新型コロナが発生した2020年以降、葬儀業界は大きな打撃を被っていますが、その中でも冠婚葬祭互助会事業者は大きな影響を受けたといわれています。
しかし、そういった状況下にあっても、互助会大手のアルファクラブグループは堅調に成長を続けているようです。
そこで今回は、アルファクラブグループの全体像や歴史、決算公告から見た利益や業績についてまとめます。
貸借対照表をもとに資産や負債、純資産などから財政状況を分析することで、その会社の経営状態の把握が可能です。
葬儀社様にとって参考になる部分もあるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
アルファクラブグループの概要
アルファクラブグループは、昭和37年(1962年)に創業され、埼玉県、福島県、栃木県を中心に互助会事業を含め、冠婚葬祭事業やリゾート事業を展開しています。
葬儀部は「さがみ典礼」名義で葬儀をおこなっており、グループ全体で年間40,000件を超える葬儀実績があります。
【名称】アルファクラブグループ 株式会社アルファクラブ
【設立】1973年(昭和48年)10月(昭和55年3月 栃木地区創業)
【代表取締役】神田 昌毅
【本社所在地】栃木県宇都宮市大通り5-3-9
【公式HP】https://j-alpha.com/
アルファクラブグループの構成
アルファクラブグループは主に以下の11社で構成されています。
- アルファクラブ武蔵野
- アルファクラブ株式会社(栃木)
- アルファクラブ株式会社(福島)
- アルファクラブ東北
- アルファクラブ静岡
- レクスト岐阜
- レクストワン
- 東冠
- サイカンシステム株式会社
- せいしん株式会社
- アルファライフ株式会社
アルファクラブグループの事業内容は以下の通りです。
- 割賦販売法に基づく前払式特定取引業における冠婚葬祭に関する一切の業務
- 総合結婚式場の経営
- 葬儀場の経営
- 貸衣裳及び美容着付
- 寝台車、霊柩小型限定自動車運送事業
- 損害保険代理業
- 他、上記各号に附帯する一切の業務 他
出典:アルファクラブ 会社概要
そのほかには栃木県で、乃木温泉ホテルやグランピングリゾート ネンなどのレジャー事業もおこなっています。
「小さなお葬式」を運営する株式会社ユニクエストもアルファクラブグループ企業
公式ホームページにはグループ企業としての記載はありませんが、葬儀ポータルサイト「小さなお葬式」を運営する株式会社ユニクエストも、アルファクラブグループの一翼を担っています。
ユニクエスト傘下のライフアンドデザイン・グループ 株式会社では、子会社のライフアンドデザイン・グループ西日本株式会社・株式会社 葬儀のこすもす・株式会社ルミーナにおいて、葬儀事業を展開しています。
今回の決算公告分析には含まれていませんが、ライフアンドデザイン・グループ西日本株式会社、および株式会社 葬儀のこすもすの2023年における売上高は以下のとおりです。
- ライフアンドデザイン・グループ西日本株式会社:134億5千7百万円
- 株式会社 葬儀のこすもす:38億4千8百万円
ライフアンドデザイン・グループ西日本株式会社では、ここ数年で売り上げを急速に伸ばしており、専門葬儀社ではトップレベルに達しています。
アルファクラブグループの沿革
1962年(昭和37年6月)
埼玉県川口市芝の地に総合葬儀場さがみ典礼を和田兼保氏により発足(アルファクラブグループ創業)
1973年(昭和48年10月)
地域住民のための互助会として事業拡張と将来への計画遂行のため、株式会社埼玉県民護助会(資本金130万円)を設立
1978年(昭和53年3月)
経済産業大臣より、前払式特定取引業としての認可(許可番号互第3097号)を受ける
1978年(昭和53年10月)
本店所在地を川口市芝中田1-2-13に移転、商号も株式会社互助センターに変更
1980年(昭和55年1月)
栃木県宇都宮市大通り5-2-2に宇都宮営業所を新設
1980年(昭和55年3月)
宇都宮地域業務拡張のため、本店所在地を宇都宮市大通り5-2-2に移転
1989年(平成元年5月)
