜひ最後までご覧ください。
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冠婚葬祭互助会とは?
会員が相互に支援し合い、冠婚葬祭に関する費用や手続きの負担を軽減するための組織が冠婚葬祭互助会です。
具体的には、会員が定期的に積立金(前受金)を支払います。それに対し、結婚式や葬儀などを行う際に契約額に応じたサービスを受けることができるシステムになっています。
冠婚葬祭互助会のサービスを利用する際は、会員割引価格が適用されることが多いようです。
なお、冠婚葬祭互助会事業は、経済産業省の認可事業となっており、認可を受けるためには、財務基盤など厳しい条件をクリアしなければなりません。さらに、積立金の1/2を指定の方法で供託して、保全する義務があります。
そんな冠婚葬祭互助会のサービスは、さまざまなライフイベントで利用することが可能です。
ここでは、大手冠婚葬祭互助会の葬儀に関する口コミを見ていきましょう。
冠婚葬祭互助会の良い口コミ
実際に大手冠婚葬祭互助会で葬儀を執り行った人の口コミを見ていきましょう。
身近な人を亡くしたばかりのご遺族様は、精神的に動揺しているものです。特に喪主様は、逝去から間を置かずに葬儀の準備を行わなければなりません。葬儀には不慣れなお客様(喪主様・ご遺族様)が多く、不安を抱えていることが多いのではないでしょうか。
そんなお客様(喪主様・ご遺族様)の良い口コミとしては、以下のような意見が多くみられました。
スタッフ・サービスの口コミ
辛い思いを抱えるお客様(喪主様・ご遺族様)にとって、的確なサポートやアドバイスによりスムーズに葬儀を導いてくれる葬儀担当者、スタッフの存在はありがたいものです。
良い口コミにも、葬儀の打合せから見積もり、準備、葬儀施行まで、スムーズに導いてくれた葬儀スタッフに感謝する声が多くみられました。
宗教宗派に関する疑問や見積書の変動費などに関しても、事前に説明されることにより、不安が払拭できるようです。
地域の習わしやご遺族様の立ち振る舞いなど、インターネットではわからないことのアドバイスを受けられたなどの声もありました。
また、辛い時だからこそ、葬儀スタッフのお客様(喪主様・ご遺族様)に対する配慮はもちろん、故人様に対する思いやりをうれしく感じるようです。
多くのお客様(喪主様・ご遺族様)が疑問や不安に感じることには共通点があります。
それらを払拭する説明や配慮できる、もしくは聞かれたことにも丁寧にきちんと答えられるのは、知識や経験、ノウハウを長年蓄積してきた大手冠婚葬祭互助会の強みと言えるでしょう。
葬儀施行の口コミ
葬儀の規模縮小や簡素化が進んでいる一方で、それぞれのお客様(喪主様・ご遺族様)の望むことが多様化しているようです。
葬儀の進行がスムーズであることはもちろん、祭壇の花の種類や量、演出、思い出コーナーの設置など、お客様(喪主様・ご遺族様)や故人様の想いを形にしてくれたことを評価する口コミが多くみられました。
また司会者の技術レベルや、料金には含まれないサービス・配慮などを評価する声もありました。
見積り・費用の口コミ
見積りに対し、変動費の説明など、詳細な説明があったことで疑問や不安を感じなかったという声もありました。
柔軟なプランの変更や不要な費用を削るために一緒に考えてくれたなど、お客様(喪主様・ご遺族様)の目線に立った葬儀プランの作成が高評価を得たようです。
中には、金額としては高いと感じたものの、それに見合ったサービス・配慮があったため、結果的には妥当な費用だったという声も聞かれました。
葬儀式場の口コミ
大手冠婚葬祭互助会の口コミでは、葬儀式場を評価する声が多くみられました。
葬儀式場の清潔感はもちろん、葬儀には高齢の方の参列が少なくないため、バリアフリー対応された式場の評価が高いようです。
そのほか、駅や火葬場までの距離などの立地条件、駐車場の広さなどを評価する声もありました。
