線香・ローソク(ロウソク)をつくる会社9社の特徴を解説|企業の想いや会社情報まとめ

線香ローソクメーカーまとめ

お線香やローソクは仏式の葬儀に欠かせないものですので、ほぼすべての葬儀社様で用意されているでしょう。
葬儀で霊前に供えられる「お香典」も、もともとは葬儀の際に使用する「お香」の代わりに金銭を納めたのが始まりといわれています。

日本には数多くの線香・ローソクメーカーが存在しますが、他社との差別化を図るべく各社とも工夫を凝らした新商品の開発に力を注いでいるようです。
そこで本記事では、代表的な線香・ローソクメーカー9社を例にあげて、各社の特徴について詳しく紹介します。

目次

線香・ローソク(ロウソク)の仏式供養における意味

三具足

寺院の本堂やお仏壇などの荘厳(しょうごん:ご本尊様をお祀りする場所を飾り付けること)に欠かせない仏具としては、香炉・燭台(しょくだい)・花立ての三具足(みつぐそく、さんぐそく)があります。
このうち香炉は香を焚く道具ですし、燭台にはローソクを立てて明かりを灯す仏具です。

仏式供養において「香」は空間を浄化するとともに、この世とあの世をつなぐものとして捉えられているようです。
また「香」は仏さまの食べ物として捉える「食香(じきこう)」と呼ばれる考えもあります。

一方のローソクは、不浄を焼き尽くし闇を照らす役割を担う「灯明(とうみょう)」となります。
仏教における「灯明」とは、仏さまの智慧(ちえ)の象徴とされており、人々を導く救いの光と考えられているようです。

こうした理由から、日本の仏式供養において、線香・ローソクは重要な存在として認識されています。

日本における香の文化は、仏教儀式の一部として平安時代に取り入れられ、長きにわたって受け継がれてきました。
お通夜では、一晩中ローソク(ロウソク)の「灯明(とうみょう)」と線香を絶やさないといった風習が全国的に残されていますし、葬儀の際も「お焼香」をおこないますので、線香とローソク(ロウソク)は葬祭事業を営むうえで不可欠なものといえるでしょう。

線香・ローソク(ロウソク)市場の動向

生活スタイルや住環境の変化などにより、仏壇の無い家庭が増えつつある現在では、線香やローソクの消費も大幅に減少していると考える方も多いことでしょう。
しかし実際のところ、線香およびローソク業界の将来性については、それほど悲観的な状況ではないようです。

まず線香については、宗教儀式に利用する一般的なお線香だけでなく、香りを楽しむ「フレグランス」商品として、世界市場に展開され始めています。
日本における線香の一大産地である淡路島では、14の線香業者が参加して、海外向けの高級線香ブランドを立ち上げました。

こうした動きは線香業界全体で活発化しているようで、すでに大手線香メーカーの商品は、ホームフレグランス商品として欧米などで定着しているようです。

またローソク製造販売事業は、世界市場において成長産業として捉えられており、特にアロマキャンドルは今後も3~5%の成長が見込まれるという説もあります。
かつては照明としての役割がメインだったローソクも、今では気持ちを和らげ空間を演出する役割を担うアイテムとして、世界的に需要が高まっているようです。

線香・ローソク(ロウソク)をつくる会社9社の特徴

線香・ローソクを取り扱うメーカーは、線香専門メーカーとローソク専門メーカーに分けられる一方、供養関連商材として両方を扱うメーカーも少なくありません。
また企業規模についても、個人経営規模の中小企業から、売上高100億円をこえるような大企業までさまざまです。

ここからは、日本の代表的な線香・ローソクメーカー9社について、詳しく紹介します。

カメヤマ株式会社のローソク(ロウソク)

カメヤマTOP

カメヤマ 株式会社は2017年に創業90周年を迎えた老舗企業で、その歴史は初代社長である谷川兵三郎氏が設立した「谷川蝋燭製造所」から始まります。

クリスマスなどのイベントの際にに利用されるスパイラルキャンドル(表面にらせん状の装飾が施されたローソク)はカメヤマが元祖で、米国向け商品として1938年に初出荷されました
結婚式のキャンドルサービスも、カメヤマ社員の披露宴でおこなったのが日本初とのことです。

創業以来ローソクをメインに取り扱ってきましたが、2018年11月に株式会社松竹堂香舗を、2019年5月には株式会社孔官堂を子会社化することで、カメヤマグループを形成しました。

そんなカメヤマが開発した「好物キャンドル」シリーズは、毎年のように新作の発売を続けています。
故人様が生前に好きだった食べ物や飲み物を模したローソクを、お仏壇のお供えとして飾る商品です。
ローソクですので、もちろん火を灯すことも出来ますし、徐々に減っていく様子がまるで食べているようだと好評を博しているようです。

