遺影写真AI加工サービスを提供する企業のまとめ|今後のビジネスモデルとは?

遺影写真

葬儀を執り行うにあたり、欠かせないもののひとつに、生前の故人様のお姿を写した遺影写真があります。

最近は、終活の一環としてお元気な時に遺影用の写真を用意する方も増えてきています。
しかし、あらかじめ準備をしてなかった場合は、不幸があってからお通夜までの短時間にご遺族様が遺影用の写真を選び、葬儀社様を通して遺影写真の加工を行っている企業に作成を依頼することになります。
適切な写真が見つからずに慌てた経験を持つご遺族様も多いのではないでしょうか。

葬儀社様にとっても、遺影写真の準備は時間に追われる仕事であり、プレッシャーを感じることもあるかもしれません。
本記事では、最近の遺影加工サービスを提供する企業様の紹介とともに、葬儀費用における遺影写真の位置づけについても考えていきます。

目次

遺影の歴史

遺影

遺影の始まりは、江戸時代中期から明治時代にかけて作られた「死絵(しにえ)」だったと言われています。

死絵は、歌舞伎役者などの有名人が亡くなった際に追善のためにつくられた錦絵で、死装束を身に付けていたり、三途の川や極楽の建物が描かれているなど、すでの故人であることが明確にされていました。
命日と戒名、埋葬された寺院なども記されていたそうです。

明治時代には、写真集のような形で故人様のお姿を遺すこともありました。
有名なのが尾崎紅葉(小説家。代表作『金色夜叉』)で、壮健時から始まり、入院中、往生、葬送の様子などの写真が残されています。

日清戦争(明治27年)、日露戦争(明治37年)の頃には、出征の際に「出征写真」を撮る習慣がありました。
本人が戦死してしまった場合には、その写真や肖像画を飾っていたそうです。
明治時代の葬儀の写真には、現在の遺影写真に近いものが写ってるものも残されており、肖像写真と写真集が混在していたようです。

大阪の葬儀社が作成した葬儀カタログに写真撮影が掲載されたのは、昭和時代に入ってからになります。一般の人の葬儀に広く遺影写真が用いられるようになったのは、第二次世界大戦以降だと言われています。
葬儀に遺影写真が飾られるようになったのは、それほど長い歴史があるわけでないのです。

遺影加工技術の変換

アルバム

ごく一部の地域では、以前から遺影に使用する写真を、生前に準備する習慣があったようです。そうでない地域であっても、最近は、自分で遺影写真を用意する方も増えてきました。
遺影に使える写真の準備がない場合は、手持ちのスナップ写真や画像データから、使えそうなものを選び、遺影として加工することになります。

かつては、葬儀社を通して、街の写真店に写真を持ちこみ、遺影写真を作成することが一般的でした。小さな写真を引き伸ばすため、ぼやけてしまったり、画質がよくないことも珍しくなかったようです。
その頃の遺影写真は、背景は無地で単色、故人様の服装は黒い着物かスーツを合成するなど、決まったパターンで作成された遺影写真が多くありました。

最近は、遺影写真の加工にAIが導入されるようになり、年々遺影写真の画質が向上しています。低画質な写真であっても、短時間で高画質化することができるようになり、ピントが甘い写真でもシャープに修正することが可能です
。元の写真よりも、より鮮明な写真にしたり、色あせてしまった写真、白黒の写真に色を取り戻すなど、さまざまな加工ができるようになっています。

最近は、合成できる服装や背景の選択肢も増えており、明るい色も取り入れられるようになりました。これまでの遺影写真とは全く異なる印象の遺影写真が増えています。

遺影写真加工サービスの種類

パソコン

AIを利用した遺影写真の加工サービスには、大きく分けて2つの種類があります。

株式会社アスカネット有馬写真館が提供している遺影写真加工サービスは、AIによる加工だけではなく、高い技術を持ったスタッフの手により、適切な処置が行われています。
AIによる修正が完全だとは言えない部分があるため、人の目により修正、調整を加えています。

一方で、株式会社ラディウス・ファイブ株式会社とことんで提案しているのは、AIを利用した遺影写真加工のシステムです。

ラディウス・ファイブで提供しているのが、「Face Refiner(フェイス リファイナー)」です。人の手を介さず、人物写真をAIによって高画質化するため、1分程度で処理が可能であり、費用も抑えることが可能です。
とことんのサービスは、写真をWEBサイトにアップロードして、自分でプレビュー画面を見ながら各調整を行い、その後ダウンロード、印刷をします。

