葬儀や埋葬・供養・相続など、ライフエンディング領域に特化した大規模展示会「第10回 エンディング産業展」が、今年も東京ビッグサイトにて8月28日(水)・29日(木:友引)の2日間にわたって開催されました。
例年であれば、全国から数多くの葬祭関係者が参加されるエンディング産業展ですが、今回は台風の影響による交通機関の乱れなどもあり、来場がかなわなかった方も多いようです。
そこで本記事では、2日間の来場者数や会場の雰囲気、出展企業様から伺ったお話など「第10回 エンディング産業展」に関する情報をお届けします。
第10回エンディング産業展概要
超高齢化社会を迎えた日本では、死亡者数は右肩上がりに増え続けており、この傾向は2040年まで続くと予想されています。
そのため葬儀件数は増加傾向にあるものの、葬儀の規模や施行単価は減少傾向にあり、葬祭各社では対応を急いでいるようです。
葬儀業界を取り巻く環境が変化する中で、葬儀社様が生き残っていくためには、新たな取り組みが求められます。
そうした中、主催者である東京博善では、第10回 エンディング産業展のテーマとして《時代のニーズに寄り添った新しいエンディング産業を皆様と一緒に創るために》を掲げています。
展示会名 | 第10回エンディング産業展 |
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会期 | 2024年8月28日(水)~29日(木・友引) 2日間 |
会場 | 東京ビッグサイト 南展示棟 |
主催 | エンディング産業展事務局(広済堂グループ 東京博善株式会社 内) |
東京博善(主催者)の想い
エンディング産業展は、以前の主催者であるTSO International 株式会社から、東京23区で6か所の火葬場を運営する東京博善に、2022年10月3日をもって事業譲渡されました。
今回のエンディング産業展を開催するにあたり、主催者である東京博善の代表取締役社長 和田翔雄氏が、事業譲受の経緯や開催理念について語っています。
フロアマップ
アクセスマップ
■東京ビッグサイトまでの道順
第10回エンディング産業展の気になる数字
10回目となる今年のエンディング産業展では、俳優の石田純一氏の生前葬イベントや、明治天皇の玄孫にあたる竹田恒泰氏による古墳文化に関するセミナーが催され、葬儀業界以外の方からも注目を集めました。
こうした取り組みの影響もあってか、これまでのエンディング産業展にくらべ、報道関係者の姿を多く見かけました。
そんな第10回エンディング産業展ですが、出展社数・来場者数ともに、前回を上回る結果となったようです。
来場者数・出展社数の推移
下記のグラフは、2017年以降のエンディング産業展における出展社数・来場者数をまとめたものです。
出展社数・来場者数は増加傾向にあるものの、新型コロナ発生前となる2019年の水準を回復するまでには、もう少し時間が必要なようです。
開催期間が3日間→2日間に変更
エンディング産業展は、昨年まで3日間の日程でおこなわれてきましたが、第10回となる今年は8月28日(水)・29日(木・友引)の2日間で開催されました。
第10回エンディング産業展の受付登録入場者数と報道関係者入場者数は以下の通りです。
受付登録入場者数は前年対比+10.62%、報道関係者入場者数は前年対比+35.16%となっています。
現地の様子
葬研では、今回もエンディング産業展の会場を訪問し、現地で取材させていただきました。その中で強く感じたのは、相続関連サービスを取り扱う企業、ならびにペット葬儀サービス・供養品を取り扱うブースの多さでした。
超高齢化社会・多死社会を迎えた日本では、死亡者数の増加にともない、相続市場も拡大傾向にあります。
現在の日本において、相続により移動する資産の規模は年間50兆円に達するといわれていますが、その多くを金融資産と不動産が占めています。
葬儀社は、身内にご不幸があったご遺族様が最初に接点を持つ事業者ですので、相続に関する情報に触れる機会も少なくありません。
こうした現状を鑑みると、相続関連サービス事業者が、葬儀業界との連携に力を入れるのも当然といえるでしょう。
またペット葬儀サービスや供養品を取り扱う企業の出展は、エンディング産業展だけでなく、同じく終活領域に特化した大規模イベント「フューネラルビジネスフェア」においても、ここ数年右肩上がりに増えている印象です。
ペット葬専門業者だけでなく、骨壷メーカーや葬祭用品商社の多くでもペット用のミニ骨壺やミニ仏壇などを取り扱うケースが多く、ペット葬市場の拡大を肌で感じられました。
出展企業インタビュー
葬儀社向けBtoB情報メディアの葬研では、第10回エンディング産業展に出展されている企業の担当者様にお話を伺いました。
この章では、インタビュー内容をまとめてご紹介いたします。