カメヤマ好物キャンドル

また線香では、生前の故人様の姿を思い起こさせるような、「あの⽇のおもかげ線⾹」を発売しています。

カメヤマ面影線香

【社名】カメヤマ株式会社
【設立】1927年(昭和2年)2月
【所在地】〒531-0076 大阪市北区大淀中2-9-11
【従業員】約280名
【事業内容】神仏用ローソク、キャンドルの製造加工および販売|線香・お香の製造および販売|インテリア雑貨の輸入販売。
【公式サイト】https://www.kameyama.co.jp/

株式会社日本香堂のローソク(ロウソク)

日本香堂TOP

「毎日香」「青雲」など、誰もが聞き覚えのあるお線香を取り扱っているのが、日本における「香り」のリーディングカンパニー 株式会社日本香堂です。
現在の会社組織となったのは1942年ですが、その源流は天正年間(1573年~1592年)に発展した「香」の専門職「香十」にまで遡れます。

また日本香堂は、供養のための「香り」であるお線香についても、戦後の天才調香師 鬼頭勇治郎の「鬼頭天薫堂」を受け継ぐ企業です。
鬼頭勇治郎は、西洋と東洋の「香り」文化を融合させた香水香「花の花」を生み出した人物としても知られています。

早くから海外への販路拡大を目指していた日本香堂は、1989年フランスのESTEBAN社を、1999年にはアメリカのGENIECO社を傘下に収めました。
海外のフレグランス企業を買収したことで、ホームフレグランス分野での事業拡大に成功した日本香道は、グローバルネットワークを構築しています。
こういった経緯から、線香メーカーというよりは「香り」のスペシャリスト企業といえそうです。

そんな日本香堂が広めた弔事文化が、喪中ハガキではじめて不幸を知った際に、ご遺族に線香を贈る「喪中見舞い」です。
近年では葬儀の小規模化や簡素化が進んだ影響で、知人の葬儀に参列できないケースも増加傾向にあることから、弔意を示す方法の1つとして広く受け入れられているようです。

日本香道の喪中見舞い

もちろん、ご家庭で日常的に利用するお線香も幅広く取り揃えられており、好みに合ったものが選べます。

毎日香ほか
日本香道高級線香

【社名】株式会社日本香堂
【設立】1942年
【所在地】〒104-8135 東京都中央区銀座4-9-1
【従業員】203名
【事業内容】お線香・お香・香関連商品(インテリアフレグランス)を中心とした香り商品の製造・販売。
【公式サイト】https://www.nipponkodo.co.jp/

株式会社東海製蝋のローソク(ロウソク)

東海製蝋TOP

ダルマローソクで有名な株式会社東海製蝋は、初代 阿久澤源 三郎氏が横浜で始めた油や和ローソクの卸商「阿久澤商店」が原点となる企業です。
昭和54年に株式会社化して以降は、寺院・葬儀店・仏具店専用の業務用ローソク「華むらさき」や、直接印刷法を採用した「印刷ローソク」などの新商品を世に送り出しています。

東海精蠟華むらさき

昭和59年には「手づくりキャンドルセット」の販売を開始し、ハンドメイドブームの先駆けとなりました。
近年では、油性ペンやローソク専用手書筆「成就」で願い事を書き込める四角ローソク「祈るとき」や、桐箱入り四角ローソク「本願」など斬新な商品を開発しています。

東海精蠟祈るとき

またオススメ商品として、表面にさまざまな花の絵が印刷されたフラワーローソク「 La Bouquet(ラ・ブーケ)」を展開しています。

【社名】株式会社東海製蝋
【設立】昭和54年(1979年) *創業:明治10年(1877年)
【所在地】〒418-0034 静岡県富士宮市黒田355-1
【従業員】35名
【事業内容】ローソク等製造、販売
【公式サイト】http://www.tokai-seiro.co.jp/

株式会社丸叶むらたのローソク(ロウソク)

丸叶むらたTOP

株式会社丸叶むらたの歴史は、初代 村田 安五郎氏が宝永5年(1708年)に桶川宿に開いた万屋(よろずや:日用品全般を幅広く扱う商店)「丸叶」から始まりました。
ろうそくや線香・仏具の取り扱いを始めたのは昭和56年(1981年)からで、その後昭和61年(1986年)に現社名である「株式会社 丸叶むらた」に改称しています。

現在では線香やローソクだけでなく、仏壇・仏具や念珠などのご供養品を幅広く取り扱いつつ、時代に合った「供養のカタチ」を追及しているようです。
オリジナル商品はもちろんのこと、国内主要メーカーの商品も幅広く取り扱っているあたりは、原点である万屋の経営手法に近いものを感じます。