料理の口コミ
特に地元に密着した冠婚葬祭互助会では料理のレベルが評価に影響力を持つようです。「いつもどおり、料理がおいしかった」などの評価がありました。
また、味のレベルだけでなく、それぞれのタイミングに合わせ温かい料理の提供があった、アレルギーの対応がしっかりしてたなど、サービスの面でも評価されています。
互助会システムの口コミ
「いざというときに、どこに連絡をすればいいか」がわかっていることは、心強かったという意見がありました。
また、積立金により、葬儀費用の一定額を賄えるという安心感があったようです。
冠婚葬祭互助会の悪い口コミ
多くの良い口コミがあった一方で、残念ながら悪い口コミもありました。
ここでは、悪い口コミの傾向をまとめました。
葬儀スタッフ・サービスの口コミ
良い口コミでは評価が高かった葬儀スタッフが多かった一方で、お客様(喪主様・ご遺族様)、故人様に対する配慮がないことに不満を感じたというケースもあります。
あからさまに葬儀スタッフから事務的な対応をされた、ミスや非礼を認めようとしない、中には、ご遺族様のほうが不機嫌な葬儀スタッフに気を遣っていたなどのケースもあったようです。
同じ冠婚葬祭互助会であっても、高い評価を得ている葬儀スタッフの口コミもあることから、式場ごと、あるいは葬儀スタッフ個人による力量に差があることがわかります。
葬儀施行の口コミ
司会者のレベルが低かったなどのスキルを問題視する意見のほか、時間を厳しく制限され、葬儀を急かされているように感じたという声がありました。
会食中にもかかわらず、スタッフが片づけを始めてしまったなどのケースもあったようです。
また、コロナ禍での葬儀では、感染症対策が万全ではないことに不安を感じたという人もいました。
見積り・費用の口コミ
比較的多くみられたのが「見積りが想定していた葬儀費用よりも高かった」という意見です。
一般的な葬儀を行うためには、会費で賄えるセットにオプションを付けざるを得ないケースや、葬儀の担当者から高いオプションを強くすすめられ、断れなかったというご遺族様もいました。
また、一般葬向けの積立コースであったため、家族葬には利用できなかったというケースもありました。
葬儀式場の口コミ
冠婚葬祭互助会が所有する葬儀式場は設備が充実しているケースが多いようです。
しかし、家族葬なのに式場の規模が大きすぎる、逆に弔問客の人数に対し狭すぎたなど、会場と人数が合っていなかったというケースがありました。
また、バリアフリー対応であったものの、実際に身体が不自由な人が利用してみると使いにくかったなどの意見もみられました。
営業の口コミ
葬儀を済ませたばかりのご遺族様に対し、間を置かずに積立の勧誘が行われたことに不満を感じたという声が散見されました。
そのほか、解約を申し出ても、なかなか応じてくれない、解約手続きが煩雑になっており、解約しにくい、解約手数料が高いなどの声もありました。
冠婚葬祭互助会の口コミから見えてくる消費者ニーズ
ここまで各冠婚捜査互助会に寄せられた良い口コミ・悪い口コミについて紹介してきました。
口コミから読み解いたお客様のニーズは、概ね以下のポイントにあるようです。
プロとしての葬儀のサポート
お客様(喪主様・ご遺族様)が求めているのは、なんといってもプロとしての葬儀スタッフのサポートや心配りです。
お客様(喪主様・ご遺族様)がお身内を亡くし心細い思いをしている中で、不慣れな葬儀を取り仕切らなければいけないというプレッシャーに寄り添うことが、喪主様・ご遺族様の安心につながります。
葬儀式場の利便性・設備
冠婚葬祭互助会を選択する理由として、葬儀式場が充実していることが挙げられます。
式場設備の充実はもちろん、「自宅から近い」「よく知っている式場である」「火葬場までの移動距離」など立地条件を上げる方も多いようです。
提供される料理のレベル
口コミには料理に対する評価も少なくありません。