一般社団法人 全国葬技協会
今回が初出展となる一般社団法人 全国葬技協会(NFTA:National Funeral Technique Association)様のブースでは、理事長である荒井 貴大様にインタビューさせていただきました。
同協会が出展するにいたった背景には、日本全国に「高品質なサービスを提供する葬儀社」を増やしたいという、強い思いがあったようです。
地域で「いい葬儀社」として認知されている葬儀社様は多いものの、その多くは中小企業が占めており、体系化された人材教育の仕組みを構築しにくい状況にあります。
また多くの葬儀社様では、それぞれのご遺族様に最適なサービスを提供していると感じてはいても、客観的に自社のサービスを評価するのは困難でした。
全国葬技協会(以下 NFTA)様では、各葬儀社様が高品質な葬祭サービスを提供するための基礎となる仕組みや評価基準を確立し、現場の実務に落とし込んでいくことで、上記のような課題の克服を目指しているとのことです。
こうした取り組みが結実し、各葬儀社様のサービスレベルが向上すれば、ご遺族様にとって心に残るご葬儀が実現できるだけでなく、現場で働く従業員の皆様の自信に結びつく可能性が高いでしょう。
またNFTA様では、協会に加盟している各葬儀社様が抱える課題に対して、地域や組織全体で解決していけるような、強固な関係性の構築にも取り組まれているようです。
近年の葬儀業界では、多様化する消費者ニーズへの対応に追われ、葬儀社として本来果たすべき役割や、サービス品質が二の次になっているケースも珍しくありません。
こうした状況の中、本来はサービス業にとって最優先事項であるサービス品質の向上や、現場で働く従業員の皆様のモチベーションアップに目を向けた同協会の取り組みは、近い将来、大きな価値を生み出しそうです。
団体名称 | 一般社団法人 全国葬技協会 |
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所在地 | 〒329-1104 栃木県宇都宮市下岡本町3728-8 |
連絡先 | 0120-215-062 |
たつみ工業株式会社
たつみ工業株式会社様では、カスタムメイド遺体安置冷蔵庫『おくりこ®』にくわえ、新たに開発されたペット専用の『おくりこpet』を展示されていました。
今回のエンディング産業展では、代表取締役である岩根 弘幸様にお話を伺いました。
首都圏のコンビニ冷蔵庫において8割以上のシェアを誇る同社で、人間用のご遺体安置冷蔵庫の製造・販売を開始して以降、ペット用の遺体安置冷蔵庫に関する問い合わせが数多く寄せられたとのことです。
現在の日本では、ペットを愛玩動物としてではなく、家族の一員として捉えているご家庭が非常に多くなっており、ペット葬への需要も高まっています。
長く生活を共にしてきたペットが亡くなった際は、人間と同様に弔いたいと感じるのは自然なことでしょう。
ペットのご供養をペット火葬業者に依頼した場合、ご遺体をすぐに引き取られてしまう、もしくはその場で火葬されてしまうケースが多くなります。
しかしペットを家族として捉えている方の心情を考えると、せめて数日だけでもペットとの別れを惜しむ時間が欲しいところでしょう。おくりこpetは、こうしたニーズに応えるかたちで開発されたそうです。
おくりこpetは、人間用の「おくりこ®」にくらべて省スペースで設置できるうえ、家庭用の100V電源のみで導入できるため、今後はペット葬儀事業者や動物病院・ペット霊園を運営している寺院などへの供給を強化していくとのことでした。
また今回のエンディング産業展では、日本国内はもちろん、中国の方からの問い合わせも多かったようですので、海外に販路が拡大する可能性も高そうです。
社名 | たつみ工業株式会社 |
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本社所在地 | 〒212-0054 神奈川県川崎市幸区小倉4-1-13 |
設立 | 1962年4月 |
代表者 | 代表取締役 岩根 弘幸 |
公式ホームページ | https://tatumikougyou.co.jp/ |
営業品目 | 業務用プレハブ冷蔵庫の設計、製造、組立・施工、プレハブ冷凍冷蔵庫、業務用冷蔵庫、クリーンルーム、シールドルーム、冷暖房工事一式 |
株式会社 前方後円墳
株式会社 前方後円墳様では、明治天皇の玄孫にあたる竹田 恒泰様が陣頭に立って、同社のサービスについて解説していたこともあり、多くの来場者がブースを訪れていました。
同社の代表取締役でもある竹田 恒泰様にお時間をいただき、設立の経緯やサービス内容などについて詳しく伺いました。
幼い頃より父方のお墓参りに訪れるのは古墳だったため、竹田様にとって古墳は非常に馴染みのある存在だったとのことでした。