社名を株式会社互助センターより、アルファクラブ栃木株式会社へと改称、商号変更
1997年(平成9年11月)
店所在地を宇都宮大通り5-3-9に移転、社名もアルファクラブ株式会社に改称、商号変更
2005年(平成12年4月)
ベルヴィ宇都宮株式会社・栃木さがみ典礼株式会社を吸収合併し、ベルヴィ宇都宮を冠婚部、栃木さがみ典礼を葬祭部とした中で、互助会部門と施行部門の一層の一体化を図る。
2007年(平成19年6月)
地域密着を図るため社名をアルファクラブ株式会社より、アルファクラブ栃木株式会社へと改称、商号変更
2008年(平成20年7月)
那須塩原市下永田1-993-11「乃木温泉ホテル」を取得し、運営開始
2010年(平成22年10月)
ビジネスホテル「ホテルアーバングレイス宇都宮」を建設オープン
2011年(平成23年7月)
茨城県エリア拡大のため、社名をアルファクラブ栃木株式会社より、アルファクラブ株式会社へと改称、商号変更
2016年(平成28年10月)
ビジネスホテル「ホテルア-バングレイス宇都宮」を栃木法人として運営開始
2018年(平成30年8月)
葬儀社「株式会社セレモニーあすか」をM&Aにより買収し、「小山セレモニーあすか(本店)」及び「栃木セレモニーあすか」2施設の運営開始
2020年(令和2年1月)
葬儀社「株式会社安田」をM&Aにより買収し、「大田原斎場安田本店」「大田原斎場富士見ホール」「大田原斎場鳥ヶ森ホール」3施設の運営開始
2020年(令和2年5月)
株式会社セレモニーあすかを吸収合併し「小山セレモニーあすか(本店)」を「さがみ典礼あすか小山」に「栃木セレモニーあすか」を「さがみ典礼 あすか栃木」に名称を変更
2021年(令和3年)
葬儀社「有限会社菊屋造花店」をM&Aにより買収し「今市まごころホール菊屋」の運営開始
2021年(令和3年4月)
結婚式場「ベルラクール」の隣接地に、グランピングリゾート「ネン那須高原」を建設オープン
2021年(令和3年5月)
アルファクラブグループ創業60周年
出典:アルファクラブ 沿革
アルファクラブグループ各社の代表取締役
アルファクラブグループ各社では、代表取締役を複数社兼任していることが多いようです。
社 名 | 代表取締役 |
アルファクラブ株式会社(栃木) | 会長 稲川 治利氏・社長 神田 昌毅氏 |
アルファクラブ武蔵野株式会社 | 会長 和田 哲哉氏・社長 和田 浩明氏 |
アルファクラブ東北株式会社 | 会長 稲川 治利氏・社長 神田 貢典氏 |
アルファクラブ株式会社(福島) | 会長 稲川 治利氏・社長 神田 貢典氏 |
アルファクラブ静岡株式会社 | 神田 昌毅氏 |
サイカンシステム株式会社 | 和田 浩明氏 |
せいしん株式会社 | 和田 浩明氏 |
株式会社 東冠 | 和田 浩明氏 |
株式会社 レクスト岐阜 | 神田 貢典氏・金森 茂明氏 |
株式会社 レクストワン | 神田 貢典氏 |
アルファクラブグループの葬儀場
アルファクラブグループの葬儀場は、埼玉、福島、栃木など東日本を中心に運営されています。
葬儀社の決算公告とは
決算公告資料はその会社が健全な経営を行っているかを確認できる計算書類となります。株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があり、その行為を決算公告といいます。
ただし、大会社については貸借対照表と合わせて損益計算書も公告することが義務付けられています。
次の2つの条件のうちいずれか1つが該当する株式会社は「大会社」という定義になります。
1つ目は資本金が5億円以上、2つ目は負債額が200億円以上の株式会社のいずれかとなります。
公告の方法は全部で3つあります。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 電子公告(会社のウェブサイトに掲載)
決算公告は義務的な側面が強いですが、取引先や銀行に情報の開示を行うことで、自社の透明性や健全性を見せることができるという重要な側面も持ち合わせています。
なぜ葬儀社は決算公告を行うのか?
