宗教用具は各地の仏壇屋や仏具店で販売されており、実務者には仏壇仏具、仏事、仏教などにまつわる専門知識が求められます。そこで全国の宗教用具事業者の一部は協同組合に所属し、活動を通して人材育成や経済効果拡大に取り組んでいます。
中でも80年以上もの間、宗教用具業界のリーダーとして業界発展に努めてきた団体が「全日本宗教用具協同組合(全宗協)」です。本記事では全日本宗教用具協同組合の概要を詳しく紹介します。
全日本宗教用具協同組合の概要
出典:全日本宗教用具協同組合
全日本宗教用具協同組合は、仏壇仏具などの宗教用具業界における協同組合です。「中小企業等協同組合法」に基づく経済産業省認可の全国的組織で、宗教用具業界の発展や経済的地位の向上を図っています。
活動テーマは「日本の祈り文化と、共にある。」で、宗教用具を通して地域の方々の平和や安らぎの場を提供しています。
【団体名称】全日本宗教用具協同組合(全宗協:ぜんしゅうきょう)
【所在地】〒101-0048 東京都千代田区神田司町2-16-7 第二小林ビル2階
【設立】1988年(昭和63年)4月20日
【代表者】池田典明
【会員数】197店(2024年3月現在)
【公式HP】https://www.zenshukyo.or.jp/
参照:全宗協の組織概要
全日本宗教用具協同組合の沿革・歴史
全日本宗教用具協同組合の歴史は1939年から始まります。太平洋戦争中は国の政策に沿って組織編成を行い、その後終戦を迎えました。
戦後は伝統的な素材や技法に用いる金箔・金粉の統制に対して交渉を行ったり、創立総会を開催したりと活動を本格化しました。1988年に経済産業省(当時の通商産業省)より認可され、設立登記を行っています。
- 1939年:日本神仏具統制協会 設立
- 1943年:社団法人日本神仏具統制協会 設立
- 1944年:全国神仏具統制組合 設立
- 1947年:全国宗教用具商業協同組合 設立
- 1948年:宗教用具商工会 設立(昭和24年 中小企業等協同組合法施行)
- 1951年:日本宗教用具協同組合 設立
- 1953年:日本宗教用具懇話会 設立
- 漆対策委員会を発足、ベトナムとの取り引きなどを展開
- 1979年:全日本宗教用具組合連合会 設立
- 1987年:全日本宗教用具協同組合創立総会 開催
- 1988年:全日本宗教用具協同組合設立認可
- 1988年:設立登記
- 全日本宗教用具協同組合第1回通常総会 開催
参照:全日本宗教用具協同組合「全日本宗教用具協同組合の歩み」
全日本宗教用具協同組合の事業・取り組み
全日本宗教用具協同組合では、研修会の開催や人材育成をはじめとした以下の取り組みを行っています。
研修会活動
毎年春と秋に全国研修会を開催しており、パネルディスカッションやワークショップ、セミナーを行っています。研修で扱う内容は経営や接客、店舗づくり、仏具業界の将来展望などさまざまです。
さらに全国各地にある寺院や美術館などの見学、講習も行っています。海外研修の実施実績もあり、会員の学習や業界全体の経済効果向上における大きな取り組みのひとつです。
出典:全日本宗教用具協同組合「全日本宗教用具協同組合のご紹介」
仏事コーディネーター資格の支援
全日本宗教用具協同組合では人材育成に力を入れており、仏事コーディネーター資格の習得支援を行っています。仏事コーディネーターは「仏教と仏壇仏具」「仏事」にまつわる専門的知識を証明する資格で、組合会員のみが取得できます。
仏事コーディネーターとは?