ここからは、AIを活用しつつ、人の手を加えた遺影加工サービスについて紹介していきます。

遺影加工業者の成り立ちによる分類

遺影加工業者

遺影加工サービスを提供する会社をその成り立ちから区別すると、概ね次の3パターンに分類されます。

写真館から発展

株式会社アスカネット

アスカネット

出典:株式会社アスカネット

株式会社アスカネットは、飛鳥写真工芸社という写真館から始まった会社です。

年間44万枚の遺影写真の加工を行い、約30%のシェアしめるアスカネットでは、遺影写真通信出力システムにより、葬儀社や会館に備え付けられたスキャナに写真をセットするだけでオペレーションセンターで遺影写真が加工され、遺影写真をプリントアウトすることができます。

現在、同じようなシステムの遺影写真加工サービスを提供している会社は多くありますが、アスカネットが最も早くシステムを開発した企業になります。
葬儀社様の業務負荷を軽減させた、画期的なシステムと言えるでしょう。

【会社名】株式会社アスカネット
【設立】1995年7月6日
【本社所在地】〒731-0138 広島県広島市安佐南区祇園3-28-14
【従業員数】389名(2022年4月末日現在)
【事業内容】

  • フューネラル事業
  • フォトブック事
  • 空中ディスプレイ事業

【公式ホームページ】https://www.asukanet.co.jp/index.html

額縁の製造・販売会社から発展

株式会社みづま

みづま

出典:株式会社みづま

株式会社みづまは、1977年に遺影額製造メーカーとして創業し、遺影加工の技術を磨いた企業です。

みづまの遺影写真システムは、故人様の写真をスキャナにセットし、加工内容をFAXで送るだけで、パソコンの遠隔操作により写真の取り込みを行います。
納品後は、サイズを選んで印刷ボタンを押すだけなので、パソコンが苦手な人でも対応可能です。

また、みづまでは、「100年保証の遺影写真保証システム」として、データを保存し、必要に応じて再出力ができるサポートを取り入れています。
遺影写真システム販売のほか、葬儀業界に携わり、遺影額、遺影写真、会葬礼状、セレモニー演出ツール、それらを支援するシステム開発なども行なっています。

【会社名】株式会社みづま
【設立】1998年4月1日(創業1977年4月1日)
【本社所在地】〒827-0002 福岡県田川郡川崎町大字池尻403-1
【従業員数】60名
【事業内容】

  • 遺影写真システム販売
  • デジタル画像処理
  • データ通信ソフトウェア開発
  • コンピュータシステムの販売
  • 運用メンテナンス
  • 各種額縁卸販売

【公式ホームページ】https://mizuma-com.jp/

株式会社ライズワン

ライズワン

出典:株式会社ライズワン

福岡県飯塚市にある株式会社ライズワンは、フューネラル事業のほか、WEB制作事業も展開しています。
AIを利用した遺影加工は、ほこりや変色などの経年劣化した写真や画質が悪い写真でも遺影を作成することが可能で、加工者がお客様からの要望を直接聞いて、作業を行うそうです。

【会社名】株式会社ライズワン
【設立】2015年10月21日
【本社所在地】〒820-0111 福岡県飯塚市有安183-8
【事業内容】

  • フューネラル事業
    • 額縁卸販売
    • 会葬礼状卸販売
    • デジタル画像処理 
    • 印刷システム販売
  • システム開発事業
    • インターネットサービスの提供・運営
    • ソフトウェア開発
    • システム販売

【公式ホームページ】https://rise1-web.jp/service/

WEBサイト制作会社から発展

ベーシック株式会社

ベーシック

出典:ベーシック株式会社

WEBサイトを制作から加工技術を発展させた会社は多くあります。そのひとつがベーシック株式会社です。
ベーシックでは、遺影写真作成加工・伝送システムを提案しています。スキャナに写真を載せ、用紙をセットするだけで、ベーシックのスタッフが遠隔操作により、取り込みから加工、印刷まで行います。

【会社名】ベーシック株式会社
【設立】1993年1月
【本社所在地】〒540-0011 大阪府大阪市中央区農人橋2丁目1‐30 谷町八木ビル 2F
【従業員数】16名
【事業内容】