丸叶むらたでは高級線香『寳珠香』シリーズを開発して曹洞宗 大本山 總持寺 御用達となっているほか、個性的な商品を数多く世に送り出しています。
中でも特徴的なのは、文字が浮き出る線香「おはなしシリーズ」でしょう。

上記の「沢山のおはなし」は、火をつけると灰に文字が浮かび上がる線香で、浮き出る文言を一般公募しています。
また「ないしょのお話」は、付属のペンで文字を書き込んだ文字が、灰に浮かび上がる線香です。

ペット葬需要の高まりを受け、ペット供養品「虹の橋シリーズ」も用意されています。
自由に飛び回って遊ぶ様子をイメージしたという「虹の橋シリーズ」は、たくさんの花や足あと模様が配された可愛らしいデザインの商品です。

そのほか、ルームインセンス商品として、緑茶やコーヒーエキスを配合した「TEA TIMEシリーズ」や、桜葉エキスを配合した「櫻人」などを展開しています。

【社名】株式会社丸叶むらた
【設立】昭和25年(1950年)9月11日 *創業:宝永五年(1708年)
【所在地】〒363-0016 埼玉県桶川市寿1丁目11-10
【従業員】25名
【事業内容】線香、お香、ローソク等の製造販売
【公式サイト】https://marukanou.co.jp/

株式会社マルエスのローソク(ロウソク)

マルエスTOP

株式会社マルエスは平成5年(1993年)に旧 マス商事(株)の商品ブランドを引き継ぐかたちで設立された供養品メーカーです。
代表的な商品ブランドとしては、明王ローソクや明王香などがあります。

マルエス明王ローソク

ご家庭で日常的に使用される線香・ローソクだけでなく、葬儀に不可欠な香炭や焼香、一巻約12時間燃焼するうずまき線香も取り扱っています。

近年では小型仏壇に適した「煙少香ミニ寸」や、お悔やみ用の贈答品「四季シリーズ」なども展開してます。

マルエス少煙香ミニ寸
マルエス四季シリーズ

また個性的なオリジナル商品としては、お経やわらべ歌が内蔵された小型プレーヤー「妙意」や、手の平部分に「妙意」を乗せられる釈迦如来坐像などの『我が家のお坊さん 道しるべシリーズ』があります。

マルエス道しるべシリーズ

【社名】株式会社マルエス
【設立】平成5年(1993年)
【所在地】〒519-0165 三重県亀山市野村4丁目1番10号
【従業員】40名
【事業内容】ローソク・線香・墓参・仏具商材の販売
【公式サイト】https://www.e-maruesu.net/

ペガサスキャンドル株式会社のローソク(ロウソク)

ペガサスキャンドルTOP

ペガサス・キャンドル株式会社は、昭和9年(1934年)10月に井上 定夫氏が神仏用灯明蝋燭の製造を開始して以降、現在まで続くローソク専門メーカーです。
「キャンドルを通じて人類の幸に貢献する 心の燈火を造る」の経営理念のもと、キャンドル自身が放つ揺らぎの美しさにこだわって、ローソクを利用したさまざまな試みをおこなっています。

ペガサスキャンドル卓

その代表的な例が、大正時代の蔵を改修した古民家カフェダイニング「キャンドル卓 渡邉邸」の運営です。
キャンドルの灯りをメインに据えた店舗では、季節の食材を取り入れたモダンフレンチのコース料理が提供されています。

また神仏事業においても、ローソクのやさしい灯りを活かした祭壇や、献灯・供花といった演出を提案しています。

そのほか通夜式などで長時間の利用可能なローソクとして、通夜・式のあかり「織りあかり(24時間用・36時間用の2タイプ)」も販売しています。

ペガサス織りあかり

【社名】ペガサス・キャンドル株式会社
【設立】昭和25年(1950年)1月 *創業:昭和9年(1934年)10月
【所在地】〒710-0807 岡山県倉敷市西阿知町1320-5
【従業員】90名(2019年9月現在)
【事業内容】キャンドルの製造販売|キャンドルに付随する備品・演出機材の販売、レンタル
【公式サイト】https://www.pegasuscandle.com/

株式会社野田武一商店のローソク(ロウソク)

野田武一商店TOP

株式会社野田武一商店は「活躍する場を失ったモノに、もう一度非を灯したい」をテーマに事業を展開する線香・ローソクメーカーで、葬儀場などで使用されたローソクの回収・再生に取り組んでいます。
もともと問屋事業を営んでいた野田武一商店ですが、廃棄予定だったローソク製造機を譲り受けたことをきっかけに、ローソクの製造・販売事業をスタートさせたようです。