仏事コーディネーターとは、仏教や仏壇仏具、儀式や行事といった仏事に関する正確な知識を持った資格者を指します。
運営元は仏事コーディネーター資格審査協会で、2004年から民間資格として始まりました。審査は講習や試験によって行われ、仏壇仏具の製品や販売、法令など幅広い知識が問われます。
資格名 | 仏事コーディネーター |
実施機関 | 仏事コーディネーター資格審査協会 |
受験資格 | 宗教用具を扱う事業所を経営する者ならびにその従業者 ※パート、アルバイト、非常勤の従業者も含む全日本宗教用具協同組合の組合員とその従業者を対象として実施 |
日時 | 11月中旬(年1回) |
講習範囲 | 仏教の基礎知識仏事(慶弔)に関する知識仏壇仏具の製品知識仏壇仏具の販売知識関連する法令の知識仏事コーディネーターの使命と心構え |
講習料および受験手数料 | 35,000円(テキストは各自で用意) |
資格取得によって宗教用具販売における適切な対応ができるだけでなく、信頼性向上や業界の認知度拡大にも繋がります。
「PRAY for (ONE) 小さな祈りのプロジェクト」を後援
全日本宗教用具協同組合は、「PRAY for (ONE) 小さな祈りのプロジェクト」に参加しています。本プロジェクトは暮らしに溢れる小さな祈りを大切に、新たな祈り文化や優しい社会づくりを目的とした活動です。
「PRAY for (ONE) 小さな祈りのプロジェクト」には、のべ100以上の団体が参画・協賛中です。全日本宗教用具協同組合では全国研修会で祈りにまつわる講演や、他団体との対談を行っています。
全日本宗教用具協同組合の特徴
全日本宗教用具協同組合の特徴は、仏壇仏具に関する最新情報や学習の機会を積極的に提供していることです。
研修会活動や会報発行はもちろん、資格後援事業や祈りの啓蒙活動など、さまざまな角度から業界の発展に働きかけてきました。コロナ禍には「バーチャルとリアルを融合した接客」にまつわる学びをリモートで行っており、常に新たな活動に取り組んでいます。
近年では、仏壇仏具に関する顧客の呼称を「消費者」から「生活者」に改め、生活者に寄り添う姿勢を重視しているのも特徴的です。商品提供だけでなく、生活者と同じ目線に立つことや寺院との関係を取り持つことも、宗教用具業界の役割のひとつと考えています。
全日本宗教用具協同組合に加盟するメリット
全日本宗教用具協同組合に加盟することで、全国研修会や通常総会に参加できます。
講演会ではマーケティングや寺院の歴史、伝統美術など幅広い内容を学べます。ワークショップやグループ演習も行われるので、会員同士の交流をもとにより良い店舗づくりを目指せる内容です。実際に全国研修での学びをもとに店舗で終活セミナーを実施した例もあります。
また、全日本宗教用具協同組合会員は、仏事コーディネーターの取得を目指せます。資格があれば「どの仏壇が良いのか」「宗教的な行事がわからない」などの相談事に、プロフェッショナルな知識で対応できるようになります。資格取得後に付与されたIDカードを身に着けることで、専門知識の証明も可能です。
さらに、全日本宗教用具協同組合の公式HPでは全国の加盟店について詳しく紹介しています。紹介記事では、創業時のエピソードや歴史、店舗の景観や商品、従業員の雰囲気などが記載されます。公式HPに掲載されることで店舗の宣伝に繋がり、仏壇・仏具購入を考えている方の店舗選びの参考になります。
加盟時に配布される組合員章やINORI JAPANポスターを掲示すれば、さらなる購入のきっかけづくりや売り上げ拡大が期待できます。
全日本宗教用具協同組合の役員・理事
全日本宗教用具協同組合の役員・理事には、以下の方々が就任しています。
役職 | 氏名 |
理事長 | 池田 典明(災害対策本部長 兼務) |
副理事長 | 保志 康徳 |
副理事長 | 吉田 光宏 |
副理事長 | 杉浦 伸司 |
副理事長 | 高山 正 |
専務理事 | 安田 元慶 |
常任理事 | 丸屋 輝夫 |
常任理事 | 西春 貞男 |
常任理事 | 本保 実 |
常任理事 | 杉浦 伸司(兼務) |
常任理事 | 神戸 良司 |
常任理事 | 中造 真一郎 |
常任理事 | 高山 正(兼務) |
常任理事 | 東條 隆彦 |
常任理事 | 江頭 那将 |
監事 | 鳥居 邦夫 |
監事 | 小森 隆司 |
NL部長 | 山本 裕基 |
相談役 | 安田 松慶 |
事務局 | 岡 いづみ |
顧問弁護士 | 吉村 信幸 |
まとめ
本記事では、全日本宗教用具協同組合の概要や取り組み・加盟企業などについて紹介しました。
全日本宗教用具協同組合は太平洋戦争の渦中にも活動を行い、仏壇仏具の伝統的な素材や技法の継承に関与してきました。現在は全国規模での研修会や仏事コーディネーター資格の後援、祈りにまつわるプロジェクトへの参画など、幅広い活動を続けています。
また、仏具を使う場面を想定したり寺院との関わりを考えたり、ただ仏具を提供するだけではなく寄り添う姿勢を重視しています。全日本宗教用具協同組合に加盟することで、今後の宗教用具業界に求められる役割や業界発展への働きかけを学ぶきっかけにもなりそうです。