大手葬儀社、あるいは葬儀・葬祭事業を長きにわたって営んでいる会社は、冠婚葬祭互助会を運営するケースが少なくありません。
冠婚葬祭互助会とは、冠婚葬祭などの行事に備えるために、毎月一定の掛金を複数回の支払いで積み立てるサービスです。
冠婚葬祭互助会の会員になることで、葬儀や婚礼といったライフイベントの際に会員割引を受けられるなど、さまざまな面で優遇されます。
一般的な専門葬儀社は、開業にあたって特に許認可は必要ありませんが、冠婚葬祭互助会は経済産業大臣の認可を受けた企業のみ行える事業です。
会員から掛金として支払われた前受金は割賦販売法によって積み立てられた前受金の2分の1を次の何らかの方法で保全することが義務付けられています。
- 法務局に供託する
- 経済産業省の指定する保証会社と供託委託契約を結ぶ
- 銀行や信託会社などの金融機関と供託委託契約を結ぶ
上記のいずれかの方法を選択する必要があります。
また、経済産業省は割賦販売法に基づき互助会事業の経営指導や立入検査等を行っています。
なお現在、冠婚葬祭互助会事業者として登録されている事業者は以下より確認することができます。
経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧
上記のように、冠婚葬祭互助会では政府・行政の認可団体として運営している側面があり、義務である決算公告を発表する事業者が多い状況です。
アルファクラブグループの決算公告からみる利益や業績
ここからは、アルファクラブグループの貸借対照表(8社合算)について詳しく分析します。
各項目を確認することで、アルファクラブグループのおおまかな財政状況が把握可能です。
アルファクラブグループの貸借対照表
貸借対照表でまずチェックしたい箇所は純資産の部です。総資産に対する純資産の比率である「自己資本比率」が高いほど、その企業の経営状態は良好であると考えられます。
自己資本比率が50%以上であれば、経営状態は良好とされていますが、10%を下回っている場合は改善が必要な状況といえるでしょう。
自己資本比率が低い場合は借入金などの負債が多いので資金繰りが厳しいと予測ができます。
一方で、自己資本比率が高い場合は返済義務を有しない資金を大量に抱えているので倒産リスクは低くなると考えられます。
自己資本比率は、中長期的にその企業の安定性を確認できる指標ですが、最適とされる自己資本比率は業種によって大きく異なります。
例えば固定資産(建物や土地や機械など)を多く抱えている業種(製造業や鉄道会社)は最低でも20%程度はあると安心です。
逆に流動資産(ソフトウェアや”のれん”など)を多く抱えている業種(IT企業や卸売業)は最低でも15%程度は欲しいところです。
貸借対照表の左右(運用状況と調達状況)の合計額は必ず一致する
「資産」=「負債」+「純資産」という計算式が成り立つことから、貸借対照表のことをバランスシート(Balance Sheet)またはビーエス (B/S) と呼ぶこともある
アルファクラブグループの自己資本比率は10.52%
自己資本比率は「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」で求めることができます。
253億7千2百万円÷2412億4千0百万円×100=10.52%
アルファクラブグループの2022年における自己資本比率は、10.52%(前年比0.33%増)となっています。
利益剰余金の推移
利益剰余金とは簡単に言うと会社の貯金のようなもので、その会社の生んだ利益を分配せずにコツコツと社内で貯めたお金です。
正確な会計用語ではないですが利益剰余金のことを内部留保とも言います。
利益剰余金は、金融危機などの影響で収益状況が悪化した際にも、従業員の給与や固定費の支払いに活用できるため企業が生き残るための重要な資金源となります。
アルファクラブグループの利益剰余金の推移は以下の通りです。