  • 写真加工
  • コールセンターサービス
  • ホームページ作成
  • CEREX【セレックス】(葬儀社様専用業務支援・顧客管理システム)の販売・運用
  • アプローチブックTouch!(葬儀社様専用 事前相談支援ツール)の販売・運用
  • 葬儀社プロモーション
  • システム開発
  • 映像制作

【公式ホームページ】https://www.basic-web.co.jp/

遺影写真作成にかかる費用

料金

遺影写真の作成にかかる費用の目安は、加工を依頼する会社や加工方法にもよりますが、一般的には、5,000円〜8,000円が目安となります。
加工の費用に加え、遺影写真を入れる額縁やリボンなどの装飾にかかる費用も必要です。
さらに汚損や破損などがある写真を修復する場合は、追加費用が必要となるケースもあります。

アスカネットでは、過去に作成した遺影の修正加工を専門に取り扱う「遺影ラボ」を運営しています。
「遺影ラボ」では、モノクロ写真のカラー化や、汚れや破れの修復といった加工を、10,000円~30,000円ほどの費用で提供しています。

遺影作成費用は葬儀プランに含まれていることも多いため、一般消費者が遺影作成費用を意識する機会は、あまり多くないかもしれません。
ですが、葬儀ポータルサイトに掲載されている「直葬(火葬式)プラン」や、直葬(火葬式)をメインに取り扱う葬儀社のプランの多くでは遺影作成費用が含まれておらず、追加費用が必要なオプション扱いになっているケースがほとんどです。

下のグラフは葬儀ポータルサイトや、各地の直葬センターがオプションサービスとして提供している遺影作成費用をまとめたものになります。

遺影費用比較

サービス内容や遺影のサイズが異なるため単純比較はできませんが、おおむね10,000円~30,000円ほどに設定されています。
とはいえ、上記の料金を負担してまで遺影を作成する方が、直葬を選択される顧客層の中にどれほどいるのかと考えると、さほど需要は多くないかもしれません。

葬儀業界の動向と遺影加工サービスの関係性

遺影写真は、葬儀において必要不可欠ではあるものの、ご遺族様が遺影写真の画質や細部にこだわりたいというニーズは、そう多くないという現実があります。

葬儀業界推移
出典:「特定サービス産業動態統計調査」対個人サービス業「葬儀業」(経済産業省)をもとにグラフを作成

葬儀の施行件数は増加傾向にあるものの、葬儀規模の縮小化、簡素化により葬儀費用を抑えることを希望するご遺族様が少なくありません。
また、故人様のご逝去からお通夜までの短時間に、葬儀の準備の中で遺影写真を用意をしなければいけないという状況もあります。

さらに葬儀社様にとっても、時間的制約がある状況で早急に対応する必要がある遺影写真は、手間や費用をかけにくいという部分だといえるでしょう。

こういった点を考慮すると、葬儀の施行数が増加しても、遺影加工サービス市場が大幅に拡大するとは考えにくい状況といえるかもしれません。

まとめ

本記事では、 遺影写真の加工サービスの現状をまとめました。

今後も葬儀の簡素化がすすんだとしても、遺影写真は安定して必要とされ続けることが予想されます。
一方で、ご遺族様や葬儀社様のニーズを考えると、高品質・高単価の遺影作成サービスを提供しても、それが求められるケースは限定的という現実があります。

業績を伸ばしている遺影写真加工サービスを提供している企業は、遺影だけに依存することなく、技術力を生かしたさまざまな事業を行っています。
本記事でも紹介しているアスカネットを例にあげると、フューネラル事業のほか、オンデマンド印刷によるフォトブック事業や空中ディスプレイ事業なども展開しています。

フューネラル事業では、遺影加工サービスのほか、収益確保、業務効率、人材不足など葬儀社が抱える問題を解決するサービス「葬テック」やご遺族様向けスマホでおくる訃報・香典サービス「tsunagoo(つなぐ)」、ASKA3Dプレートを利用した等身大空中ディスプレイなど、次々に新しいサービスを打ち出しているようです。

今後、さらに葬儀業界が変化していくことが予想されます。より業績を伸ばしていくためには、事業の多角化が不可欠だと言えるのではないでしょうか。

カテゴリー最新記事

目次