そんな野田武一商店では障害者雇用に積極的に取り組んでおり、同社代表の野田 洋市氏が設立した障がい者の就労継続支援A型事業所「幸房かおりや」では、多くの障害を持たれた方が就労されています。
パッケージデザインや使用済みローソク回収作業の一部も障害者施設に委託するなど、活躍の場を提供しているようです。

そんな野田武一商店では、地元企業とのコラボ商品として、遊び心のある商品も生み出しています。
長崎県佐世保市の株式会社大和製菓とのコラボ商品「やまとの味カレーづくし」は、味カレーのスパイスを配合した「味カレー香」と「味カレーレトルトカレー」「味カレー」10袋がセットになった商品です。

野田武一味カレーづくし

また野田武一商店のオリジナル線香「紫明」のパッケージは、長崎県波佐見町にある『工房紫明』の代表的な作品『カサブランカ』が採用されています。

野田武一紫明

【社名】株式会社野田武一商店
【設立】大正15年 (1926年)
【所在地】〒859-3711 長崎県東彼杵郡波佐見町井石郷2255-8
【従業員】6名
【事業内容】ローソク・線香の卸・販売、オリジナル商品の企画・開発など
【公式サイト】http://nodabuichi.handcrafted.jp/

株式会社松栄堂のローソク(ロウソク)

株式会社松栄堂は、初代 畑 六左衞門守吉氏が興した「笹屋」を原点とし、現在まで12代続く薫香の老舗メーカーです。
京都・大阪・東京・札幌に8カ所の直営店舗を展開するほか、お香と和雑貨を取り扱う「香音(かのん)」を、ジェイアール京都伊勢丹や大丸 京都店・福岡天神店・札幌店に開設しています。

各地の直営店舗で、香に関するさまざまな体験プログラムを開催しているほか、2023年2月におこなわれた京都精華大学の叡電キャンドルナイト2023「光る鞍馬~かぐや姫と月の都~」などにも参画しています。

松栄堂イベント

また京都リサーチパークでおこなわれた「KRP冬のマルシェ2023(2023年2月28日(火)~2023年3月2日(木))」には、移動販売車での出店をおこないました。

松栄堂ワゴン

【社名】株式会社松栄堂
【設立】1942年5月(創業/1705年頃)
【所在地】〒604-0857 京都市中京区烏丸通二条上ル東側
【事業内容】各種薫香(線香・焼香・練香・匂い袋等)の製造販売
【公式サイト】https://www.shoyeido.co.jp/

東京ローソク製造株式会社のローソク(ロウソク)

東京ローソク製造TOP

東京ローソク製造株式会社は、ローソクの企画・生産・販売を中核事業とする「山中商店」として大正13年4月(1924年)に創業された老舗ローソクメーカーです。
神仏用のローソクや線香をメイン商材としていましたが、昭和24年(1949年)に法人組織化されて以降は、ブライダルキャンドルやクリスマス・ハロウィンなどのイベント商品も取り扱っています。

神仏用ローソクとしては、主要ブランドの「富士桜」をはじめ、絵ローソクや文字ローソク・蓮花ローソク、花形ローソクの「花だより」や碇(いかり)型ローソク「舞扇」などがあります。

東京ローソク文字ローソク2
東京ローソク花だより
東京ローソク舞扇

またペット葬市場の拡大に伴い、2015年以降はペット供養品事業を拡大させているようです。

東京ローソクペット供養BOX
東京ローソクフォトフレーム
東京ローソク遺骨カプセル

【社名】東京ローソク製造株式会社
【設立】昭和24年4月(1949年) *創業:大正13年4月(1924年)
【所在地】〒111-0053 東京都台東区浅草橋3丁目25-5
【従業員】80名
【事業内容】 各種ローソク、線香、キャンドル、サマー商品、ハロウィン商品、クリスマス商品、ペットメモリアル商品、他
【公式サイト】https://www.tokyocandle.co.jp/

まとめ

本記事では、葬儀に欠かせない線香・ローソクを取り扱う9社の特徴について、詳しく紹介しました。

線香・ローソクを扱う業者は老舗が多く、創業300年を超えるようなメーカーも珍しくありません。
しかし、ロングヒット商品にあぐらをかくことなく、常に時代に合った商品の開発にチャレンジする姿勢が多くみられました。

また、明かりを主役にしたオリジナル祭壇の提案を行う企業が複数ある点も注目すべき動きといえるでしょう。
近い将来、葬送儀式全体のプロデュースに取り組むような線香・ローソクメーカーも出現するかもしれません。

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