料理は、通夜・葬儀に足を運んでくださった方に対するおもてなしにつながるほか、ご遺族様にとっても温かいものを温かくいただける配慮に気遣いを感じているようです。
葬儀の費用の透明性
積立金があったことで安心感があったという意見がある一方で、追加で支払った額に不満を持った、発生する費用の説明がなかったなどの声が多く見られました。
互助会システムの柔軟な対応
ここ数年、葬儀の簡素化、縮小化がすすんでいるほか、故人様やご遺族様が置かれている状況も変わっていきます。加入した時には想定していなかった家族葬などの小規模な葬儀を希望するケースもあるようです。
必要に応じてプランの変更ができるなど、柔軟な対応を求める声がありました。
冠婚葬祭互助会の口コミから見えてくる葬儀業界の課題
お客様のニーズから見えてくる葬儀業界の課題、そして解決策を考えていきましょう。
葬儀費用の明瞭化・会員加入時の説明
冠婚葬祭互助会加入時に書面を用いて利用できるプランや発生する可能性がある追加費用や変動費、解約などに関し、しっかりと説明することが必要です。
また、実際に葬儀が行われる際も、担当者が見積書を作成し、お客様が納得されるよう説明をすることが大切になります。
葬儀スタッフを育成するシステムの構築
大手冠婚葬祭互助会は、多くの葬儀式場を運営しているケースが少なくありません。
多店舗展開することで、地域の占有率を高めることで認知度の向上が期待できる一方、スタッフの教育レベルを一定に保つのが難しいという課題があります。
どの式場を利用してもお客様が納得できるサービスを提供するためには、各葬儀式場ごとの教育頼みにせず、全社的なスタッフの育成システムの構築を行うことが必要です。
お客様情報の共有
大手冠婚葬祭互助会は、営業や打合せ担当者、葬儀式場スタッフなど明確に役割分担がされていることが多いようです。
その連携がうまく行かないと、お客様は「話が違う」と不快な思いをすることになりかねません。
顧客満足度を向上させるためには、役割が異なるスタッフ同士でも、お客様の情報をしっかりと引き継ぎ、情報共有を徹底する必要があります。
とはいえ、取り扱うのはお客様の個人情報ですので、情報セキュリティ教育の拡充も不可欠です。
葬儀式場の設備の充実
葬儀式場には年齢を問わずさまざまな方が足を運びますので、快適にお過ごしいただくための工夫が必要となります。
葬儀式場が清潔に居心地よく整えられていることはもちろん、高齢の方が多く利用するため、バリアフリー対応であることは必須といえるでしょう。
またお子様連れの方のために、多目的トイレやおむつ替えシートなどの設備を整え、お子様用の椅子を用意するなどの配慮が求められます。
さらに遠方から来場される方のために、更衣室など着替えのためのスペースを設けておけば、喪主様・ご遺族様も参列者を安心してお迎えできるでしょう。
式場規模はそれぞれ異なるため、対応できる範囲にも限界がありますが、多くの方にストレスなく過ごしていただくために、設備の充実にも目を向けるべきでしょう。
冠婚葬祭互助会の口コミ記事一覧
大手冠婚葬祭互助会の口コミや概要を、企業ごとにまとめました。
企業規模は違っても、実際にお客様から寄せられた生の声は、多くの葬儀社にとって課題解決の糸口になる可能性もある貴重な情報となりますので、目を通していただけると幸いです。
まとめ
本記事では、大手冠婚葬祭互助会利用者様の口コミをまとめました。
口コミは、耳に痛いものも少なくありません。しかし、実際にサービスを利用したお客様(喪主様・ご遺族様)が発する言葉は、そのままお客様のニーズであり、大手冠婚葬祭互助会に限らず、葬儀業界において大きなヒントにもなるのではないでしょうか。
死亡者数が増加する一方で、葬儀の簡素化や規模の縮小により、葬儀の単価は下がっています。
選ばれる葬儀社になるためには、故人様を送る最後の儀式である葬儀を納得した形で執り行いたいというお客様(喪主様・ご遺族様)の要望に応えていくことは必須と言えそうです。