アルファクラブグループの2022年12月期における利益剰余金は、247億8千8百万円(前年同期比5.33%増)となっています。
アルファクラブグループの利益剰余金は過去5年間を見ると、新型コロナの影響なのか2021年は少し減少しました。
しかし2022年には2020年よりも増えており、財務上健全な状況といえそうです。
大手冠婚葬祭互助会の業績は、葬儀業界全体の置かれている状況を推し量る指標ともなりますので、引き続き2023年の決算公告が待たれます。
アルファクラブグループの損益計算書
損益計算書とは企業が「どれだけ売り上げが上がり(=収益)」「費用を何に使って(=費用)」「どれくらいもうかったのか(=利益)」が一目で分かるものです。
2021年に営業利益が大きく減少していますが、2022年には2020年を上回る営業利益が発生しています。
同じく当期純利益も2021年に大幅に減少しましたが、2022年には増加に転じました。
2021年に営業利益が大きく減少していますが、2022年には2020年を上回る営業利益が発生しています。
同じく当期純利益も2021年に大幅に減少しましたが、2022年には増加に転じました。
売上金額の推移
アルファクラブグループにおける過去5年間の売上高は、以下のように推移しています。
新型コロナウイルスの影響を受けたためか、2021年に大きく減少しましたが、2022年の決算公告では496億6千0百万円(前年同期比7.91%増)と改善しています。
2023年に新型コロナも5類相当に移行し、2023年の決算では2019年と同レベルまで売上高が回復するかもしれません。
営業利益の推移
営業利益とは、売上総利益から販管費(=販売費および一般管理費)を差し引いて算出されます。つまり、どのくらい本業で儲ける能力があるかを表す数字となります。
アルファクラブグループでは、2020年から新型コロナの影響が出始めたとみられ、営業利益が大きく減少し、2021年にはさらに大幅に減少してしまいました。
しかし、2022年には2020年の水準を超える営業利益が出ており、新型コロナの影響も少なくなってきたと思われます。
経常利益の推移
経常利益はその会社の実力が一番分かる数字で、本業以外の稼ぎ(金融商品、株、為替などの取引で発生した利益)も含め、会社全体でどれだけ稼ぐ力があるか分かります。
アルファクラブグループの2022年経常利益は、56億4千2百万円(前年比76.42%増)となりました。
2019年以降は減少傾向にあったアルファクラブグループの経常利益ですが、2022年には大きく増加に転じました。2018年の状態を回復するまでには時間を要するかもしれませんが、2023年の決算公告が待たれます。
アルファクラブグループのまとめ
アルファクラブグループの決算公告を参考に、業績や財務状況の分析をおこないました。
2020年から2022年にかけて、日本経済は新型コロナの影響で大きく落ち込み、アルファクラブグループも影響を受けましたが、その後は順調に回復しているようです。
貸借対照表や損益計算書を分析した限りでは、アルファクラブグループの経営状況に特に不安な点は見当たりませんでした。
アルファクラブグループは細かく分社化されているうえ、ホールディングス化されていないため、民間リサーチ会社などが実施する葬儀業界の売上ランキング上位に顔を出すことは多くありません。
しかし今回の分析で、グループ全体でみれば業界トップクラスの売上高を誇ることがお分かりいただけたかと思います
葬儀業界で大きな影響力を持つ大手冠婚葬祭互助会各社の業績は、市場の傾向を推し量るうえでも非常に有益な資料となります。
アルファクラブグループは近年の消費者需要を見込み、家族葬に対応した葬儀式場を次々とオープンさせており、互助会大手としてますます事業拡大が予想されます
今後も、アルファクラブグループの動向に注目していきたいと思います。