しかし父親である竹田 恆和氏は三男だったため、豊島岡墓地(東京都文京区)にある竹田宮家の上円下方墳に入ることが叶わないことから、新たな墳墓の建造を検討していたところ、周囲の方からの賛同の声が想像以上に高く、その声に後押しされるかたちで事業化するに至ったそうです。
同社が提供する「古墳墓」は、樹木葬墓地の新形態という位置づけにはなるものの、大和時代の古墳に限りなく近いかたちで建造され、三種の神器(御鏡・御剣・御勾玉)や、副葬品となる埴輪も忠実に再現されています。
また春分の日と秋分の日の年2回おこなわれる御霊(みたま)祭りでは、全御霊の名前が宣り(のり)上げられますので、永代祭祀墓ではあっても丁寧な葬り方といえるでしょう。
現時点(2024年8月28日)で予約販売中となっているのは「野田ほたるローズガーデン(千葉県野田市)」「高松ほたるローズガーデン(香川県高松市)」の2か所ですが、年内には愛媛県松山市・広島県広島市・福岡県糸島市の3か所でも予約販売が開始されるそうです。
また同社が運営する子墳墓販売の専門サイト『古墳の窓口』では、氏名やメールアドレス・希望の都道府県名を登録しておくことで、該当地域に新たに古墳墓が開設された際に、お知らせが届くサービスもおこなっているとのことです。
社名 | 株式会社前方後円墳 |
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本社所在地 | 〒108-0014 東京都港区芝5-13-16 三田文銭堂ビル4階 |
設立 | 令和6年4月 |
代表者 | 代表取締役 竹田 恒泰 |
公式ホームページ | https://kofun.co.jp/ |
事業内容 | 古墳型墓および神道式樹木葬の企画、設計、施工並びに販売 ほか |
株式会社 三洋
株式会社三洋様のブースでは、東京営業所の和田 淳志様、川上 浩様にお時間をいただき、お話を伺いました。
主に保冷・保温ボックスや梱包材など取り扱う同社では、今回のエンディング産業展で、家庭用の100V電源で稼働できる折畳可能な冷蔵ご安置ボックス『o-ya-su-mi』を展示されていました。
o-ya-su-miは、断熱ボックスに冷却装置で冷気を送り込むことで、内部を1℃ほどに保つことが可能とのことです。
会場では多くの来場者が開閉を繰り返していたものの、実際に内部は6℃ほどに保たれていました。
冷却装置を開発したメーカーによると、o-ya-su-miを利用することで、ご遺体を約10日ほど衛生的に保つことが可能とのことです。
また使用開始時のみ、ご遺体を冷却するためのドライアイスが必要になるものの、ドライアイスの使用量は大幅に減少するため、高騰するドライアイス費用の削減が期待できます。
断熱ボックスの内寸は縦210cm×横幅60cm×高さ57.5cmと、標準的な大きさの棺であれば、十分に収まるサイズとなっています。
また断熱ボックスは折り畳むことができるため、付属の冷却装置も含め、110cm×150cmのスペースがあれば収納可能です。
近年では死亡者数の増加にともない、火葬までの待機期間も長期化する傾向にあり、安置場所の確保が難航している葬儀社様も多いようです。
すでに葬儀社様の多くでは、1名から数名まで収容可能な安置施設を用意されているかと存じますが、搬送・安置のご依頼が重なった場合の備えとして、o-ya-su-miは選択肢の1つになりそうです。
社名 | 株式会社三洋 |
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所在地 | 〒997-1301 山形県東田川郡三川町大字横山字大正27 |
設立 | 昭和43年12月20日 |
代表者 | 代表取締役 石田 伸 |
公式ホームページ | https://www.sanyo-m.co.jp/ |
事業内容 | 農業資材、包装資材、物流容器等の生産・販売 |
まとめ
本記事では、第10回エンディング産業展の来場者数や現地の様子、出展企業のブースで伺った内容などをご紹介いたしました。
出展社数・来場者数ともに前回を上回ったエンディング産業展ですが、西日本方面から来場予定だった方のキャンセルが発生するなど、やはり台風10号の影響は大きかったようです。交通機関の乱れなども予想されていたことから、早めに会場を後にする方の姿も散見されました。
一方、出展企業の属性に目を移すと、葬儀やご供養に直接関連する商品・サービスよりも、保険や終活・相続といった周辺領域で事業を展開する企業や、異業種からの新規参入を目指す企業の存在感が増している印象を受けました。
葬儀業界でも、事業を多角化する動きが活発化しているため、今後のエンディング産業展においては、これまで以上に多種多様な業界からの参画が加速する可能性もありそうです。